実家の建て替え費用はいくら?お金がない場合の対処方法も解説

この記事では、実家の建て替え費用がいくらであるのか、データに基づいた目安、かかる費用の種類を解説します。また、資金がない場合の対処方法と建て替え以外の選択肢も紹介。実家の建て替えが適切なのかも含めて判断する際の参考にしてください。
記事の目次
実家の建て替え費用はいくら?

実家の建て替え費用がいくらであるか、目安を示すにあたって、建て替え費用の平均価格、解体・建築以外にかかる費用の種類を紹介します。
建て替え費用の平均価格は増加している
住宅の建て替え費用は、国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」で各年度の平均値が公開されています。建て替え費用と自己資金の金額を下表にまとめました。
年 | 建て替え費用 | 建て替え費用 |
---|---|---|
2019年 | 3,555万円 | 1,725万円 |
2020年 | 3,055万円 | 1,715万円 |
2021年 | 3,299万円 | 1,828万円 |
2022年 | 4,487万円 | 2,093万円 |
2023年 | 5,745万円 | 2,440万円 |
建て替え費用の平均を見ると、2019年時点では3,555万円でした。しかし、2023年には5,745万円まで上昇し、わずか数年で2,190万円の上昇幅を記録しています。一方で、自己資金は2019年が1,725万円、2023年が2,440万円であり、上昇幅は715万円と、建て替え費用と比較すると、大きく上昇していません。
また、自己資金比率の平均も、2019年は48.5%に対して2023年は42.5%と、6%減少。自己資金で建て替えるのではなく、住宅ローンによる借り入れが前提となっていると考えられます。
平均値から考えると、建て替え費用の目安は5,745万円、用意したい自己資金の目安は2,440万円です。年々、建て替え費用が上昇していることから、将来的に実家の建て替えに必要になる金額も増加する可能性があります。
建て替えには解体・建築以外にもさまざまな費用がかかる
実家の建て替えにかかる費用は、以前の住宅を解体する解体費用と、新しい住宅を新築する建設費用だけではありません。状況に応じて、さまざまな費用がかかります。解体・建築以外にかかる主な費用は以下のとおりです。
- 地盤調査費用
- 地盤改良工事費用
- 諸費用
- 引越し費用
住宅の解体後、新築住宅を安全に建設するために、地盤調査をする必要があります。地盤調査で問題が見つかると、地盤改良工事が必要となるため、建て替えにかかる出費が増加するでしょう。
住宅を新しく建設する際に、住宅ローンを組む場合はローン保証料をはじめ、税金や保険料などの諸費用がかかります。さらに、解体から新築まで仮住まい先を用意する必要があるため、引越し費用も必要です。
これら以外にも費用がかかることが想定されるため、実家の建て替えをおこなうなら余裕をもって資金を確保しておきたいところです。しかし、建て替え費用の平均値である5,745万円を基準に、余裕をもって自己資金を用意することは難しいでしょう。よって、多くのケースで資金が不足した場合の対処方法を考える必要があります。
実家を建て替えるお金がない場合の対処方法

実家を建て替える資金がない場合の対処方法を以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
親族から資金援助を受ける
実家の建て替えにかかる費用が不足している場合、両親などの親族に頼れるようであれば資金援助を受けるのも一つの方法です。建て替え後の家に親族が同居するのであれば、贈与形式で援助を受けやすくなります。
両親・祖父母などの直系親族から資金援助を受ける場合は、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」を利用できます。また、省エネ等住宅の場合には1,000万円、それ以外の住宅では500万円の贈与にかかる贈与税が非課税になります。
実家を建て替える資金が不足している場合は、金銭面で頼れる両親・祖父母などの親族にも相談してみましょう。
親子リレーローンを含めた住宅ローンを借り入れる
建て替えの費用を補うには、住宅ローンを利用することが一般的です。年収・勤続年数などの条件に応じた借り入れをおこない、長期間にわたって返済する前提で多くの資金を用意できます。実家の建て替えでは、親子間の連携を前提とした「親子リレーローン」の利用も検討しましょう。
親子リレーローンは、親世代が借りたローンを子世代に引き継ぐリレー形式のローン。子世代のために実家を建て替える場合に適した住宅ローンといえます。親が単独で組むよりも返済期間を長期に設定しやすく、親子の収入を合算することで借入可能額を増やせます。
また、前の住宅ローンの残債が残っている場合は、建て替えローンを利用して建て替えの借入額と合わせた返済が可能。現金だけでは建て替え費用を賄えない場合は、住宅ローンの利用を検討しましょう。
補助金・助成金を活用する
建て替えの資金を用意するなら、国や地方自治体が提供する補助金・助成金制度の活用が非常に有効です。自治体によって提供している補助金は異なるため、建て替えで申請できる支援制度を探しましょう。
建て替えに利用できる補助金・助成金は、各地方自治体の公式ホームページから確認できます。建て替えを施工会社に相談する場合は、利用できる可能性がある補助金の内容を聞いておくといいでしょう。住宅の建て替えに関連する支援制度を活用することで、少しでも建て替えの資金を用意できるようになります。
ローコスト住宅を選択する
実家を建て替えるにあたって、住宅の建設費用を抑えるなら、ローコスト住宅も検討しましょう。ローコスト住宅は低価格で建築できる家のことであり、場合によっては1,000万円台で家を建てることも可能です。必要最低限の設備とシンプルなデザインを採用しているため、建築費用を大幅に削減できます。
ただし、一般的な最新の住宅と比較して、希望する設備を導入できなかったり、住宅性能が低くなる場合や設計の自由度が下がることも。シンプルな住宅を希望するケースなど住環境によっては、ローコスト住宅でも満足のいく建て替えができるでしょう。
災害などで被害受けた場合は保険金を受け取る
自然災害や火災といった突発的な事故により、実家が損害を受けたケースでは、加入している火災保険・地震保険から保険金を受け取れる場合があります。
被害状況を正確に記録し、写真を撮ったり、報告書を作成したうえで、速やかに保険会社に連絡して、保険金を請求しましょう。被害の程度に応じて受け取れる保険金の金額は異なりますが、建て替えの資金として活用できます。
実家の建て替えで後悔するポイント

一方で、実家を建て替えて後悔するケースも少なくありません。後悔をしないために、以下で紹介する失敗例を事前に把握しておきましょう。
住宅ローンの返済負担が重くなった
実家を建て替えるにあたって、住宅ローンの残債が残っている場合は、建て替えローンを利用して建て替えの借入金と合算して返済を進めます。そのため、建て替えでは住宅ローンの残債を考慮して借り入れをおこなわなければ、返済負担が非常に重くなるかもしれません。
年収に占める年間のローン返済額の割合を示す返済負担率の上限は、一般的に30%~35%程度といわれています。そのため、合算した建て替えローンの返済負担が上限に近い水準となっても、金融機関によっては融資を受けられますが、借入上限額と無理なく返済できる返済負担は異なります。
住宅ローンを利用して実家を建て替えるなら、残債と新築のローンを一本化した建て替えローンの返済負担を適切に設定する必要があります。
無理なく返済できる返済負担率の目安は20%~25%以内です。建て替え後の住宅ローンの返済負担の重さに後悔しないために、建て替えで住宅ローンを組む場合は他のローンの残債も考慮しましょう。
家族間で建て替えの構想に食い違いがあった
一つの建物に、家族全員の希望を反映することは非常に難しいでしょう。また、家族間で情報を十分に共有しておらず、建て替えの構想に食い違いがあった場合はトラブルの原因になることも。
例えば、建て替え前の家よりも生活動線が不便になったり、収納や部屋数が不足してしまったり、家族間で建て替えの構想の食い違いがあれば、「前の住宅のほうが住みやすかったのではないか」と後悔するかもしれません。
実家の建て替えでは、将来的なライフスタイルも考慮しながら家族全体でコミュニケーションを取ることが求められます。
建て替え以外の選択肢で十分に対応できた
実家の老朽化や住環境の改善を目的に建て替えをおこなっても、リフォーム・リノベーション、あるいは売却して住み替えるという選択肢でも十分対応できたことに後悔するケースも。建て替えには上述したとおり、多額の資金が必要です。そのため建て替えずに、より費用を抑えた他の方法で住環境を改善できる場合もあります。
あとから「もっと手軽で安い方法があったのに」と後悔することがないように、建て替えを検討している場合は、建て替え以外の選択肢にも目を向けてみましょう。
「本当に建て替えなければ、ニーズに合った形で住環境を改善できないのか?」「リフォーム・リノベーションで検討している住まいを実現できないか?」など費用対効果を含めてよく検討することをおすすめします。
実家を建て替える以外の選択肢

実家を建て替えるとなると建築費の他に解体費や仮住まいの費用など、さまざまな費用が必要で、ケースによっては想定以上にお金がかかるかもしれません。
ここでは、住環境の改善につながる方法で、建て替える以外の選択肢を詳しく紹介します。
リフォーム・リノベーションをする
リフォーム・リノベーションは建て替えとは異なり、居住している実家を解体することなく、既存の内装を活かして住環境を改善する方法です。築年数が経過した実家では、老朽化した設備に不安がありますが、改修をおこなうことで快適な住まいを実現しやすくなるでしょう。
両親の老後に備えたバリアフリー設計を考えるなら、床の段差の解消や、手すりの設置など、リフォームの範囲で対応できる場合があります。また、キッチン・バスルームなどの配管工事のある水回り設備を最新にする場合も、必ずしも建て替えが必要ではなく、リフォーム・リノベーションで対応できることも。
ただし、改善する場所があまりにも多く、高額な工事を必要とする場合は、建て替えるほうが費用は安く済む可能性もあります。
リフォーム・リノベーションで改善したい項目をまとめ、建て替え費用を比較して、適切な方法で将来に向けた実家の住環境を整えるようにしましょう。
物件を売却する
「実家の土地に住み続けたい」などのこだわりがない場合は、物件を売却して、現金資産に換えてから新しい物件に住み替えることも選択肢になるでしょう。実家の売却金額を新しい物件の購入に利用できるため、建て替えと比較して、資金に余裕をもったまま新しい住居に引越しできます。
建て替えではなく、住み替えに方針を変更するなら、居住地を含めて幅広い選択肢から理想的な物件を選択可能です。現在の実家の住環境を改善するにあたって、リフォーム・リノベーションだけでは対応できない場合は、住み替えも検討しましょう。
賃貸に出す
実家を売却せずに、賃貸物件として運用する方法も考えられます。ご自身・家族は別の持ち家、または賃貸で暮らしながら、誰も住まなくなった実家から家賃収入を得ることが可能です。
また、将来的には建て替えた実家で暮らしたい場合、賃貸物件として運用することで建て替えの資金を貯められます。賃料の安い賃貸物件で暮らせば、賃料が実家の家賃収入を上回ることなく、安定して月々の収入を得られるでしょう。
「両親との思い出がある実家では一人で暮らしたくない」などの理由で、建て替え・住み替えを検討しているケースもあるでしょう。しかし、予算が大幅に不足している場合は、資産として活用できる形で実家を保有すれば、将来に向けた資金調達ができます。
まとめ
実家の住環境の改善などを目的に住宅を建て替える場合、問題点は費用が高額であることです。近年では建て替え費用も上昇傾向にあることから、資金調達が必要になることも。資金が不足している場合は、住宅ローンなどの借入金を含めて、建て替え費用を調達しましょう。
ただし、実家の住環境の改善は、建て替えでしか対応できないわけではありません。リフォーム・リノベーションなどのほかの選択肢も考慮して、ご自身・ご家族のニーズに合わせた適切な方法を取るようにしてください。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ