【実例】おしゃれな階段にするには?配置場所や素材・色、手すりの選び方を解説

特に2階建て以上の住宅を検討する場合、重要となるのが階段です。住まいの雰囲気はもちろん、生活動線や家事動線、家族間のコミュニケーションも大きく変わるため慎重に選ぶ必要があります。本記事では階段の配置場所や素材、色、手すりの選び方など、階段を決めるコツについてわかりやすく解説します。どのような階段にしようかお悩みの方はぜひ参考にしてください。
記事の目次
階段の基本について
まずは、階段がどういった要素で成り立っているか見ていきましょう。
部位の名称

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踏板(ふみいた)
階段足を乗せる板のことをいいます。 -
踏面(ふみづら)
踏面とは、階段を昇り降りする際に足で踏む場所のことです。ときに、踏板の奥行きを指すこともあります。 -
段鼻(だんばな)
踏板の先端部分を段鼻といいます。滑りやすい素材の場合、滑り止めを付けることがあります。 -
蹴上(けあげ)
一段ごとの高さを蹴上といいます。一般住宅の踏面寸法は、建築基準法で15cm以上と定められています。 -
蹴込板(けこみいた)
踏板と踏板を垂直につないでいる板が蹴込板です。最近では、蹴込板をあえて設置しない階段も人気です。 -
手すり柱(てすりはしら)
踏面に対して垂直に設置される、手すりを支える柱が手すり柱です。 -
手すり笠木(てすりかさぎ)
実際に手を触れるところ、つまり手すりの上部にある部材が手すり笠木です。 -
横桟(よこざん)
手すり笠木と並行に設置される骨組みを横桟といいます。
階段の寸法基準
階段の寸法は、建築基準法で定められています。いくつかの基準があるなかでも、まず押さえておきたいのは次の3点です。

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・蹴上:23cm以下
・踏面:15cm以上
・階段と踊り場の幅:75cm以上
この最低ラインの階段がどういったものかをイメージすると、とても急で昇り降りしにくいことがわかるでしょう。基本的に、使いやすさを考慮していれば基準を満たせるはずですが、念のため頭の片隅に入れておくと安心です。
階段に求める3つの要素
階段を決める際、どのような視点で考えればよいのでしょうか。大切な要素を3つ紹介します。
安全性
階段は家庭内で事故が発生しやすい場所のひとつです。傾斜角度や踏板の寸法だけでなく、家族構成を踏まえて手すりや踊り場の有無などを検討し、十分な安全性を確保しましょう。
機能性
階段は人だけでなく、光や風の通り道にもなります。そのため、上下階を行き来する通路としての使いやすさはもちろん、採光性や通風性も考慮すると、よりよい階段を作れます。また、階段で生じるデッドスペースを収納やトイレ、作業スペースに活用すると、機能性がさらに高まります。
デザイン性
階段は住宅において存在感があり、どういったデザインにするかでインテリアの雰囲気がガラリと変わります。形状や材質にこだわると、家全体がよりおしゃれになるでしょう。
階段形状の特徴&メリット・デメリット
階段にはさまざまな形状があります。ここでは階段の形状について、ひととおりの種類を取り上げました。それぞれの特徴について、メリット・デメリットと合わせて解説します。
直階段

直階段は、上下階をまっすぐに1本線でつなぐタイプです。階段の途中に踊り場を設けるケースもあります。
メリット・デメリット
シンプルな形状であるため、コストを抑えやすいのは直階段のメリットです。すっきりとした見た目に仕上げたい人にも、直階段が向いているでしょう。
一方で、デメリットは上り下りでバランスを崩した際に、そのまま下まで転倒してしまうリスクがあるということです。そのため、安全性を高める工夫が必要になります。
かね折れ階段

途中で90度に折れ曲がった、L字型の形状の階段をかね折れ階段といいます。直角になる部分には、踊り場を設けるのが一般的です。
メリット・デメリット
かね折れ階段は、部屋の角部分に設置できるため、デッドスペースが生まれにくいでしょう。また、たとえ上部で踏み外してしまっても下まで転び落ちにくいため、直階段より怪我のリスクを減らせる点もメリットです。
ただし、かね折れ階段のデメリットは途中で折れ曲がる分、階段のスペースが必要になります。設置費用も、直階段より高くなる可能性がある点です。
折り返し階段

踊り場を挟み、180度に折れ曲がるのが折り返し階段です。
メリット・デメリット
折り返し階段のメリットは、段数を増やしやすい点です。傾斜が緩やかになるため、昇り降りしやすくなります。踊り場があり、転倒による怪我のリスクを下げられるのもメリットといえるでしょう。
それなりのスペースが必要となる点は、折り返し階段のデメリットといえます。また、段数を増やした分だけコストが上がるのも特徴です。
回り階段

折り返し階段と同様に途中で180度に折れ曲がりつつ、踊り場のない形状の階段を回り階段と呼びます。
メリット・デメリット
折り返し階段と同じく、昇り降りのしやすさや怪我のリスクが低い点がメリットです。また、デザイン面で優れているのも、回り階段のメリットといえるかもしれません。そこまで主張は強くありませんが、見た目に程よくセンスを感じさせる形状です。
ただし、折り返し階段と同じくスペースが必要となる点と、相応にコストが高めになる点はデメリットとなります。
らせん階段

らせん状に回りながら昇り降りするのがらせん階段です。ヨーロッパで広く使われているタイプで、洋風の住宅にする場合や、階段をインテリアのアクセントにしたい人におすすめです。
メリット・デメリット
一般的ならせん階段は円柱状になっていて、省スペースで済みます。存在感があり、個性を演出できることはらせん階段のメリットといえるでしょう。
一方、踏面が狭くなりがちです。そのため、荷物を運搬するときは、足を踏み外さないよう特に注意が求められます。
階段の外観デザイン
階段は外観デザインが変わるだけで、佇まいも機能面も大きく変わります。では、外観デザインには具体的にどういったタイプがあるのか、その詳細をお伝えします。
箱型階段

箱型階段は、階段の両サイドに壁があるタイプです。踏板と蹴込板で作られた部分がボックスのように見えることから、「箱型」という名称で呼ばれるようになりました。階段下にトイレや収納スペースを作ることができるため、機能性が高いといわれています。
ひな壇階段

ベースは箱段階段でありながら、片側の壁を露出させたタイプがひな壇階段です。部屋の隅に設置するためデッドスペースが生まれにくく、一方で開放感もあり広く採用されています。
スケルトン階段(オープン階段)

スケルトンは蹴込板がなく、階段の骨組みと踏板で作られているシンプルなタイプの階段です。モダンな印象であるのに加えて、蹴込板がない分だけ開放感がもたらされる点もスケルトン階段のよさといえるでしょう。
片持ち階段
踏板を片側の柱や壁に直接取り付けたタイプを、片持ち階段といいます。必要なものを極力削ぎ落としたデザインで、洗練された印象をもたらしてくれるのが魅力的です。特別な設計と施工技術が必要なため、採用する場合には技術力の高い会社へ依頼するのがおすすめです。
【タイプ別】おしゃれな階段の施工実例
ここからは、実際の施工事例を見ながら、おしゃれな階段を作るためのポイントを探っていきましょう。
直階段×ひな形階段

直階段で昇り降りのしやすさを確保しつつ、床材や柱の素材と調和させることで、リビングダイニングと階段が一体化したような美しい空間を実現した事例です。横桟を2本配することで、安全性も確保しています。
直階段×スケルトン階段

家族だんらんを重視してリビングに設置された、モダンな佇まいの直階段です。スケルトンタイプにすることで高窓から降り注ぐ光が階段の下にも回り、開放感あふれる作りになっています。
かね折れ階段×箱型階段

リビングに設置しつつも、扉を設けた箱型階段にすることで断熱に配慮しています。また、キッチンのにおいが上階へいくのも防いでくれるので、快適性も保てます。
かね折れ階段×スケルトン階段

踊り場ありのかね折れタイプにすることで、転倒による怪我のリスクを下げています。また、スケルトンタイプを採用することで、大きな窓から降り注ぐ自然光がリビングへ広く届く設計です。骨組みは金属性、そして踏板は木材にすることで、リビング全体のモダンな雰囲気とよく調和しています。
かね折れ階段×ひな壇

踏面の幅を広く取ることで、飼い主とペットが横並びで歩けるほどゆったりと作られた階段です。階段下のスペースには愛犬のスペースを設置。出入り口の柵と階段の骨組みの色を合わせることで、統一感が生まれています。
折り返し階段×箱型階段

あちこちで本に親しめるようにと、ひな壇部分および踊り場スペースに本棚を設けた階段です。細いスチール素材の手すりにすることで、窓からの光が差し込む明るい空間が作られています。本だけでなく季節飾りを置いたり多機能に使える便利なスペースです。
折り返し階段×スケルトン階段

家族のコミュニケーションがより活発になるようにと、リビングに設置された階段です。階段の下には、子どものためのスタディコーナーを設置しました。踊り場より下の部分をスケルトンタイプにすることで、壁に向かったデスクも閉塞感がなく集中力が高まりそうです。
回り階段×箱型階段

2階にリビングがあるため、頻繁に使う階段だからこそ昇り降りのしやすさにこだわりました。踏面の奥行きをゆったりと、そして蹴上の高さを低めにして傾斜をゆるやかにした階段です。階段の部材や床材、そして手すりの材質に明るい色味の木材を採用することで、開放感ある箱型階段になっています。
回り階段×スケルトン階段

職人の技術を垣間見せる装飾的なスケルトンタイプの階段です。また、階段の一部が収納ボックスになっているため見せる収納としても使えます。遊び心満載なユニークで個性的な住まいが実現できるのは注文住宅ならではの魅力ですね。
らせん階段×箱型階段

ヨーロッパ調の内外観に合わせて、らせん階段を採用しています。箱型による重厚感ある美しい佇まいと、吹き抜けによる開放感が見事に調和しているのを感じられるでしょう。曲線をゆるやかにすることで、昇り降りのしやすさに配慮しているのもポイントです。
らせん階段×スケルトン階段

屋上へと昇る過程で空へとつながるようなワクワク感が出るようにと、こだわって設計された階段です。壁紙は、空をイメージして青色に。白で統一されたスケルトンタイプのらせん階段は、まるで雲のようですね。足取り軽く、駆け上がりたくなるような階段になっています。
階段のデザインを決める際に重要なこと

注文住宅の階段作りで失敗しないためには、どういったことをおさえたらいいのでしょうか。ここで、階段のデザインを決定する際のポイントをまとめます。
階段の配置場所
階段をどこに置くかで、選ぶべき種類も形状も変わります。家でどういった過ごし方をしたいかを踏まえて、最適な場所を選びましょう。
設置場所は、「ホール階段」と「リビング階段」の大きく2つに分かれます。それぞれのメリットやデメリットを踏まえながら自分たちのライフスタイルに合うものを選びましょう。
ホール階段

廊下に設置する階段を、ホール階段と呼びます。ホール階段のメリットは、プライバシーを確保しやすい点です。例えば子どもが友だちを連れてきても、リビングを通らずに子ども部屋へ行くことができます。また、料理のにおいが2階まで広がるのを防ぎます。一方、帰宅後そのまま各自の部屋へ行けるため、家族が顔を合わせる機会が少なくなる可能性があるのはデメリットかもしれません。
リビング階段

リビングの一角から伸びている階段をリビング階段と呼びます。家族全員の共有スペースであるリビングを通らないと各自の部屋へ行けないため、自然と会話が生まれやすくコミュニケーションを重視したい家におすすめです。
ただし、リビングの音やにおいが別のフロアへ広がりやすいのは難点といえるでしょう。冷暖房の効きが悪くならないためにも、断熱性や機密性の面で工夫が必要になります。
階段の形状と種類
先述のとおり、階段にはさまざまな形状や種類があります。安全性や機能性、そしてデザイン性を踏まえて、ご自身の家に適したものを決めなければなりません。形状や種類は、俯瞰的な視点から吟味する必要があるでしょう。たとえ好みのタイプがあったとしても、設置場所や組み合わせによっては、必ずしも理想通りの階段に仕上がるとは限りません。
踏板の素材
踏板は階段の中でも面積が広く、インテリアの雰囲気に大きく影響します。
- 木材
- スチール
- アルミ
- ステンレス
- 石材
- ガラス
あたたかいテイストにしたいなら木材、モダンな雰囲気を希望するならスチール、高級感を演出したいならガラスや石材など、住宅全体の目指す方向性を踏まえて選びましょう。
手すりの形状
階段の手すりは、色や材質に加えて形状も選ぶことになります。
- ラウンド
- スクエア
ラウンド型は握りやすく、手を滑らせながら進めるのが特徴です。一方、スクエア型は手のひらや腕全体を手すりに乗せることができるため、握力の弱い方にはスクエア型が向いているでしょう。
おしゃれな階段にするためのポイント

おしゃれな階段にするためにどうすればいいか、以下のポイントを参考にしてみてください。
色やデザインをインテリアテイストに合わせる
階段は家の一部です。そのため、階段を考えるときは、家の外観・内観を踏まえてトータルで検討しましょう。色や材質などに統一感を持たせると、空間全体に調和が生まれおしゃれな雰囲気が生まれやすくなります。
吹き抜けを設ける
階段周りに、吹き抜けスペースを作るのもおすすめです。窓から注ぐ自然光が下階まで回って、明るくなり開放感も生まれます。
スキップフロアを設ける
床の高さを半階ずつずらして配置したスペースを、スキップフロアと呼びます。スキップフロアがあると、区画によって床から天井までの高さが変わります。そのため、空間が間延びしにくく、おしゃれな雰囲気を演出しやすいでしょう。
照明にこだわる
階段は、材質や形状選びだけでなく、照明使いでもおしゃれな雰囲気を演出できます。ぜひ、照明選びにもこだわりましょう。
ペンダントライト
天井から吊るすタイプの照明がペンダントライトです。丸型や円錐型などさまざまな形状があります。
シーリングライト
天井に直付けする照明を、シーリングライトと呼びます。広く光が行き届き、空間を広々と見せてくれるのがポイントです。
ブラケットライト
壁に取り付ける照明がブラケットライトです。目線に近い位置に設置しやすく、照明の佇まいそのものが空間の印象を左右しがちです。
フットライト
足元に配置するタイプをフットライトといいます。間接照明に当たり、安全性を高めたいときはもちろんのこと、ムードのある大人っぽい雰囲気を作りたいときにぴったりです。
おしゃれな階段にする方法についてまとめ
最後に、おさらいとしておしゃれな階段をつくるための方法をまとめました。
階段の幅や高さは自由に決められる?
注文住宅であれば、階段の幅や高さは基本的に自由に決められます。ただし、建築基準法による規定がありますので、基準の範囲内で検討して安全性にも配慮しましょう。
家族のコミュニケーションを取るのに最適な階段は?
家族のコミュニケーションを活発にしたいのであれば、リビング階段がおすすめです。階段の周りやリビングダイニングに本棚や作業スペースを設けると、より家族が集まりやすくなり、さらに仲も深まるでしょう。
階段の下のデッドスペースを有効に使う方法は?
階段の下は、箱型階段であれば収納スペースやトイレとして活用するのが一般的です。スケルトンタイプの場合は、ワークスペースとして使うのもおすすめです。
階段の形や外観デザインはさまざまです。安全性と機能性、そしてデザイン性の3つの観点を持って、最適なものを選びましょう。また、おしゃれさにこだわりたいときは、階段だけでなく家全体のテイストや階段周りのインテリアを踏まえて吟味することが大切です。吹き抜けやスキップフロアを設けたり、照明を工夫したりすると、おしゃれさがさらに増します。
よい階段を作れるかどうかで、家に対する家族の満足度は変わります。家族全員の意向をベースに、ライフスタイルやライフステージの変化を視野に入れながら検討してみてください。
注文住宅を建てる