東京23区で特に空き家の増加が大きな問題となっている豊島区。その中で、空室率40%から、若い人たちが次々と入居を希望する人気物件へと変化を遂げたマンションがある。JR山手線「目白」駅から徒歩5分、住宅地に建つ築47年の「目白ホワイトマンション」だ。好立地にもかかわらず、2013年の時点で全13室のうち6室が空室。困り果てたオーナーは、この状況を打開するために、らいおん建築事務所の嶋田洋平さんに相談をもちかけた。嶋田さんは建築設計のプロであるとともに、リノベーションで街や建物を再生する数多くのプロジェクトを手掛けている。
「当初、オーナーから1室の改装を依頼された嶋田さんだが、「単に1室を改装するだけでは、現在の空室や今後の経営管理の根本的解決にはならないと思いました。『賃貸でも自分好みの空間を』という人は多いですから、入居者が欲しい空間を自由につくることができる、改装可能な賃貸マンションとしてアピールすることを提案したんです」
まず嶋田さんは、特に状態がひどかった住戸を自ら賃貸契約し、ちょうど住替えを考えていた知人の竹沢愛美さんに転貸して、ともにリノベーションすることに。間取りや仕上げ、設備などは竹沢さん自身が計画。改装可能な賃貸物件であることを広めるため、施工中にワークショップを開催した。 「基本はプロにお願いしながらも、床張り、天井と壁の塗装、壁紙貼り、タイル貼りなど、工事の要所要所で友人を誘ってDIYしたり、Facebookで告知してワークショップを開いたり、自分も工事に関われる方針をたてました」と竹沢さん。和室二間続きだった暗い部屋は、ノスタルジックな香りがするおしゃれな空間に生まれ変わった。
「壁紙やペイントの色も自分で決めたし、イメージ通りの部屋で暮らせてうれしいですね」(竹沢さん) この改装がWEBでの紹介記事やSNSで世間に広がり、空室だらけだったマンションはわずか4カ月で満室になった。重矢浩志さんも、友人とDIYでレトロモダンな部屋に改装した住人のひとりだ。 「インテリアやDIY好きがたくさん集まった現在は、たびたび食事会やイベントを開いて、和気あいあいと住人同士の交流を楽しんでいます」(重矢さん)