木造アパートの防音や耐震性は?メリット・デメリットや対策ポイントを解説

どことなく「古そうで防音性が低い」、「家賃が安い」、「耐震性が低そう」などのイメージを持たれることもあるでしょう。
しかし、こうした木造アパートのマイナスイメージは対策することで解消することが可能です。また、木造アパートに住むメリットもあるため、賃貸物件を探すときには木造アパートも検討に入れることおすすめします。
本記事では、木造アパートについて、住むことのメリット・デメリット、防音や寒さ対策などを解説します。 木造アパートのよさを知ったうえで幅広い条件から検討し、自分に合った賃貸物件を探すようにしていきましょう。
記事の目次
木造アパートの特徴
木造アパートの建物構造について解説します。
木造とは?
「木造」とは建物の主要構造部が木材で建築された建物構造のことです。
建物の主要構造部とは、建築基準法では「壁・柱・床・梁・屋根・階段」と定義されています。
この部分をすべて木材で作られたアパートが木造アパートです。
RC造、鉄骨造との違いは?
RC造とは、鉄筋コンクリート造の略称で、鉄筋を組み合わせたものをコンクリートで包み固めた構造です。
鉄筋は引き延ばす力に強く、コンクリートは圧縮力に強く、お互いの長所を重ねて建物強度を上げています。
強度が強いため、高層階の建物を建築するときによく利用されます。
鉄骨造とは、建物の主要な部分を鉄や銅を組み建築する構造です。
厚さが6mm以上の鋼材を用いて建築した場合は「重量鉄骨造」と呼び、6mm未満の鋼材を用いた場合は「軽量鉄骨造」と呼ばれます。
柱をあまり使わず建築することができるため、空間を広く取りたいときに利用されます。
木造とは、建物を建築する材料から違い、耐震性や強度に違いがみられます。
また、RC造や鉄骨造にはほとんど通気性や吸湿性がないという特徴もみられます。
高品質な木造アパートはマンション表記に
2021年12月より「不動産情報サイト アットホーム」をはじめ一部不動産ポータルサイトに、高品質な木造アパートは「マンション」として表記ができるようになりました。
通常、木造の場合は高品質であっても「アパート」と表記していたため、区別が付きにくいことがありました。
本来、高品質の木造アパートであれば、一般的な木造アパートのマイナス面はほとんどありません。
そのため、マンションへの表記変更が認められることにより木造アパートによいイメージがつき、木造アパートのさらなる不動産取引の活性化が期待されています。
なお、マンションと表記できる高品質木造アパートの条件は次のとおりです。
【対象物件】
- 3階建て以上の建物であること
- 集合住宅であること(ただし、タウンハウスやテラスハウスなどの連棟式建物を除く)
この対象物件の条件を満たしたうえで、建物の性能基準もクリアする必要があります。
【建物の性能基準】
住宅性能表示制度による住宅性能評価書で①の条件を満たしたうえで、②の条件のいずれかの条件をクリアしなければなりません。
- ① 耐久性
「3-1.劣化対策等級(構造躯体等)」が等級3あること - ② 耐震性
「1-1.耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)」が等級3あること
または耐火性「2-6.耐火等級(延焼のおそれのある部分(開口部以外))」が等級4もしくは耐火構造であること
木造アパートのメリット・デメリット
木造アパートに住むことにはメリットのほかデメリットもあります。
ここからは木造アパートのメリットとデメリットを紹介していきます。
木造アパートのメリット
まずは木造アパートのメリットを紹介します。
木造アパートの具体的なメリットは次のとおりです。
家賃が抑えられる
木造アパートのメリットの1つ目は「家賃が抑えられる」ことです。
木造は鉄骨造やRC造に比べて比較的安価に建築することができます。
家賃は建築費の高さに影響を受けるため、木造アパートの家賃は鉄骨造やRC造に比べて家賃が低くなる傾向があります。
デッドスペースが発生しにくい
木造アパートのメリットの2つ目は「デッドスペースが発生しにくい」ことです。
木造は柱よりも構造で建物強度が決まるため、柱は4寸でも3.5寸でも強度がある建物を建築することができます。
つまり木造は柱が細くても強度を保つことができる構造なので、柱や梁のせいでできてしまうデッドスペースを少なくすることができます。
そのため、家具の配置がしやすい間取りにすることが可能です。
部屋の通気性や吸湿性が高い
木造アパートのメリットの3つ目は「部屋の通気性や吸湿性が高い」ことです。
木造は鉄骨造とRC造と違い建物に隙間ができるため、気密性が少し下がります。
そして、隙間ができることにより風の通り道ができ、通気性が上がります。
また、木材は湿気を吸うこともあり、通気性と相まって冬の結露などが起きづらくなります。
湿気や結露が起きるとカビなどの健康に害を与える可能性がありますが、その発生を抑えることができます。
木造アパートのデメリット
次に木造アパートのデメリットを紹介します。
木造アパートの具体的なデメリットは次のとおりです。
音漏れがしやすい
木造アパートのデメリットの1つ目は「音漏れしやすい」ことです。
音は振動することで伝わる仕組みになっており、鉄骨などよりも揺れる木材は音を伝えやすい材質のため音漏れがしやすくなります。
その他も隙間ができやすいため、隙間から音が漏れてしまいます。
音漏れや防音性についてはさまざまな対策ができます。後の章で詳しくご紹介します。
耐震性・防火性が心配
木造アパートのデメリットの2つ目は「耐震性や防火性が心配」なことです。
木造は鉄骨造やRC造より耐震性や防火性がやや弱いというデメリットがあります。
ただ、建築するときに守らないといけない法律では、建物は震度5程度では損傷せず、震度7くらいの地震では崩壊しない建物を建築することを基準としています。
そのため、木造は地震に弱く大地震に耐えられないというようなことはありません。
ただし、この基準ができたのは1981年のため、それより新しい木造アパートについての話となります。
また、木材は火が付きやすいというデメリットはあるものの、火がついても、そこから炭になるまでに時間がかかるため逃げる時間が稼ぎやすいほか、完全に倒壊はしづらいというメリットもあります。
冷暖房が効きにくい
木造アパートのデメリットの3つ目は「冷暖房が効きにくい」ことです。
木造は隙間ができやすい構造のため、鉄骨造やRC造に比べて熱が外に逃げやすくなります。
そのため、冷暖房の効く範囲が狭くなってしまいます。
デメリットに感じますが、熱が外に逃げないよう、さまざまな対策ができます。
木造アパートの防音対策
先ほど説明したように、木造アパートは音が漏れやすい傾向があります。
ですが最近の木造アパートは音漏れがしづらい石膏ボードを採用していたり、音を吸収する床を採用していたりするため、昔よりは防音性が向上しています。
その他に、音漏れ対策は自身でおこなうことも可能です。
ここからは自身でできる音対策について紹介していきます。
クッションタイルを敷く

床の上にクッションタイルを敷くことで下の階への音を防止することができます。
また、クッションタイルの他にも厚手のカーペットを敷くことでも音を防止することが可能です。
防音カーテンをつける
木造アパートの場合、室外からの車の音や電車の音が響くときもあります。
このような外からの音は防音カーテンを付けることで対策が可能です。
また、二重サッシになっている木造アパートに住むことも外からの音対策になります。
壁側に家具を置く
隣の部屋との壁側にタンスや本棚などの家具を置くことで、音を防ぐことができます。
音は振動することで伝わるため、壁を厚くする代わりとして家具を壁側に配置しましょう。
防音シートを窓に貼る
外からの音を防止する方法として、防音カーテンを付けること以外にも防音シートを窓に貼る方法があります。
防音シートはホームセンターやネットショップなどで簡単に手に入ります。
木造アパートの耐震性・防火性
木造アパートの耐震性や防火性は年々向上しており、築年数が新しい場合は耐震性も耐火性も高くなります。
耐震性については1981年6月に建築するときの耐震性基準が改正され、木造住宅の耐力壁の量などが見直されました。
前述したとおり震度5程度の地震では損傷せず、震度7の地震では崩壊しないことを基準として建築方法でしか建物を建てることができません。
また、2000年にも法律が改正され、建築前の地盤調査が事実上義務化されるのと同時に基礎構造も見直しされました。
これにより建物の強度も地盤の強度も兼ね備えていないと建築できなくなりました。
築年数が新しい木造アパートは耐火性も向上しています。
構造は木でも建材は不燃材などを使用しており、技術が進歩するごとに耐火性が上がっています。
木造アパートの寒さ対策

木造アパートは鉄骨造やRC造に比べ隙間ができやすく、冬場は室内が寒くなりがちです。
しかし、音の問題と同じく対策することにより寒さも和らげることができます。
ここからは木造アパートの寒さ対策を紹介していきます。
隙間を塞ぎ外気の侵入を遮断する
玄関ドアや引き戸の下などに隙間テープを貼ることで隙間をふさぎます。
隙間テープとは、片面がスポンジの素材になっているテープのことです。
隙間テープで隙間をふさぐことにより、防寒対策になると同時に防音対策にも虫の侵入も防ぐことができます。
厚手のカーテンにする
厚手のカーテンを取り付けることにより、外の寒気の流入を防ぎます。
その他にも床まで届く長めのカーテンにするのも防寒対策になります。
床にアルミシートを敷く
床にアルミシートを敷き、その上にカーペットやラグ、クッションタイルを置くと床からの冷気を遮断することができます。
アルミシートは100円均一ショップでも売られており、簡単に手に入ります。
木造アパートに合う・向いている人
木造アパートには住むことのメリットやデメリットがあり、木造アパートに合う・向いている人の特徴もあります。
ここからは木造アパートに合う・向いている人はどのような人なのか紹介していきます。
家賃を抑えて広い部屋に住みたい人
木造アパートは、家賃を抑えつつ広い部屋に住みたい人に向いています。
木造アパートは鉄骨造やRC造よりも家賃や管理費が低く、室内を有効的に利用できる傾向があります。
家賃が抑えられる傾向にあるのは、木造は建築費が抑えられる結果、大家も家賃を高く設定しなくても建築費を回収することができるからです。
また、RC造のように太い梁が室内に出ておらず、家具を自由に置くなど部屋の広さを確保することができます。
生活音が気にならない人
生活音があまり気にならない人も木造アパートに向いています。
木造アパートは隣の部屋の音や外の音が室内に伝わりやすい傾向があります。
そのため、鉄骨造などに比べると生活音が立ちやすくなります。
ただし、生活音がすることに対しては、自身で対策することが可能なため、そこまで気にする必要はないかもしれません。
ご近所付き合いが好きな人
ご近所付き合いが好きな人も木造アパートに向いているといえるでしょう。
木造アパートはマンションに比べて小規模建物のため、どのような住人が住んでいるのかマンションより把握しやすくなります。
そのため、顔を合わせる人も限定され、マンションより近所付き合いがしやすくなるでしょう。
カビなどハウスダストにアレルギーがある人
木造アパートは湿気が溜まりにくいため、ハウスダストにアレルギーがある人に合っています。
木材は吸湿性や通気性に優れるため、結露などが起きづらくなります。
そのため、ハウスダストの原因であるカビやダニなどが発生しづらくなります。
耐震性・防火性が低いとは限らない?変化していく木造アパート
前述したように、木造アパートの耐震性・防火性は年々向上しています。
近年の木造アパートの耐震性や防火性はRC造の建物のレベルに近づきつつあります。
木造アパートは元々部屋を広く使うことができ、建物を支えているのが柱や梁のため、デザイン性を持たせることができます。
耐火性や防火性が向上し、デザイン性にも優れた建物が建築できるのが木造なのです。
最近ではデザイナーズマンションのような木造アパートも増加しています。
また、木造のよさとしてリフォームしやすい点も挙げられます。
そのため、リフォームやリノベーションをおこなった木造アパートもあり、新築ではなくても室内は新築のような木造アパートを選択するのもいいでしょう。
まとめ
木造アパートの主要構造部分は木材で建築されており、木材を利用することのメリットやデメリットがあります。
ただ、木造アパートのデメリットは自身で対策することにより、マイナス面を抑えることができやすいのが特徴です。
最近は耐震性や耐火性に優れた高品質な木造アパートやデザイン性に優れた木造アパートも多く出てきています。
そのため、木造アパートというだけで賃貸物件探しの選択肢を外すのではなく、一度検討に入れてみるのもいいでしょう。
選択肢が広がれば満足のいく賃貸物件が見つかりやすくなるため、木造アパートも選択肢に入れて希望の物件を探していくことをおすすめします。