屋根の種類と選び方まとめ!特徴とメリット・デメリットを徹底解説

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屋根の重要性と役割

屋根は、建物にとってなくてはならないパーツです。主な役割は、直射日光や風、雨や雪をしのぐこと。快適な住まい環境の実現のために、屋根は欠かせません。昨今では、そういった必要不可欠な役割に加えて、住環境の快適性を追求するといった観点でも屋根の重要性に注目が集まっています。
屋根には室内の温度を調節する働きもあり、断熱性の高い屋根材を選べば、夏は涼しく冬は暖かく過ごせます。また、屋根の材料や形状によっては、外部の騒音を遮断する効果を見込めるものもあり、静かな室内環境を作りやすくなっています。
また、屋根は自然災害から家を守る役割も担っているパーツです。昨今は、地震や火事など万一の際を想定して作られた、耐震性や耐火性の高い屋根材も登場しています。ただ建物の上部にあるという機能面の役割にとどまらず、快適さや安全性と大きく関係するものなのです。
屋根の基本的な構造

注文住宅を建てる際、屋根の細かい構造まで知っている必要はありませんが、基本的な構造は理解しておきたいところです。そこで、屋根がどういった構造になっているのか、あらかじめ理解しておきましょう。
屋根の下地となるのが「垂木」です。垂木は屋根の傾斜に沿って設けられ、屋根全体の荷重を支える役割を担います。垂木の上には「野地板」と呼ばれる板、そして「下葺き材」という防水シートを設置するのが一般的です。この下葺き材には、防水性だけでなく断熱効果を持ったタイプもあります。
そして、最後にのせるのが「屋根材」、つまり瓦や金属タイプなど外部から見ることのできる仕上げ材です。それぞれの組み合わせによって、屋根の性能や耐久性が異なります。
屋根を選ぶポイント5つ

屋根の選び方次第で、機能性や耐久性はもちろんのこと、コストも変わります。失敗しないためには、さまざまな観点で検討しなければなりません。屋根選びで後悔しないためにチェックすべきポイントは以下のとおりです。
- コストと予算
- デザイン
- 耐久性と寿命
- 気候と環境への適応性
- メンテナンスの必要性
それぞれ詳しく見ていきましょう。
コストと予算
屋根の初期費用は、選び方によって実に2倍近く差が出ます。しかし、安価なものの場合には、メンテナンスの頻度が高くなる傾向にあることに注意しましょう。また、屋根の形状によっても施工費が変わります。複雑な形状の屋根ほど施工の手間がかかり、結果としてコストがふくらんでしまうのです。事前に予算を設定して、何を譲れないのか優先順位を明らかにしておくと、予算内に収めつつ理想的な屋根を作ることができるでしょう。
デザイン
屋根のデザインは、家全体の印象を決定づける重要な要素です。その要となる屋根材は、外観のバランスを考慮しながら選びましょう。例えば瓦を選ぶと、和風やクラシックな佇まいに仕上がります。一方、スレートはシンプルでモダンな住宅に最適です。また、金属屋根は素材の自由度が高いため、曲線や複雑なデザインを取り入れたいときに選ぶとよいでしょう。
耐久性と寿命
屋根材の種類ごとに耐用期間が異なるため、どのくらいもつかも確認する必要があります。購入費を安く抑えられたものの、その後のメンテナンスが頻繁に必要となり、トータルの費用はむしろ高くなってしまったという事態は誰もが避けたいはずです。
耐久性を確認するときは、屋根材の保証期間もチェックしましょう。保証期間が長いのは、メーカーの”自信の証”でもありますので、屋根を選ぶ際のポイントにしてもよいでしょう。
気候と環境への適応性
屋根は、気候や周囲の環境も踏まえて検討しましょう。日本は南北に細長いため、北と南では気候が大きく異なります。北海道や日本海側の降雪地域では、雪の重みに耐えられる強度が求められます。一方、台風が多い地域では、風雨への耐久性が必要になるでしょう。また、日照りの強い地域では断熱性や遮熱性の高い屋根材を選ぶと、より快適に過ごせます。
気候を踏まえて屋根を選ぶと、結果的に家の寿命も伸びます。加えて、周辺環境への配慮も忘れてはいけません。地域の雰囲気を壊すことがないかといった観点も考慮しながら、デザインを検討してください。
メンテナンスの必要性
屋根材は、種類によって点検の頻度や修繕の内容が異なります。もちろん、点検や修繕が頻繁に必要なものほど手間が増えます。また、屋根の形状によってもメンテナンスのしやすさが変わる点も、あらかじめ知っておきましょう。複雑な形状の屋根は専門業者への依頼が必要になるケースが多く、費用がかさみがちになります。
主な屋根材の種類
屋根材にはさまざまな種類があります。代表的な屋根材を中心に、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
瓦

日本の伝統的な屋根材である瓦は、和風建築に欠かせない素材です。最近は、洋風のタイプなどさまざまなデザインが登場しています。性能の面では耐久性および耐水性が高く、遮音性においても優秀です。
瓦は素材そのものが高価で、重さもあるため施工に時間がかかり、初期費用は高くなりがちです。しかし、頻繁にメンテナンスをしなくて済むという魅力もあります。たとえ割れても部分的に補修する程度で済むため、結果的にローコストとなる場合も少なくありません。
<メリット>
- 耐久性が高く、50年以上使用可能
- 防音性が高く、外部の騒音を遮断
- 雨漏りしにくい構造
<デメリット>
- 重量があるため、地震時のリスクがある
- 初期費用が高い
- 施工に時間がかかる
<工事価格>
約10,000円~15,000円(1平方メートルあたり)
<耐用年数>
50年以上
スレート

スレートはセメントを主成分とする屋根材です。薄く軽量でありながら耐水性に優れ、地震に強い性質があります。洗練されたデザインが豊富で、モダンな雰囲気にしたい人を中心に人気が高く、比較的安価に施工できるのも魅力です。
ただし、定期的なメンテナンスが必要となることはデメリットといえるでしょう。5〜10年に一度はコケやカビを落として塗装し直し、20〜30年後には張り替えるのが一般的です。
<メリット>
- 軽量で地震に強い
- デザインが豊富で、モダンな家に適している
- 施工が比較的簡単で費用をおさえられる
<デメリット>
- 寿命が20〜30年と短め
- コケやカビが発生しやすい
- 定期的なメンテナンスが必要
<工事価格>
約5,000円~7,000円(1平方メートルあたり)
<耐用年数>
20~30年
ガルバリウム鋼板

ガルバリウム鋼板は、金属鋼板をアルミニウム・亜鉛・シリコンでめっきした屋根材です。スレートよりもさらに軽量で、かつカビ・コケが生えにくくサビに強くメンテナンスの手間が比較的少ないため、近年注目を集めています。
メンテナンスは基本的に15〜20年に一度、水洗いと塗り替え、そして必要に応じてカバー工法を行うだけです。初期費用こそスレートよりも高くつきますが、メンテナンスの頻度が気になる人にはガルバリウム鋼板が向いているでしょう。
<メリット>
- 軽量で地震に強い
- サビに強い特殊加工が施されている
- シンプルでモダンな雰囲気
<デメリット>
- 雨音が響きやすい
- 断熱性が低く、遮熱対策が必要
- 傷がつくとサビが発生する可能性がある
<工事価格>
約5,000円~10,000円(1平方メートルあたり)
<耐用年数>
30~40年
アスファルトシングル

アスファルトシングルは、ガラス繊維にアスファルトを染み込ませた屋根材で、表面に砂や粒状の鉱物が施されています。北米で広く普及しており、洋風あるいはモダンな佇まいの住宅に向いている素材です。そのメリットは、軽量でさまざまな屋根の形状に対応できることや、工事価格が安価で初期費用をおさえられることが挙げられます。一方、デメリットは耐久性で、10年に一度めくれたり剥がれたりした部分を補修し、塗装し直さなければなりません。耐用年数も20〜30年と短めです。
<メリット>
- 軽量で地震に強い
- 施工が簡単で初期費用をおさえやすい
- 柔軟性が高く、複雑な形状にも対応可能
<デメリット>
- 耐久性が低め
- 紫外線や高温による劣化が早い場合がある
- 防音性が低く、雨音が響きやすい
<工事価格>
約4,000円~7,000円(1平方メートルあたり)
<耐用年数>
約20~30年
主な屋根の形状
続いて、屋根の形状の種類について紹介します。屋根の形状は、家の見た目はもちろん機能性にも大きく影響します。主な屋根の形状について、特徴を確認していきましょう。
切妻屋根(きりづまやね)

切妻屋根はもっとも一般的な形状で、シンプルな三角形のデザインが特徴です。施工が簡単なため、コストをおさえられます。さまざまな屋根材に対応できる一方、デザインがありきたりで個性を出しにくいのは、デメリットといえるでしょう。
<メリット>
- 一般的な形状なため奇抜でない
- 低コストで済む
- 対応している屋根材の種類が多い
<デメリット>
- 個性を出しにくいデザインである
- 妻側(屋根が三角に見える面)の外壁が劣化しやすい
- 劣化による雨漏りを防ぐためには定期的なメンテナンスが必要
寄棟屋根(よせむねやね)

寄棟屋根は四方に傾斜がある形状で、日本では切妻屋根に続いて多く採用されているデザインです。切妻屋根よりも施工費がかさむこと、屋根裏のスペースが狭くなるのは難点となります。一方、どっしりとして落ち着いた雰囲気に仕上がるのは、寄棟屋根のよさといえるでしょう。
<メリット>
- 全方向に傾斜があり、雨や雪が自然に流れ落ちる
- 風に強く、台風の多い地域に適している
- シンプルながらもバランスの取れた外観デザインが可能
<デメリット>
- 切妻屋根より施工が複雑でコストが高い
- 屋根裏の利用スペースが狭くなる
- 太陽光パネルを設置しにくい
片流れ屋根(かたながれやね)

片流れ屋根は、片側に傾斜したシンプルな形状が特徴です。おしゃれな佇まいが支持されています。ただし、風の影響を受けやすく、雨や雪が片側に集中しやすい点に注意してください。そのため、屋根や外壁が劣化しやすいというデメリットがあります。
<メリット>
- デザイン性が高く、モダンな住宅に適している
- 雨水が一方向に流れるため排水設計が簡単
- 太陽光発電パネルを設置しやすい
<デメリット>
- 風の影響を受けやすく、強風時に不安定になることがある
- 屋根の一部に雨や雪が集中しやすい
- メンテナンスの難しい箇所ができる場合がある
陸屋根(ろくやね)

陸屋根は、傾斜のないフラットなタイプの形状です。ビルや現代建築で採用されることが多く、スタイリッシュな見た目に加えて、屋上スペースをバルコニーやベランダのように活用できるのが魅力です。ただし、雨水が溜まりやすかったり、特に夏場は最上階が蒸し暑くなりやすかったりというデメリットもあります。
<メリット>
- 屋上スペースとして活用できる
- 施工が簡単で、建築コストをおさえられる
- モダンでスタイリッシュな見た目
<デメリット>
- 雨水がたまりやすく防水対策が必要
- 熱を吸収しやすく断熱対策が必要
- 定期的なメンテナンスが不可欠
入母屋屋根(いりもややね)

入母屋屋根は上部が切妻屋根、下部が寄棟屋根の形をした複雑な形状で、伝統的な日本建築に多く見られる格式高い形です。排水性が高く風の影響を受けにくいなど、機能面でも優れています。一方で、施工もメンテナンスも手間がかかるため、コストが高くつきがちという点はデメリットとなるでしょう。
<メリット>
- 見た目が豪華で重厚感のあるデザイン
- 雨水が流れやすく排水性が高い
- 風に対して安定性がある
<デメリット>
- 施工が非常に複雑でコストが高い
- メンテナンスに手間がかかる
- 屋根材の無駄が多く出る可能性がある
屋根の種類に迷ったら、工務店・ハウスメーカーに相談しよう
ここまでご紹介した通り、屋根は種類や形状がとても多様です。そのため、どれを選ぶべきか迷ってしまうこともあるでしょう。そんなときは、専門家を頼るのがおすすめです。
工務店やハウスメーカーには、屋根に精通しているプロが在籍しています。好みのデザインや求める機能性に加えて、地域の気候や環境を踏まえて提案してくれるでしょう。さらに、施工の難易度や予算、メンテナンスまで考慮してアドバイスしてもらえるため、将来的なプランを描きやすいはずです。
また、店舗では屋根材のサンプルを見せてもらうこともできます。中にはモデルハウスや展示場で、屋根材や形状を実際に見て確認できるところもあります。具体的にイメージできるため、施工が始まってから「なんとなく違う…」という違和感を抱いてしまうことは少なくなるはずです。
家というのは、何十年にわたって住み続けるものです。決して妥協せず、プロのアドバイスを取り入れながら自分たちにぴったりな屋根を選びましょう。
まとめ
本記事では、屋根の役割や種類、選び方のポイントについて詳しく解説しました。屋根材や形状を選ぶ際には、コストや耐久性、デザイン性、気候への適応性、そしてメンテナンスのしやすさを総合的に検討することが重要です。
どの屋根を選ぶべきか迷ったときには、専門家の意見を参考にしてみるとよいでしょう。一生に一度の大きな買い物である家づくりだからこそ、後悔のないようじっくりと検討してください。
注文住宅を建てる