
リノベーションマンション事例「まるで戸建ての開放感。光が広がる大空間で愛すべき家具と暮らす」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、愛知県名古屋市のTさんご家族の事例をご紹介します。都市部のマンションがこんなに開放的に。南東向きの大きな窓から光がたっぷりと注ぐT邸の一日は、清々しい朝日とともに始まる。(text_LiVES photograph_ Hiroshi Tanigawa)
仄暗い廊下を抜けてリビングに入ると、マンションの一室とは思えない気積の大きさに驚かされる。斜めにかかる天井高は最大5m。階段を上がると子どもたちの遊び場もある。まるで戸建てのスケールだ。
「延べ床面積が106㎡でロフトを含めると120㎡。新築ではなかなか手が届かない広さが決め手でした。南に窓が並んでいたので、壁と天井を壊せば明るく開放的になることも想像できました」(Tさん)

大空間の迫力に負けないボリュームのある造作キッチン。ワークトップにはサンゲツの大判タイル「GARZAS」を採用。一枚で継ぎ目なく仕上げている。

造作のスチール階段を上がると子どもたちのプレイルームがある。階段下にはマグカップコレクション専用のキャビネットがぴたりと収まるスペースを確保した。
夫妻はともにインテリアメーカー勤務。言うまでもなく家具や素材に人一倍のこだわりがあった。長年愛用しているTRUCKのソファやダイニングセット、キャビネットなどを活かせる空間にしたいということも、リノベーションで実現したかったことのひとつ。そうした感覚を共有できる依頼先を探して出会ったのが、イランイランの藤川祐二郎さんと金瑛実さんだ。二人がつくりだすインテリア映えするキッチンを始め、細部まで行き渡る洗練されたデザインセンスに惹かれたという。
「好きな家具の話をしたり、私たちが設計した家を実際に見てもらったりしながら、Tさんと意思の疎通を図っていきました」(金さん)

キッチンの床を上げて排水勾配をとりつつ、ステージのような造りに。左手にはパントリーを備え、冷蔵庫から出した食材をすぐに洗えるサブシンクも設置した。

LDKのベースとなる壁や天井はシンプルなモノトーンに。その中で、アイアンの階段や室内窓、節ありのオークフローリング、大ぶりのタイルを張った家具のようなキッチン、モルタルを塗って引き立てた構造柱など、場所によって力のある素材を使い分けている。
広い空間は、ともすれば持て余してしまいがちだが、心地よい空気感で満たされているのは、
「置かれる家具や空間ボリュームとのバランスを計算したうえで、ディテールをデザインしているから」
と藤川さん。プライベートな空間は天井高を抑え、シックなネイビー色や、やわらかいカーペットなどを配してくつろぎの場に。LDKとの一体感を大切にしながらも生活にメリハリを与えた。



「ソファに座って家全体を見渡すのが、どこで過ごすよりも好きな時間」
という夫妻に、リノベ成功の秘訣を聞いてみた。
「予算は限られているけれど、縛られすぎもよくない。部分的に少しの予算オーバー程度であれば、不本意なものより納得できるものを選択した方がいい。『やり切る』ことが最終的な満足度につながると思います」

プレイルームの床に設けたガラスの小窓から、お子さんが顔を覗かせる。

廊下のほかに玄関からWIC、寝室へ抜けられる裏動線を設けた。


●BEFORE
角部屋で斜線制限を受け天井が斜めに削られている。天井は高い所で3m。4LDKで小屋裏収納もあったが、広く使える部屋はなかった。
建物データ
〈専有面積〉106.4㎡+ロフト13.28㎡〈バルコニー面積〉15㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1991年〈リノベーション竣工〉2019年〈設計期間〉4ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月〈設計〉イランイラン

※この記事はLiVES Vol.107に掲載されたものを転載しています。
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