
マンションリノベーション事例「『静』と『動』のエリアに分けて奥行き感を持たせたワンルーム空間」
雑誌「relife+」に掲載された中古マンションリノベーション事例から、今回は東京都三鷹市楮谷さんの事例をご紹介。3DK約55㎡の中古マンションをワンルームの自宅兼事務所にリノベーション。もともとの躯体を引き継ぎながら、ダイニングと書斎は「パブリック空間」という位置づけにし、L字キッチンがパブリック空間とプライベート空間を分ける役割を担っています。
(text_ asako shiga photograph_ hiroshi kiyonaga)
- 東京都三鷹市 楮谷(かみたに)さんの家
- 夫40歳(建築家) 妻38歳(会社員) 長男0歳(取材時)
- 工事費:約1350万円(税込み)
- 築年数:38年(1987年築)(取材時)
- 専有面積:54.68 ㎡
- 設計:SHiiKA建築設計事務所
ワンルーム空間をL型キッチンでゾーニング
職住一体の住まいにするには、約55㎡はギリギリの広さだと思いました」と物件購入時を振り返る楮谷慎吾さん。ここは建築家の楮谷さんが奥様の理奈さんと長男、愛猫と暮らす自宅兼事務所です。
以前住んでいた賃貸住宅の更新を控えて、10年住んだ馴染みのある沿線で、竣工時から一度も手が入れられていない割安な物件を見つけて購入することに。猫との暮らしを希望していたふたりにとって、「ペット可」も大きな決め手になりました。
ギリギリだったという広さは、設計の工夫でカバー。部屋全体を大きなワンルーム状にし、L字の壁で緩く区切って書斎と寝室を設けました。楮谷さんのリノベ設計の信条は、もともとの躯体を大切にして、決して奇をてらわないこと。「〝典型的な3DKのための躯体〟をそのまま受け継ぎながら、採光と通風を確保することを意識しました」(楮谷さん)。最も試行錯誤したのはキッチンの配置。壁付けやアイランド型も検討し、最終的にはL字のキッチンを部屋の中心に据える形に。
「ダイニングは書斎に隣接させてパブリック空間という位置づけに。キッチンが、パブリック空間とプライベート空間を分ける役割を担っています」(楮谷さん)。
オープンな収納を多用しましたが、内装材の多彩さによって、露出したものが馴染む空間となったのも狙いどおりです。理奈さんは、遊びに来た友人に「居心地がよすぎて帰りたくない」と言われたのがうれしかったとか。「住むほどによさが感じられます」というのは楮谷さん。ワンルーム空間でも「職と住」、そして「活動とくつろぎ」が絶妙に同居する、夫妻が適度な距離感で過ごせる住まいになりました。
住まい全体をワンルーム空間に



ブリティッシュショートヘアーの「おはぎ」(3歳、メス)は、高い所が大好き。造作の窓枠兼キャットウォークは、将来、売却などで猫を飼っていない人が住むことになっても違和感のないように、とシンプルなデザインに

小上がり部分を活用した引き出しは、長男の衣類やケアグッズの収納に重宝。顔をのぞかせているのは愛猫の「おはぎ」
上部を開けた壁で緩く間仕切り



寝室の内部。プライベート感を出すため、玄関からいちばん遠い場所に回り込んでたどり着くような配置にした
L型キッチンとダイニングを一体化

直線デザインで空間の広がりを演出


玄関にあるコートクロークの利便性を実感していたことから、玄関収納は靴棚とクロークをセットで造作。靴棚は、出し入れしやすくコストダウンにも有効なオープンスタイルに
水回りは1か所に集めて省スペースに


洗面室は猫用トイレの定位置でもあるため、入り口の引き戸に猫トンネルを設けた。引き戸が閉まっているときも自由に行き来ができるように配慮
建物データ
<建物規模>地上7階建て<設計期間>2021年4月~8月<工事期間>2021年9月~11月<設計>SHiiKA建築設計事務所<施工>セットアップ


※この記事はrelife+(リライフプラス) Vol.53に掲載されたものを転載しています。
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