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ビルトインガレージに固定資産税はかかる?計算方法や注意点を詳しく解説

ビルトインガレージに固定資産税がかからないなどの話は誤りです
住宅の一部にガレージを組み込むビルトインガレージでは、固定資産税の負担額が変わるのか不安に思う方も少なくないと思います。結論を言えば、固定資産税の課税対象となります。

本記事では、ビルトインガレージに固定資産税がかかる理由から計算方法まで詳しく解説します。本記事を読むことで、ビルトインガレージにかかる固定資産税について理解し、本当に建設するべきかを判断できるようになるでしょう。

ビルトインガレージには固定資産税がかかる

ビルトインガレージには原則として固定資産税がかかります
ビルトインガレージには原則として固定資産税がかかります

ビルトインガレージとは、建物の中に駐車スペースを組み込む構造のガレージです。インナーガレージ、ガレージハウスなど、複数の呼び方があります。共通して1階部分に車を駐車するスペースを設け、その上階に居住空間を配置する設計が基本です。

独立したガレージや、屋外のカーポートとは異なり、建物と一体化しているため、限られた敷地でも効率よくスペースを活用できることが特徴。ドアを設置すれば、屋内から直接出入りできる構造であるため、防犯に優れるうえ、悪天候の日でも快適な乗り降りができて利便性があります。

都市部の住宅など、敷地が限られている場合は有効な選択肢ですが、原則として固定資産税はかかります。固定資産税がかからない、安くなるなどの誤解を解くために、より詳細な内容を見ていきましょう。

住宅の延床面積に算入される

延床面積とは、各階の床面積の合計です。住宅の固定資産税は、延床面積の広さに応じて評価額も高くなります。

ビルトインガレージは原則、建築物の一部として扱われます。ガレージ部分も住宅の延床面積に算入されるため、建物全体の固定資産税評価額は上昇する仕組みです。よって、ビルトインガレージを住宅に組み込んでも、固定資産税は安くなりません。ビルトインガレージを含めた建物の延床面積に応じた固定資産税がかかります。

容積率の緩和措置の対象にならない

ビルトインガレージにしても固定資産税が上がらないのでは?と思われる理由の一つが容積率の緩和措置に対する間違った解釈です。容積率の緩和措置において、自動車の車庫や駐輪場は、延べ床面積の5分の1を上限に容積率の計算から外せます。

容積率の緩和措置の効果は、ビルトインガレージを住居に組み込んでも、居住部分が狭くなりにくいことです。例えば、敷地面積50坪で容積率の上限が200%の土地では、延床面積100坪までの家を建てられます。

容積率の緩和措置を利用すると、100坪の5分の1である20坪を延床面積の計算に含めずに建築可能です。ただし、容積率の緩和措置は建築上のルールであり、固定資産税などの税のルールには適用されません。固定資産税の計算では、ビルトインガレージの面積を含めて評価額が決定される仕組みです。

固定資産税がかからない誤解は、容積率の緩和措置の内容が、固定資産税の計算でも適用できるという誤った解釈が広まったことが原因の一つと考えられます。

ビルトインガレージに固定資産税がかかる要件

ビルトインガレージに固定資産税がかかる要件を解説します
ビルトインガレージに固定資産税がかかる要件を解説します

固定資産税は土地と建物に課される税金です。ただし、建物には課税される条件があり、以下の条件をすべて満たさなければ、固定資産税はかかりません。

基準 内容
外気分断性 屋根・柱・三方以上の壁などで囲まれ、外気と明確に区切られている
定着性 土地に固定され、容易に移動・撤去できない状態である
用途性 居住・作業など、人や物を保護・収納するなどの用途を果たしている

ビルトインガレージは、上記の要件をすべて満たしているため、固定資産税の対象になります。固定資産税がかかる建物とみなされる根拠を以下にまとめました。

外気分断性

屋根・壁・天井により、外気を常時遮断できる内部空間が形成されます。シャッターや扉が付属していない前方が開かれている構造であっても、三方以上の壁があれば外気分断性があると判断されて、固定資産税の対象になる可能性が高いでしょう。

定着性

住宅本体と構造が一体であるため、建物として地盤に定着しており、移動・撤去が不可能です。定着性に関しては、議論の余地はなく、該当すると判断できます。

用途性

人や物を保護・収納する用途を果たす、内部空間が形成されています。雨風を防いだ内部での作業や倉庫にも使用できるため、要件を満たすと考えられます。

ガレージと固定資産税の関係性

ガレージと固定資産税の関係性を解説します
ガレージと固定資産税の関係性を解説します

前途で、ビルトインガレージは固定資産税が上がりやすいことをご説明しましたが、すべての住宅の車庫・駐車スペースが固定資産税の対象になるとは限りません。固定資産税がかからない駐車スペースが存在することも、ビルトインガレージも固定資産税がかからないと思う方も少なくないようです。ビルトインガレージに限らず、幅広いガレージと固定資産税の関係性を解説します。

一般的なガレージには固定資産税がかかる

住宅と一体化せず、独立して建てられる一般的なガレージは、外気分断性・定着性・用途性を満たすと考えられることから、固定資産税がかかります。ビルトインガレージに限らずガレージであれば、基本的に固定資産税はかかると考えたほうがいいでしょう。

屋根だけのカーポートには固定資産税がかからない

駐車スペースで例外的に固定資産税がかからない設備には、カーポートがあります。カーポートには屋根部分しか存在せず、壁で囲まれていないことから外気分断性の要件を満たしません。よって、固定資産税の対象外になります。

一般的にガレージは壁に囲まれた車庫を示すため、柱と屋根のみで構成された簡易的な車の保護設備であるカーポートとは区別されます。しかし、建設する駐車スペースの様式によっては、固定資産税がかからないケースもあります。固定資産税の節税を重視する場合、ビルトインガレージよりもカーポートのほうが適しているでしょう。

ビルトインガレージの固定資産税の計算

ビルトインガレージの固定資産税の計算方法を紹介します
ビルトインガレージの固定資産税の計算方法を紹介します

ビルトインガレージの固定資産税の計算式は、以下のとおりです。

固定資産税評価額 × 税率

固定資産税の税率は自治体によって異なりますが、基本的には1.4%。固定資産税評価額の目安は、実際にかかった建築費の60%程度になります。

ビルトインガレージの建築に250万円かかった場合は、以下の計算式で固定資産税額の目安を求められるでしょう。

  • 固定資産税評価額 = 250万円(建築費用) × 60% = 150万円
  • 固定資産税 = 150万円(固定資産税評価額) × 1.4%(税率) = 2万1,000円

以上の結果から、ビルトインガレージの固定資産税は年間数万円程度が目安と考えられます。一回の支払いで考えれば、高くないと感じるかもしれません。しかし、固定資産税は、ビルトインガレージを保有する限りは毎年かかる税金です。一回ずつの支払いは気にならなくとも、毎年支払うとなると家計の負担になってしまうかもしれません。ビルトインガレージを検討する際は固定資産税を含む諸費用についても考慮しておきましょう。

ビルトインガレージの固定資産税に関する注意点

ビルトインガレージの固定資産税に関する注意点を解説します
ビルトインガレージの固定資産税に関する注意点を解説します

ビルトインガレージの固定資産税に関する注意点をまとめました。それぞれ詳しく見ていきましょう。

グレードの高いシャッターは固定費が増加しやすい

ビルトインガレージは、シャッターの仕様やグレードによって固定資産税評価額が上昇するだけでなく、それ以外の固定費が増加する原因にもなります。特に電動式シャッターは評価額を上げやすく、点検費用がかかる場合もあるため、固定費を少しでも節約したい場合は避けたほうがいいでしょう。

木造で建てるほうが固定資産税は安くなる

固定資産税は、建物の構造によっても評価額が変わります。ビルトインガレージを含む住宅を建てる際は、木造で建築したほうが、総合的に固定資産税を抑えやすくなるでしょう。

また、建物は経年劣化するため、3年に一度評価替えがおこなわれる仕組みです。その際には、建物の経年劣化が考慮されて、経年減点補正率を乗じることで、経年劣化が反映される仕組みになります。木造住宅は年数の経過とともに評価額の下落が早いため、ビルトインガレージの評価額も下がりやすいです。長期的に考えても、木造のほうが初期の評価額も低く、減価も早いため、税負担が軽くなるでしょう。

不要な設備を増やさない

ビルトインガレージの固定資産税を節税する場合、できる限り余計な設備を増やさないことが重要です。固定資産税は建物の設備水準によっても評価額が上がるため、必要以上に豪華な設計にすれば税負担が増えます。

固定資産税を抑えやすいビルトインガレージは、照明や換気口などの基本設備のみを搭載した設計です。ガレージリビングなど、車庫以外の機能を求めるほど、住宅部分と同等の固定資産税が発生することも。必要最低限の実用設備を選ぶことは、維持コストを抑えるうえでも合理的です。

具体的な固定資産税額は各自治体に確認する

ビルトインガレージの固定資産税は、全国一律の計算式ではなく、自治体ごとに評価基準や査定方法が異なります。そのため、自分で計算しても正確な税額を知ることはできません。固定資産税は、自治体が毎年おこなう家屋評価調査で算出されます。評価員が現地を確認し、固定資産税評価額を算出する仕組みです。

ビルトインガレージの固定資産税額は、自治体から毎年送付される納税通知書からわかります。また、市役所で家屋評価台帳の閲覧申請をおこなうと確認可能です。最終的な税額は自治体の判断によって確定するため、固定資産税額を知る方法を理解しておきましょう。

固定資産税以外で押さえるポイント

固定資産税以外の観点からビルトインガレージを建てるポイントを紹介します
固定資産税以外の観点からビルトインガレージを建てるポイントを紹介します

ビルトインガレージを建てると決めた場合、固定資産税の節税以外でも押さえておきたいポイントがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

耐震性を重視する

ビルトインガレージは建物の1階部分に広い開口部を設ける構造上、耐力壁が少なくなり、耐震性に不安が残ることが弱点です。一般的な2階建て住宅よりも耐震性を重視した設計が求められます。固定資産税の節税の観点では木造が推奨されますが、耐震性を確保するためには鉄骨造を選択する必要があるかもしれません。

住宅性能表示制度では、耐震等級2以上を確保する設計が基準になります。耐震等級2以上は、仮に数百年に一度程度の大地震が起きても、補修程度で住み続けられる基準です。ガレージのような大きな開口部を設ける住宅は、耐震性を意識した設計が重要になるでしょう。

騒音に気を付ける

ビルトインガレージは建物内部と一体化しているため、車のエンジン音・シャッター音が室内に伝わります。特に寝室をガレージと隣接して配置すると、ガレージ内の音により、日常的にストレスを感じることも。また、シャッター音が大きく、早朝や深夜に開閉する場合は近隣住民とトラブルになる可能性があります。寝室とビルトインガレージを隣接させない間取りや静音性の高いシャッターを採用して、騒音対策に取り組むようにしましょう。

将来を見越して設計する

ビルトインガレージは、一度建てると簡単に構造を変えられないため、将来を見越した設計が重要です。現在は1台しか車を保有していなくても、将来的に2台保有する予定であれば、2台分の駐車スペースが必要になります。

また、開口部を現在の車に合わせて設計する場合、より大きい車に乗り換えた際に車庫入れができなくなることも。高齢になって車を使わなくなった場合のガレージの活用方法なども、建てる前に考えておいたほうがいいでしょう。ビルトインガレージでは、計画性のある建築が、長く快適に暮らせる秘訣です。

ビルトインガレージに関するよくある質問

ビルトインガレージに関するよくある質問を以下にまとめました。

ビルトインガレージは固定資産税がかからないと誤解される理由は?

ビルトインガレージに固定資産税がかからないと誤解される理由は、容積率の緩和措置と呼ばれる建築のルールと税金のルールを混同し、誤った内容が広がったことにあります。また、同じ駐車スペースである屋根と柱で構成されるカーポートには、固定資産税がかからないことも、勘違いが発生しやすい原因になっていると考えられます。

ビルトインガレージにすると固定資産税が高くなるのは本当?

ビルトインガレージは固定資産税がかかりますが、高いかどうかは設計によって異なります。グレードの高い電動式シャッターの採用や、ガレージには不要である設備を導入するほど、固定資産税は高くなりやすいです。反対に照明・換気などの必要最低限の設備を導入し、構造を木造にする設計であれば、固定資産税を節税しやすいでしょう。

税金がかからないガレージは?

固定資産税がかからないガレージは、屋根だけで壁がないカーポートです。外気と遮断されていないことから、固定資産税の要件を満たさないため、課税対象外になります。一般的なガレージの壁がある構造であれば、外気分断性があるため、原則として課税されます。

まとめ

ビルトインガレージは、住宅の一部として建物に組み込まれる構造であり、原則として固定資産税の課税対象になります。固定資産税は、外気分断性・定着性・用途性の3つの要件を満たす建物に課され、ビルトインガレージはすべての条件を満たしているからです。

ビルトインガレージは固定資産税がかかりますが、屋内での車の乗り降りが可能になり、生活動線が効率化する魅力があります。固定資産税以外の問題も理解して設計すれば、魅力的な家づくりが実現できるでしょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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