1,000万円の費用で家を建て替えられる?5つの注意点を解説

自己資金が1,000万円の場合、理想的な建て替えができない可能性が高いです。想定される建て替えの費用によっては、借り入れで予算を増やすために、住宅ローンの利用を検討することもおすすめします。
本記事では、「1,000万円の費用で家を建て替えられるのか」という問題を考えるにあたって、家の建て替えにかかる費用の内訳と各種注意点などをまとめました。記事を読むことで、本当にこの予算で不足はないかを判断できるようになるでしょう。
記事の目次
1,000万円の費用で家を建て替えられる?

1,000万円の費用で家を建て替えられるかを判断するには、家の建て替えにかかる費用の相場を把握しましょう。依頼先によっては、相場の平均以下で建て替えられる可能性もあるため、安く建て替えられる場所も知っておきたいところです。
1,000万円は建て替え費用の平均値を大きく下回っている
家の建て替え費用の平均は、国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」で公開されています。建て替えとリフォームにおける総額と自己資金の金額について、以下にまとめました。
項目 | 総額 | 自己資金 |
---|---|---|
建て替え | 5,745万円 | 2,440万円 |
リフォーム | 137万円 | 112万円 |
まず、建て替えの総額の平均値は5,745万円です。予算が1,000万円しかないとすると、6倍近い差になることがわかります。住宅ローンで借り入れを利用すると仮定しても、自己資金の平均が2,440万円であることから、2倍以上の費用がかかるでしょう。
一方で、リフォームの平均値は137万円であることから、1,000万円の予算で十分に余裕があります。建て替えをしなくてもリフォーム・リノベーションで十分である場合は、建て替えから計画を切り替えることも検討しましょう。平均的な住宅の建て替え資金を想定すると、1,000万円の予算で住宅を建て替えることは難しいでしょう。
依頼先によって建て替えられる可能性はある
大手ハウスメーカーに依頼する場合、多くの顧客に対応することから、建て替えの費用を安くするための間取りの設定、仕様・設備の変更に応じてもらえない可能性があります。
一方、ローコストメーカーは建築費用の安い住宅を提供している会社です。そのため、予算1,000万円でも建て替えを実現できるかもしれません。ただし、大手ハウスメーカーと比較して相場よりも建築費用の安い住宅は、耐震・断熱性能などの住宅性能が一般的な住宅に比べて劣る場合があります。
また、地元に密着した工務店の場合は、できる限り建て替えの費用を安くする工事を請け負ってもらえる可能性があります。ただし、施工の完成度、工期の長さ、サービスの質などは工務店によって異なるため、必ずしも理想の条件で建て替えられるとは限りません。
できる限り低価格で建て替えを実現するなら、依頼先を選ぶことで可能になる場合もありますが、デメリットがあることを十分に理解しておきましょう。
家の建て替えにかかる費用の内訳

家の建て替えにはさまざまな費用がかかることから、予算の少ない状態では余裕をもった建て替えができません。家の建て替えにかかる費用の内訳を以下にまとめました。
- 解体費用
- 地盤調査費用
- 建築費用
- 引越し費用
- 税金を含めた諸費用
建て替え前の古い住宅が建っている状態から、建て替えにかかる費用を順番に紹介します。
解体費用
家の建て替えにおいて解体費用は、建て替える前の古い住宅を解体するために、最初にかかる重要な項目です。費用は建物の構造、規模、使用されている建材、建物の位置や周辺環境によって大きく変動します。
解体費用がいくらかかるかを把握するには、事前に詳細な現地調査をおこない、見積もりを取得することが重要です。また、解体作業の途中で予期せぬトラブルが発生した場合に備えて、予備費用をあらかじめ見込んでおくといいでしょう。結果として総額が数百万円以上になる場合もあるため、建て替え先となる住宅の建築費用についで大きな出費といえるでしょう。
地盤調査費用
家の建て替えにおける地盤調査費用は、建物の安全性を左右する基礎調査にかかる費用です。地盤の強度を詳細に分析して、建物の安定性を確保するためにおこなわれます。
調査は専門の技術者・学者によって実施され、調査範囲の広さと深度、対象となる土地の広さ、アクセスのしやすさなどにより、費用は大きく変動します。場合によっては、調査結果に基づいて地盤改良工事が必要になることも。
その場合は、追加の工事費用が発生するため、費用がかさみます。地盤調査は、住環境の長期的な安全性を確保するうえで重要です。
建築費用
家の建て替えにおいて、新しい住宅の建築費用がもっとも大きな割合を占める項目です。面積を基準とすることから、費用は「1坪あたりの費用 × 面積」で計算できます。
建築費用は、希望する住宅の機能性が高いほど上昇しやすくなります。地域ごとの人件費、資材費の相場などによっても変わるでしょう。
コストを抑えることだけを考えて、完成後の住環境の快適さや耐久性を損なわないために、不動産会社との相談を重ねることが重要です。
引越し費用
家の建て替えにともない、新居への移転が必要となる場合、引越し費用も重要な予算です。引越し会社に支払う費用はもちろん、家が完成するまでの仮住まい先が必要な場合は、住居費もかかります。
短期間であればホテルも利用できます。しかし、1カ月以上滞在する必要がある場合は、費用を抑えるために短期的に借りられる賃貸物件やマンスリーマンションの利用も検討しましょう。
税金を含めた諸費用
家の建て替えには、税金などの諸費用が発生します。建て替えで発生する税金は、以下のとおりです。
- 不動産取得税:家の取得にかかる税金
- 登録免許税:不動産の所有権と抵当権の登記に必要な税金
- 印紙税:建設工事請負契約書に課される税金
ほかには火災保険・地震保険の保険料など、複数の費用が発生します。住宅を建て替える際には、諸費用も含めて資金を用意する必要があります。
ここまで家の建て替えにかかる費用の内訳を紹介しました。解体作業のトラブル、地盤調査による追加の工事費用など、抑えようと考えても予期せずに追加で発生する費用は出てきます。そのため、住宅の建て替えは1,000万円の予算にこだわらずに、資金に余裕をもっておこなう必要があるでしょう。
1,000万円の予算で家を建て替える際の注意点

1,000万円の予算で家を建て替える際の注意点をまとめました。
- 予算が足りない場合は住宅ローンを利用する
- 削減してはならない費用は減らさない
- 複数の会社で見積もりを取る
- リフォーム・リノベーションも検討する
- 建築費の高騰が続いている
それぞれ詳しく見ていきましょう。
予算が足りない場合は住宅ローンを利用する
ここまでの内容を踏まえて家を建て替える場合、予算1,000万円では、自己資金だけですべてを賄うことは非常に困難になるでしょう。予算に対して必要な金額が大きく上回る場合は、住宅ローンを利用して建て替えをおこなうことが現実的な選択肢になります。解体する住宅の住宅ローンの残債が残っている場合は、建て替えローンを組むと現在の住宅ローンの残債と一本化して返済可能です。
建て替え費用の平均を大きく下回っている1,000万円の予算では、多くのケースで住宅ローンの借り入れを前提とする建て替えが求められます。
削減してはならない費用は減らさない
限られた予算で家を建てる際、全体のコストを削減したいところでしょう。しかし、削減してはならない費用は減らさないことが大切です。特に建物の耐久性など、安全に関わる費用は妥協しないようにしましょう。
また、住んだあとのことを考えると、建物の快適性を左右する費用まで削減すると後悔につながります。新居を安全で快適に過ごすために、必要な費用を取捨選択して、不要なコストを削減するようにしましょう。
複数の会社で見積もりを取る
家の建て替えでは、解体費用と建築費用が大きな割合を占めるため、複数の会社から見積もりを取ることが重要です。各社が提示する費用は異なるため、一社だけの見積もりで決めてしまうと、より低い予算で工事を受け付けてくれる会社を見逃してしまうかもしれません。
建て替えは、古い建物の解体と新しい建物の建築まで対応してくれる会社もあれば、片方のみしか対応していない会社もあります。サービス内容を含めて、複数の会社を比較することが重要です。コストパフォーマンスの高い会社を選定できれば、低い予算で満足度の高い建て替えを実現できるでしょう。
リフォーム・リノベーションも検討する
1,000万円の予算であれば、新しい家に建て替えるだけでなく、既存の住宅に対するリフォームやリノベーションに方針を転換することも有力な選択肢です。建て替えは大規模な工事を必要とするため、費用が膨らみます。
一方、リフォームやリノベーションの場合、既存の構造を活かしつつ、必要な部分のみを改善することで、全体のコストを抑えられるでしょう。建て替えの目的が住環境の質の向上であれば、建て替えでなくても対応できる可能性があります。
しかし、建て替え前の住宅がひどく老朽化しており、リフォーム・リノベーションをおこなう必要がある設備が多い場合は、建て替えるほうが予算を抑えられるかもしれません。そのため、住環境を改善するには建て替えでなければならないケースもありますが、一般的に費用を抑えるならリフォーム・リノベーションが適切な場合もあります。
建築費の高騰が続いている
近年、建築費が高騰しており、住宅建設において避けられない大きな課題です。具体的には、木材や鉄鋼などの主要な原材料費や、原材料を運ぶための輸送費の上昇が挙げられます。
従来の相場よりも建て替え費用が増加しやすい状況にあるため、1,000万円の限られた予算で建て替えを完遂することは難しいでしょう。今後も建築費の高騰が続けば、1,000万円で建て替えできるケースがより減少していくと予測されます。
経済状況や市場動向によっても、建築費は増加する可能性があります。物価の高騰を含めて余裕をもった予算で建て替えをおこなうことが求められるでしょう。
以上の注意点から、1,000万円の予算で現在の住環境を改善したい場合は、以下の対策を取ることをおすすめします。
- 1,000万円を初期費用に住宅ローンを組んで資金を借り入れる
- 1,000万円の予算の範囲内でリフォーム・リノベーションを検討する
建て替えの必要があり、1,000万円を初期費用に住宅ローンを組みたいと考えている方に向けて、住宅ローンのシミュレーションを次の項目で紹介するため、参考にしてください。
1,000万円を頭金にする場合の住宅ローンのシミュレーション

住宅ローンにおける頭金の割合の平均は、場合によって異なります。国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」によると、頭金の割合と家の建築資金の平均は以下のとおりです。
種類 | 頭金の割合 | 建築資金 |
---|---|---|
建て替え | 42.5% | 5,745万円 |
新築 | 26.5% | 4,034万円 |
統計的には、建て替えのほうが頭金を支払う割合は大きくなっています。しかし、一般的に住宅ローンの適切な頭金の割合は、10%~30%程度といわれています。1,000万円を頭金にし、頭金割合を40%と25%にした場合の住宅ローンのシミュレーションを見てみましょう。
頭金割合を40%にする場合
1,000万円を頭金、頭金割合を40%に設定すると、建て替えの予算は2,500万円まで増額します。そのため、借入金額を1,500万円とした場合のシミュレーションを以下にまとめました。
- 借入金額:1,500万円
- 返済期間:35年
- 金利:2.0%
- 金利タイプ:固定金利
- 返済方法:元利均等返済
項目 | 金額 |
---|---|
毎月の返済額 | 4万9,689円 |
総返済額 | 2,086万9,380円 |
利息 | 586万9,380円 |
返済期間は35年としていますが、余裕資金がある場合は、繰り上げ返済をおこなって支払う利息を軽減して、返済期間を短縮してもいいでしょう。
頭金割合を25%にする場合
頭金を1,000万円、頭金割合を25%に設定する場合、建て替えの予算は4,000万円になります。建て替えの総額の平均値である5,745万円に近い価格であるため、現実的に建て替えを実現しやすい予算であるといえるでしょう。
借入金額を3,000万円とした場合のシミュレーションを以下にまとめました。
- 借入金額:3,000万円
- 返済期間:35年
- 金利:2.0%
- 金利タイプ:固定金利
- 返済方法:元利均等返済
項目 | 金額 |
---|---|
毎月の返済額 | 9万9,378円 |
総返済額 | 4,173万8,760円 |
利息 | 1,173万8,760円 |
建て替え前の家における住宅ローンの残債が存在しており、建て替えローンを組む場合は、残債の金額によっては返済負担が重くなるかもしれません。建て替えローンを返済する場合は、残債と新しい借入金額を含めたローンの返済負担を考える必要があります。
まとめ
家の建て替えにかかる総費用の平均が1,000万円を大きく上回ることから、この予算での建て替えは難しいかもしれません。
予算の範囲内に収めるなら、建て替えではなくリフォーム・リノベーションをおこない、住環境の改善を図ることも選択肢のひとつといえるでしょう。予算を超過しても建て替えたい場合は、住宅ローンを利用して建て替え費用を補うことも検討したいところです。
どのような選択をする場合でも、予算がギリギリになる資金計画で住環境を改善することはリスクが高いため、余裕をもって資金を用意できる状態で臨むようにしましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ