【実例】ヌックとは?メリット・デメリットと導入するときのポイントを解説

記事の目次
ヌックとは
ヌックは「こぢんまりとして居心地のよい空間」を指す言葉で、スコットランド語の「イングル・ヌーク(暖炉のそばの腰かけ)」に由来します。広さは2~3畳ほどが一般的で、個室のように壁で仕切らず、段差や素材の違いで空間をゆるやかに分けてつくります。家族の気配を感じながらも、一人の時間を過ごせるところが魅力です。ちょっとした読書や仕事、趣味の時間など多様な使い方ができることから、現代の住まいに人気が高まっています。
【実例】ヌックの種類
ヌックには、目的や設置場所によってさまざまな種類があります。読書を楽しむリーディングヌックや、階段下や窓辺を活かした空間、子どもやペットのための遊び場、作業に集中できる書斎タイプまで、そのバリエーションは多彩です。ここでは、実際の施工事例をもとに、人気のヌックの種類とその魅力を紹介します。
リーディングヌック
リーディングヌックは、読書に集中したい時にぴったりの、静かで落ち着ける空間です。階段下や部屋の一角など、限られたスペースを活かして設けられます。そのため、間取りに大きな余裕がなくても導入しやすいのが特徴です。壁に取りつけた読書灯や造作の本棚を設置すれば、小さな図書館のような雰囲気になります。ビーズクッションなどを置いて快適に整えれば、家族の気配を感じながらも、ゆったりと一人の時間を楽しめるでしょう。

階段下ヌック
階段下のスペースを活かしたヌックは、デッドスペースを居心地のよいくつろぎ空間に変えるアイデアです。小上がりの畳スペースにすることで、腰をかけたり寝転んだり、家族それぞれが自由に過ごせる場所になります。天井が低めで視線もほどよく遮られるため、包み込まれるような安心感があり、まるで秘密基地のような雰囲気を感じられるでしょう。さらに、段差を利用した収納を組み合わせれば、実用性と快適さを兼ね備えたヌックが実現できます。

窓ヌック
窓ヌックは、大きな窓辺に設けることで自然光をたっぷり取り込み、明るく心地よい空間を演出できます。窓枠に奥行きをもたせ、クッションを敷けば、ベンチのように腰かけてくつろげる場所に早変わり。読書やティータイム、外の景色を眺めながら過ごす時間は、日常に癒しをもたらしてくれます。晴れの日も雨の日も、天候を感じながら静かに自分の時間を楽しめる場所として人気のスタイルです。

子ども・ペット用ヌック
階段下を活用した子ども・ペット用ヌックは、子どもやペットが安心して遊べる特別なスペースとして人気です。畳敷きにすることで転倒時の安全性も高まり、おもちゃを広げて自由に遊べる空間が生まれます。壁に囲まれたこぢんまりとした場所は、子どもにとってまるで秘密基地のようなワクワク感があります。片づけやすい収納も組み合わせれば、親にとってもうれしい機能的にも優れた空間になるでしょう。家族の気配を感じながら遊べるのも魅力の一つです。

書斎ヌック
書斎ヌックは、仕事や勉強、読書に集中できるコンパクトな個人空間です。畳敷きにして壁で囲うことで、リビングと適度に距離を保ちながら、落ち着いて作業ができる環境が整います。造りつけカウンターを活用すれば、在宅ワークや趣味の作業にもぴったりです。来客時にはゲストスペースとしても利用でき、多目的に使えるのが魅力といえるでしょう。家族の生活音を感じつつも、自分だけの時間を確保できる書斎ヌックは、現代の住まいに理想的な空間です。

ヌックのメリット

ヌックは限られた空間を有効に使いながら、家の中でちょっとした特別感を生み出せます。ここでは、ヌックを取り入れることで得られる4つのメリットを解説します。
スペースを有効活用できる
ヌックは階段下や廊下の隅、窓辺などのデッドスペースを活かして設けられるため、新たに大きな空間を確保する必要がありません。限られた面積でも、人が過ごせる快適な場所として活用できます。読書や作業に使えるリラックススペースや、子どもの遊び場、収納エリアとしても使用可能です。住まいの中に小さな居場所を増やすことで、居住性も向上します。
プライベート空間が確保しやすい
ヌックは完全な個室ではないものの、ほどよく仕切られた空間をつくることで、自宅の中にプライベートな居場所を確保できます。家族がリビングで過ごしている間に、ヌックで読書や作業に集中するなど、一人の時間を楽しめるのも魅力です。少しこもったような造りが安心感を生み、自分だけの世界に浸れます。
空間にメリハリが出る
ヌックを取り入れることで、暮らしにも空間にも自然なメリハリが生まれます。例えば、食事はダイニング、作業は書斎、読書やくつろぎはヌックといったように場所を使い分けることで、生活のリズムのよさにつながります。
また、部屋に立体感が加わり、のっぺりとした印象になるのを避けられます。家具のように圧迫感を与えず、視覚的なアクセントにもなるため、デザイン性の高い住まいを演出できるでしょう。
多目的に使える
ヌックは、コンパクトながらも用途の幅が広く、ライフスタイルに合わせて柔軟に活用できます。たとえば、小さな子どもがいる家庭では遊び場や昼寝スペースに、大人には在宅ワーク用の書斎や趣味のアトリエとして使えるでしょう。造作デスクを設ければ、スタディスペースやテレワークにも対応が可能です。生活スタイルや家族構成が変わっても使い方を変えられるため、長く快適に使い続けられる実用性の高い空間です。
ヌックのデメリット

ヌックは居心地のよい空間として人気がありますが、導入には注意すべきデメリットもあります。ここでは、ヌックの主な3つのデメリットについて解説します。
費用がかかる
ヌックを取り入れるには、間取りに応じた追加費用がかかります。例えば、階段下や窓辺に簡易的なベンチを設けるだけでも10~20万円、間仕切りやカウンターつきの本格的なヌックになると20~30万円以上になることもあるでしょう。さらに、小上がりやロフト仕様の場合は、50万円以上かかるケースも珍しくありません。
スペースが必要
ヌックを設置するには、一定のスペースが必要です。特に限られた床面積では、ヌックを設けることでリビングや収納スペースが圧迫される可能性もあります。理想の広さは2~3畳ほどですが、間取りによってはその確保が難しいでしょう。家全体のバランスをみながら、慎重な計画が大切です。
使いづらいケースがある
ヌックは多目的に使える便利な空間ですが、設計や使い方を誤ると「思ったより使わなかった」という事態になりかねません。例えば、サイズが合わず落ち着かない、配置によって生活動線を妨げてしまうなどのケースがあります。また、家族構成やライフスタイルの変化によって、使わなくなることもあるでしょう。こうしたリスクを避けるためには、事前に使い方を明確にし、将来を見据えた計画が重要です。
ヌックを取り入れる際のポイント

ヌックは、暮らしに豊かさをもたらす魅力的な空間ですが、ただ設ければよいというわけではありません。心地よく実用性のあるヌックに仕上げるためには、事前の計画が重要です。ここでは、ヌックを取り入れる際のポイントを解説します。
使用目的を明確にする
ヌックを快適で使いやすい空間にするには、目的や利用シーンの明確化が重要です。例えば、子どもの遊び場にしたい、読書に集中したい、来客が使える場所にしたいなど、用途によって適した場所や設備、広さが異なります。目的があいまいなまま設けると、使い道が定まらず物置化してしまう恐れもあります。まずは、「誰が」「どのような時に」「どう使うか」の具体的なイメージからはじめましょう。
2~3畳程度にする
ヌックの心地よさは、あえてこぢんまりとした広さにすることです。目安としては、2~3畳ほどが適しています。これ以上広くなると通常の部屋に近づき、ヌックならではの包まれるような安心感が薄れてしまいます。読書や休憩など、一人で静かに過ごすには小さめの広さが心地よく、家具も最低限にとどめることで空間がより機能的になります。限られた面積を活かしながら、快適な自分だけの居場所をつくりましょう。
別空間として認識できるようにする
ヌックを効果的に活用するには、周囲とゆるやかにつながりながらも、視覚的に“別空間”として認識できる空間が必要です。例えば、床材を変える、天井を低くする、小上がりにする、入り口をアーチ型にするなどのゾーニングが有効です。素材や照明、インテリアに変化をつけることで、閉鎖感を出さずに落ち着いた空間を演出できます。リビングの一角でも雰囲気を変えるだけで、特別感のあるヌックに仕上がります。
空気が滞留しないようにする
ヌックは小さな空間のため、空気がこもりやすいでしょう。窓が設けにくい階段下や廊下に配置をする場合、換気扇や通気口を取り入れる、隣接する部屋との空気の流れを意識した設計にするなど、滞留を防ぐ工夫が重要です。快適な空気環境が整えば、ヌックは毎日心地よく過ごせる空間になります。
照明を工夫する
ヌックをより心地よく過ごせる空間にするためには、照明の工夫が欠かせません。全体を明るく照らすのではなく、居室よりもやや暗めに設定し、小さなペンダントライトや床置きの間接照明など光源を低めに配置します。そうすることで、落ち着いた雰囲気の演出が可能です。暖色系の光はよりリラックスでき、読書などには手元を照らす照明を取り入れるのもよいでしょう。
【実例】ヌックを取り入れたお家をご紹介
ヌックは限られた空間でも工夫次第で快適な居場所をつくれるため、実際の住まいに取り入れられるケースも増えています。ここでは、階段下の活用や狭小住宅での工夫など、さまざまなスタイルのヌックを実現した住宅事例を紹介します。
階段下のプライベート空間

階段下のスペースを活かしたヌックは「こもりっち」という愛称がつけられた、まさにこもれる特別な空間です。アーチ型の入り口がやさしい印象を与え、まるで秘密基地のようなワクワク感を演出しています。ヌックの中には赤いマットが敷かれ、読書や昼寝など、静かに一人時間を楽しむのにぴったりです。そっとこもれるプライベート空間として、暮らしに温もりを添えてくれるでしょう。
ママだけの秘密基地がある家

キッチンの奥にあるアーチをくぐると、現れるのは小上がりになった「ママのヌック」。家事動線の途中にありながらほどよくこもれる設計で、読書や書きもの、ひと息つきたい時にぴったりの空間です。周囲とつながりながらも、ほんの少し距離をおけるこの場所は、まさにママ専用の“秘密基地”といえるでしょう。日常のなかで自分のための時間を大切にしたい方にとって、理想的なヌックです。
超狭小地でスペースを有効活用

限られた敷地のなかでも「こもれる場所がほしい」という要望に応えて生まれたのが、床上げ式のヌックです。床下には引き出し収納を設けており、おもちゃやバッグ、日用品などをすっきりしまえる機能性も兼ね備えています。コンパクトながらも照明や木目の内装が温もりを演出し、リラックスできる居場所として活躍してくれます。狭小住宅でも空間を無駄なく使いながら、快適なヌックを実現した例です。
まとめ
ヌックは2~3畳ほどのこぢんまりとした空間で、家族の気配を感じながらも、自分の時間を楽しめる居場所です。リーディングヌックや階段下ヌックなど多彩なスタイルがあり、デッドスペースを活用できるのが魅力といえます。一方、設置には費用やスペースの確保が必要となるため、目的や場所、広さなどをよく考えて計画することが大切です。実例を参考に、自分らしいヌックを取り入れてみましょう。
注文住宅を建てる