注文住宅の坪単価とは？全国平均や比較するポイント、抑える工夫も解説

注文住宅の坪単価とは

注文住宅では、建物の価格を「坪単価◯◯万円」と表記することがあります。ここでは、坪単価とは何なのか、工法や建築会社によって金額がどれほど異なるのかを解説します。

坪単価とは一坪あたりの建築費

注文住宅で用いられる坪単価とは、床面積１坪(約3.3平方メートル)あたりの建築費を指します。坪単価は、建物の本体価格を延床面積(各階の床面積の合計)で割ることで算出できます。

例えば、延床面積が30坪で本体価格が2,700万円の場合は、以下の計算で算出します。
2,700万円÷30坪＝90万円

このケースの坪単価は90万円と算出されました。

工法による坪単価の違い

坪単価に違いが出る要素の１つとして、工法が挙げられます。主な工法による坪単価の差を紹介します。

木造

木造の建物の坪単価は約67.49万円です。日本では、ほとんどの一戸建てが木造を採用しているため、建材や施工費は比較的安価です。その結果、木造の建物は鉄骨造やRC造に比べて安く建てられます。

鉄骨造

鉄骨造の建物の坪単価は約92.93万円です。鉄骨造は、木造に比べ耐用年数が長く耐震性能に優れている反面、建築コストは高めです。

RC造

RC造(鉄筋コンクリート造)の坪単価は約103.91万円です。RC造は木造や鉄骨造と比較すると、もっとも耐久性があり、地震や火事に強い特徴があります。しかし、その分建築コストがもっとも高い工法です。

建築会社による坪単価の違い

注文住宅を建てる建築会社には大きく「ハウスメーカー」と「工務店」の２種類があり、それぞれ坪単価に違いがあります。

ハウスメーカー

一般的に、ハウスメーカーはローコスト住宅の建築が得意なハウスメーカーと、高性能住宅を建てるハウスメーカーに分かれます。ローコスト住宅の建築が得意なハウスメーカーは、坪単価30万～50万円、高性能住宅を建てるハウスメーカーは坪単価70万円以上が相場です。なかには坪単価が100万円を超えるハウスメーカーもあります。

ローコスト住宅は、設備や建材を一括で仕入れている、間取りや外観がシンプルとの理由から坪単価を抑えて建築ができます。一方、高性能住宅を建てるハウスメーカーは設備のグレードが高く、高断熱・高気密の住宅が建てられる、などの理由から坪単価が高い傾向にあります。

工務店

工務店の坪単価は50万円以上が相場です。工務店は地元密着型の小規模な建築会社を指すことが多く、エリアを限定して営業・建築をおこなうので、経費が抑えられています。

そのため、同じ性能の住宅をハウスメーカーより安価で建築できるケースがあります。ただし、工務店によってサービスや技術に差があるため、適切な会社を選ぶことが重要です。

出典：国土交通省│報道発表資料：建築着工統計調査報告（令和5年計分）

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坪単価の全国平均

注文住宅の坪単価は、都道府県によって若干の差が出てきます。建築主が個人の木造住宅の坪単価を都道府県別に紹介します。

国土交通省│報道発表資料：建築着工統計調査報告（令和5年計分）を元に執筆者が作成

全国平均が約78.15万円なのに対し、東京都が約98.84万円、神奈川県が約87.88万円と、人口が多いエリアでは平均値を上回る坪単価になっています。一方、富山県が約63.43万円、佐賀県が約67.17万円と、全国平均より坪単価が10万円以上安いエリアもあります。

坪単価ごとの注文住宅のイメージ・特徴

ここからは、注文住宅が坪単価ごとに、どのように変わっていくのかを解説します。５つの価格帯で、注文住宅のイメージ・特徴を見てきましょう。

30万～40万円台

坪単価30万～40万円台の注文住宅は、いわゆるローコスト住宅と呼ばれており、さまざまなコストカットにより低価格を実現します。設備・建材の大量発注や規格住宅の採用、同じようなプランの住宅をいくつも建てることでの人件費削減など、注文住宅を建てるためのコストを大幅に削減しています。

この価格帯の注文住宅は、あらかじめ用意された標準設備や、ある程度決められたプランを採用するケースが多いため、シンプルなデザインや構造が特徴です。なるべく費用を抑えたい方に向いています。

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50万～60万円台

坪単価50万～60万円台では、機能性や断熱性など部分的なグレードアップが可能です。具体的には、水回り(キッチン、トイレ、浴室)のグレードを上げて機能性をアップさせたり、外壁に上質な素材を採用して断熱性を上げたりすることが考えられます。こだわりはそこまで多くないものの、一定の機能性や快適さを求める方に向いています。

70万～80万円台

70万～80万円台の坪単価で建てられる注文住宅では、高級感のある水回りや内装、外壁などを選べるようになります。また、比較的自由に間取りを決められるでしょう。すべてのグレードアップは難しいものの、優先したい部分を選びやすいのがこの価格帯の特徴です。

90万～100万円台

坪単価90万円～100万円台では、間取りや設備、素材などにこだわった注文住宅が建てられます。具体的には以下の特徴が挙げられます。

さらに、建築会社によっては、軽量鉄骨造の家が建てられる可能性もあります。品質や間取りで高い満足度を得たい方におすすめの価格帯です。

100万円以上

坪単価100万円以上をかければ、外部のデザイナーによるゼロからの設計や、耐久性に優れた重量鉄骨造の住宅などが建てられます。

さらに、全館床暖房やシアタールームの設置、30年以上の保証や長期点検サービスなど、長く快適に暮らせる住宅を建築することが可能です。理想とする高級住宅を建てたいのであれば、坪単価100万円以上の注文住宅を検討しましょう。

注文住宅の坪単価を比較するポイント

注文住宅の坪単価を適切に比較するためには、ここで紹介するポイントを押さえておきましょう。

延床面積と施工面積の違い

坪単価を算出する際、延床面積が用いられることが多いですが、建築会社によっては施工面積を基準にするケースがあります。延床面積と施工面積の違いは以下のとおりです。

延床面積は、ベランダや吹き抜け、玄関ポーチなどは含まれません。一方、施工面積は、延床面積の対象とならない箇所を含むケースが多いため、延床面積よりも広くなる傾向にあります。

坪単価を算出する場合、本体価格を割る面積が広いほど坪単価が安くなるため、坪単価がどのように算出されるのかを事前に確認しておきましょう。

会社ごとの坪単価の定義や項目

坪単価はさまざまな建築会社で使われる言葉ですが、定義や項目は建築会社によって異なります。一例として、次の２社は単純に坪単価だけでは優劣を判断できません。

坪単価だけを見るとB社のほうが安く見えますが、A社よりも広い面積を基準にしています。一方、設備はA社のほうが高いグレードを採用しています。このように、坪単価はB社のほうが低く設定されていますが、トータルコストで見るとA社の家が高くつくとは限りません。

そのため、見積もりの際に建築会社ごとの坪単価の定義や項目をしっかりと確認したうえで、比較検討しましょう。

本体工事費に含まれる内容

坪単価を比較するためには、本体価格にどのような内容が含まれるのかを確認しなければいけません。坪単価に含まれる費用は建築会社によってさまざまなため、坪単価だけを基準にしていると、予算オーバーになるおそれがあります。

例えば、網戸や手すり、インターホンなどは標準仕様として本体価格に含まれているケースが一般的です。しかし、床暖房や食器洗い乾燥機、太陽光パネルなどはオプションになることが多いため、坪単価に含まれていないことがあります。

注文住宅の坪単価を抑えるための工夫

ここでは、注文住宅の坪単価を抑えるための工夫を紹介します。

建物の形状・間取りを見直す

坪単価を抑えるための一つ目の工夫は、建物の形状や間取りを見直すことです。建物の形状は、凹凸をなくしてシンプルにすると、構造材や施工費を抑えられるため建築費が削減できます。

また、部屋数を少なくする、窓を減らすなどの間取りの工夫をおこなうこともコストダウンにつながります。ライフスタイルに支障が出ない程度に建物の形状や間取りを見直し、坪単価を抑えましょう。

トータルの建築費で資金計画を組む

注文住宅は、坪単価だけでなくトータルの建築費で資金計画を組みましょう。坪単価は建築会社によって基準がさまざまなため、家を取得する他の費用を含めてコストを考える必要があります。

その他のコストには外構工事や地盤改良費、ローン手数料や税金などが挙げられます。建築費だけでなく、トータルの費用を意識した資金計画を立てることが重要です。

設備はグレードを下げるか自分で手配する

坪単価を下げる三つ目の工夫として、設備のグレードを下げたり、設備を自分で手配したりする方法が考えられます。浴室やキッチンは100万円を超えることもある高額な設備です。

そのため、自分にとって不要だと思うオプションを削る、型落ち品を使用するなどでグレードを下げれば、コストをカットできます。

また、インターネット通販サイトや家電量販店で安く設備を購入し、建築会社に設置だけを依頼すれば、坪単価をさらに削減できます。ただし、設備を自分で手配することを受け付けていない建築会社もあるため事前に確認しておきましょう。

坪単価だけで決めてはいけない！あくまで目安

注文住宅を検討するうえで坪単価を比較することは重要ですが、坪単価は建築会社によって基準が異なるため、あくまで目安となります。

坪単価が高くても、その後のメンテナンスやランニングコストが安ければ、将来的なトータルコストを抑えられます。一方、坪単価が安い建築会社でも標準仕様がよくなければ、最終的にオプション費用がかさみ予算オーバーになるおそれもあるでしょう。

注文住宅を検討する際は、坪単価だけでなく付帯費用やアフターフォロー、設備のグレードなど建築費の全体像を把握することが重要です。

注文住宅の坪単価に関するまとめ

注文住宅の坪単価に関するポイントをまとめてみましょう。

坪単価とは

注文住宅で使用される坪単価とは、床面積１坪(約3.3平方メートル)あたりの建築費です。坪単価は、建物の本体価格を延床面積(各階の床面積の合計)で割る方法により算出されます。

坪単価を比較する際のポイントは？

坪単価を比較するうえで重要なポイントは以下のとおりです。

• 延床面積と施工面積の違いを理解する
• 坪単価の定義や項目は会社によって異なる
• 本体工事費に含まれる内容を確認する

坪単価を抑えるための工夫は？

坪単価を抑えるためには、次の工夫をおこなってみましょう。

• 建物の形状や間取りを見直してシンプルにする
• 資金計画は坪単価だけでなくトータルで考える
• 設備のグレードダウンや自分で手配する方法を検討する

注文住宅を検討するなかで、坪単価は重要な指標です。坪単価により、建てたい注文住宅のグレードや広さが決まるといっても過言ではないでしょう。

しかし、坪単価はあくまで建築会社が定めた価格のため、それだけで比較してはいけません。建築会社を比較するためのひとつの目安として、坪単価を活用することが重要です。