「いつも庭を見ながら、ここで料理をつくるんですよ。ちょっと一杯やりながらね」と話してくれたNさん。 整然と調理器具が配置された機能的なキッチンには、厨房という表現が ふさわしい。それもそのはず、ご主人は結婚後に奥さまの出身地鹿児島に移り住み、調理師免許を取得。奥さまの実家が経営する旅館の板前をしていたという。このキッチンにはご主人のこだわりとプロならではの工夫が詰まっている。
「独立型のキッチンは集中して食材に向き合えますね」(ご主人)。 東に配されたキッチンは芝が敷かれ明るい庭に面している。大きな窓側に面して並ぶのはガスコンロ、作業台、シンク。キッチンのセンターには大理石を採用した重厚なアイランド型カウンターを配置。その空間を取り囲むように調理器具をハンギング収納し、カウンターを挟んで食器収納。キッチンと直線でつながるパントリーの奥にはユーティリティーという配置で、家事動線も抜群だ。毎日の夕飯はご主人がつくり、奥さまは片付けを担当するという。
「朝など1人のときはカウンターでササっと済ませます。その分夕食はたっぷり時間をとって、2人で過ごすんです。片付けもディスポーザーがあるので、とても便利」(奥さま) 設計を担当したのは建築事務所、COGITEの蒲牟田健作さん。夫婦の希望は大きな屋根を持つバリアフリーの平屋。テイストは奥さまが大好きな建築家、フランク・ロイド・ライトのエッセンスを取り入れたという。しかし単なる模倣ではなく、住む人の好みや価値観を取り入れ、そしゃくした上ででき上がったオリジナルの家だ。
右手のテレビを掛けた壁には自然石タイルを貼って重厚感を高める。正面には長女の書を額装して飾った |
庭に続く軒の深いテラスに面したLDを囲むように書斎、寝室、洗面浴室などの水回り、客間、キッチンが配されている。LDの壁の一面は自然石タイルで仕上げ、火を楽しむための暖炉が据え付けられた。庭に面した窓の障子で光の陰影を調整。アンティークなテイストの洋家具と和家具が在しながら、不思議な調和を生み出し、重厚さとともに安らぎを感じさせる空間に。
共に経営する会社の業務や趣味、ボランティア活動にと忙しい毎日を過ごすNさん夫妻。そんな夫婦は、お互いの時間を尊重しながら、食を介して2人の充実した時間を演出。この家は、夫婦の穏やかで贅沢な暮らしを包み込んでいるようだ。