平屋の新築費用が高い理由は?費用を節約する方法を徹底解説

本記事では、平屋の建築費用が高い理由と費用を節約する方法をあわせて解説します。費用が高くても平屋は人気の住宅であるため、平屋を選ぶ理由になるメリットも紹介。記事を読むことで、平屋を建てるべきか、建てる場合はどのように費用を削減するべきかポイントを押さえましょう。
記事の目次
平屋の新築費用が高い理由

新築平屋の建築費用が高い理由について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
基礎部分・屋根部分の面積が広い
平屋は2階建てと比較して、基礎部分と屋根部分の面積が広いため、資材の使用量が増え、コストが増加する傾向にあります。延床面積が30坪の家であれば、2階建ては1階15坪、2階15坪に分けられるため、基礎部分は半分の15坪で収まります。
しかし、平屋はすべてを1階部分に集約するため、延床面積と同様の30坪の基礎面積が必要です。基礎工事の施工範囲も増えるため、建築費用が高くなる傾向に。
屋根部分も同様に、2階建てと比較すると、平屋のほうが面積が広いことから、屋根に必要な資材の使用量、工事にかかる人件費が建築費用を大きく増加させることになるでしょう。
同じ延床面積でも基礎部分・屋根部分の面積が広がれば、資材費・人件費は増加するため、平屋の建築費用は割高になります。
広い土地が必要になる
基礎部分の面積が広いことから、平屋の建築には広い土地の確保が不可欠です。建築基準法では建ぺい率の制限があるため、家を建てる面積よりも広い土地を取得しなければなりません。例えば、建ぺい率の上限が50%の地域では、50平方メートルの家を建てるのに最低でも100平方メートルの土地を用意する必要があります。
広い土地の確保が必要な平屋は、土地の購入費用が高くなります。また、広い土地を購入すれば、フェンスや塀などの外構工事の範囲も広くなるため、土地の広さが建築費用全体を押し上げる要因にもなるでしょう。
配管工事の距離が長くなる
平屋は建物を横に広げる構造上、配管や配線の距離が長くなりやすい点にも注意が必要です。2階建ては上下階にキッチン・浴室などの水回りを重ねて配置して、給排水管の距離を短く抑えることが基本。しかし、平屋は構造上、上下につなげられないため、配管工事の距離が長くなります。
電気配線やガス管も同様であり、照明やコンセントの位置を増やすほど、ケーブルの延長によりコストがかさみます。配管工事をおこなうにあたって、平屋は2階建てと比較して合理的な構造をしていないため、工事費用が高くなりやすいでしょう。
断熱性・通気性の対策が必須になる
平屋の構造は、断熱性と通気性の確保に課題があります。建物の外周が広い平屋は、夏は熱が入り込みやすく、冬は熱が逃げやすくなります。平屋で快適に暮らすためには、断熱性の確保のために追加コストが必要に。また、2階建てと比較して、上から下への風の通り道もないため、通気性の確保も重要です。
断熱性・通気性の対策を疎かにした場合は、冷暖房の効率が悪くなり、継続して電気代が増加するでしょう。住んだあとの快適性を考えるなら、断熱性・通気性の対策が必須であるため、断熱材・窓ガラスなどの設備が高額になりやすく、総合的に建築費用が増加します。
他の住宅と比較した時の平屋の新築費用

平屋と比較されることが多い住宅は2階建てになりますが、3階建てや半平屋(1.5階建て)と比較した時の費用を含めてそれぞれ紹介します。
2階建て
2階建ては、日本では一般的な住宅の形式であり、平屋と比較して土地の有効活用の方法として優れています。基礎部分と屋根部分の面積は、平屋と比較して約2分の1であり、配管工事の距離も抑えやすいことから建築費用を安く抑えられるでしょう。
一方で、2階建ては平屋と比較した場合に、階段部分の工事や構造補強の費用がかかります。また、階段部分はスペースとして使用できません。30坪の2階建ての階段部分が3坪であると仮定した時、同じ広さを持つ平屋の基礎面積は27坪になります。よって、実際に使用できるスペースに着目して費用を比較すると、2階建てと平屋のコストは縮まります。
3階建て
3階建ては、都市部など土地が狭い場所で延床面積を確保するために選ばれます。土地が高額な都市部では土地を節約できるため、土地価格が高い地域では平屋のほうが建築費用は高くなります。
しかし、3階建ての建設に必要な構造の補強工事は、人件費を含めて高額に。補強工事で平屋との建築費用に差が出るため、総合的には平屋のほうが安くなりやすいでしょう。平屋を建築しやすい土地価格の安い地域では、平屋のほうがコストを抑えられます。
半平屋
半平屋は、基本的に平屋に近い構造でありながら、一部に2階スペースを設けた住宅です。1階部分にすべてを集約した平屋と比較すると、基礎部分と屋根部分の面積を縮小できるため、この点では半平屋はコストを抑えられると考えられます。
一方で、構造が特殊であることから、設計費や施工費が増える傾向にあります。結果的にシンプルな構造の平屋と比較して建築費用が増加することも。住宅の建築費用を節約するには、シンプルな設計と間取りが肝心であるため、構造が複雑であるほど費用がかかると考えられます。
平屋は一般的な住宅である2階建てと比較すれば、コストがかかる傾向にあります。しかし、3階建て・半平屋と比較した場合は条件次第であり、平屋のほうがコストを抑えられる場合も考えられるでしょう。よって、すべての住宅の形式と比較した場合は、平屋が際立って建築費用が高いわけではありません。
新築費用が高くても平屋を建てるメリット

平屋の建築費用は高いと言われることもありますが、近年では人気の住宅形式です。新築住宅の主流が2階建てであることに変わりありませんが、平屋の着工戸数は増加傾向にあります。人気の根拠になる、平屋を建てるメリットを以下にまとめました。
それぞれ詳しく解説します。
バリアフリーで老後も住みやすい
平屋の生活はすべて1階で完結するため、階段の上り下りが不要になります。年齢を重ねて足腰が弱ると、階段移動が大きな負担に。しかし、平屋は階段移動がなくなるため、バリアフリー仕様で老後も住みやすいことが魅力です。1階で生活が完結すれば、介助する側の負担軽減にもつながります。
また、階段の落下事故を起こすリスクがないため、高齢者だけでなく子どもにとっても安心です。将来にわたって暮らしやすい住宅であることから、生涯を過ごす住宅として高く評価されています。
家事動線が効率的になる
平屋は家事動線が効率的であるため、日々の生活の負担が減ります。例えば、洗濯機が1階にあり、洗濯物を干す場所が2階にある家は、洗濯物を干すために階段を上り下りしなければなりません。平屋であれば、洗濯機から洗濯物を取り出して干す、収納までの移動が地続きになるため、家事動線を効率化できます。
生活の満足度を重視するなら、平屋は長期的に見てメリットの大きい住宅です。家事動線を効率化したい子育て世帯から共働き世帯まで支持されやすいでしょう。

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家族間のコミュニケーションが取りやすい
平屋はすべての部屋が同じフロアにあるため、家族が顔を合わせやすくなり、自然にコミュニケーションが増える点も大きなメリットです。2階建ての場合は家族が自分の部屋にこもり、リビングで顔を合わせる機会が減ることでコミュニケーションを取らなくなる場合があります。
平屋は自室に向かう際に、リビングやダイニングを通る間取りにできるため、家族の会話が自然と生まれます。また、家事をおこなうにあたっては、家族同士で連帯して協力しやすくなるでしょう。家族の絆を深め、コミュニケーションを促進できる住宅環境を作りたい場合に向いています。
地震に強く安全性が高い
平屋は建物の重心が低いため、2階建てや3階建てに比べて地震に強い構造を持ちます。反対に、高さがある住宅は、地震の揺れによって上層部に大きな負担がかかります。
しかし、平屋は揺れを建物全体で受け止められるため、倒壊リスクが低いです。地震による被害を最小限にできることから、耐震性を重視して住宅を選ぶ場合に有力な候補になります。
メンテナンスの費用を抑えやすい
平屋は建築費用が高くなりやすいですが、建物の高さが低いため、外壁や屋根のメンテナンスがしやすく、メンテナンス費用を抑えられると考えられます。2階建てや3階建ての住宅は、外壁塗装や屋根の補修工事をおこなう際に足場を組む必要があります。
しかし、平屋は建物の高さが低く、脚立や簡易的な足場で作業できる場合が多いため、工事費が安く済むでしょう。初期費用が高くても、維持費を抑えやすい平屋は、総合的に見ればコストがかからないと考えることもできます。
平屋の新築費用を節約する方法

平屋の建築費用を節約する方法は以下のとおりです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
シンプルな間取りを選ぶ
シンプルな間取りの平屋であれば、工事を効率化しやすく、材料費も抑えられるため、全体の建築費用を削減できます。間取りにこだわりを持って複雑化するほど、コストは増加します。例えば、コの字型の間取りにして中庭を設ける複雑な設計は、建築費用が高くなります。費用の節約を優先するなら、施工会社が工事しやすいシンプルな間取りを選びましょう。
部屋数は必要最小限にする
部屋数を増やすほど建築費用は膨らみやすいため、節約するなら部屋数を最小限にすることが重要です。リビングやダイニングを広めに取り、家族共有の空間として活用すれば、個室を増やさずに居住性を高められるでしょう。
部屋を作らなくても、工夫次第で快適な住環境を構築できます。子ども部屋を確保するなどの理由でどうしても部屋数を増やしたい場合は、あとからリフォームや間仕切りで対応できるようにしてもいいでしょう。
郊外・地方の土地を選ぶ
平屋は広い土地が必要になるため、土地価格を抑えるために郊外や地方の土地を選びたいところです。都市部は土地価格が高いため、平屋を建設できるほどの広い土地を取得すると、建物よりも土地代が費用を圧迫する原因になります。通勤・通学など生活の利便性を損なわない範囲で安くて広い土地を選べば、生活に対する満足度が高いまま費用を大きく節約できるでしょう。
水回りを近くにまとめて配置する
平屋の配管工事の費用を少しでも節約するために、水回りを近くにまとめて配置できるように間取りを工夫します。例えば、キッチンと洗面所を隣接させ、浴室とトイレをその近くに配置すれば、配管の距離を大幅に短縮できるでしょう。配管工事は距離が長くなるほど材料費や人件費が増えるため、間取りの工夫で建築費用を節約できる可能性があります。
標準仕様の建材・設備を選ぶ
高級素材やオプション設備を選ぶほど、費用が増加します。標準仕様の建材や設備を選べば、平屋に限らず建築費用を抑えられるでしょう。標準仕様の建材・設備は大量生産されているため、コストパフォーマンスが高くなっています。こだわりたい部分や性能をグレードアップしたい部分のみにオプションを絞れば、コストを抑えたうえで十分な住宅性能を持った平屋を建築できます。
施工会社を比較して検討する
平屋では同じ間取り・仕様でも、施工会社によって見積もり額が異なります。そのため、複数の施工会社を比較して選ぶことで、割安な価格で平屋を建築しやすくなります。標準仕様に含まれる内容とオプションの費用も施工会社によって異なるため、総合的に安く建設できる施工会社を選びましょう。
補助金・助成金を利用する
平屋の建築費用を節約する場合は、国や自治体が実施する補助金・助成金制度を活用しましょう。制度を活用すれば、初期投資が高い平屋でも実質的な費用を抑えることが可能です。補助金や助成金は年度ごとに内容や予算が変わるため、最新情報を確認し、建築計画と合わせて申請を進めることが重要になります。
平屋を建てる場合の注意点

最後に、平屋を建てる場合の注意点を解説します。
防犯対策・プライバシーを確保する
すべての生活空間が1階にある平屋は、家事動線の効率化や家族間のコミュニケーションにおいてメリットがあります。しかし、外部からの視線にさらされたり、侵入されやすい問題があるため、防犯対策とプライバシーの確保が重要です。
すべての部屋が地上に接していることから、侵入経路となる窓や扉が増えます。また、外から生活空間が見えやすいため、通行人の視線が気になる場合もあるかもしれません。防犯カメラの設置、外からの視線を遮るすりガラスへの変更を考える必要があります。防犯対策やプライバシーの面で工夫が必要な住宅形態であるため、設計段階から意識する必要があるでしょう。
浸水リスクが高い地域では被害が拡大する
浸水リスクが高い地域では、生活スペース全体が水害の影響を受けます。2階建て住宅であれば、1階が浸水しても2階に避難できますが、平屋は上階への逃げ場がありません。よって、河川沿い、低地などの浸水リスクが高い地域を極力選ばないようにして、どうしても選ぶ必要がある場合は対策をおこないましょう。
具体的には、基礎を高くするかさ上げ工事や、防水性の高い建材を採用するなどの工夫が考えられます。自治体が公開するハザードマップを確認すれば、過去に浸水被害があった地域を調べることが可能です。平屋は地震には強くても、水害には弱いことを理解したうえで建築するようにしましょう。
固定資産税の負担が高くなりやすい
平屋と2階建ての費用を比較するにあたって、建築費用だけでなく、固定資産税の負担も高くなりやすい特徴があります。固定資産税は、土地の面積と建物の床面積に応じて課される税金です。平屋は同じ延床面積を確保するにあたって、2階建てに比べて建物の基礎部分や屋根部分が広くなります。
土地の広さが課税額に影響して、2階建てと比較して税負担が重くなります。また、平屋のほうが使用する建材が増えやすく、建築費用も高額になることから、建物部分でも平屋のほうが固定資産税評価額が高くなることも。維持費のなかでも固定資産税は2階建てと比較して、高くなりやすいことを理解しておきましょう。
まとめ
平屋は基礎や屋根の面積が広くなることから、日本では主流の住宅である2階建てと比較して、建築費用が高くなりやすい傾向にあります。一方で、他の住宅形式と比較して、圧倒的に高いという認識は誤りです。
設計段階で工夫すれば、建築費用は大きく節約できます。バリアフリー仕様で家事動線を効率化できることから人気があり、メリットも多いことから平屋に魅力を感じている場合は、少しでも費用を節約する方法を考えてみましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ