
リノベーションマンション事例「リノベ済みを改造。 好きな街で叶えた 理想の家と暮らし」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都杉並区の拓民さんとAnnaさんの事例をご紹介します。結婚前のカップルが、高円寺にリノベーション済みのマンションを購入。内装にこだわったぶん、新品の水まわり設備を利用してコストを調整。(text_ Eri Matsukawa photograph_ Osamu Kurihara)
「家が広くなり通勤も楽で、賃貸の時より月々に払う金額は安くなりました。でも、なにより自分の好きな街、好きな空間で暮らせることが一番うれしいですね」
そう話す拓民さんとパートナーのAnnaさんは、職場の変遷とともにさまざまな街で暮らしてきた。都心と郊外、双方のメリット・デメリットを経験した結果、拓民さんが学生時代に住みやすさを感じた高円寺に腰を据えることに。2面採光で明るいこの物件を購入した。 リノベーションの設計を担当したのはTATO DESIGN。以前、拓民さんがオフィスの改装を依頼した経緯から、好みのテイストを共有していたこともあり、打ち合わせを進めやすかった。拓民さんが要望したのは、空間を3次元的に使い、広く感じられる住まいにすることだ。

リビングの床はモルタル塗りで他より低くなっており、天井材を撤去して躯体コンクリートを現しにしたことで、天井が2.7mと高くなっている。いっぽう寝室は床を上げ、床下を収納に。リビングの開放感とは逆に天井の低い寝室にはこもり感がある。イメージのギャップがフロアの中に多様性を生み出し、気分の切り替えを促してくれる。収納には寝具や飲料水のストックなど、かさばるものをしまうのに重宝している。

寝室とリビングは、ウォルナットと真鍮を組み合わせてつくった繊細なデザインの内窓でつながる。寝室下の収納扉を鏡張りにして視覚的な広がりをもたせた。

Annaさんがこだわったのは、洗面室のデザイン。広さを確保して大きな洗面カウンターを設置。水栓などのパーツ選びにもこだわった。
「ホテルのような洗面台にしたかったので、とても気に入っています。落ち着く場所になり、朝の身支度も気分よくできます。バスルームのドアをガラスに替えたかったのですが、コストがかかると聞いて。今あるものを活かしつつ、他のところに投資した方がいいのでは、と提案されました」(Annaさん)

リノベ済み物件のため新品だったユニットバスや便器、システムキッチンはそのまま利用。配管もすべて更新されていたので、既存を活かすメリットは大きかった。また、そこで節約できた分、仕上げ材や建具には凝ることができた。壁には黒皮鉄や真鍮など、存在感のあるメタル材をあしらい、ウォルナットの木質感とともに豊かな素材感を呈している。


週末も家で過ごす時間が増え、居心地のよさから晩酌の量が増えてしまうのが悩みだとか。“持ち家生活”の充実ぶりがうかがえた。

ダイニングにはANGLEPOISEのペンダントライトやジャン・プルーヴェのチェアなど、お気に入りのアイテムをコーディネート。壁際にサイドボードを造作。



ブラケット照明もキャラクター性のあるANGLEPOISEに。
建物データ
〈物件名〉高円寺の家〈専有面積〉68.86㎡〈バルコニー面積〉9.47㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1995年〈リノベーション竣工〉2017年〈設計期間〉3ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月〈設計〉TATO DESIGN〈施工〉E-WORKS

※この記事はLiVES Vol.98に掲載されたものを転載しています。
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