犬を飼うにはいくら必要?初期費用や月々の費用を解説

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犬の生涯にかかる費用はおよそ350~530万円
アニコム損害保険株式会社の「2021年の1年間にペットにかけた年間支出費用」によると、犬の飼育にかかる年間費用は、345,572円。犬の平均年齢は10~15年ですからおおよそ350~530万円かかる計算になります。シャンプーやトリミングの頻度や、動物病院へ通う回数によって異なりますが、犬を迎え入れる前にある程度のお金が必要ということを認識しておきましょう。
犬を飼うときにかかる初期費用は?
犬をお迎えするには、必ずやらないといけないこと、準備しておくべきものがあります。まずは、犬を飼うにあたり必要な準備とその金額について説明します。
畜犬登録
犬を飼う場合には、現在居住している市区町村に、飼い犬の登録をすることが法律により義務付けられています。市区町村は登録によって犬の所有者を明確にし、どこで犬が飼育されているかを把握します。生後91日以上で登録手続きがまだ済んでいない犬の飼い主は、住んでいる市区町村で登録手続きしなくてはいけません。なお、引越しする場合には、移転先の市区町村窓口への届出が必要です。登録手数料は1頭につき3,000円程度となります。
狂犬病ワクチン接種
犬の飼い主は、飼い犬に年1回の狂犬病ワクチンの予防注射を受けさせることが法律により義務付けられています。狂犬病は感染後、発症すると治療することができない怖い病気です。しかし、予防注射をすることで発症を予防することができます。ワクチン接種は生後91日以上になったタイミングで、なるべく早く受けさせましょう。その後は、毎年1回の予防接種で免疫を補強させます。
毎年ワクチン注射をすることで犬を狂犬病から守ることはもちろん、飼い主自身や周りの人、動物への感染を防止できます。狂犬病ワクチン接種の料金は1頭につき3,000〜4,000円が目安。市区町村がおこなう集合注射、または動物病院で接種することができます。
マイクロチップ装着費
2022年6月1日から、ブリーダーやペットショップなどで販売される犬や猫について、マイクロチップの装着が義務化されました。これは、迷子や災害などで愛犬とはぐれてしまったとき、保護された犬の身元がわかるようにするためです。そのため、2022年6月1日以降に生まれた子犬には、原則としてマイクロチップが必ず装着されていることになります。
そのため、飼い主は犬をお迎えしたとき、マイクロチップの情報を飼い主のものに変更しなければなりません。マイクロチップの情報を更新する方法には書類申請とオンライン申請の2種類があり、それぞれ登録料は書類申請が1,000円、オンライン申請が300円となります。
2022年6月1日以前に迎え入れた、あるいは譲り受けた犬へのマイクロチップ装着は義務付けられていませんが、動物病院に依頼してマイクロチップを装着することも可能です。費用は動物病院によって異なりますが、3,000円~1万円程度です。
混合ワクチン接種
混合ワクチンは、狂犬病ワクチンのように法律で義務付けられているものではありません。しかし、できるだけ接種しておいた方がよいでしょう。犬がかかる恐れのある複数の病気に効果的なワクチンを組み合わせて、一度に摂取します。犬ジステンバー、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス 2 型感染症、犬パルボウイルス感染症など組み合わせは2種混合から11種混合まで種類があり、どの混合ワクチンを選ぶかは犬種や生活環境に合わせて決めます。動物病院によって値段は異なりますが、種類が少ないもので3,000円程度、多いもので1万円程度となるでしょう。
飼育グッズ
ここからは、犬をお迎えするにあたって揃えておきたい飼育グッズについて、代表的なものとその費用についてご紹介します。
サークルやケージ
室内で犬を飼育する場合は、サークルやケージを用意しましょう。犬は縄張り意識の強い生き物なので、囲われた自分だけのスペースがあると安心します。犬だけで留守番をさせる際にも安心ですし、ペットホテルや病院に預ける場合も、サークルやケージに慣れていると対応がスムーズです。
一般的に屋根と床がついているものをケージといい、柵をつなげて囲むタイプをサークルといいます。価格は5,000円程度から10万円以上のものまでさまざまです。
トイレ
トイレトレーは室内犬の必需品です。大きさはおしっこの漏れを防ぐため、犬の体の2~3倍のものを選びましょう。トイレトレーの上にトイレシートを敷いて使います。子犬の場合、好奇心からシートを食べてしまうことがあるかもしれません。そのため、メッシュのカバー付きのものを選ぶと安心です。オスは足を上げてオシッコするので、飛散ガード付きのものを選ぶとよいでしょう。1,500円〜2,000円程度で用意できます。
食器
犬用の器は、安定感のあるものを選びましょう。犬が勢いよく顔を突っ込んで食べても食器がずれないよう、滑り止めがついているものがおすすめです。また、土台とボールが分離式になっているものは、ボールのみ取り出して洗えるので手入れがらくでしょう。価格は500円~3,000円くらいで購入できます。
フード
食感別にウェット、ドライ、半生タイプがあり、幼犬、子犬、成犬、高齢犬の成長段階によって栄養が計算されています。毎月のフード代を平均すると5,000円程度ですが、成長段階によって与える量も変わり、大型犬になるほど食費は高くなります。ドライよりも半生やウェットの方が値段は高く、ウェットタイプに慣れてしまうとドライタイプを食べなくなる犬もいます。災害時などは、フードの入手も困難になることを考え、あまり好き嫌いがないよう育てるようにしましょう。
リード
犬種や犬のサイズに合わせて、犬が引っ張ったり噛んだりしてもちぎれない丈夫なもの、耐久性があるものを選びましょう。長さが固定のものと伸縮性があるものがあり、伸縮性のあるものの方が犬の自由度が高くなります。ただし、伸びるぶんだけ車道に飛び出てしまう危険もある点に注意してください。ロック機能がスムーズに使えるかどうかも、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。散歩コースに合わせてリードを使い分けるのもいいかもしれません。平均購入価格帯は1,500円から3,000円程度です。
おもちゃ
おもちゃは、犬の本能である狩りの欲求を満たしてくれます。人間のおもちゃは子どもの間だけですが、犬の場合は成犬や老犬になっても遊ばせることで認知症予防や運動不足解消にもつながります。しつけや訓練用にも使えますし、楽しく遊んでストレスを発散させましょう。
犬は飽き性なので、いろいろなタイプのおもちゃを用意しておくとよいでしょう。お留守番させるときは、エサやおやつを詰められるタイプのものを与えると飽きずに遊んでくれます。また、噛むと音が出るおもちゃは、犬の興味を惹きつけます。獲物に見たてたおもちゃを噛むことで本能を満たすことができるとともに、歯の表面を磨くなど、歯磨き代わりにもなるでしょう。
日用品(シーツ・シャンプーなど)
トイレトレーに敷くシーツ(シート)は、毎日使う消耗品です。一般的に犬の1日の尿量は体重1kgあたり24〜41mlで、回数は2〜3回が正常とされています。シーツは薄型で吸収力の高いもの、スポットで吸収して広がりにくいものなど、さまざまなタイプが販売されています。シーツが汚れていると排泄を我慢してしまう性格の犬もいるので、適切なタイミングで交換・お掃除しましょう。愛犬の健康状態を排尿の色でチェックできるように、白一色で作られているものもあります。使い捨てのものはシーツ1枚あたり100円程度。洗って繰り返し使えるもので2,000円〜3,000円程度です。
生体の購入にかかる費用は?
いざ、犬をお迎えするならばどのような出合いががあるのでしょうか。ここでは、代表的な出合いの場を5つご紹介し、どれくらい費用がかかるのかご紹介します。
ペットショップ
予約不要で、気兼ねなく犬の様子を見学することができ、ビビッときた犬に出合ったらすぐにお迎えできるのがペットショップです。犬の大きさや動き、表情などを間近に見て、複数の中から比較検討することができます。ショップによって値段はまちまちですが、およその目安はトイプードルで約30〜70万円程度、フレンチブルドッグで約30〜80万円程度、ゴールデンレトリバーは約20万〜50万円程度です。血統書付きの犬の価格は繁殖が難しいものほど値段が高くなり、また、犬種の特徴が濃く現れている個体ほど値段が高くなる傾向があります。
ブリーダー
最近ではインターネットで検索して、個人のブリーダーや犬舎から直接購入する人も増えています。個人のブリーダーには、犬種を絞って繁殖させている人も少なくありません。飼いたい犬種が決まっている人は探しやすく、血統や毛の色など、こだわりを持って探すことができます。ブリーダーが父親犬や母親犬の写真を公開している場合は、幼犬の成長した姿が想像しやすいでしょう。
おおよその目安ですが、トイプードルで15万円くらいから150万円を超えるものまであり、同じ犬種でも値段に開きがあります。
動物愛護センター
動物愛護センターは保健所がおこなう業務のうち、動物関連業務を引き継いだ地方公共団体の施設です。その名前のとおり、動物愛護に関する活動を積極的におこなっています。動物愛護センターでは、飼い主の死亡や飼育放棄など人間の都合により飼育されなくなったペットや、飼い主不明のペットたちを保護しています。
動物愛護センターから犬をお迎えする場合、譲渡代は無料のことが多いでしょう。ただし各都道府県により、マイクロチップのデータ登録料などにかかる譲渡手数料(数千円程度)が必要な場合があります。
動物愛護センターから犬を迎え入れることは、ひとつの命を救うことに繋がります。詳しく知りたい場合は、お住まいの管轄の動物愛護センターや福祉局に問い合わせてみましょう。Webサイトで犬の情報を公開して飼い主を募集している動物愛護センターもあります。
保護団体
NPO法人が運営する動物の保護団体から犬をお迎えするケースでは、保護犬の医療費や日々のケアの一部を譲渡代として負担します。保護団体では、病気などを理由にブリーダーが飼育を放棄した犬や、多頭飼育崩壊した現場から引き取られた犬が保護されていることが多いでしょう。犬種や年齢、性格などが詳しく紹介されているWebサイトもあります。
個人から譲ってもらう
第一種動物取扱業者として登録していない人や団体は、動物を譲渡する際に対価を得ると動物愛護管理法違反になります。そのため、個人間の譲渡の場合、医療費の実費がかかる場合以外は無償で譲り受けることが可能です。知り合いから譲り受ける以外に、掲示板サイトやSNSなどで里親を募集している人を探す方法もあります。
犬を飼うのに月々かかる費用は?

アニコム損害保険株式会社の「2021年の1年間にペットにかけた年間支出費用」によると、犬にかかる年間費用はおおよそ35万円で、月々に換算すると、2万9千円ほどのようです。犬種によってトリミングの頻度も異なりますし、犬の体調によって病院に通う回数も異なるため、一概とはいえませんが2万~3万円の出費があっても自身の生活に影響がないようであれば問題はなさそうですね。
おおよその出費は以下の通りですので、ぜひ参考にしてください。
1か月あたり | 年間 | |
---|---|---|
フード・おやつ | 5,494円 | 65,924円 |
サプリメント | 1,281円 | 15,370円 |
日用品 | 1,197円 | 14,364円 |
首輪・リード | 582円 | 6,984円 |
洋服 | 1,091円 | 13,096円 |
防災用品 | 63円 | 761円 |
ケガ・病気の治療費 | 4,949円 | 59,387円 |
ワクチン・保険診療等の予防費 | 2,725円 | 32,695円 |
ペット保険 | 3,849円 | 46,187円 |
シャンプー・カット・トリミング料 | 4,227円 | 50,723円 |
ペットホテル・ペットシッター | 417円 | 5,001円 |
ドッグランなどの施設 | 221円 | 2,650円 |
しつけ・トレーニング料 | 624円 | 7,489円 |
交通費 | 1,077円 | 12,929円 |
光熱費(飼育に伴う追加分) | 1,001円 | 12,012円 |
合計 | 28,798円 | 345,572円 |
(出典: アニコム損害保険株式会社「2021年の1年間にペットにかけた年間支出費用 」)のデータを基に算出
生涯に一度かかる費用
エサ代やシャンプー代など日常に必要な支出費用以外に、生涯に一度かかる費用があります。それが、オスの去勢手術とメスの避妊手術です。「無駄な手術だ」「かわいそう」と感じてしまう飼い主もいるかもしれませんが、繁殖を防ぐ目的以外に獣医が手術を勧める理由があります。それぞれの手術が必要な理由と、かかる費用について詳しくみていきましょう。
去勢手術
獣医が去勢手術を勧める一番の理由は、精巣嚢腫や前立腺肥大といった生殖器系の病気が発生する心配をなくしてくれることです。前立腺肥大は9歳を超える犬では90%以上の確率で発症し、寿命を縮めてしまう可能性も。去勢手術をすると、生殖器系の病気にかからなくなるだけでなく、マーキング行動や足を上げて排尿する行為に一定の効果があります。去勢手術をおこなう時期は個体差もありますが、体が成熟し、性成熟を迎える前の生後半年から8カ月頃がよいとされています。
去勢手術にかかる費用は、小型犬や中型犬の場合で1万5千円〜2万円程度、大型犬の場合で3万円程度が目安となります。術前検査代、薬剤代、麻酔薬、処方箋などが別途かかる場合もあり、その費用は手術費と同じくらい、またはそれ以上になる場合があります。自治体によっては去勢・避妊手術に対し、助成金・補助金を交付していることもあるようです。
避妊手術
望まない妊娠を避けるために、避妊手術をおこないます。避妊手術をすると子宮水腫、子宮蓄膿症、卵巣嚢腫、卵巣腫瘍の発生リスクや、犬の死因の上位にあがる病気、悪性腫瘍(ガン)のうち、メス犬に最も発生しやすい乳腺腫瘍の発生率をさげてくれるのです。
避妊手術を行おこなう時期は初めての発情が起こる前、生後6~8カ月齢が適するとされます。この時期に手術をおこなった場合、避妊手術をしていない犬に比べて乳腺腫瘍の発生率は0.5%といわれています。
避妊手術にかかる費用は、小型犬や中型犬の場合で2万円〜4万円程度、大型犬の場合で5万円~7万円程度が目安。術前検査代、術後の抜糸、麻酔薬、処方箋などの費用の目安は3万円ほどです。自治体によっては、去勢・避妊手術に対して助成金・補助金を交付しているところもあります。
賃貸物件で犬を飼ったらかかる費用
マンションなどの賃貸物件で犬を飼う場合に、かかる費用についても知っておきましょう。
敷金や礼金が上乗せされる
ペット可能なマンションの場合でも、犬を飼育する場合は敷金や礼金が上乗せされることがあります。通常、敷金は賃貸物件の現状復帰の修繕費に充てられるもの。上乗せされる理由は犬を飼った場合、人間のみが生活する場合に比べて、傷やにおい、汚れを取るためにかかる費用が多くなるためです。家賃の1カ月分〜2カ月分の料金が敷金として上乗せされることが多いですが、別途礼金が必要な物件などもあります。
退去時に原状回復費用がかかる
国土交通省のガイドラインによると、原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。借りた当時の状態に戻さないといけないわけではなく、通常使用した場合の経年劣化などは対象となりませんが、犬の飼育によって建物の価値が減少した場合、原状回復費用がかかります。
たとえば犬がドアや柱をかじったり、爪を立ててキズをつけてしまったりした場合、部屋全体に糞尿のニオイが染み付いている場合など通常のクリーニングで対応できない修繕に関しては、預けていた敷金の額を超える高額な修繕費用を請求される恐れがあります。
壁や柱の傷や汚れ
原状回復費用は、具体的にどのくらいかかるのでしょうか? 修繕箇所ごとに相場の価格をお伝えすると、まず壁紙(クロス)に傷や破れがあった場合は、傷のついた箇所の壁一面を張り替えます。壁紙の張り替えにかかる費用の相場は、シンプルな量産品の壁紙クロスの場合で1平方メートルあたり800円~1,000円ほど。部屋全体の壁を張り替えたと仮定すると、6畳部屋の張り替え費用の目安は3万円〜5万円です。高級素材のクロスを使っている場合は、同じ部屋の大きさでも倍近くになる場合もあるでしょう。
柱に噛んだ後やひっかき傷がついている場合は部分補修になり、目安として柱1本につき1万円〜6万円ほどかかります。傷が深く、箇所も多くて柱を交換しないといけない場合の目安費用は、1本につき5万円〜10万円程度です。
フローリングの傷や汚れ
フローリングに傷や汚れがついて張り替えをする場合、費用の相場は1平方メートルにつきおよそ8,000円〜2万円です。無垢材を使ったフローリングの場合は、さらに高額になるでしょう。なお、クッションフロアの場合は1平方メートルにつきおよそ2,200円〜4,500円程度です。犬が粗相することを考えて、入居のタイミングでフローリングの上にクッションフロアを敷いておくとよいかもしれません。
室内のにおい
部屋に染み付いたペットのにおいは取れにくく、消臭するには専門知識と技術が必要です。とくに糞尿のにおいは強く、消臭剤の散布やオゾン消臭だけでなく、床を剥離しないといけない場合まであります。通常のハウスクリーニングに少し上乗せした金額で済む場合もありますが、1平方メートルあたり1,500円〜7,000円程度かかることも。愛犬の健康のためにも、日々のトイレ掃除はマメにおこなっておきましょう。
まとめ
かわいいから、犬との生活は楽しそうだからと、犬を飼うことに憧れを持つ人は少なくありません。しかし、犬の面倒を一生見るのには、それ相当の費用がかかることを事前に知っておきましょう。また、賃貸物件で犬を飼った場合は、初期費用が通常よりも高くなるかもしれません。さらに、退居の際の原状回復費用が高額になる場合もあります。こうしたことを理解したうえで、自分に無理なく犬を飼うことができるか十分に検討してください。
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