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注文住宅の不動産取得税を徹底解説!仕組みや軽減措置を理解して節税を目指そう

注文住宅を購入した際の不動産取得税について解説します
注文住宅を建てる際、一番気になるのは総額費用のことではないでしょうか。建物や土地の購入費用だけでなく、税金も見落としてはならない重要なポイントです。特に意外と知られていないのが「不動産取得税」という不動産を取得した際に一度だけ課される税金です。

この税金は、注文住宅を建てる方にとって避けて通れないもので、しっかりと理解しておかなければ、あとから思わぬ出費に驚いてしまうことも。しかし、不動産取得税には軽減措置が適用される場合が多く、大幅な節税が期待できます。

この記事では、不動産取得税の基本的な仕組みや計算方法、軽減措置の詳細、そして注意すべきポイントをわかりやすく解説します。注文住宅を検討中の方は、後悔しないためにもぜひ最後までご覧ください。

不動産取得税とは

不動産取得税について解説します
不動産取得税について解説します

不動産取得税は、土地の購入や家の新築など、不動産を取得した際に課税される税金です。具体的には、以下のような場合に課税されます。

  • 家を建てるための土地を購入した時
  • 注文住宅を新築した時
  • 新築の建売住宅や中古住宅を購入した時
  • 増築や改築をおこなった時

また、贈与や交換で不動産を取得した場合にも、基本的に不動産取得税が課税されます。とはいえ、相続で不動産を取得した場合には、この税金は非課税となるので、安心してください。

不動産取得税は取得時に一度課税されるもので、毎年課税される「固定資産税」や「都市計画税」とは異なり、通常は一回限りの支払いです。また、不明点があれば、都道府県税事務所に問い合わせることもできます。

不動産取得税の申告と納税時期

不動産取得税の申告は、取得した日から10〜60日以内におこなわなければなりません。期限は都道府県ごとに異なり、例えば東京都では30日以内、神奈川県では10日以内、千葉県では60日以内が目安となります。申告を怠ると、税金の軽減措置を受けられなくなる可能性があるため、注意が必要です。

「不動産を取得した日」とは、土地や建物を購入した時の、売買決済がおこなわれた日、すなわち所有権移転登記の日を指します。また、注文住宅を新築した場合は、保存登記をした日が基準となるため、注意しましょう。

なお、不動産の登記がおこなわれると、都道府県税事務所にはその情報が伝わり、申告をしなくても不動産取得税は課税される仕組みになっています。

不動産取得税の納付書が届く時期と注意点

不動産取得税を申告すると、数カ月後に納付書が届きます。納付書には、納税期限が記載されており、通常は納付書が届いてから1~2カ月程度の期限が設けられています。そのため、納税準備は計画的におこないましょう。

実際に納税をおこなうタイミングは、家が完成してから1年近く経過している場合もあるため、必要な金額を前もって準備しておくと、慌てずに済むでしょう。納付の際には、税額や納税期限をしっかり確認し、期限内に納付を済ませることが重要です。

不動産取得税は一度きりの税金ですが、納税を忘れるとのちの支払いが大きな負担になるため、事前に準備をしておきましょう。

不動産取得税の計算方法

不動産取得税は、以下の式で計算されます。

課税標準額 × 税率

ここで使われる課税標準額は、実際の売買価格ではなく、固定資産税評価額が基準となります。この評価額は、土地の場合は時価の約7割、新築物件の場合は約5~6割程度が目安とされています。

評価額は市町村から送付される固定資産税納税通知書や課税台帳で確認可能ですが、新築の場合は事前に確認できないこともあるため、注意しましょう。不動産取得税の基本的な税率は原則4%ですが、2027年3月31日までは特例措置により、以下の軽減税率が適用されます。

  • 住宅および土地などの取得:税率3%
  • 宅地評価土地の取得:課税標準額の1/2控除

例えば、2,000万円で購入した住宅が評価額の6割にあたる場合、不動産取得税は以下のとおりです。
2,000万円 × 0.6 ×3% = 36万円

土地分も加えると、さらに大きな金額になるため、軽減措置や控除制度を賢く活用し、負担を軽減しましょう。

注文住宅取得時の軽減措置

注文住宅取得時の軽減措置を紹介します

注文住宅を建てた時は、建物部分と土地部分で軽減措置が異なります。それぞれどのような軽減措置が適用できるのかを確認しておきましょう。

建物部分の軽減措置

注文住宅を新築した場合、課税標準額から一戸につき1,200万円が控除されます。この措置により、不動産取得税の計算式は以下のように変更されます。
(建物の固定資産税評価額 - 1,200万円)×4%

※2027年3月31日までは3%

例えば、評価額が2,000万円で、課税標準額の6割が1,200万円以下であれば、税額は0円になります。この制度を活用すれば、最大36万円(1,200万円 ×3%)が軽減される可能性があります。

適用要件

  1. 建物の延床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下であること
  2. 居住用またはセカンドハウスとして使用される住宅であること

長期優良住宅の場合

さらに、「長期優良住宅」に認定されると控除額は1,300万円に引き上げられます。ただし、この認定を受けるには、以下の基準を満たす必要があります。

  • 長期使用可能な構造および設備を有していること
  • 良好な居住環境への配慮がなされていること
  • 一定の住戸面積が確保されていること
  • 維持保全の期間や方法が計画的に定められていること
  • 自然災害への配慮がおこなわれていること

また、認定には費用や手間がかかり、着工前の申請が必要です。さらに、建物の維持や保全のための計画的な点検や修繕が義務づけられています。

土地部分の軽減措置

注文住宅を新築した場合、土地も特定の条件を満たせば軽減措置が適用されます。計算式は以下のとおりです。
(土地の固定資産税評価額 ×1/2×3%)- 控除額

控除額は次のいずれか大きいほうを採用します。

  • 45,000円
  • 土地1平方メートルあたりの評価額 ×1/2× 住宅の床面積の2倍(一戸あたり200平方メートル限度)×3%

適用要件

  1. 土地取得後3年以内に住宅が新築されている場合
  2. 住宅取得後1年以内に土地を購入している場合

軽減措置の詳細に関しては、各都道府県の公式ホームページを確認しましょう。

【所有する土地に新築する場合】不動産取得税の手続き方法と支払いの流れ

所有する土地に注文住宅を建てた場合の不動産取得税の手続きと支払い方法を解説します
所有する土地に注文住宅を建てた場合の不動産取得税の手続きと支払い方法を解説します

自分が所有する土地に注文住宅を新築した場合、不動産取得税は建物のみに発生します。このケースでは、土地はすでに所有しているため、不動産取得税の対象外です。

不動産取得税の課税対象は「取得」に該当するものだけであり、土地の所有が以前から継続している場合は課税されません。建て替えの場合も同様に、新築した建物部分にのみ課税されます。

建物に関する申告方法

建物を新築後、「不動産取得税申告書」もしくは「不動産の取得申告書」を、管轄する都道府県税事務所に提出する必要があります。申告書のフォーマットは都道府県ごとに異なり、多くの場合は窓口または各自治体のホームページで入手可能です。

提出期限は通常、不動産の「取得日」から10〜60日程度。取得日とは建物の登記日を指します。竣工日や入居日ではないため、注意しましょう。軽減措置を希望する場合は、その内容を申告書に記載します。申告書の提出後、都道府県税事務所から納付書が送付されるため、それに基づいて納税をおこないます。

軽減措置を受けることで納税額がゼロになる場合、納付書は発行されません。新築の場合、納付書の到着まで建物登記後6カ月から1年以上かかるケースもあります。

納付書を受け取ったら、期日までに金融機関やコンビニエンスストアなどで支払いを済ませましょう。自治体によっては、オンライン決済も可能です。延滞が発生すると、追加で延滞金が課される可能性があるため、遅れないように注意しましょう。

不動産取得税を申告しない場合はどうなるのか

申告を忘れても、不動産取得税の課税対象となる建物であれば納付書が送られてきます。建物の登記情報は都道府県税事務所に共有されるため、未申告の状態でも把握される仕組みです。そのため、納付書が届いた場合は、指示された期日までに納税をおこなえば延滞税はかかりません。ただし、軽減措置の適用を希望する場合、申告をおこなわなければ、適用されないリスクがあります。

一方で、自治体側で新築住宅の軽減要件を確認できる場合、自動的に適用されるケースもあります。特に長期優良住宅として1,300万円の控除を受けたい場合は、必要書類の提出が必要です。納付書に申告方法や必要書類の案内が同封されていることが多いため、わからないことは管轄の都道府県税事務所に相談するとよいでしょう。

家づくりに関しては事前・事後の手続きが複雑です。しかし、信頼できるハウスメーカーや工務店であれば、必要な手続きやすべきことを丁寧に案内してもらえるでしょう。

【土地を購入して新築する場合】不動産取得税の手続き方法と支払いの流れ

新たに土地を購入して注文住宅を建てた際の不動産取得税を紹介します
新たに土地を購入して注文住宅を建てた際の不動産取得税を紹介します

土地を購入し注文住宅を建てる場合、不動産取得税に関する手続きが必要になります。この手続きは土地購入時と建物完成時の2段階でおこなわれ、適切に進めることでトラブルを防ぐことが可能です。まず、土地を取得した際には、取得日から10~60日以内に該当する都道府県税事務所に不動産取得税の申告をおこないます。この申告期限の基準となるのは、土地の所有権移転登記が完了した日、すなわち決済日のこと。

また、土地購入時に住宅用の軽減措置を受ける場合は、申告書に新築予定の住宅に関する情報を記載し、建築確認済証や工事契約書などの必要書類を添付して提出します。そして建物が完成した際には、さらに登記事項証明書などの書類を追加提出する必要があります。なお、提出する書類は自治体ごとに異なるため、事前の確認が重要です。

その後、都道府県税事務所から送付される不動産取得税の納付書に基づき、納税をおこないましょう。ただし、土地にかかる不動産取得税は、支払いを猶予できる方法や、還付を受けられる方法もあります。

納付が難しい場合

土地の不動産取得税を即時に納付することが難しい場合、「猶予申請」をおこなうことで、税金の支払いを一部または全額先延ばしにすることが可能です。この猶予申請は、住宅の完成後に土地の不動産取得税が軽減されるケースを考慮し、軽減分を反映した税額の支払いを待ってもらう制度です。

猶予申請をおこなうためには、建築確認済証や確認申請書の写しを提出し、「土地に3年以内に新築住宅が建設されることが確実である」という条件を満たす必要があります。申請は納付期限内におこなう必要があるため、余裕を持って対応しましょう。

還付申請をおこなう場合

もう一つの方法として、「還付申請」があります。この方法では、土地の不動産取得税をいったん納付したあと、新築住宅の軽減措置を適用し、支払った税金の一部を返金してもらうための手続きをおこないます。最初に送られてくる不動産取得税の通知書は軽減措置を考慮していない金額であるため、当初の納税額が高額になる場合も。そのため、還付申請を利用する際には、一時的に納税資金を準備する必要があります。

還付申請をおこなう際には、土地の不動産取得税を納付したあと、建物が完成したタイミングで「不動産取得税減額申請書」や「登記事項証明書」を提出します。必要な書類を提出すると軽減措置が適用され、余分に支払った税金が返金される仕組みです。ただし、還付申請には期限が設定されており、通常は5年以内に申請を完了させる必要があるため、忘れないようにしましょう。

不動産取得税の申告をしないとどうなるのか

もし、不動産取得税の申告をおこなわなかった場合でも、不動産の登記情報を通して、税務署には取得した土地の情報が伝わります。そのため、申告をしなくても、税務署から納付書が届くことになります。しかし、この場合は軽減措置が適用されないことが多く、通常よりも高額な税額が課税される可能性も。

ただし、もし納付書が届いたあとで申告をしなかったことに気付いた場合でも、納付期限内であれば減額措置や納税猶予の手続きをおこなえるケースもあります。納付書が届いた際に、手続きが必要か迷った場合は、都道府県税事務所に問い合わせてみるとよいでしょう。事前に確認しておくことで、無駄な税金の支払いを防げます。

不動産取得税をうまく活用するためのポイント

不動産取得税をうまく活用する方法を紹介します
不動産取得税をうまく活用する方法を紹介します

注文住宅を建てる際には、税金や諸費用を適切に管理することが大切です。特に土地を購入して新築する場合、土地を購入してから3年以内に建物を完成させなければ、不動産取得税の軽減措置を受けられなくなるため注意が必要です。

この“3年以内に新築”の条件は、建物の完成後に登記をおこなうことが求められるため、家を建てるスケジュールをしっかりと調整し、余裕を持って計画を立てましょう。また、不動産取得税は新居への引越し後に納付することになるため、事前に税額を予測し、手元に資金を準備しておくと安心です。

まとめ

今回は注文住宅を建てた際の不動産取得税を詳しく解説しました。不動産取得税は一度きりの納税ですが、期限に遅れると延滞金が発生する可能性があります。納付通知書が届くまでに時間がかかる税金のため、忘れないようにメモしておくとよいでしょう。

土地を購入してから注文住宅を建てる場合には、税金や諸費用に関して事前に計画を立てて、納税の猶予や還付申請の方法を把握しておくことが重要です。適切なタイミングで申告をおこない、軽減措置を活用することで、税金の負担を軽減できます。特に「3年以内に建物を完成させる」ことが税金に大きな影響を与えるため、計画的に進めることが税負担軽減のための鍵となるでしょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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