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読者賞について

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読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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 電源ボタンを押してみるが、暗闇のまま作動しない。
 ネットで対処法を調べて実行することにした。どうやら、その対処法が適切だったようだ。自然乾燥させるため、放置していたスマホが息を吹き返したのだ。
 安堵のため息とともに、俺はゲーム画面を開くのであった。

「申し訳ありませんが、基盤にまで水が浸透しているみたいでして」
 店員が申し訳なさそうに謝る。
 一度は復活したスマホであったが、内部では故障の傷が広がりつつあったようだ。それでも、使えていたため放っておいたのだが、電池の消費スピードが早くなり、やがて充電しても電源がつかなくなった。そのため、修理できないかと店に来ているのだ。
「やっぱり、修理は難しいですか」
「型も古いですし、買い替えた方がよいかと思います」
「そうしようかな」
 五年近く使っているし、そろそろ買い替えたいと思っていた。それに、今まで払っていた家賃も必要なくなったので、金銭面には少し余裕がある。
「それなら、こちらに最新機種がございますよ」
 店員の案内に従い、スマホの説明を受けて、最新機種にすることに決めた。前にスマホを買った時にはなかったプランの説明を受けて、新しいスマホを手にとる。
 代金を支払った後、店員が俺に尋ねた。
「こちらのスマホは、いかがいたしましょうか。当店でデータを初期化した上で廃棄することが可能ですが」
 壊れたスマホを持っていても仕方ない。店員の言葉に従い、スマホの廃棄を任せることにした。
「ありがとうございました」
 店員に見送られて店を後にする。じりじりとした日差しに目を細めた。
 心を踊らせながら、新しいスマホの電源を入れる。スマホメーカーのロゴが表示された後、ホーム画面が現れた。いつもように、ゲームを起動させようとタップした時、アプリがないことに気づいた。
 そういえば、再インストールしないといけないんだった。五年近く同じスマホを利用していたから、すっかり忘れていたのだ。
 再インストールして、ゲームを起動する。
 しかし、いつものホーム画面ではなくチュートリアルが開始された。
「データ移行しないといけないんだっけ? ……あっ! 俺のID、メモしてないや」
 データ移行には、IDとパスワードが必要だ。しかし、スマホが故障するなんて露にも思っていなかったから、IDをメモしていなかった。
「まぁ、いいか」
 今まで課金してきたゲームデータを手放すのは惜しいが、スーパーレアは一通り揃えてしまい欲しい景品は、ほとんどなくなった。それに、すでに俺の部屋には高級家具が溢れかえっている。これ以上、家具は必要ないと考えていた頃だった。ちょうど良い機会だ。これ以上、ゲームをするのは辞めよう。

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