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読者賞について

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読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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 おそらくはチュートリアルの時にでも書かれていたのだろう。しかし、どのゲームも同じことが書かれているだろうと勝手に予想して、飛ばしてしまったのだ。
「すぐに確認いたします」
「大丈夫。俺が勘違いしていただけだから」
 俺の言葉に田上が携帯を操作する手を止める。
「では、我々はこれで失礼します」
 田上が去っていくのを見送った後、部屋に入り、改めて室内を見渡した。
 1LDKの質素な部屋。「ヒロキの部屋ってどんなの?」と聞かれたら「テーブルに、テレビに本が少しあるくらいかな」としか答えられないくらい何もない。まるで不動産で見せられる見本のような部屋だった。だから、彼女に「ださい部屋ね」と言われて別れることになったのだ。
 だが、今は違う。
 イタリアの高級家具が配置されたのだ。イタリアというだけでオシャレ感がある響きだ。これで、俺の部屋もオシャレに一歩近づいたと言えるだろう。
 それにしても、さすがは高級と言われているだけはある。この計算されつくしたデザイン。白を基調とした色彩。どれをとっても素晴らしい。と評論家気取りで眺めてみる。
 実際は、どこがどう素晴らしいなんて全然分からない。数万円の家具と並べられていても、見抜ける自信がないと胸を張って言える。だって、家具なんて一度も考えたことはなかったし、ましてや高級家具なんて俺には一生縁がないものだと思っていたから、知識は全くないのだ。
 気づいたら、高級家具の威圧感に押されてソファの前で正座していた。少し座ってみようかな、と腰を上げる。だが、イタリア産、高級という言葉が俺に重くのしかかり、いきなり座るのを躊躇わせる。
 そこで、座る前に恐る恐るソファを人差し指で押してみることにした。
 なんだ。これは? 全てを包み込む柔らかさ。それでいて、適度な反発。それに、人肌に触れ合っているかのような安心感さえある。
 じーん、と感動に身を委ねること数分、ようやく座る決心をする。
 母親のように俺を包み込むソファ。まるで、乳児に戻ったかのような錯覚に陥った俺は、そのまま安らぎのひとときを過ごしたのであった。

 教卓で先生が難しい話をしている。
 単位のためにテストが簡単なことで有名な授業を受けたはいいが、正直に言えば退屈でしかない。はやく終わらないかな、と時計に視線を送る。一秒、二秒と秒針が、ゆっくり動いている。
 そして、ようやく授業を終了させるチャイムが鳴った。
 それと同時に、俺は一目散に教室を後にした。椅子を引く音や教科書を片付ける音、生徒たちのざわめきの中、先生が「次回の宿題として……」と言っているが、かまうものか。

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