外壁を漆喰にするメリットとデメリットは?かかる費用や実例、後悔しないためのポイント
この記事では、漆喰外壁を採用するべきか迷っている方向けに、メリット・デメリットやかかる費用の目安、後悔しないためのポイントを解説します。漆喰外壁を採用した実例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
漆喰外壁とは?

漆喰とは、主成分は消石灰で、つなぎにスサ(ワラなど)やノリ、水を混ぜた壁材です。乾燥すると硬化するのが特徴です。漆喰外壁は左官(専門の職人)がコテなどの道具を使って、壁に塗り込んで仕上げます。
漆喰を手仕事で仕上げる技法を「左官仕上げ」といい、独特な模様をあえて残す仕上げ方もあります。
漆喰の外壁はひび割れや傷が目立ちやすいのがデメリットです。しかし、適切にメンテナンスをすれば、耐用年数は30年とも100年ともいわれています。
なお国内でも地域によって素材や製造方法が異なり、欧米にも漆喰を使った壁があります。詳しくは、このあとの章で紹介します。
漆喰外壁の特徴や他の外壁材との違い
かつて、日本家屋の外壁には、漆喰が多く使われていました。左官仕上げの漆喰外壁は、日本古来の伝統的な技法であり、今でもお城やお寺で見られます。しかし、簡単に設置できる外壁材が普及した現代では、漆喰外壁が住宅に採用されるケースは少なくなっています。
では、漆喰外壁と他の外壁とどのような違いがあるのでしょうか。詳しく解説します。
他の外壁材と漆喰の違い
ここでは、他の外壁材の特徴と、漆喰外壁との違いを見ていきましょう。
モルタル

モルタルとは、セメント・砂・水を混ぜた建築材料です。漆喰外壁と同じように、職人がコテなどを使って、壁に塗って仕上げます。その見た目は漆喰と似ていますが、漆喰外壁に比べて安価なのが特徴。耐用年数は漆喰よりも短く20年~30年で、7年~10年に一度程度メンテナンスが必要です。
サイディング

サイディングとは、工場で板状に加工したものをいいます。セメントと繊維質で作られた「窯業系サイディング」や、金属を加工した「金属系サイディング」、天然の木材を使った「木質系サイディング」があります。現場で仕上げる漆喰やモルタルと違い、職人の腕に左右されず短期間で施工しやすいのがメリットです。耐用年数や価格は材質によって異なりますが、耐用年数は30年前後で、漆喰外壁の半額程度で施工できるタイプもあります。
コンクリート

コンクリートの外壁は、セメントと水を混ぜて、型枠に流し込んで形成します。強度を持たせるために鉄筋を入れるので、鉄筋コンクリートとも呼ばれます。見た目はスタイリッシュで、重厚感があります。耐久性が高く、耐用年数は50年以上ともいわれており、自然素材の漆喰と比べて、耐火性や防音性、気密性が高いのが特徴です。
珪藻土

珪藻土とは、植物性プランクトンが死骸となって堆積し、長い年月を経て土状となった天然の素材です。珪藻土はもろく、内装材として使用する場合でも耐用年数は長くありません。土壁の補修に用いる場合もありますが、新築の外壁材として採用するケースはまれでしょう。
タイル

タイルは石や粘土を焼き固めたものです。耐久性が高く、基本的にはメンテナンスが不要なため、公共の建物などでもよく採用されることも。タイルの種類やグレードによって費用は異なりますが、漆喰外壁の1.5倍~3倍程度はかかります。
漆喰外壁の種類

漆喰にも種類があり、地域や国によって材料や特徴が異なります。ここでは、代表的な漆喰を5つ紹介します。
本漆喰
本漆喰とは、お城やお寺で採用されてきた伝統的な漆喰です。塩焼きした消石灰と麻スサ、海藻ノリ、水を混ぜて作ります。耐火性や耐水性に優れているのが特徴で、経年美を楽しめるでしょう。
土佐漆喰
土佐漆喰とは、高知県で作られてきた漆喰です。材料は本漆喰とほぼ変わりませんが、ノリを使わず3カ月以上発酵させたワラを水と混ぜて、熟成させてから使うのが特徴。はじめは黄白色ですが、乾くにつれて白色になります。
琉球漆喰
琉球漆喰とは、沖縄で赤瓦を止めるのに使われてきた漆喰です。沖縄の強い日差しや台風にも耐える高い耐久性を持ちます。本漆喰や土佐漆喰と違い、生石灰を使うのが特徴です。お祝いで食べる餅に手触りが似ていることから、「ムチ漆喰」とも呼ばれています。
西洋漆喰
西洋漆喰は、外壁や内壁だけでなく、レンガや石材を接着させる役割を果たします。強度を出すために、消石灰以外に色粉や大理石、セルロースファイバー、防水材などを混ぜて作ります。
既調合漆喰
既調合漆喰とは、漆喰メーカーが製造している漆喰です。消石灰と麻スサの他に、炭酸カルシウムなど化学物質を加えている場合があります。顔料で着色したタイプや、ペーストタイプなどもあります。
漆喰外壁にするメリット

注文住宅に漆喰外壁を採用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、7つのメリットを紹介します。
調湿効果が高い
漆喰は、小さな穴が無数に開いている、多孔質な素材です。梅雨の時期には湿気を吸収し、冬の乾燥した時期には、湿気を放出します。そのため調湿効果を期待でき、湿度の高い日本に適した素材といえるでしょう。
高い耐久性を持つ
漆喰は二酸化炭素を吸収することで再石灰化が進み硬化するため、時間が経つほど強度が高くなる特徴を持ちます。実際に、お城やお寺の外壁に漆喰が使われており、その耐久性が実証されています。適切にメンテナンスすれば、100年持つともいわれているほどです。
耐火性・防音性がある
漆喰は燃えにくい素材で、建築基準法では不燃材料と定められています。また多孔質構造は吸音性があり、防音効果も期待できるでしょう。
デザイン性が高い
漆喰外壁は、左官が手仕事で仕上げるのが特徴です。コテの動きや使い方次第で、さまざまな模様や質感を表現できます。そのため和風や洋風にも合わせやすいデザイン性の高さも、漆喰の魅力のひとつです。
経年変化による独特な味わいがある
漆喰は先述のとおり耐久性が高いため、古くなっても、経年変化を楽しめるのがメリットです。工場製品では出せない、自然素材ならではの味わいがあります。
メンテナンスがしやすい
漆喰が汚れたら、サンドペーパーでこすればきれいになり、少量であれば耐久性に影響はありません。表面のひび割れが気になったら、漆喰の重ね塗りも可能。部分的に上塗りしても目立ちにくいので、軽微な修繕であればDIYで補修するのもおすすめです。
自然由来の素材を使う安心感がある
近年自然素材の魅力が見直されていますが、漆喰もそのひとつです。化学物質が使われていないため、シックハウス症候群を発症する心配はありません。また自然素材はいつか土になるため、環境負荷も軽減できるでしょう。
漆喰外壁にするデメリット

漆喰外壁はメリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、注文住宅で外壁に漆喰を採用して後悔しないために知っておくべき、5つのデメリットを紹介します。
施工期間が長くなる
漆喰外壁は、塗ったあとに乾燥させる必要があり、下塗り・中塗り・本塗りの工程を終えるのに、2~4カ月ほどかかります。漆喰外壁を検討する際は、余裕のあるスケジュールかどうか確認しておきましょう。
初期費用が高くなりやすい
漆喰外壁は先述のとおり、施工に手間と時間がかかります。量産されているうえに、施工が比較的簡単なサイディングなどと比べて、施工期間が長く、職人の人件費がかかる分、初期費用が高くなる傾向があります。
職人によって仕上がりに差が出る
誰もが漆喰の左官仕上げをできるわけではありません。職人によって仕上がりに差が出るケースもあります。施工会社には実際の事例を見せてもらい、熟練度合いを確認しておくとよいでしょう。また、漆喰塗りができる職人が減少傾向のため、そもそも施工会社が漆喰外壁に対応していない可能性も。依頼する前に、希望どおりの外壁が施工できる会社なのかも確認しておくと安心です。
キズや汚れが目立つ
漆喰外壁は、他の外壁材に比べてキズや汚れが目立つ傾向があります。これは色が白いことも影響しています。キズや汚れが気になる場合は、凹凸のある仕上げにすることで比較的目立ちにくくなるでしょう。
独特なにおいがする
漆喰は、通常つなぎに海藻ノリを使うため、塗りたての頃は磯のようなにおいがします。時間が経つことで独特なにおいは消えて、漆喰の消臭効果を発揮するでしょう。
漆喰外壁にかかる費用

注文住宅に漆喰外壁を採用した場合、費用はいくらぐらいかかるのでしょうか。ここでは、一般的な相場を紹介します。大まかな目安として参考にしてください。
施工費
外壁を漆喰にする場合かかる費用は、依頼先や漆喰の種類によっても変動しますが、1平方メートルあたり約7,000円~10,000円が目安です。
メンテナンス費
漆喰外壁をメンテナンスする場合、下地からやり直す方法と、上塗り(重ね塗り)する方法があります。上から重ね塗りする場合は、1平方メートルあたり3,000円~4,000円、下地から塗り替える場合は、6,000円~7,000円が目安になるでしょう。
漆喰外壁を長く保つためのメンテナンス方法

漆喰外壁を長くきれいな状態で保つためのメンテナンス方法を、状態別に紹介します。
表面の軽い汚れ
表面の汚れは、サンドペーパーで軽く削れば落とせます。カビによる汚れは、塩素系漂白剤を水で薄めて、優しく拭き取りましょう。
広範囲にしみ込んだ汚れ
広範囲の汚れは、足場が必要になるため、専門の会社へ相談しましょう。重ね塗りする方法もありますが、汚れが深くまで浸透している場合は、下地もやり替える必要があります。
キズ・ひび割れ
軽微なひび割れは、汚れと同じようにサンドペーパーでなめらかにする方法もありますが、基本的には漆喰を重ね塗りしてメンテナンスしましょう。漆喰は部分的に補修もできるため、まずは専門の会社に相談してみてください。
漆喰の外壁を取り入れた建築実例
漆喰の外壁を採用した建築実例を、3選紹介します。
軒が深いL型の漆喰の家

周囲の環境との調和を意識し、落ち着いたグレー色の漆喰を採用した実例。モダンな雰囲気感じる外観は、自然素材ならではの経年変化を楽しめます。
漆喰と焼き板の家

白い漆喰と焼き板のコントラストが趣深い、和モダンな家です。屋根は切妻屋根を採用して、スタイリッシュな印象に仕上げました。
漆喰と木でつくる、心地良い住まい

真っ白な漆喰と、かわいらしい玄関ドアが目を引く外観デザインです。玄関土間にも漆喰を採用し、外観も内装も統一感があります。自然素材にこだわった、心地のよい住まいです。
漆喰外壁で後悔しないためのポイント

注文住宅で漆喰外壁を採用するか迷っている方のために、後悔しないためのポイントを紹介します。
メンテナンス計画を立てる
漆喰外壁に限った話ではありませんが、きれいな状態を保つためには、メンテナンスが必要です。漆喰外壁のメンテナンスを依頼できる専門の会社は、それほど多くありません。建てたあとも相談できるハウスメーカーを選び、事前にメンテナンス計画を立てておきましょう。
漆喰の施工経験が豊富な会社を選ぶ
漆喰は、職人によって技術の差が出ます。仕上がりや耐久性にも影響するため、漆喰の施工実績が豊富な会社を選ぶようにしましょう。
まとめ
最後に、漆喰外壁の記事のおさらいをします。
漆喰外壁とは?
漆喰とは、消石灰・スサ(ワラなど)・ノリ・水を混ぜた、日本の伝統的な壁材です。専門の職人がコテを使って、壁に漆喰を塗り込んで仕上げた壁を漆喰外壁といいます。
漆喰外壁の種類は?
漆喰は、地域や国によって、材料や製法が異なります。伝統的な本漆喰の他に、高知県の土佐漆喰や、沖縄の琉球漆喰などがあります。工場で製造する漆喰を既調合漆喰といい、顔料で色付けしたものや、ペースト状のタイプもあります。
漆喰外壁のメリット・デメリットは?
漆喰には調湿効果があり、耐久性・耐火性・防音性が高く、デザイン性にも優れているのがメリットです。一方で、他の外壁材に比べて施工費が高くなる傾向があり、傷や汚れが目立ちやすいなど、注意すべき点もあります。
漆喰外壁は、既製品では出せないテクスチャーが魅力です。しかし漆喰は技術差が出やすい素材のため、熟練した職人がいる会社へ依頼することをおすすめします。
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