雄大な風景を眺め、心地よい暮らしを営む 高台にあるロケーションハウス
LDKの大窓は、開けたときに室内と風景が一体になるよう引込み戸に。アクセントとして一部にレッドシダーの壁を取り入れた
2021.08.20

雄大な風景を眺め、心地よい暮らしを営む 高台にあるロケーションハウス

街並みや海を見晴らす高台に一戸建てを新築。段階的に景色を楽しめる奥行きのある空間づくりにより、自然と家族がつながる住まいに

TRIP
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自営業を営むご実家で職住一体の生活をしていたKさんご夫妻は、「職場と自宅は別の方がくつろげる」と、以前から思いを募らせていた一戸建てを新築することに。通勤圏内で土地探しをはじめたが、そこには揺るぎないイメージがあった。「出張や旅先でふと目にする自然豊かな景色には、心なごむものがあります。自宅にいながらその気分を味わえたら、どんなにいいだろうと思っていました」(ご主人)

物件データ 所在地/神奈川県横浜市
面積/116㎡
築年月/2017年12月
設計/西久保毅人(ニコ設計室)
www.niko-arch.com
プロデュース/ザ・ハウス
thehouse.co.jp

見つけた土地は、高台で視界が大きく開かれているのはもちろん、街並みや往来する電車、海まで望める叙情的な風景に、何より心を捉えられたという。「ただ景観をダイナミックに表すのではなく、段々と広がっていく奥行きのある住まいにしたいと思いました」と話すのは建築家の西久保毅人さん。外を一望する開放的なリビングにした一方で、1階から2階へ貫く円筒の小部屋を設置。キッチンの壁は大きく湾曲させ、〝こもれる〞場所をつくった。曲線を多用したユニークなつくりは、もう一つの意図がある。

敷地は高台にあるため、今後、建物が建っても視界が遮られる心配はない。デッキでは朝食をとるほか、椅子を出してくつろぐことも

西側の道路から見た外観。杉板や植物をあしらい威圧感が出ないようにした。東に向かって傾斜しているため、朝日が気持ちよく、眺望も良好
玄関土間の横にワークスペースを配置。ふとしたときに景色を眺められるように窓を設けた

「親子は一緒にいたいときと、離れていたいときの両方があると思うんです。完全に空間を隔てると触合いの機会を逃してしまうし、オープン過ぎてもストレスになります。目的が定まらず、工夫する余地がある方が、家族が心地よくつながれると考えて、あえて一見無駄で用途が不明確な場所もつくりました」(西久保さん)当初はモダンな住まいを望んでいたご主人だが、これに深く共感。奥さまの意向もあり、家族のあり方を最優先するプランで進めてもらったという。「お正月に親戚が集まってちゃぶ台を囲むような、気楽に過ごせるところが気に入っています」(奥さま)

床に大判タイルを張ったキッチンは昔の台所のような風情が。湾曲した壁の間にできた曖昧なスペースは路地裏のよう

掘座卓にしたダイニングでお子さんと料理をしたり、リビングにテントを張って寝転がったり、のびのびと家族の時間を楽しんでいる。「この家に住んでから親子の距離が近くなった」というご主人は、続けてこう話す。「起抜けの朝日も仕事終わりの薄暮も、晴天も雨天も見飽きることがありません。毎日、居心地の良い旅館を訪れたように『いいなあ』と思います」至極の眺望を今日も心ゆくまで楽しんでいる。

「子どもの成長を見守りたい」と子ども部屋に扉は付けず、あえて未完成なつくりに。子どもたちは閉じこもることなく、ほぼLDKで過ごす
円筒の小部屋(こもり部屋)は吹抜けで、上部からほんのりと明かりが届く。「リビングだと音が広がるので、ここでギターを弾いています」(ご主人)
text_ Makiko Hoshino photograph_ Akira Nakamura
取材協力

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