建て替え時の固定資産税はどうなる?住宅用地の特例の要件から申請方法までを解説

本記事では、建て替え時の固定資産税がどうなるのかをわかりやすく解説します。また、建て替え時に利用できる特例や要件を紹介します。要件に当てはまるかを確認して、忘れず申請しましょう。
記事の目次
建て替え時の固定資産税はどうなる?

まずは、固定資産税がどのような税金かを押さえておきましょう。
固定資産税とは
固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地や建物などの固定資産を所有している方が、固定資産のある自治体に納めなければならない税金です。固定資産税の金額は、次の計算式で求められます。

- 固定資産税 = 固定資産税評価額 × 1.4 %
固定資産税評価額とは、固定資産課税台帳に記載された、固定資産税の課税の基準となる土地や建物の評価額のこと。土地は、実際に売買されている価格を基準として算定され、宅地の場合は地価公示価格の70%が目安です。建物は、対象となる建物を仮に新築する場合に必要となる建築費と、建物の築年数に応じて減る価値を用いて評価額を算定します。
建て替え中でも固定資産税は発生する
住宅が建て替え中でも、固定資産税は発生するのでしょうか?結論を言うと、建て替え中であっても、1月1日時点で土地や建物がある場合、固定資産税がかかります。ただし、建物を解体して更地になった場合、固定資産税が上がる可能性があります。これは「住宅用地の特例」が適用されなくなるためです。住宅用地の特例とは、所有している土地が住宅用地に該当する場合、固定資産税が減額される制度。具体的には、土地の広さに応じて次のように減額されます。
小規模住宅用地 ( 200平方メートル 以下 ) |
一般住宅用地 ( 200平方メートル を超える部分 ) |
|
---|---|---|
固定資産税の減額割合 | 1/6 | 1/3 |
例えば、土地の広さが150平方メートルで、土地の固定資産税評価額が1,200万円だった場合。固定資産税は次のように求められます。
1,200万円 × 1.4 % ×1/6=2万8,000円
もし、1月1日時点で建物がなかった場合、住宅用地とはみなされないため、特例を適用できず、固定資産税は16万8,000円となります。建物の有無で固定資産税が変動することは、大きな負担となるでしょう。そのため、建て替え中は特例が認められています。詳しくは次章で解説します。
固定資産税の建て替え特例とは

固定資産税の建て替え特例とは、家の建て替えで一定の要件を満たす場合に、固定資産税の住宅用地の特例を継続できる制度です。先述したように、固定資産税は1月1日時点の土地や建物の有無で判断されます。家を建て替える場合、1月1日時点で建物が解体され、更地になっていることも考えられるでしょう。通常であれば、更地は住宅用地の特例を受けられず、固定資産税が上がる可能性があります。これを1月1日時点で更地であっても、住宅用地の特例を引き続き受けられるようにした制度です。
建て替え特例の適用要件
固定資産税の建て替え特例を受けるためには、次の4つの要件を満たす必要があります。詳しく見ていきましょう。
前年1月1日において住宅用地である
固定資産税の建て替え特例の適用を受けるためには、前年の1月1日の時点で、建て替え前の土地が住宅用地でなければなりません。例えば、更地や駐車場だった場合は、特例を適用できません。住宅用地においての建て替えの際に利用できる特例であることを理解しておきましょう。
一定期間内に建て替えが完了する
建て替え特例を適用するためには、一定期間内に建て替えを完了させる必要があります。具体的には、1月1日時点で解体工事は完了したうえで基礎工事が始まっており、原則として翌年の1月1日までに建物が完成していなければなりません。
基礎工事は、建物の位置や高さを施工するための水盛り遣り方、地面を掘る根切りなどを指します。建て替え前の建物の解体工事や、整地工事を終えただけでは認められないため、注意しましょう。
なお、自治体によっては1月1日時点で建築確認申請を提出しており、3月末までに基礎工事に着工していれば要件として認められるところもあります。自治体によって期日が異なる場合があるため、事前に問い合わせておきましょう。
建て替えが同一敷地内でおこなわれる
建て替えが同一敷地内でおこなわれることも、建て替えの特例を受ける要件の一つです。同じ敷地内であれば、建物の位置を変更しても問題ありません。また、隣の土地を購入して敷地を広くする場合、建て替え前の敷地に該当する部分に限り特例を適用できる可能性があります。例えば、東京都小平市の場合、建て替え前の敷地が建て替え後の全体の敷地5割以上を占める場合に限られます。自治体によって適用要件が異なる可能性があるため、確認しておきましょう。
建て替え前後の土地と住宅の所有者が同一である
建て替え特例を適用するためには、前年度と本年度の1月1日時点において、土地と住宅の所有者が原則として同一でなければなりません。
ただし、住宅の場合、所有者が同一でなくても所有者の配偶者や直系血族であれば、特例を適用できます。直系血族とは、直接血のつながりがある親子や祖父母などのこと。例えば、親が所有していた家を解体し、子どもが新しく家を建てる場合でも要件を満たします。また、所有者は個人・法人を問われません。相続で引き継いだ土地に家を建てる場合でも、適用される可能性があるため、よく確認しておきましょう。
固定資産税の建て替え特例を受けられないケース

前章では、固定資産税の建て替え特例を受けるための要件を見てきました。それでは反対に、特例を受けられないケースはどのような場合でしょうか。建て替えのスケジュールを調整することで、特例を受けられる可能性もあるため、事前に把握しておきましょう。
1月1日までに建築確認申請がされていない場合
1月1日までに建築確認申請がされていない場合、固定資産税の建て替え特例を適用できません。特例を適用するためには、1月1日時点において、建て替える家の新築工事が着工している必要があります。つまり、工事が始まっていることが前提となるため、それまでには建築確認申請を終えていなければなりません。
固定資産税の建て替え特例を受けたい場合には、早めに建築確認申請書を提出し、1月1日時点で着工されている状態にしましょう。なお、東京都の場合は、3月末日までに着工されていれば特例が適用されます。自治体によっても違うため、事前に確認しておきましょう。
出典:東京都「住宅を建て替える土地の特例措置のご案内」(PDF)
前年度の1月1日と住宅の所有者が異なる
前年度の1月1日時点と住宅の所有者が異なる場合、建て替え特例を適用できません。例えば、中古住宅を購入して建て替える場合には、適用できません。しかし、前章でも解説したように、前年度の所有者が、所有者の配偶者や直系血族であれば適用できます。まったくの他人から中古住宅を購入し、建て替える場合は、建て替え特例を適用できないことを理解しておきましょう。
固定資産税の建て替え特例を受けるための方法

ここまで説明してきたとおり、家を建て替える際に建て替え特例を受ければ、固定資産税の増額を抑えられる可能性があります。それでは、特例を受けるためには何をすればよいのでしょうか。本章では、手続きの方法と必要書類を解説します。なお、あくまで一般的なものをご紹介するため、自治体によって異なることがあります。詳細は、建て替える土地が所在する自治体に問い合わせましょう。
申請方法
必要書類を用意し、建て替えをおこなう土地が所在する市税事務所へ提出しましょう。東京都の場合は、住宅を取り壊した翌年の1月31日が「固定資産税の住宅用地等申告書」の提出期限です。また、京都府長岡京市の場合、住宅を取り壊した翌年の3月31日が「家屋建替え住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の課税標準の特例申告書」の提出期限となっています。このように、自治体によって提出期限が異なるため、事前に確認しておきましょう。
必要書類
固定資産税の建て替え特例を受けるためには、各自治体が用意している申告書が必要です。また、前年度の所有者と異なる場合、戸籍謄本の写しや建築確認申請書のコピーなども提出しなければなりません。なお、自治体によっては職員による戸籍の確認に同意することで、これらの書類が不要となります。必要となる書類は自治体によって多種多様なため、必ず確認して漏れなく揃えましょう。
建て替え時の固定資産税に関するよくある質問
建て替え時の固定資産税に関するよくある質問をまとめました。
固定資産税は建て替えとリフォームではどちらが安い?
固定資産税の観点から見ると、一般的に建て替えよりもリフォームのほうが安くなります。それは、建て替え後の住宅は新築として扱われ、固定資産税評価額が高くなるためです。一方、リフォームは建物の構造や床面積に大幅な変更がない限り、固定資産税評価額は大きな影響を受けません。しかし、リフォームで増築したり、大規模な改修をおこなった場合は、固定資産税評価額が上がる可能性があります。
家を解体したあとに新築住宅を建てると固定資産税はどうなる?
建物のない土地は更地とみなされ、住宅用地の特例が適用されず、固定資産税が上がる可能性があります。ただし、一定要件を満たしている場合、申請をすれば継続して住宅用地の特例を適用できます。一方、新築住宅は固定資産税評価額が上がる可能性がありますが、新築住宅は軽減措置が適用されるため、一定期間税額が軽減されるでしょう。
二世帯住宅の建て替え時には建て替え特例を利用できる?
二世帯住宅に建て替えた場合でも、建て替え特例を利用できます。ただし、二世帯住宅のタイプによって、計算方法が異なる点に注意しましょう。例えば、玄関やキッチンなど、すべての設備が2つずつある完全独立型の場合、それぞれ独立しているため2戸とみなされます。そのため、各戸に対して住宅用地の特例が適用され、400平方メートルまでが6分の1減額されます。
一方、玄関が1つで特定のスペースが2つあるといった部分共有型や完全同居型の場合、建物は1つのため、従来どおり200平方メートルまでが6分の1に減額されます。二世帯住宅のタイプによって、固定資産税額が変わる可能性があることを理解しておきましょう。
まとめ
今回は、建て替え時の固定資産税について解説しました。1月1日時点で建物がない場合、更地とみなされるため、通常であれば住宅用地の特例を適用できません。しかし、一定の要件を満たしている場合、固定資産税の建て替え特例を申請することで、住宅用地の特例の適用を継続できます。自治体によって、申請期日や必要書類が異なるため、必ず事前に問い合わせましょう。
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執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ