平屋の建て替えにかかる費用はいくら?建て替えのメリット・デメリットを紹介

この記事では、平屋への建て替えにかかる費用の相場と種類について紹介します。平屋に建て替えるメリット・デメリット、費用を抑えるポイントも解説いたします。
記事の目次
平屋への建て替えにかかる費用

国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」によると、住宅全体の建て替えでは、平均して5,745万円の費用がかかっています。平屋の建て替えに関する公的なデータはありませんが、一般的な相場と必要な費用の種類を知ることで、平屋への建て替えにかかる具体的な費用を把握しましょう。
平屋への建て替えに必要な費用の相場
平屋への建て替えにかかる費用は、家の大きさや設備などにより大きく変動します。木造の平屋であれば、坪単価の目安は40万円~60万円となりますが、建物の建材によっても坪単価は異なります。
仮に平屋への建て替えの坪単価が50万円と仮定した場合、坪数ごとの建て替え費用の相場を見ていきましょう。
坪数 | 金額 |
---|---|
30坪 | 1,500万円 |
40坪 | 2,000万円 |
50坪 | 2,500万円 |
のちほど詳しく解説しますが、平屋は広い敷地に建てることが推奨される住宅です。そのため、夫婦2人、子ども1人を想定する家族であれば、最低でも30坪の面積は確保したいところです。
住宅全体の建て替え費用である5,745万円と比較すると、50坪の面積であっても建て替え費用は2,500万円。半分以下の金額になったことから、平屋への建て替えにかかる相場は安い傾向にあるといえます。
平屋への建て替えに必要な費用の種類
建て替えには、さまざまな費用がかかります。平屋への建て替えにかかる費用の主な種類は以下のとおりです。
- 解体費用
- 地盤調査費用
- 建築費用
- 諸費用
- 引越し費用
建て替えの流れは、古い住宅を解体してから、新しい住宅を建設するための地盤調査をおこない、平屋を建築します。地盤調査で問題があった場合は、地盤改良工事の費用が必要になることも。この時点で古い住宅には住めなくなるため、仮住まい先に引越して住環境を確保する必要があります。
さらに、不動産取得税などの税金や登記費用など、建て替えにおける各種諸費用も発生します。そのため、これらの費用を総計すると、先ほど示した相場よりも建て替え費用が高くなる可能性があります。平屋に限らず建て替えでは、想定外の費用が発生する場合もあるため、余裕をもって予算を確保しましょう。
平屋に建て替えるメリット

階層が2階以上の住宅から、平屋に建て替えるメリットは以下のとおりです。
- バリアフリーで高齢者も生活しやすい
- 家族間のコミュニケーションが増える
- 家事の効率が向上しやすくなる
- 耐震性が高い
- 間取りの自由度が高い
それぞれ詳しく見ていきましょう。
バリアフリーで高齢者も生活しやすい
平屋は階段がないため、日常生活で高齢者や身体に不自由がある方も移動しやすく、安全に過ごしやすい環境です。家族が介護などのサポートをする場合も、一階部分で完結するため、負担が軽くなるでしょう。
老後を想定した住環境に変更する場合、段差の解消を含めてバリアフリー設計にできることから、平屋は長期的に暮らしやすい住宅といえるでしょう。また、高齢者だけでなく、小さな子どもがいる世帯にも安全性が高いことから人気があります。
家族間のコミュニケーションが増える
平屋はすべての部屋が一階に配置されるため、家族全体が同じ空間を共有しやすくなります。家族同士で自然と顔を合わせる機会が増えるため、日常のコミュニケーションが活発になる効果を期待できます。
各個室が複数階に分かれていると、同じ家に住んでいてもプライベート空間が分断されやすくなり、結果として家族同士の対話が減少することも。平屋は、家族全体のコミュニケーションを増やしやすい構造であるといえるでしょう。
家事の効率が向上しやすくなる
平屋は、各部屋が同一フロアに広がる構造であるため、家事動線が非常に効率的になります。掃除・洗濯・料理などの作業が短い移動距離で済むため、家事の時間を削減できる効果が期待されます。効率的に家事をおこなうことで、日常生活全体の質が向上しやすくなるでしょう。
耐震性が高い
平屋は建物全体の重心が低く、地震の揺れの影響を最小限に抑えやすい特性があります。すべてが一階に集約されるため、揺れた際に上層部分が大きく揺れるリスクが低く、均一な耐震設計が可能です。
耐震性能が向上するため、家族全員が安心して生活を送れる住環境となります。建物全体の構造がシンプルであるため、耐震補強工事・定期メンテナンスをおこないやすく、常に最適な状態の耐震性を維持できるでしょう。
間取りの自由度が高い
平屋は、階段を設置した複雑な構造ではないため、設計の自由度が大いに高まります。広大なフロアを利用して、家族構成やライフスタイルに合わせた設計が可能です。
また、趣味に合わせた自由で独創的な設計ができる場合もあります。平屋は自由度の高さから、自分自身の理想やニーズを反映させた住環境を作れるため、デザインを含めて満足度の高い家に設計しやすいでしょう。
平屋に建て替えるデメリット

一方で、平屋への建て替えはメリットだけではなく、以下のデメリットがともないます。
- 建築費用が増加することがある
- プライバシー・防犯面で懸念がある
- 広い敷地が必要になる
- 洪水などの水害のリスクが上昇する
- 日当たりや風通しが悪くなる可能性がある
それぞれ詳しく解説します。
建築費用が増加することがある
平屋は、同じ延床面積を確保する場合、2階建て以上の住宅に比べて基礎部分や屋根面積が広くなるため、費用が高くなることがあります。構造にこだわる場合はコストが大きく増加する可能性もあるため、必ずしも平屋が2階建て以上の住宅よりも建築費用が安いとはいえません。
効率的に費用を削減するなら、必ずしも平屋でなくてもいい場合があります。費用の節約を重視して建て替えを進めるなら、平屋はあくまで選択肢のひとつとして考えるのがよいでしょう。2階建て住宅の建て替え費用と比較しながら、総合的に判断するようにしましょう。
プライバシー・防犯面で懸念がある
平屋はすべての生活空間が一階に集約されるため、外部からの視線が入りやすい設計です。窓が低い位置にあるため、不審者による侵入リスクが相対的に高まる点も問題になります。
プライバシー保護のためにカーテンを設置するだけでなく、必要に応じて窓ガラスに目隠しフィルムを設置するようにしましょう。防犯を意識するなら、カメラの設置・セキュリティシステムの導入も必要です。
また、平屋は家族同士のコミュニケーションが活発になるメリットがありますが、プライベートな空間と時間を作りにくいため、家族間でもプライバシーを保護しにくいことがデメリットになる場合もあります。
広い敷地が必要になる
平屋は、建物全体を一階に配置する設計であるため、2階建て以上の住宅と比較すると求められる敷地面積は広くなります。敷地面積が限られている地域では、理想的な平屋の建設が難しくなるでしょう。平屋を建設するために周りの土地を取得する場合は、費用が大きく増加する可能性があります。
また、法令で建ぺい率や容積率が規制されているため、敷地を無駄なく活用するには法令の規定内で計画する必要があります。そのため、現在建て替えを検討している土地が、平屋の建設に向いていなければ、建て替えは難しいでしょう。
洪水などの水害のリスクが上昇する
平屋は地震に対するリスクは低くなりますが、すべての居住空間が地上にあるため、上の階層に逃げられないことから、洪水などの水害に対するリスクは高くなります。特に、低地や水はけが悪い地域で平屋を建設する場合は、浸水被害に遭う危険性が上昇します。
洪水のリスクがある地域で平屋を建築する場合は、洪水対策のために排水システムの強化や、地盤の改良工事をおこなうなど、追加の対策が必要になるでしょう。
日当たりや風通しが悪くなる可能性がある
平屋は設計内容と周辺環境によって、日当たりや風通しが悪くなる可能性があります。周囲に高い建物や樹木、その他の障害物が存在する場合、2階建て以上の建物と比較して太陽光が十分に差し込みません。
建物が低いことから、風が行き渡らなくなり、夏場の熱がこもりやすくなることも。よって、冷房などの光熱費が大きく増加する場合があります。設計段階で、日当たりと風通しを考慮しなければ、生活の質が低下するリスクもあるでしょう。
平屋への建て替え費用を安くするポイント

平屋への建て替え費用を抑えるポイントを5つまとめました。
- 建物の形状をシンプルにする
- 建材を安くするために木造を選ぶ
- 水回り設備を一つにまとめる
- 複数の会社に見積もりを依頼する
- 引越し時期を閑散期に設定する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
建物の形状をシンプルにする
建物の形状をシンプルに設計することは、平屋への建て替え費用を削減するうえで非常に効果的な戦略です。シンプルな設計は、基礎工事、屋根や外壁の施工を効率的におこなえるため、工期短縮と資材の節約につながり、建て替え費用が安くなります。
一方で、複雑な設計や特殊なデザインは、施工の手間がかかりやすくなるため、工事費用の高騰を招くことも。シンプルな設計であれば、将来的なリフォームや間取りの変更にも柔軟に対応できることから、コストパフォーマンスを重視する場合も有効です。シンプルな形状の平屋は、建て替えにかかる費用が安くなりやすいでしょう。
建材を安くするために木造を選ぶ
平屋の建材を木材にすれば、鉄筋コンクリートなどの建材と比較して費用を大きく削減できます。坪単価を考えた場合、鉄筋コンクリート造や鉄骨造と比較すると、木材は1坪あたりの単価が安くなります。また、加工しやすい性質を持つため、現場での組み立て作業が効率的に進みやすくなるでしょう。
ただし、木材は定期的なメンテナンスや防虫・防腐対策を講じる必要があるため、長期的な維持管理費用がかかる点に注意が必要です。初期費用を抑えることを重視するなら、木造建築によって平屋への建て替えを安く済ませられます。
水回り設備を一つにまとめる
平屋建てでは、キッチン、浴室、トイレなどの水回り設備を一つのエリアに集約しましょう。水回りの設備には、それぞれに配管工事や配線工事が個別に必要となります。分散させれば工事の範囲が広がるため、施工時間と費用が増加します。
水回り設備を一つのエリアに集約すると、配管ルートが短くなり、工事の範囲が狭くなるため、コスト削減を期待できます。また、管理・点検もしやすくなるため、メンテナンスコストも減少するでしょう。水回り設備を一つのエリアに集約する設計で、快適な住環境を実現する構造を目指しましょう。
複数の会社に見積もりを依頼する
建て替えをする際には、複数の会社で見積もりを依頼しましょう。一社のみに依頼すると、相場以上の価格を提示されても気付けない可能性があります。複数社の見積もりを比較検討すれば、総合的にパフォーマンスが高く、費用の安いプランを選択しやすくなります。
複数社と接する過程で、平屋への建て替えで役立つ情報を得られる場合もあるため、最適な建て替えプランを考えるうえでも役に立つでしょう。建て替えは、見積もりを含めて事前の情報収集を丁寧におこなうことで、費用の大幅な削減を期待できます。
引越し時期を閑散期に設定する
建て替えでは、現在の住居から仮住まいへの引越し、仮住まいから新居への引越しで2回分の引越し費用が発生します。引越し費用は、引越し時期を閑散期に設定すると節約しやすくなります。
引越し費用は、年度末や春先などの繁忙期に料金が高騰する傾向にあります。一方で、11月や2月などの閑散期の時期は引越し費用が安くなり、場合によっては繁忙期の半額程度で済むことも。引越し時期を調整できる場合は、繁忙期・閑散期を意識して設定するようにしましょう。
まとめ
平屋への建て替えは、家族の暮らし方やライフステージに応じた理想の住環境を実現するために魅力的な選択肢の一つです。
ただし、メリットだけではなくデメリットもあるため、平屋がご自身の求める住環境に適しているかを見極め、総合的に判断したうえで建て替えるようにしましょう。
また、建て替えにおいて平屋は必ずしも安いわけではないため、コスト削減を目的に平屋に建て替える場合、費用を安くする方法も理解しておきましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ