暮らしのコト

満腹御礼 ご当地肉グルメの旅

ビジュアルと味で2度驚く!大阪府豊中市の「ワニ肉料理」

この「記事」が気に入ったらみんなにシェアしよう!

みんなにシェアしよう!

全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。
今回やってきたのは大阪府豊中市です。

豊中市は大阪市の北側にあり、人口は約40万人と府内で5番目の規模です。市内北西部には大阪国際空港(伊丹空港)があり、日本各地への空の便を支えています。

さらに、豊中市はスポーツ(大会)の発祥の地としても知られています。「全国高等学校野球選手権大会」の現在の舞台は阪神甲子園球場ですが、その前身となった「全国中等学校優勝野球大会」の第一回大会(1915年)が行われたのは、豊中市玉井町三丁目にあった豊中グラウンドだと言われています。

また、同グラウンドで1918年に行われた「第一回日本フートボール優勝大会」が、高校ラグビー・サッカーの発祥と言われています。中学・高校アメリカンフットボールのルーツとされる「府立豊中高校(旧制豊中中学校)」もあり、現在のさまざまなスポーツの歴史が、豊中市から始まっているのです。

そんな豊中市にやってきたのは、全国的にも珍しい「ワニ肉」を使った料理をご当地グルメとしてPRする活動をしている人々がいると聞いたためです。なぜ豊中でワニ肉なのか? ワニ肉料理とは一体どんなものなのか? 期待を胸に抱きつつお店に向かいます。

今回訪れたのは“ワニ肉イタリアン”を掲げる「coccodrillo(コッコドリッロ)」です。阪急電鉄宝塚線服部天神駅からすぐの場所にあります。

こちらがcoccodrillo。ワニ皮模様をあしらった大きな看板が特徴です。

こちらがcoccodrillo。ワニ皮模様をあしらった大きな看板が特徴です。

テーブル席の他にもカウンター席もあり、広々したおしゃれな店内です。

テーブル席の他にもカウンター席もあり、広々したおしゃれな店内です。

お店に入るとオーナーシェフの津留直大さんが迎えてくれました。豊中市でなぜ今、ワニ肉料理が話題になっているのでしょう?

ワニの頭蓋骨をもって陽気に迎えてくれたオーナーシェフの津留さん。

ワニの頭蓋骨をもって陽気に迎えてくれたオーナーシェフの津留さん。

津留さん「豊中市とワニの関係が始まったのは、豊中市待兼山町にある大阪大学豊中キャンパスの敷地内から、全長7mの大型ワニの化石が出た1964年。このワニの化石は出土した地名からマチカネワニと名付けられ、今も貴重な研究資料として大学内の博物館にて保管・展示されています。このことから市のキャラクターとして『マチカネくん』というワニのキャラクターも生まれました」

市のキャラクター、マチカネくんはマンホールも描かれるほどの愛されぶり。

市のキャラクター、マチカネくんはマンホールも描かれるほどの愛されぶり。

かなり昔から豊中とワニの関係は始まっていたんですね。

津留さん「豊中市は大阪中心部へのアクセスの良さから、ベッドタウンとして発展してきた土地。市内の大部分は住宅地で農地はほとんど見られません。伝統料理なども特になく、これといった名物がない土地だったんです。そこで私の先輩が『もっと豊中を盛り上げたい』と発起し、豊中市に関係の深いワニの肉を名物にしようと活動を始めました」

でも、市のキャラクターであるワニを食べるというのは、少し抵抗がある気もするのですが…。

津留さん「活動を始めた3年ほど前は、『ワニなんて食べたことないし…』『マチカネくんを食べるなんて…』など否定的な意見もありました。しかし昨年、豊中市政80周年を迎えるにあたり、なにか目玉商品を作りたいという市からのバックアップもあり、今までただワニ肉といって提供していたものを市のキャラクターにちなみ『マチカネミート』と新たに名付けました。そしてイベント等でワニ肉料理を広める活動をしたところ、その味が大好評だったんです。今では地方からもワニ肉を求める人が、豊中に来るようになりました。最初は発起人と私を含め3店舗だけだったワニ肉の提供店も8店舗まで増え、和食、イタリアン、焼きそば、丼ぶりなど、さまざまなジャンルのワニ肉料理が食べられるようになりました」

マチカネミートを食べられるお店の目印として立っている旗。

マチカネミートを食べられるお店の目印として立っている旗。

津留さん「このいい流れを途切れさせてはいけない、ワニ肉料理のアンテナショップを作ろうということで、2016年12月に、当店をニューオープンさせました。開店して1ヵ月ですが、おかげさまで好評です。今日は数あるメニュー中からいくつかお出ししますので、マチカネミートを存分に味わってみてください」

今回は特別に厨房にも入らせていただきました!

津留さん「1品目は1番人気の『ワニハンドの香草オーブン焼き』です。塩コショウで下味をつけ、フライパンで表面に焼き色をつけてから、オーブンで全体に火を通して行きます。大きさにもよりますが、20〜30分で完成です」

これが調理前のワニ肉。手前がワニの手、奥が次の料理で使うワニの舌です。

これが調理前のワニ肉。手前がワニの手、奥が次の料理で使うワニの舌です。

熱したフライパンで表面に焼き色をつけていきます。

熱したフライパンで表面に焼き色をつけていきます。

ワニハンドを皮ごとのフライパンで焼き上げ、カイエンペッパー、さまざまなハーブをブレンドした「エルブドプロヴァンス」を全体になじませオーブンの中へ。そして、こちらがこんがりと焼き上がった「ワニハンドの香草オーブン焼き」です。

「ワニハンドの香草オーブン焼き」2880円。

「ワニハンドの香草オーブン焼き」2880円。

目の前に置かれるとやはり迫力のあるビジュアルです! その姿に圧倒されますが、ハーブの爽やかな香りと、肉の焼けた香りが食欲をそそります。ワニハンドはそのままかじりついてもいいですが、若干食べにくいので食べやすくカットしてもらうのがおすすめ。

爪も皮もそのままのビジュアルは迫力満点!

爪も皮もそのままのビジュアルは迫力満点!

カットしてもらったワニハンド。

カットしてもらったワニハンド。

それでは、皮のない肉の部分から食べてみましょう。手に持ってみるとハリのある肉の弾力を感じます。カットされた肉だけを見ていると、鳥の手羽先や手羽中と勘違いしそうです。

ひと口かじってみるとコショウとカイエンペッパーのスパイシーな味の後に、ハーブの風味が広がります。クマやイノシシ肉のジビエ料理によくある獣肉臭さは一切ありません。脂はさっぱりと、ジューシーな鶏肉に近い感じがします。ワニ肉というとやはり少し尻込みしてしまいますが、味は万人受けしそうですね!

続いて、皮付きの部分をいただきたいと思います。ワニ皮にかぶりつくという経験は未体験です! 食感は、こんがりと焼かれた皮がパリッとしています。その皮下にある柔らかなゼラチン質がとろけていき、さっぱりジューシーなお肉が現れます。味は皮付きの部分のほうがワニ肉の良さを出しているように感じます!

鶏ムネ肉のようなさっぱりとしたお肉です。

鶏ムネ肉のようなさっぱりとしたお肉です。

津留さん「ご存知の通り、ワニ皮は高級バックや財布の素材として使われています。そのため、皮付きのほうが仕入れ値は格段に高くなります。しかし、みなさんにはぜひワニ肉の良さを存分に味わってもらいたいので、皮付きで提供しています」

味のおいしさももちろんのこと、見た目のインパクトも相まって、宴会やパーティーで注文したら、大盛り上がり間違いなしの料理ですね!

続いて出てきたのは「ウワニ(ウニ乗せワニタンの炙り)」です。

「ウワニ」780円。

「ウワニ」780円。

こちらは薄くスライスしたワニの「タン」を炙り、ウニと芽ネギをあしらった一品。見た目には全く“ワニ感”はなく、とてもおしゃれなお料理です。

食べてみると、先ほどのワニハンドとは全く違った食感と味です。プリッとした食感のあと、ジュワッと溢れる脂。ウニの濃厚なまろやかな風味が広がり、芽ネギのシャキッとした食感がアクセントになっています。

味付けは塩コショウとオリーブオイルとシンプルで、素材の旨味がダイレクトに感じられます。食感と味は、豚の首の肉「豚トロ」が近いでしょうか。牛や豚のタンとは全く違った味に驚きつつも、これもリピートしたくなるお肉ですね。

そして最後に出てきたのが「ワニの気持ち」。なかなかユニークな料理名ですが、どこの部位なのでしょうか?

津留さん「これはワニの『ハツ(心臓)』を使った料理です。しっかり血抜きをしたあとに、下ゆでをして臭みをとります。それからトマトソースで煮込んだ料理です。イタリア料理の『トリッパのトマトソース煮込み』から着想を得たメニューです」

 「ワニの気持ち(ワニハートのトマト煮込み)」580円。


「ワニの気持ち(ワニハートのトマト煮込み)」580円。

ワニの心臓ですか! これはまた珍しい部位ですね。

色が茶色いほうがハツ本体、白いものがハツモト(心臓に近い大動脈)です。ハツ本体はコリッとしたしっかりした歯ごたえです。時間をかけた下ごしらえのおかげで、内臓肉特有な血生臭さは全く感じません。口の中で2回3回と噛んでいくと旨味がますます楽しめます。ニンニクの効いたトマトソースとの相性も抜群で、お酒がつい進んでしまいそうですね。

ハツモトは、ハツ本体に比べると、プルッととした食感です。じっくり煮込まれているのでとても食べやすく、ハツモトの旨味をしっかりと堪能できます。

箸でつかんでいるのがワニのハツ。

箸でつかんでいるのがワニのハツ。

今回は3品いただきましたが、本当にどれもおいしくワニ肉の虜になりそうです。これらの料理に使われているワニ肉は、どこで仕入れているのでしょうか? 豊中ではワニの畜産が盛んなのでしょうか?

津留さん「ワニは大阪産ではありません(笑)。当店に限らず、マチカネミートはタイの提携養殖場のものを使用しています。すべて安心安全で、おいしさにもこだわったワニ肉です。種類でいうとシャムワニというワニになります」

最後に、今後の計画などがあったら聞かせてください。

津留さん「実は、ワニ肉はその栄養成分の高さでも注目されている健康食材でもあります。低脂肪・高タンパクでダイエットに効果的と言われているオメガ3系脂肪酸や、美容に欠かせないコラーゲンも多く含まれています。また脳の発達を助けるというDHAや免疫力を高めると言われているビタミンB6、貧血予防に効果があるというB12も豊富に含まれています。一般的に食卓でよく食べられている、牛・豚・鶏肉と比べるとどれもワニ肉のほうが含有量は高いんです。今後は、病院食として利用するという話も出てきました。これからもっとマチカネミートを広げていき、豊中市の人々、そして県外の人も健康になっていただければと思っています。今後もマチカネミートを広げる活動をしていきたいですね」

味だけではなく、健康成分まで豊富とは、ワニ肉は本当に素晴らしいですね! 食の台所と呼ばれる大阪には数々のおいしいものが溢れています。しかし、マチカネミート以上のビジュアルインパクトとおいしさを兼ね備えたものはないでしょう!

大阪に来た際には中心部から少し足を伸ばして、ぜひ豊中まで行ってみてください。そこには今まで味わったことのない、ワイルドな味(未)体験が待っていますよ。

  • 施設情報
    ●coccodrillo(コッコドリッロ)
    住所:大阪府豊中市服部元町1-4-11
    電話:06-4866-9177
    営業時間:月~木、日、祝日: 17:00~23:00 (ラストオーダー 22:30)
    金、土、祝前日: 17:00~翌0:00 (ラストオーダー 23:30)、不定休

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

この「記事」が気に入ったら
みんなにシェアしよう!

RANKING

MATOME