天井の高さの平均は?高い天井のメリット・デメリットや注意点を専門家が解説

例えば「開放感のある部屋にしたいけれど、天井の高さはどれくらい必要?」「天井の高さは自由に決められるの?」など、天井の高さをどの程度に設定したらよいのか迷われる方がいるでしょう。天井が高くなるほど開放感が出ますが、冷暖房効率が落ちる、メンテナンスしにくくなるといったデメリットも発生します。
バランスの取れた高さにしないと、天井を高くしたことを後悔するかもしれません。注文住宅を新築する際はバランスの取れた天井高で設計し、心地よい空間を実現しましょう。
本記事では、天井の平均の高さや高い天井のメリットやデメリット、注意点について解説します。実際に高い天井でおしゃれな空間を実現した実例も紹介しますので、新築時の参考にしてください。
記事の目次
天井の高さの平均

新築の設計をする前に、まずは天井の高さの平均についての基礎知識を得ておく必要があります。以下で、天井の高さに関する基礎知識について解説していきます。
天井の高さの測り方
天井の高さの平均を測る際は、以下の道具を利用します。
- 金属製のコンベックス
- 鉛筆
- マスキングテープ
コンベックスとは距離を測る器具で、目盛りが記載されている金属製のテープがついています。コンベックスを使う際は、正確に測るために100cmごとに目印を付けながら測定します。コンベックスは垂れにくい器具ですが、一度に長い距離を測ろうとすると、金属製のテープが曲がって正確に測れません。
100cmごとに鉛筆で印を付けますが、壁を汚さないよう、まずはマスキングテープを貼ります。マスキングテープの上から鉛筆で100cmの印を付ければ、壁の汚れを防げます。鉛筆で印を書く際は、筆圧で壁に傷を付けないよう配慮しましょう。
なお、コンベックスと似た道具としてメジャーがあります。メジャーはテープがビニール性で先端部の爪やテープのカーブがなく、衣類や身体を測定する器具です。
建築基準法で定められている天井の高さ
建物を建築する時に遵守すべき建築基準法施行令には、以下のように天井の高さについて規定されています。
(居室の天井の高さ)
第二十一条
居室の天井の高さは、二・一メートル以上でなければならない。
出典:e-Gov「建築基準法施行令」
部屋によっては、一つの部屋の中で天井の高さが異なることもあり、その場合は高さの平均値が2.1m以上必要です。なお、建築基準法施行令とは、建築基準法で定めた事項をより詳細に定めたものです。建築基準法は大まかな制限を示しており、建築基準法施行令は具体的な制限を示した法律と考えればよいでしょう。
ちなみに、一般的な一戸建てや、マンションの天井の高さは2.4mとなりますので、2.4mを基準にもう少し高くするかを考えてみるとよいでしょう。
高い天井と吹き抜けの違い
高天井と吹き抜けの違いは、以下のとおりです。
高い天井 | 天井の高さを上げた空間 |
---|---|
吹き抜け | 天井を抜いて2つ以上の階層を縦につなげた空間 |
高天井とは、一般的に床から天井までが3m以上ある空間を指します。2階の半分ほどの高さになるため、ロフトや収納スペースとして活用されることが多いです。
一方、吹き抜けは開放感を演出する、より多くの採光を取り入れるために設置されるスペースです。高天井は2階部分がなくても設けられますが、吹き抜けは複数階になっているスペースにしか作れません。
高い天井のメリット

天井の平均を高くすると、以下のメリットを得られます。
開放感が得られる
天井を高くすると、開放感のある空間になります。室内に入った時、天井が高いと視野が左右だけでなく、上下にも広がります。視野が縦にも広がると、空間に余裕があると認識して爽やかな気分にさせてくれることでしょう。一般的には2.6~3.0m程度の高さがあると、開放感を覚えやすいといわれています。
高級感が得られる
天井が高くなると、高級感が生まれます。一般的に高級ホテルやレストランなどは、開放感ある空間を演出するために天井を高くしています。天井が高い空間に入ると高級な施設を連想させるため、開放感とともに高級感も感じられます。帰宅するたびに高級感や特別感を味わえるのは、高い天井の魅力のひとつです。
採光がよくなる
天井が高くなると、設置する窓の自由度が高くなり採光もよくなります。採光は窓が大きくなるほどよくなり、高窓を設置すれば太陽が高い位置にあっても日差しが入ります。天井が高ければ、大型の窓や高窓の設置も可能です。
自然光が差し込む空間は、部屋を暖かくするだけでなく紫外線で室内の空気を浄化する効果もあります。リラックスできる空間を実現するとともに、家族の健康を守る部屋になるでしょう。
換気がよくなる
天井を高くすると換気効率が高まり、室内の空気をキレイな状態に保ちやすくなります。空気は暖められると上昇する性質があり、天井付近の温度は高く、床付近の温度は低くなります。温度差ができると、自然と室内の空気が循環して換気効率が高まります。
また、天井を高く設計すると高い位置に開口部を設けられるようになり、天井にこもった熱を排気することも可能です。室内の下部から空気を取り入れ、熱を持った空気を高い位置で排気できれば快適な温度に保てます。
間取りの自由度が高くなる
天井が高くなると設計できるスペースが増えるため、間取りの自由度が高くなります。高い天井を設計すると、スキップフロアやロフトなどを設置できるスペースが生まれます。室内の上部に収納スペースを設置すれば、室内の横幅にゆとりができて開放感を得られるでしょう。
また、横幅にゆとりができることで換気効率が高まったり、採光を確保しやすくなったりします。高い天井をうまく活用することで、より快適な空間づくりにつながります。
高い天井のデメリット

天井の高さの平均を上げるデメリットは、以下のとおりです。
コストが上がる
天井を高くすると、建築コストやランニングコストが上昇します。天井が高くなるほど、壁や柱、窓などに使う建築材が増えます。特に窓の数が増えると、建築材の費用が高くなるため注意が必要です。
また、施工する箇所が多くなると、工期が長くなり人件費の増加にもつながります。なお、設計によっては屋根の構造が複雑になる場合もあり、施工費用全体に影響を及ぼすケースもあるでしょう。
エアコンが効きづらい
天井を高くすると、エアコンの効きが悪くなります。高い天井にすると室内の体積が増えて冷暖房効率が低下するため、室内を適温に保つには強い風量や低い温度設定が必要になることがあります。特に外気と設定温度の差が大きい場合は、なかなか快適な温度になりにくいでしょう。外気の熱は窓から侵入しやすいため、天井を高くして窓のスペースを広げると、よりいっそう冷暖房効率が低下します。
サーキュレーターやシーリングファンを使って空気を循環したり、床暖房を設置するなど対策もおこないましょう。
掃除やメンテナンスがしにくい
天井が高いと照明やカーテンレール、エアコンの位置も高くなり、清掃やメンテナンスに負担がかかります。高い位置に照明やカーテンレールがあると、脚立を利用して清掃やメンテナンスしなければなりません。脚立を利用する際は、気を付けて作業しないと転落するおそれがありますので注意しましょう。
音が響きやすい
天井が高くなると室内の面積が大きくなり、音が響きやすくなります。音には、壁に当たると反射する性質があるためです。壁までの距離が長いと反射するまで時間がかかり、室内に音が残りやすくなって響いているように感じられます。いわゆる残響(エコー)であり、不快に感じる方もいるかもしれません。
グラスウールやロックウールなどの断熱材は音を吸収してくれる効果もあるため壁や天井に採用するなど工夫をするとよいでしょう。
既製品のカーテンが合わないケースもある
大きな窓を設置すると、既製品のカーテンが合わなくなるケースもあります。一般的な窓の大きさに合うカーテンは大量生産されており、お手頃な価格で手に入ります。しかし、大きな窓を設置すると既製品のカーテンではサイズが合わなくなり、オーダーメイド品を使わなければなりません。また、カーテンのサイズを誤ると日差しを遮れない、室内の印象を損ねてしまうなどの問題が発生しますので注意が必要です。
【実例】 天井の高いおしゃれな住まいをご紹介
天井の高さを上げれば、おしゃれで快適な住まいを実現できます。ここからは、実際に建築された住まいのなかから、高い天井の設計に成功した実例を5つご紹介します。
開放感あふれる吹き抜けのような天井

こちらの家ではリビングの天井に勾配をつけることで、開放感のある空間を実現しています。もともと広いリビングの天井をさらに高くすることで、圧迫感のない、リラックスできるスペースになっています。天井を高くした部分には高窓を設置して採光をよくしたり、ロフトを設けて収納スペースを増やしたりするなど、さまざまな工夫が見られる住宅です。
また、リビング部分にスタディーコーナーを設置したり、隣室との境を可動間仕切りにしたりすることで、横幅を広げているのも高い開放感につながっています。
採光性を高めてくれる勾配天井

こちらは、リビングの採光を高める設計になっている家です。リビングの天井に勾配を設け、採光を効率的に取り入れられるよう工夫されています。また、リビングをあえてアルコーブにして、窓の数を増やしています。天井勾配とアルコーブを併用し、どの方角からも採光が取れるよう工夫されたリビングです。
また、勾配天井に本物の木材を利用しており、東南アジアのリゾートホテルのような高級感を出しているのもポイントです。
平屋でも二階建ての気分が味わえるロフト付きの高天井

こちらは平屋にもかかわらず、2階建てのような気分を味わえる家です。天井を高くして、キッチンの上部に大きなロフトを設けています。平屋は建築延べ面積が小さくなりがちで、収納スペースが足りないケースもあります。しかし、広いロフトを設置すれば、収納スペースの問題も解決が可能です。
また、リビングの窓は幅3.4mの大開口の木製サッシを採用しています。大きな窓を設置して採光をよくすることで、ロフトまで光が届くよう配慮されています。
梁をあえて見せて奥行を演出

こちらは天井を高くし、梁をあえて見せて奥行を演出している家です。梁が残っていると遠近感が強調されて、視覚的に奥行があると認識しやすくなります。また、梁の間に照明を設けると陰影が生まれ、立体感あるスペースと認識します。実際はフラットなスペースだとしても、立体感を覚えて奥行があるように錯覚するためです。人間の視覚の特徴をうまく活かし、リビングを広く見せている家といえるでしょう。
モダンな印象が演出できる板張りの天井

こちらは、モダンなホテルのような印象を演出している家です。勾配をつけた天井を板張りにし、さらに間接照明を設置することで、高級感のある雰囲気に仕上がっています。また、部屋全体を引き締まった印象に見せるため、ダークスレート柄のフローリングを採用しています。勾配天井だけでなく、フローリングにもこだわることで、室内全体の雰囲気を演出している設計といえるでしょう。
高い天井にする際の注意点
天井の高さの平均を上げる際は、以下のポイントに注意しましょう。
気密性や断熱性を上げる
天井を高く設計する際は、気密性や断熱性にこだわりましょう。天井が高くなると、室内の体積が増加して冷暖房効率が落ちます。しかし、断熱性や気密性が高い家であれば、外気温の影響を受けにくく冷暖房効率を高められます。
断熱性 |
・熱の移動を遮断する性質を指す
・断熱性能の高い断熱材や窓サッシを採用する
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気密性 |
・気体の出入りを防ぐ性質を指す
・気密性の高い窓サッシを採用する
・気密テープで空気漏れを防ぐ
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ハウスメーカーは断熱性や気密性の高さをアピールポイントにしており、担当者に性能の度合いを聞けば確認できます。断熱性や気密性が高いハウスメーカーに建築を依頼すれば、天井を高くしても冷暖房効率の低下を抑えられるでしょう。
部屋ごとに適した高さを考慮する
天井高について設計する際は、部屋ごとに適した高さを考慮しましょう。すべての部屋において、高い天井が適しているとはいえません。天井を高くすると空間が広くなると同時に、広すぎて落ち着かないスペースになるリスクを抱えています。寝室やトイレが落ち着かないスペースになると、かえってリラックスできないケースもあります。
また、子ども部屋やワークスペースなど、集中力の保持が必要な部屋も高い天井は合いません。視界が広がると集中力が散漫し、勉学や仕事に支障が出る可能性もあります。部屋の用途や、実際に使うときの気分などを想像しながら、天井を高くするかを検討して設計しましょう。
配置したい家具やインテリアに合わせる
天井を高くするか決める際は、配置する家具やインテリアについて考慮しましょう。例えば、和テイストなどの低い家具を配置する場合、視線が部屋の下部に集中して空間の広さを感じない可能性もあります。また、照明の数やサイズが小さいと、明かりがぼやけて間延びした印象を与えるかもしれません。天井の高さと家具、インテリアは互いに影響を与えるため、入居後の暮らしをイメージしながら設計しましょう。
メンテナンスがしやすい工夫をする
高い位置にエアコンや照明を設置する場合、メンテナンスしやすいよう工夫しましょう。高所での作業が必要になると危険なため、できるだけ簡単にメンテナンスできるように設計してください。例えば、設備を低い脚立で手が届く位置に配置したり、設備の下を一段高くしたりする方法があります。
また、あらかじめメンテナンスを専門業者に定期的に依頼すると決め、作業費用を資金計画に盛り込んでおくのも工夫のひとつです。メンテナンス時にケガをしないよう、さまざまな方法を検討しましょう。
まとめ
高い天井は開放感があり、採光を取り入れやすいため、快適でリラックスできる空間になります。住まいの快適性を高めるためにも、天井の高さにこだわって設計しましょう。
ただし、天井を高くすると冷暖房効率が落ちたり、メンテナンスしにくくなったりする点には注意しなければなりません。デメリットを抑えるためには、設計時の注意点をしっかりと実践することが大切です。設計前に注意点を把握しておくことで、メリットを最大限に活かした空間を実現できます。
注文住宅を建てる