土地の値引き交渉はできる!交渉の手順と値引きしやすい土地の特徴を紹介
本記事では、土地の値引き交渉の手順と値引きしやすい土地の特徴を紹介します。一方で、値引き交渉が難しいケースと交渉の注意点もあわせて解説。記事を読むことで、土地を購入する際の値引き交渉にあたって必要な知識を把握できるでしょう。
記事の目次
土地の値引き交渉ができる理由

土地の売り出し価格は固定されたものではないため、売主の事情や条件によって値下げに応じてもらえるケースはめずらしくありません。ここでは、土地の値引き交渉ができる主な理由を4つに分けて紹介します。
土地には相場はあっても定価がない
土地の価格には、商品やサービスにある定価の概念が存在しません。価格の指標になるものは、過去の不動産取引などを参考にした相場です。しかし、必ずしも相場に沿って土地の価格を設定しなければならないわけではありません。売り出し価格は、売主の希望や不動産会社の戦略によって自由に設定されます。
よって、条件によっては値下げに応じる場合もあります。相場から土地の売り出し価格がかけ離れているほど、値引き交渉の余地があると考えられるでしょう。
売主次第では交渉の余地がある
土地の値引き交渉は、売主の事情で難易度も変化します。例えば、売主が相続によって取得した土地を早く現金化したいと考えており、固定資産税などの維持費の負担を軽減したいケースでは、売主はできる限り早く売りたいと考えています。
こちらのケースでは、ある程度の値下げに応じてでも、契約成立を優先するでしょう。売主が売買契約の成立を急いでいる場合は、柔軟に値引き対応をおこなうことも多いです。
値引きが前提の価格設定であることが多い
土地の値引き交渉はめずらしい話ではなく、不動産の売買では一般的な行為です。なぜなら、不動産の売り出し価格は、最初から値引きを見越して設定されている場合もあるためです。売主は値引き対応をしたうえで、希望額に近い金額で売りたいと考えています。
例えば、実際には4,800万円で売りたい土地を、最初は5,000万円で売り出すケース。仮に交渉で200万円の値引きに応じることになっても、売主の当初の希望額は達成できます。値引きはあらかじめ織り込み済みであるため、値引き対応に応じる売主が多いと考えられるでしょう。
売り手は土地を売却できなければ困る
売り手にとって避けたいことは、土地が売却できないことです。土地が売れ残っており、長期間売却できない状況が続く場合は、値引き交渉が成立しやすい状況になります。
需要の少ない土地であるほど、次の購入希望者を見つけるまでに時間がかかるため、興味を持った人がいれば、なんとしても売却したいと考えるでしょう。そのため、場合によっては買主にとって有利な条件で値引き交渉を進められる可能性があります。
土地の値引き交渉が難しいケース

一般的に土地は値引き交渉ができますが、状況によっては対応してもらえないことも。土地の条件によっては交渉が難しい場合もあるため、値引きが困難な代表的なケースを3つ解説します。
売り出し価格が相場よりも低い
値引き交渉をおこなう以前に、不動産の売り出し価格が相場を下回っている場合は、これ以上の値下げを望むことは難しいです。すでに市場価格よりも安い価格で販売している場合は、交渉を持ちかけても断られる可能性が高くなります。
相場よりも低い価格で売り出されている土地は、購入希望者を集めやすいため、売主にとって値下げ対応をする理由がなくなります。相場よりも低い土地は、マイナス要因が目立つ場合を除いて、売主の希望価格で購入すべき土地です。
需要が高く競争が激しい
土地の価格が相場を上回っている場合でも、需要が高いエリアにあり、競争が激しくなることが予測される土地は、値引き交渉が難航しやすいです。潜在的な買主が多く存在しており、売主が交渉に応じなくても、希望価格で売れると確信しているケースでは値引きの余地がありません。値引きどころか買主が確実に土地を入手するために、売り出し価格よりも高値で購入するケースも考えられます。
他に購入希望者が存在する
一般的に需要の高い土地ではなくても、他の購入希望者が存在する場合、値引き交渉は基本的に不可能になります。売り出し価格で買ってくれる買主と値引きを求める買主がいれば、売主は前者を選ぶでしょう。値引きを交渉すれば、他に希望者がいるため値引きができないと断られる可能性が高いです。
値引き交渉がしやすい土地の特徴

条件によって値引き交渉がしやすい土地があります。そのような土地の購入を検討している場合は、買主が積極的に値引きを求めることで、より安い価格で購入しやすくなります。以下に値引き交渉がしやすい土地の特徴をまとめました。
長期間売れ残っている
長期間売れ残っている土地は、売主にとって固定資産税や維持管理のコストが継続的にかかるため、大きな負担になります。売れ残りが続くことがあれば、売れないことに不安を抱えているケースもあるでしょう。具体的には、売り出し始めて半年から1年以上経っている土地は売れ残っている土地であり、売主も値下げ交渉を心理的に受け入れやすい状況にあると考えられます。
立地が悪く買い手が少ない
立地条件が悪い土地は、買い手が集まりにくいため、売主が値下げに応じやすい傾向があります。具体的には、以下のような立地条件が考えられます。
- 駅から遠く交通の便が悪い
- 将来的に再開発や人口流入の見込みがない
- 過疎化や人口減少が進んでいる
立地が悪い土地は、時間が経っても価格が上がりにくいことから、売れ残りを避けるために値引きに柔軟に応じる場合があります。需要が少なく、競合もほとんどいないため、購入希望者の要望に応えようとするケースが多いでしょう。
土地自体にマイナス要因がある
売り出されている土地自体に、マイナスの要因が存在する場合も、値引き交渉の材料になるでしょう。具体的なマイナス要因は、以下のケースが考えられます。
- 旗竿地や三角地など建物を建てにくい
- 道路に接する部分が狭くセットバックが必要になる
- 建ぺい率・容積率が低く自由な建築ができない
- 地盤が緩く改良工事が必須である
- 日当たりの悪さ・騒音など居住後の問題がある
土地の購入希望者は建物を建てる前提で購入するため、住宅を建てることができない土地や建設に制限がかかる土地は、大きなマイナス要因になります。一方で、地盤の緩さから改良工事が必要になるケースなど、建物を建てるために費用の負担がかかる土地は、想定される費用を値引きできる余地があります。周辺の建物が高く、日当たりが悪いなど、住んでから問題になりやすいマイナス要因も、値引き交渉の材料にできるでしょう。
土地の値引き交渉をおこなう手順

土地の値引き交渉をおこなう手順は、以下のとおりです。
- STEP 1価格交渉をする土地の相場を調査する
- STEP 2購入申込書を提出する
- STEP 3不動産会社を通じて売主と交渉を開始する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステップ1.価格交渉をする土地の相場を調査する
土地の値引き交渉をおこなうにあたって、最初にするべきことは土地相場の調査です。購入予定の土地が、相場に対して割高であるのかわからなければ、適切な値引き交渉ができません。少しでも安い価格で土地を購入するためにも、相場の調査を欠かさないようにしましょう。
相場調査の方法は、オンライン上で不動産ポータルサイトが公開している情報を活用する方法があります。大手の不動産ポータルサイトでは、実際に存在する複数の土地の売り出し価格が提示されているため、相場の参考になります。
不動産情報サイト アットホームの「不動産一括査定依頼サービス」では、土地の査定が複数の不動産会社に同時に依頼できます。
より精度を高める調査方法は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」の利用です。不動産情報ライブラリでは、土地の取引価格と地価の情報を公的な情報から調べられます。購入したい土地の相場を把握してから、適切な範囲の値引きを検討して交渉に臨むようにしましょう。
ステップ2.購入申込書を提出する
相場の調査が完了し、値引き交渉次第で購入する土地を見つけた場合は、不動産会社に購入申込書を提出しましょう。購入申込書には希望する購入価格を記せるため、売主に対して明確に値引き交渉の意思表示ができます。
購入申込書を提出しても、買主都合で契約を見送ることはできますが、一般的に購入申込書を提出すると、売主からは契約の意思があるとみなされます。値引きをするなら契約の意思があると判断されるでしょう。
そのため、購入申込書を提出してから正当な理由なく申し込みを撤回する行為はマナー違反です。売主が値引き交渉に応じたあとに、購入を撤回しないように購入申込書の提出は慎重におこないましょう。
ステップ3.不動産会社を通じて売主と交渉を開始する
仲介会社である不動産会社を通じて、売主と交渉を開始します。売主が買主の提示した値引きの条件に応じるケースもあれば、一切応じてもらえないケースも考えられます。場合によっては、提示した条件には応じられなくても、ある程度の譲歩をしてくれる場合もあるでしょう。
具体的には、売り出し価格5,000万円の土地に対して、4,600万円でなく、200万円の値引きとなる4,800万円であれば受け付けるなど、売り出し価格に対する譲歩の例が考えられます。
相手が提示する条件を聞いたうえで応じるべきか、別の条件の提示を考えましょう。交渉を続けても希望価格で購入できないかもしれませんが、慎重に交渉を続ければ、買主・売主の双方ともに納得できる条件を模索できます。
土地の値引き交渉をする際の注意点

最後に、土地の値引き交渉をする際の注意点を5つまとめました。
- 値引きの範囲は土地価格の5%~10%程度でおこなう
- 買う意思があることを明確に伝える
- 売主の立場にも立って適切に交渉する
- 値引き以外の条件交渉も検討する
- 契約内容の確認を徹底する
それぞれ詳しく解説します。
値引きの範囲は土地価格の5%~10%程度でおこなう
土地の値引き交渉では、売り出し価格からどこまで値引きするべきかを考える必要があります。一般的に、値引き交渉の範囲は、土地価格の5%~10%程度が妥当です。交渉次第では、土地価格の5%に満たない割引額までしか交渉に応じてもらえない可能性もありますが、5%~10%の値引きは現実的な要求です。
一方で、50%以上の値引きを求めることは、売主の立場から考えれば、まともな交渉をする気がないと判断されるかもしれません。心証を損ねれば、そのあとの交渉に応じてもらえない可能性があります。
最終的に値引きが5%以下で合意する場合でも、5%~10%程度の割引率に調整した希望価格を売主に提示します。相手が提示した値引きに応じる場合は、土地を安く購入できたことになり、断られても交渉を続けることで落としどころを探れます。
買う意思があることを明確に伝える
土地の値引き交渉では、買う意思があることを明確に伝えることが重要です。売主の立場からすれば、値引き交渉を要求する相手が、本当に土地を購入してくれるのか疑問に思うことでしょう。売り出し価格でも購入できる資金を用意できることや、住宅ローンの仮審査に通過したことを示せば、買主が本気で土地を購入したいと考えていることが伝わります。
購入を撤回する可能性が低いとわかれば、前向きに値引き交渉に臨んでくれる可能性が高いです。相手に安心して合意してもらうために値引き交渉をする際は、土地を購入する意思があることを、売主に明確に伝えましょう。
売主の立場にも立って適切に交渉する
値引き交渉では、売主の事情や心理を理解する姿勢が重要です。少しでも早く売却したい売主の場合は、値引きに合意しやすく、土地を安く買える可能性が高くなります。売主に購入希望者を逃したくない理由があれば、最初は希望額による売却を断った場合でも、強く要求すれば最終的に条件を受け入れる可能性があります。
ただし、売主がどれだけ早く土地を売りたい場合でも、常識を逸脱する多額の値引き要求は逆効果であるため避けましょう。土地が長期間売れない状態で焦っている場合や、固定資産税のコスト負担の重さから早く手放したがっている状況を、土地の販売状況や交渉のなかで把握します。売主の心理を理解して適切に交渉をすれば、土地の値引きが成功する確率が高まります。
値引き以外の条件交渉も検討する
値引きだけでは交渉に行き詰まる場合は、値引き以外の条件を組み合わせることも検討しましょう。具体的には、相手の希望に合わせた引越し時期の調整が挙げられます。値引き交渉では合意が難しい場合でも、条件を提示する交渉に切り替えれば、お互いに納得しやすい着地点を見つけやすくなるでしょう。
契約内容の確認を徹底する
最後の注意点は、値引き交渉の合意事項を契約書に完全に反映させることです。土地売買の決め事は、口頭の合意だけでは効果を持たず、売買契約書に記すことで効果を発揮します。値引き交渉後に合意した金額の記載だけでなく、値引き以外の条件を提示して交渉した場合は、特約に要求が記載されていなければなりません。交渉の成果を確実なものにするために、契約書の内容の確認を徹底しましょう。
まとめ
土地は、相場はあっても定価が存在しないため、条件次第で柔軟に値引き交渉ができます。値引きに応じる売主の多くは、値引き交渉を前提に価格を設定しており、交渉に応じなかったことを理由に買い手を逃すことを避けたいと考えています。長期間売れ残っているなどのマイナス要因のある土地を中心に交渉次第で安く土地を買えるでしょう。
ただし、値引きの要求は常識的な範囲にとどめなければ、まともな交渉をする気がないと認識されるかもしれません。売主の立場にも立ったうえで適切に交渉すれば、少しでも安い価格で土地を購入できるでしょう。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

