『モテキ』などで知られる大根仁がメガホンをとり、ジャンプで連載を目指す少年二人が、夢に没頭していく姿をエネルギッシュに描いた映画『バクマン。』。主人公のサイコー(真城最高=佐藤健)とシュージン(高木秋人=神木隆之介)が、その青春のすべてを捧げる仕事部屋には、「友情」「努力」「勝利」+「恋」が詰まっている。美術監督を務めた都築雄二さんは、漫画道を極めたこの空間を、どのように生み出したのだろうか。
漫画愛と人間愛に溢れた映画美術
サイコーとシュージンが漫画を描く仕事部屋を、「原作に忠実につくろうと思った」と語る美術監督の都築さん。台本を読んでからずっと探していたのは、「窓からサイコーが漫画を描いている姿が見え、その建物の向こうに街が広がっている」という画が成立する場所だった。
「二人が住んでいる街は架空で良かったんです。この作品には、ジャンプ編集部という決定的なリアリティのある場所がある。『ジャンプVSサイコーとシュージン』という構造のお話だから、仕事部屋は細かく説明する必要がない。逆に編集部はしっかりしていないといけないので、リアリズムを追求しました」
「二人が住んでいる街は架空で良かったんです。この作品には、ジャンプ編集部という決定的なリアリティのある場所がある。『ジャンプVSサイコーとシュージン』という構造のお話だから、仕事部屋は細かく説明する必要がない。逆に編集部はしっかりしていないといけないので、リアリズムを追求しました」
もとはサイコーの叔父である川口たろうの仕事場だったこの部屋。彼のパーソナリティを表現したのが大きなデスクの後ろにある本棚だ。
「川口たろうを誰に例える?と言ったら監督の大根仁さんかなと。だから、大根さんの漫画をそのまま持ってきて本棚に並べました。いろいろ混ぜるのが嫌だったので、小物も大根さんのもの。この話は漫画道だから、一人の漫画史がそこにありたかった。要は大根さんの漫画史ですね(笑)」
「川口たろうを誰に例える?と言ったら監督の大根仁さんかなと。だから、大根さんの漫画をそのまま持ってきて本棚に並べました。いろいろ混ぜるのが嫌だったので、小物も大根さんのもの。この話は漫画道だから、一人の漫画史がそこにありたかった。要は大根さんの漫画史ですね(笑)」
やがてこの部屋は、サイコーとシュージンに受け継がれ、彼らの仕事部屋へと変わる。その変化はどう加えていったのか。
「一言でいうと、“混乱”。最初は叔父のものを引っ張り出して二人は興味津々だったけど、そのうちそれすらもどうでも良くなって自分の漫画の世界へ没頭していく。二人の性格を美術で分かりやすく表現しなかったのは、すでに原作漫画にムードがあったから。若干の悩みとしては、好きな女の子のために漫画を描くというひとつの動機だけで、生身の人間がここまで頑張れるのか?と(笑)。50歳を過ぎて、その感情を理解するのが最も苦しい所でした(笑)」
「一言でいうと、“混乱”。最初は叔父のものを引っ張り出して二人は興味津々だったけど、そのうちそれすらもどうでも良くなって自分の漫画の世界へ没頭していく。二人の性格を美術で分かりやすく表現しなかったのは、すでに原作漫画にムードがあったから。若干の悩みとしては、好きな女の子のために漫画を描くというひとつの動機だけで、生身の人間がここまで頑張れるのか?と(笑)。50歳を過ぎて、その感情を理解するのが最も苦しい所でした(笑)」
映画には個性的なライバル漫画家たちも登場する。それぞれの仕事場のシーンは少ないため、分かりやすく表現したという。
「イメージ画を描くときは、そのキャラクターが座る姿勢から描いていきました。畳の部屋で裸になって描くとか、部活みたいにアシスタントと輪になって描く、とか。
二人のライバルであるエイジ(染谷将太)は半地下みたいな場所に、ポンと上から光があたるような部屋にしようと。自分の漫画だけで生きているような子だから。大きな紙に絵を描いたのは、漫画に囲まれているようにして、彼のキャラクターが部屋をわーっと走り回っているようにしたかったからです」
エイジの部屋
「イメージ画を描くときは、そのキャラクターが座る姿勢から描いていきました。畳の部屋で裸になって描くとか、部活みたいにアシスタントと輪になって描く、とか。
二人のライバルであるエイジ(染谷将太)は半地下みたいな場所に、ポンと上から光があたるような部屋にしようと。自分の漫画だけで生きているような子だから。大きな紙に絵を描いたのは、漫画に囲まれているようにして、彼のキャラクターが部屋をわーっと走り回っているようにしたかったからです」

広い空間を巧みに使い、キャラクターたちの動きや役割を見事に取り込んだ配置。クローゼットからトイレに続く一角には棚を並べ、廊下のように見立てた空間が。原作からあえて修正をした部分で、都築さん曰く「漫画の細道」。両脇の棚には数多くの漫画が並び、その場でのシーンは漫画家が辿る運命が表現されている。こちらは是非劇場で確認してほしい。
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#96(2015年10月号 8月18日発売)『バクマン。』の美術について、都築さんのインタビューを掲載。
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Profile
プロフィール

美術監督
都築雄二
tsuzuki yuji
62年愛知県生まれ。96年『月とキャベツ』で美術監督デビュー。おもな作品に『四月物語』(98)、『恋の門』(04)、『セイジ 陸の魚』(12)、『謝罪の王様』(13)、『宇宙兄弟』(14)など。『PARTY7』をはじめ、ほとんどの石井克人監督作に参加している。映画、ドラマ、CMと幅広く活躍。16年の公開待機作に、李相日監督の『怒り』がある。
Movie
映画情報

バクマン。
監督・脚本/大根仁 原作/大場つぐみ 小畑健(「バクマン。」ジャンプ・コミックス/集英社刊) 出演/佐藤健 神木隆之介 染谷将太ほか 配給/東宝 (15/日本/120min)
高い画力のある最高は、物語を書くことに長けている同級生の秋人に漫画家になろうと誘われる。漫画家だった叔父を想い、1歩を踏み出せずにいた最高だが、片思い中の亜豆との約束を機に、コンビを組むことを決意。週間少年ジャンプの頂点を目指し動き始める! 10/3~全国公開
©大場つぐみ・小畑健/集英社
©2015映画「バクマン。」製作委員会
バクマン。公式HP