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建て替えでは住宅ローン控除を利用できる!手続きの手順と注意点を解説

建て替えであっても住宅ローン控除を利用できます
すでに住宅ローン控除の利用経験がある方でも、建て替え時に利用できるのか、気になる方もいることでしょう。結論をいえば、建て替えであっても住宅ローン控除を利用できます。また、住宅ローン控除は回数制限がないため、利用経験があっても控除を受けられます。

建て替えるにあたって、控除を受けるための特別な条件があるわけではありません。ただし、解体費用など、旧住宅ローンの残債や新築費用以外のローン部分は控除対象外です。

本記事では、建て替えにおける住宅ローン控除の利用について総合的に解説します。住宅ローン控除の概要と手続きの方法を確認しながら、注意点を含めて理解しましょう。

建て替えでは住宅ローン控除を利用できる

住宅ローン控除は建て替えローンであっても受けられます
住宅ローン控除は建て替えローンであっても受けられます

建て替えは、既存の住宅を取り壊して新築住宅を建設することを指します。建て替えの際に利用する住宅ローンが建て替えローンであり、既存の住宅ローンの残債と新築住宅の建築費用などの借入金を一つのローンにまとめられます。

新築物件を取得していることから、建て替えであっても住宅ローン控除の要件を満たせば、住宅ローン控除を建て替えローンに適用できます。また、先述したように、住宅ローン控除を受ける回数に制限はありません。よって、過去に住宅ローン控除を受けていた場合も利用可能です。

ただし、住宅ローン控除の制度内容は適宜改正されています。現時点の要件では、建て替えにおいても住宅ローン控除の適用を受けられます。しかし、今後の改正によっては受けられなくなるかもしれません。

住宅ローン控除の概要

住宅ローン控除の概要をまとめました
住宅ローン控除の概要をまとめました

建て替えで控除を受けるために、住宅ローン控除の概要を確認しましょう。一度、控除を受けたことがある方でも、受けていた当時と制度の内容が異なる可能性が高いため、内容を再確認することが重要です。住宅ローン控除の簡単な概要を、以下の表にまとめました。

概要 内容
控除対象 住宅ローン(建て替えローン)
の年末残高から一定の割合を控除
控除率 0.7%
控除期間 新築住宅が最大13年、既存住宅は最大10年
床面積 登記簿上で50平方メートル以上
年間所得 2,000万円以下
返済期間 10年以上

上記を踏まえたうえで、住宅ローン控除について詳しく解説します。

年末残高に対して一定の割合の税金を控除できる

住宅ローン控除は、住宅ローンの年末残高に対して、一定の割合を所得税から控除する制度です。2025年時点で控除率は年末残高の0.7%であり、新築の認定住宅などの建て替えであれば13年間にわたり控除が適用されます。

例えば、住宅ローンの残債が1,000万円、建て替えにおける新築住宅の建設費用の借入金が2,500万円と仮定しましょう。合算した建て替えローンの3,500万円の残高に対して、0.7%の控除率で税金が控除されるため、24万5,000円の税額控除が受けられます。

税額控除であるため、所得税から直接差し引かれる仕組みであることから、住宅ローン控除は節税効果の高い制度です。よって、建て替えであっても控除を受けられるなら利用したい制度といえるでしょう。

控除対象となる住宅には条件がある

建て替えに限らず、住宅ローン控除の適用を受けるためには、対象となる住宅が一定の条件を満たしている必要があります。主な条件として、住宅の床面積が50平方メートル以上であることが挙げられます。

ただし、新築住宅で2025年末までに建築確認を受け、年間所得が1,000万円以下の場合に限り、床面積が40平方メートル以上でも適用可能です。また、住宅の床面積の50%以上が自己の居住用であることも要件となります。住宅ローン控除の適用を受けるなら、住宅が要件を満たすことを確認しましょう。

所得と住宅ローンの返済期間で制限がある

住宅ローン控除は、住宅以外の条件において制限があります。具体的には、借入者の所得やローンの返済期間です。住宅ローン控除を受けるためには、控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下でなければなりません。

そして、住宅ローンの返済期間が10年以上であることも条件です。特に住宅ローン控除を受ける場合は、建て替えローンの返済期間の設定が重要になります。新築住宅の控除期間が13年であることから、13年以上の返済期間を設けると節税の恩恵を受けられるでしょう。

住宅の性能によって控除限度額が異なる

住宅ローン控除の控除限度額は、住宅の性能や種類によって異なります。また、2025年の税制改正では、子育て世帯・若者夫婦世帯が優遇されています。建て替えにおける新築住宅の控除限度額を住宅の種別ごとにまとめました。

住宅の性能 子育て・
若者夫婦世帯
その他の世帯
長期優良住宅・
低炭素住宅
5,000万円 4,500万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
その他の住宅 対象外 対象外

新築住宅において、長期優良住宅・低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅の基準を満たさない住宅は、住宅ローン控除の対象外になります。また、子育て世帯・若者夫婦世帯の基準は以下のとおりです。

  • 年齢19歳未満の扶養親族を有する者
  • 年齢40歳未満であって配偶者を有する者
  • 年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者

この条件は、住宅に入居した年の12月31日時点の年齢で判定されます。

所得税から控除できない場合は翌年の住民税から控除される

住宅ローン控除は、原則として所得税から控除されますが、所得税額が控除額に満たない場合、翌年度の住民税からも控除されます。住民税からの控除額は、前年度の課税所得の5%までとなっており、9万7,500円が限度です。

所得税で控除をしきれなかった場合、住民税の控除を受けることで、住宅ローン控除の節税効果を最大限に活かしやすくなります。住民税から控除される場合は、特別な手続きは不要であり、自動的に適用されます。

建て替えで住宅ローン控除を受ける手続きの手順

建て替えで住宅ローン控除を受ける手続きの手順を紹介します
建て替えで住宅ローン控除を受ける手続きの手順を紹介します

建て替えで住宅ローン控除を受ける手続きの手順は、以下のとおりです。

  • STEP 1必要書類を準備する
  • STEP 2確定申告書を作成して提出する

なお、給与所得者は2回目以降、年末調整で手続き可能です。それぞれ詳しく解説します。

STEP 1. 必要書類を準備する

建て替えで住宅ローン控除を受けるなら、必要書類を準備することから始めましょう。具体的に必要な書類をまとめました。

  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
  • 登記事項証明書
  • 売買契約書の写し
  • 確定申告書
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 源泉徴収票
  • 住民票と本人確認書類

「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」は、融資を受けた金融機関から10月頃に送付されます。新築した建物の登記事項証明書(登記簿謄本)を、法務局で取得することを忘れないようにしましょう。次に、売買契約書の写し、または工事請負契約書を用意します。これは、工事内容や契約日、工事費用の詳細を証明するための書類です。

住宅ローン控除を申告するには、確定申告書と住宅借入金等特別控除額の計算明細書を最寄りの税務署、または国税庁の公式ホームページから入手しましょう。給与所得者の場合は源泉徴収票、マイナンバーが記載された住民票と本人確認書類を用意すれば準備が整います。

STEP 2. 確定申告書を作成して提出する

書類が揃ったら確定申告をします。建て替えをおこなう方は、初回の住宅ローン控除の申請時に確定申告をおこなった方も多いでしょう。近年では、e-Taxによる電子申告もできるため、スムーズに進められます。

画面の指示に従い、借入金残高証明書や登記事項証明書をアップロードすれば、控除額の自動計算が可能です。もちろん、所轄の税務署に作成した申告書と書類を持参して提出もできます。申告期間は原則として毎年2月16日から3月15日となっているため、遅れることがないようにしましょう。

給与所得者は2回目以降に年末調整で手続きできる

初年度の確定申告後、翌年以降の住宅ローン控除手続きは、給与所得者であれば勤務先の年末調整で完結します。住宅借入金等特別控除申告書に必要事項を記入して、年末調整書類と一緒に提出することで、申告が完了します。

以上の手順により、建て替えにおける住宅ローン控除の適用を受けられます。

建て替えで住宅ローン控除を受ける際の注意点

建て替えで住宅ローン控除を受ける際の注意点を解説します
建て替えで住宅ローン控除を受ける際の注意点を解説します

建て替えで住宅ローン控除を受ける際の注意点を3つ紹介します。

  • 住宅ローン控除の基本的な要件を満たすかを確認する
  • 建物の解体費用は住宅ローン控除の対象外になる
  • 親族からの借入金には住宅ローン控除を適用できない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

住宅ローン控除の基本的な要件を満たすかを確認する

建て替えで住宅ローン控除を受けるためには、住宅ローン控除の基本的な要件をすべて満たすことが前提です。具体的には、以下のとおりです。

  • 合計所得金額が1,000万円以下の場合:床面積が40平方メートル以上(1,000万円を超える場合は50平方メートル以上)
  • ローンの返済期間が10年以上

基本要件を満たしていない場合は、建て替えであることに関係なく、住宅ローン控除を受けられません。住宅ローン控除の適用を受ける場合は、基本的な要件をよく確認するようにしましょう。

建物の解体費用は住宅ローン控除の対象外になる

建て替えでローンを組むにあたって、既存建物の解体費用をローンに含めて借り入れるケースがあります。しかし、建物の解体費用は住宅ローン控除の対象外です。

住宅ローン控除の対象となる借入金として認められるものは、あくまで住宅の新築、取得、増改築に直接必要な費用のみ。解体費用だけでなく、仲介手数料、印紙代、登記費用などの諸費用を住宅ローンに組み込んで借り入れた場合も対象外です。

そのため、ローンに新築住宅の建設費用以外の借入金を含んでいる場合は、控除の対象外になる費用を差し引いた住宅ローン年末残高等証明書が必要です。

万が一、解体費用を含むローンの年末残高を申告すると、税務調査により追徴課税が発生することも。借入状況によっては、ローンの全額が控除の対象になるわけではないことを理解しておきましょう。

親族からの借入金には住宅ローン控除を適用できない

住宅の建て替えにおいて、建て替え資金を、金融機関ではなく親族から貸し付けを受けるケースもあります。しかし、親族からの借入金は住宅ローン控除の対象外です。住宅ローン控除は、金融機関など公的な融資機関からの借り入れでなければ適用されません。

建て替え費用で親族からの借り入れを受ける場合に、住宅ローン控除を受けられる可能性がある事例は、親族からの借り入れ、または贈与と金融機関のローンを組み合わせるケースになります。

まとめ

建て替えであっても、住宅ローンの基本的な要件を満たしていれば、通常の住宅と同様に住宅ローン控除を利用できます。必要書類を準備し、制度の条件をよく確認したうえで手続きを進めましょう。

住宅ローン控除は、回数に制限がなく、税金の負担を軽減できる節税制度です。建て替えを検討している方は、活用して節税につなげましょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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