
リノベーションマンション事例「家づくりは2度目で成る?自分の好みを知る大人の“引き算”リノベーション」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都港区のKさんの事例をご紹介します。今回が2度目のマンション取得となるKさん。立地にもこだわった都心一等地のヴィンテージマンションを、気負わずフルリノベーション。 (text_ Satoko Hatano photograph_ Takuya Furusue)
2度目のマンション取得となるKさんは、商業空間デザインのマネジメントをこなす43歳。以前は世田谷の新築分譲マンションに、間取りを一部変更して住んでいた。

「前の家も納得して購入したのですが、巾木や壁紙、新建材の扉など、毎日目に触れるものが気になってきて、質感がどうにも好きになれない。一度は都心に住みたいという思いもあったので、職場に近い港区エリアに絞り、物件探しを始めました」
今回は自分好みの空間を一から追求すべく、フルリノベーションを前提にヴィンテージマンションを選択。南青山に建つ築37年、76m2の物件を手に入れた。リノベーションを手掛けたのは不動産の仲介も行うエコデコ。担当の岡野真弥さんと信頼関係を築き、マンションの売却から物件探し、リノベーション計画までトータルなサポートを受けたことで、一連の流れがスムーズに進んだという。
Kさんが求めたのは、空間がつながるのびやかな間取りと質感を大事にする家づくりだ。中央がくびれた変形の平面をもつ2LDKの家を広々としたLDKと寝室、クローゼットに変更。LDKと寝室の間にあるガラス張りのバスルームが空間をゆるやかにつなぎ、かつ分けている。

Kさんは、浴槽に浸かりながら愛蔵書が収まる本棚を眺めるとリラックスできるという。

「仕上げを剥がして現しになったコンクリートの壁は、はじめから活かすつもりで他の素材を選びました」
と話すKさん。床にはブラスト加工で存在感を出したオークの幅広材を使用。塗装壁やタイルは白で統一し、空間の明快さや素材の表情を際立たせている。

床はオーク材をブラスト加工して木目を浮き上がらせている。

右:大通り側にある寝室。壁の鏡をスライドさせてガラス戸の内扉とすることで、就寝時の防音建具になる。
岡野さんは、
「Kさんは空間デザインのプロなので、タイル割りや造作キッチンの納まりなど、ものづくりにはミリ単位でこだわられました。丁寧な仕事が、シンプルで心地いい住まいの基盤をつくっているのだと思います」

静音の電気ヒーターはBALMUDA。物選びにもセンスが窺える。
一方で、シンプルさは狙ったわけではなく、以前の暮らしで不要だと感じたものをなくしていく「引き算」の結果だというKさん。奥さまも、
「物が表に出ていないし、仕上げもさっぱりして見えるので、来た人には生活感がないと言われます(笑)。でも、頑張って片付けているわけでもなく、必要なものが必要な場所に収まっている状態。部屋には扉すらないけれど、私たちの暮らしには合っているのだと思います」
都会のど真ん中、余計な装飾や間仕切りのないプレーンな空間には、2人の満ち足りた暮らしがあった。

寝室隣にある構造壁で区切られたウォークインクローゼット。利便性を考えてIKEAのシステム収納を導入。色別の収納術が見事。


上下の棚をずらして丈長のブーツも収めたシューズラック。
建物データ
〈物件名〉K邸〈所在地〉東京都港区〈居住者構成〉夫婦〈建物規模〉地上5階建て(5階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1978年〈専有面積〉76.29m2〈バルコニー面積〉11.50m2〈設計〉EcoDeco(Style&Deco)〈施工〉KEFI/WORKS〈設計期間〉3.5ヶ月〈工事期間〉2.5ヶ月〈竣工〉2015年

※この記事はLiVES Vol.86に掲載されたものを転載しています。
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