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勾配天井とは?後悔しない家づくりのポイントやメリット・デメリット、建築実例を解説

勾配天井とは?メリット・デメリット後悔しないためのポイントを解説
注文住宅の施工例でもよく見かける「勾配天井」。
狭小地に家を建てる際にも、明るく開放感のあるリビングが実現でき、おしゃれな空間づくりにも適しているため人気があります。

しかし、コスト面や実用面に心配があり、採用すべきか迷う方は少なくありません。この記事では、勾配天井のメリット・デメリット、費用相場を解説します。

後悔しないためのポイントや勾配天井の実例も紹介します。注文住宅で、家づくりを検討している方はぜひ参考にしてください。

勾配天井(こうばいてんじょう)とは?

勾配天井とは、屋根の形状をそのまま活かして、傾斜を付けた天井のことです。床に対して平行に仕上げた天井にくらべ、より空間的な広がりを感じられるため、開放感を演出できます。

勾配天井にすると、本来は屋根裏になる空間を居室として利用できるため、デッドスペースをつくらずにすみます。

ただし、屋根の真下にあたる部屋しか勾配天井にできない構造になっています。このためリビングに採用したい時は、2階にレイアウトしましょう。

勾配天井のメリット

勾配天井のメリットとは?
勾配天井のメリットとは?

勾配天井にはさまざまなメリットがありますが、ここでは代表的なメリットを5つ紹介します。

光が届き部屋が明るくなる

住宅密集地でも高い位置に窓を設けられるためプライバシーを確保しながら採光が得られます
住宅密集地でも高い位置に窓を設けられるためプライバシーを確保しながら採光が得られます

勾配天井は、構造的に高窓や天窓を設置するのに向いており、自然光を取り込みやすいのがメリットです。高い位置に設置した窓は隣家の影になりにくく、明るい空間づくりに向いています。また通行人からの視線も気にならないため、カーテンを閉めずとも快適に過ごせるでしょう。

開放感と広がりが生まれる

視野が広がるため、室内を広く見せることができます
視野が広がるため、室内を広く見せることができます

勾配天井は、開放感と広がりを生み出します。10畳以下の狭いリビングでも部屋を縦にも延ばすと、視覚的に広がりを感じやすく、実際に床面積以上の開放感を得られるのもメリットです。

空気を効率的に入れ替えられる

天井の高い位置にも開口部をつくることで、空気が循環しやすくなり、効率的に換気できます。勾配天井は暖かい空気が上部にたまりやすくなるため、通気性をよくするためにも、窓の配置を工夫しましょう。

屋根の形を活かしたおしゃれな空間づくりができる

屋根の傾斜を活かした勾配天井は、インテリアのアクセントになるだけでなく、見る人に非日常的な印象を与えます。さらに、勾配天井の傾斜部分を板張りにし、間接照明を配置して素材やデザインにこだわれば、よりおしゃれな空間になるでしょう。

狭さを感じさせない間取りを実現できる

スタディスペースとして利用するにもぴったりです
スタディスペースとして利用するにもぴったりです

敷地が狭く十分な床面積を確保できない場合は、勾配天井の高さを活用して、ロフトやスキップフロアを設置するのもおすすめです。単純に床面積を増やせるだけでなく、空間に変化が生まれ、敷地の狭さを感じさせない間取りを実現できるでしょう。

勾配天井のデメリット

勾配天井のデメリットとは?
勾配天井のデメリットとは?

メリットが多い勾配天井ですが、デメリットもあります。ここでは、特に注意したいデメリットを5つ紹介します。

建築コストが高くなる

勾配天井は、一般的な天井に比べて建築コストが高くなるのがデメリットです。勾配天井にすると工事に手間がかかるため、内装材を施工する面積も増えます。間接照明の追加や、傾斜する面を板張りにするなど意匠を凝らせば、その分費用が上乗せになるからです。勾配天井の費用相場は、次章で詳しく解説します。

掃除をするのに手間がかかる

勾配天井にすると、簡単には手が届かない部分が多くなり、掃除をするのに手間がかかります。例えば、高窓や天窓、照明器具などの拭き掃除は危険がともなうため、場合によっては専門の清掃会社に依頼しなければなりません。また高さによっては足場を組む必要があり、その分コストがかかります。自身で掃除する際は、くれぐれもケガのないように気を付けてください。

照明器具の設置に工夫がいる

照明器具によっては、傾斜する面に設置できないタイプがあります。希望する照明器具が勾配天井に対応しているのか、早めに確認しておきましょう。また、基本的には照明器具の取り付けに足場や脚立などが必要です。そのため家電量販店やオンラインショップでの購入を検討している場合は、設置だけを依頼できるのかハウスメーカーや工務店に相談してみてください。

電球の交換などメンテナンス費用がかかる

勾配天井は、電球の交換などのメンテナンスに手間とコストがかかるのがデメリットです。一般的な天井であれば、電球の交換はそれほど大変な作業ではありません。しかし、勾配天井は照明器具を高い位置に設置しており、軽微な作業でも足場を設置しなければなりません。LED電球は高寿命なため、それほど頻繁に交換する必要はありませんが、メンテナンスに費用がかかることを想定しておきましょう。

冷暖房効率が低下しやすくなる

勾配天井にすると屋根裏の空間がなくなり、外部からの熱や寒さがダイレクトに伝わりやすくなります。また暖かい空気は上部にたまりやすく、一般的な天井の部屋に比べて、冷暖房効率は低下するでしょう。断熱性の高い住宅を選択する、もしくはシーリングファンやサーキュレーターを活用して、ランニングコストを低減する工夫をしてください。

勾配天井の費用相場

勾配天井の費用相場は?
勾配天井の費用相場は?

勾配天井は一般的な天井に比べて、建築コストがかかる傾向がありますが、どのくらいの費用を想定して置いたらよいのでしょうか。

ハウスメーカーや工務店によって建築コストが異なり、内装の仕上げ材に何を使うかによっても違ってくるため一概にはいえませんが、坪当たりにすると3万~5万円追加でかかるケースが多いようです。例えば、12畳(約6坪)であれば18万~30万円、18畳(約9坪)は27万~45万円です。一般的なリビングの場合は、30万~50万円を想定しましょう。

広さ 坪に換算 勾配天井の費用相場
6畳 約3坪 9~15万円
8畳 約4坪 12~20万円
10畳 約5坪 15~25万円
12畳 約6坪 18~30万円
18畳 約9坪 27~45万円
20畳 約10坪 30~50万円

※1畳は1.62平方メートル、1坪は約3.3平方メートルで換算

勾配天井で後悔しないための家づくりのポイント

勾配天井で後悔しないためのポイントは?
勾配天井で後悔しないためのポイントは?

勾配天井を採用して後悔したくない方のために、家づくりの大切なポイントを6つ紹介します。

屋根の形状やデザインを考慮する

勾配天井は、基本的に屋根の形状に合わせて施工します。屋根の傾斜やかたちに影響されるため、かならずしも好みのデザインにできるわけではありません。例えば、急勾配の屋根であれば、なだらかな傾斜の勾配天井にするのは困難です。勾配天井を採用する際は、屋根の形状やデザインを検討する段階から計画しましょう。

シーリングファンの設置で空気循環を促す

どこに設置すれば効率がよいのか、ハウスメーカーや工務店の担当者に相談しながら決めましょう
どこに設置すれば効率がよいのか、ハウスメーカーや工務店の担当者に相談しながら決めましょう

勾配天井は天井高が高く、その分空間は大きくなります。一般的な天井高の部屋に比べて、冷暖房の効率は悪くなるでしょう。空気を循環させてなるべく室温を一定に保てるように、シーリングファンの設置やサーキュレーターの使用を検討してください。

部分的に採用することも選択肢に入れる

勾配天井にすることで工事の手間が増え、内装材で仕上げる面積が広くなるため、建築コストが高くなる傾向があります。予算オーバーになりそうな時や、デザイン性や内装材の質を重視したい時は、勾配天井の採用を部分的にとどめることも視野に入れておくとよいでしょう。

窓の位置や高さはシミュレーションをする

勾配天井は、高い位置にも窓を設置できるのが魅力です。しかし窓の向きや季節によっては、日差しが眩しすぎたり、室内に熱を取り込みすぎる原因にもなったりします。窓の位置を検討する際は、日差しがどの程度入り込むのか、隣家からの視線が気にならないかなどを、シミュレーションしながら計画してください。

照明計画を立てる

間接照明には、フロアスタンドやテーブルスタンドなどさまざまなタイプのものがあります
間接照明には、フロアスタンドやテーブルスタンドなどさまざまなタイプのものがあります

勾配天井は天井が高くなるため、照明の光が手元や足元までしっかり届くように計画することが大切です。間接照明も活用して、必要に応じて明るさを調節できるようにしておくとよいでしょう。また照明器具によっては、傾斜の付いた天井に設置できないタイプもあります。勾配天井ならではの配慮の必要なため、照明計画に迷ったらハウスメーカーや工務店に相談してみてください。

断熱・遮熱対策を徹底する

勾配天井にすると、本来空気層となる屋根裏の空間がなくなります。外部からの熱や寒さがダイレクトに伝わりやすいため、断熱や遮熱対策をしっかり講じるようにしましょう。光熱費を抑えられるだけでなく、季節を問わず快適に過ごせます。

注文住宅の勾配天井の建築実例

注文住宅に勾配天井を採用したおしゃれな実例を、写真とともに4選紹介します。勾配天井を計画している方は、ぜひ参考にしてください。

木目を活かしたダイナミックな勾配天井のリビング

木目を活かしたダイナミックな勾配天井のリビング
ダイナミックな勾配天井 和テイストの贅沢な住まい(出典:(株)イング

勾配天井の傾斜部分を板張りにし、木目の魅力を活かしたデザインを採用しています。掃き出し窓のうえにさらに大きな窓を配置することで、明るくダイナミックで、かつ開放感のある空間になりました。

高さのある勾配天井による開放的な空間

高さのある勾配天井による開放的な空間
薪ストーブのゆらぐ炎を眺め、心豊かな時間が過ごせるお家(出典:太陽ハウジング(株)

勾配天井には冷暖房効率を向上させるために、シーリングファンを設置します。キッチンから続く土間スペースには本格薪ストーブを設置。施主のこだわりが感じられます。

木のぬくもりを感じる勾配天井のリビング

木のぬくもりを感じる勾配天井のリビング
空にひらく勾配天井、趣味を楽しむ平屋(出典:(株)三建 名古屋支社・サスエコホーム

勾配天井やフローリングなど、美しい木目が随所に見られ、温かみや安らぎを感じられる空間になっています。間接照明が優しく手元を照らしてくれるおかげで、夜のリラックスタイムも心地よく過ごせます。

施主がこだわりぬいた勾配天井

施主がこだわりぬいた勾配天井
“共働き”をサポートする工夫いっぱいの家(出典:(株)エクステージ注文住宅設計

施主がモデルルーム見学会で一目ぼれをしたという勾配天井。完成までだいぶ時間をかけて作りあげたそう。掃き出し窓の上にも窓を設置し光を摂取。床下冷暖房にしたことで冬でも暖かく過ごせます。

まとめ

勾配天井の特徴とメリット・デメリット、後悔しないための家づくりのポイントをおさらいします。

勾配天井とは?

勾配天井とは、傾斜を付けた天井を意味します。本来は屋根裏になる空間を居室として利用できるため、デッドスペースをつくらずにすむのが特徴です。

勾配天井のメリット・デメリットは?

勾配天井にすることで部屋が明るくなり、開放感も演出できるため、おしゃれな空間づくりを目指している方におすすめです。一方で建築コストが高くなる、冷暖房の効率が悪くなるなどのデメリットもあります。

勾配天井で後悔しないための家づくりのポイントは?

勾配天井にはメリットがあるものの、注意すべきポイントもあります。例えば、シーリングファンの設置や断熱・遮熱対策を徹底するなどして、快適に過ごすための工夫を忘れないようにしてください。

注文住宅は自由度が高く、理想とする住まいをつくり上げることは可能ですが、自由度が高いからこそ失敗してしまうケースも少なくありません。勾配天井に限らず、不安や疑問に対して親身になって相談に乗ってくれる担当者のいるハウスメーカーや工務店を選ぶようにしましょう。

桜木 理恵

執筆者

桜木 理恵

大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。

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