カーポートに固定資産税はかかる?課税の条件を含めて詳しく解説

本記事では、カーポートに固定資産税がかかるかどうかを、固定資産税の対象となる建築物の条件とあわせて解説します。また、カーポートに固定資産税がかかる可能性があるケースも紹介。記事を読むことで、カーポートをどのように建てるべきか判断できるようになるでしょう。
記事の目次
一般的なカーポートなら固定資産税はかからない

カーポートとは、柱と屋根で構成された簡易的な車の保護設備です。車を日差しや雨・雪などから守りつつ、出入りしやすい構造になっています。屋根に加え、3方向以上を壁で覆われたガレージと比較して、短期間かつ安価で設置できます。
一般的な柱と屋根のみで構成されるカーポートであれば、固定資産税は原則としてかかりません。また、カーポートの大きさも固定資産税には関係ありません。
ただし、カーポートの構造・用途によっては固定資産税が課されることも。そのため、固定資産税の課税対象にならないようにするためには、固定資産税の対象となる建築物の条件を理解する必要があります。
固定資産税の対象となる建築物の条件

固定資産税の対象となる建築物は、以下の条件をすべて満たす建物を指します。
要件 | 内容 |
---|---|
外気分断性 | 屋根があり、3方向以上が壁で囲われている |
土地への定着性 | 基礎などで土地に固定され、容易に移動できない |
用途性 | 目的に応じて利用できる状態にある |
それぞれの条件を詳しく紹介します。
外気分断性
外気分断性は、建築物が外部と内部で区切られ、屋根や壁によって風雨や外気の影響を遮断できる状態にあるかどうかを指します。具体的には、建物が3方向以上を壁で囲われ、さらに屋根が設けられていることが判断基準。外気の流入を防ぎ、閉鎖的な空間が形成されていることが重要です。
建物が単なる構造物や工作物ではなく、人や物を雨風から守る空間を提供しているかを区別します。一般的なカーポートは、屋根と柱のみで3方向以上が開放されているため、外気分断性がないと判断できるでしょう。
土地への定着性
土地への定着性は、建築物が土地に恒久的に固定され、容易に移動できない状態であるかどうかを示す要件です。一般的に、コンクリートの基礎にしっかり固定されている建物は、土地への定着性があると判断されます。
アンカーボルトで軽く固定する場合や、工具を使えば短時間で解体・移動できる仮設物は定着性がありません。カーポートは、基礎と一体化して恒久的に設置される構造物であるため、土地への定着性は満たすと解釈されやすいです。
用途性
用途性とは、人が居住・作業・貯蔵などの目的に使用できる空間を、建築物が備えているかを判断する基準です。固定資産税は経済的な価値を持つ建物が課税対象になるため、構造物が存在するだけでは不十分であり、居住・作業・貯蔵の利用価値を持っていることが求められます。カーポートは、車庫として利用することから用途性を満たすと判断されます。
以上のことから、一般的なカーポートは固定資産税の対象となる建築物の条件のうち土地への定着性と用途性を満たしますが、外気分断性は満たしません。よって、すべての条件を満たさないため固定資産税の対象にはならないと判断できます。ただし、カーポートの構造によっては、条件を満たすことがあり、固定資産税がかかる可能性はあります。
カーポートに固定資産税がかかるケース

固定資産税の対象となる建築物の条件を踏まえて、カーポートに固定資産税がかかるケースをそれぞれ詳しく紹介します。
シャッター付き・壁で囲われている
一般的なカーポートは柱と屋根のみの構造ですが、シャッターを取り付ける、壁で囲うなど構造を変化させると、一般的なカーポートでは該当しなかった外気分断性の条件を満たすことも。よって、固定資産税の課税対象となる3つの条件を満たすと考えられるでしょう。
3方向以上が壁で囲われ、シャッターを付ける場合は、カーポートではなくガレージと呼ばれることが多いですが、ガレージは固定資産税の課税対象に含まれるでしょう。
事業用の償却資産である
カーポートが店舗や事務所の来客用を想定している場合や、営業車両・社用車を保管する設備の場合は、事業用の設備とみなされます。法人や個人事業主が所有する設備は償却資産であり、固定資産税の一種である償却資産税が課されます。固定資産税の対象となる建築物の条件を満たさない場合でも、税金が課される例外的なケースです。
カーポートを建てる際の注意点

カーポートを建てる際の注意点を詳しく見ていきましょう。
カーポートの面積は住宅の建ぺい率に算入される場合がある
固定資産税の対象にならないカーポートも、建築面積に算入されます。建築基準法上の「建築物」として扱われるため、カーポートの面積は建ぺい率に影響します。
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築物の建築面積の割合のこと。建ぺい率の上限は地域によって異なりますが、一般的には40%~60%程度が基準になります。カーポートが建築面積に含まれれば、住宅部分に充てられる建築可能面積が減ります。
1台用と2台以上用のカーポートで固定資産税の有無は変わりませんが、カーポートの面積が広いほど、住宅の建築面積に影響を与えることも。カーポートの設置は建ぺい率への影響を考えたうえで、慎重に進める必要があるでしょう。
建ぺい率の緩和措置がある
一方で、カーポートは特定の条件を満たす場合に、建ぺい率の緩和措置が認められることがあります。具体的には、建築物の端から1mの部分を建築面積に含めずに建ぺい率を算出できます。緩和措置が受けられる建築物の条件は以下のとおりです。
- 外壁を有しない部分が連続して4m以上であること
- 柱の間隔が2m以上であること
- 天井の高さが2.1m以上であること
- 地階を除く階数が1であること
通常のカーポートであれば、上記の条件を満たすことが多いと考えられます。緩和措置を利用すれば、住宅部分に充てる建築可能面積をできる限り減らさずにカーポートを建てられるでしょう。
建築確認申請が必要な場合がある
カーポートの設置には、建築確認申請が必要になるケースもあります。建築確認申請とは、建物の建築や増改築をおこなう際に、建築基準法や関連法令に適合していることを確認する手続きです。
延べ面積10平方メートルを超える建築物を建てる場合、建築確認申請が必要とされています。また、防火地域や準防火地域にある場合は、面積にかかわらず申請が必要になるケースも。建築確認が必要なケースで申請を怠った場合は、違法建築とみなされます。
固定資産税がかからなければ、建築確認申請をしなくてもいいと誤解しないようにしましょう。
境界線を守って建てなければ違法建築になる
カーポートは隣地境界線を守って建てなければ、違法建築になります。建物を建てる際には、境界線から一定距離の確保が必要です。民法では、最低でも50cm以上離すことが定められています。防火地域・準防火地域では、建物の延焼を防ぐために、距離の制限がより厳しくなることも。敷地内であってもカーポートを境界に接する形で建てることはできないため、気を付けましょう。
自己判断で税金がかからないと判断しない
カーポートに固定資産税がかからないと自己判断しないようにしましょう。税務上の判断は、自治体によっても異なるため、正確な判断は難しいものです。あとから自治体の調査で固定資産税がかかることが発覚した場合は、追徴課税などの罰則が科されることがあります。
よって、カーポートを建てる際には、税理士・建築士などの専門家とやり取りをして慎重に進めることをおすすめします。建ぺい率への影響・建築確認の申請・隣地境界線の遵守を含めて、専門家の判断に従うことで、誤解や思い込みによる失敗を防ぐことにつながります。
カーポートの固定資産税についてよくある質問
カーポートの固定資産税についてよくある質問を以下にまとめました。
カーポートに固定資産税はかかる?
柱と屋根のみで構成される一般的なカーポートに固定資産税は原則かかりません。ただし、3方以上を壁で囲ったり、シャッターを付けるケースでは課税対象になる場合があります。
カーポートを建てる際の注意点は?
カーポートは、固定資産税の対象にならなくても建築面積に算入され、建ぺい率に影響を与える場合があります。また、延べ面積10平方メートルを超えるカーポートを建てる場合は建築確認申請が必要です。
固定資産税がかかる条件は?
固定資産税のかかる条件は、土地への定着性・用途性・外気分断性の3つを満たす場合です。一般的なカーポートは、土地への定着性・用途性の条件を満たしていても、外気分断性の条件を満たさないため固定資産税が課されません。
まとめ
カーポートは、柱と屋根のみで構成された一般的なタイプであれば、基本的には固定資産税の対象外になります。ただし、3方向以上を壁で囲い、シャッターを取り付けてガレージに近い構造にする場合は、固定資産税の対象になるでしょう。
さらに自治体ごとにルールも異なるため、すべてのカーポートに対して自己判断で課税対象の有無を判断することは困難です。専門家に相談しながら進めることで、税務や法規上のトラブルを未然に防げます。構造・用途を考えることで、固定資産税のかからないカーポートを建てられるでしょう。
注文住宅を建てる

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ