
リノベーションマンション事例「ファッションのように楽しむ自らの世界を体現した住まい」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都渋谷区の吹上さんの事例をご紹介します。三島由紀夫が描いた『金閣寺』をテーマに中古マンションをリノベーション。古い味わいのある空間をアートなアイテムが彩るデコラティブなインテリア。(text_ Makiko Hoshino photograph_ Osamu Kurihara)
カラフルなチェストにヴィンテージファブリックをはぎ合わせたユニークな鹿のオブジェ、羽根のついた電球をあしらったシャンデリアなど、独創的なアイテムが散りばめられた吹上さんの住まい。
「新しさのなかにも古さを感じる、ストーリーのあるものに惹かれます。いろいろなテイストをパッチワークのようにつなげて、オリジナリティを出すのが好きですね」
幼い頃から洋服が大好きで、セレクトショップのオーナーをはじめ、アパレル業界で長く活躍してきた吹上さん。そんな彼女にとって、インテリアはファッションと同じくらい身近なものだった。長女の高校進学のタイミングで九州から上京することになり、都心に中古マンションを購入。リノベーションするときに思い描いたのは、好きなテイストを反映した、家だけど家らしくない、非日常的な空間だったという。

設計は、カフェやインテリアショップなど、住宅だけでなく商業デザインも数多く手掛ける、9の久田カズオさんに依頼。美意識と感性にほれ込み、ほぼお任せで自由にデザインしてもらった。
「家は住む本人のもの。その人の趣味を空間に落とし込むことを、いちばんに考えました」(久田さん)
吹上さんのセンスを捉えるため、九州にあるショップを訪れた久田さん。そこで導いたリノベーションのテーマが、三島由紀夫の小説『金閣寺』だ。キッチンの扉に金箔を、ダイニングの壁一面の鏡には、金閣寺の炎上シーンのモチーフを取り入れた。華やかな洋と真逆の和の美しさをかけ合わせることで、吹上さんのもつアーティスティックな世界を盛り立てている。

広さが限られ、唯一の採光部が北側の窓という難条件のなかで、いかに居心地を高めるかも課題だった。寝室はリビングダイニングの隣に配してガラス張りの空間に。ウォークスルークローゼットで奥にある子ども部屋とつなげて、家全体に光を行き渡らせ、開放感が出るようにした。廊下やリビングダイニングのヘリンボーンの床は、一部分を白くペイント。視覚的に広がりが生まれる工夫をしている。


「居心地が良くて、私も子どもも家が大好きになりました」(吹上さん)
好きなものに囲まれて、新天地でも充実した日々を送っている。




リューカデンドロンなどの野性味のある植物を配したワイルドな雰囲気のテラス。
建物データ
〈物件名〉吹上邸〈所在地〉東京都渋谷区〈居住者構成〉妻+子供2人〈建物規模〉地上7階建て(1階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1976年〈専有面積〉64.3㎡〈バルコニー面積〉20㎡〈設計〉9〈施工〉エスジー〈設計期間〉1ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈竣工〉2015年

※この記事はLiVES Vol.84に掲載されたものを転載しています。
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