
マンションリノベーション事例「和室兼寝室を中央に移動し光と風の抜ける住まいに」
雑誌「relife+」に掲載された中古マンションリノベーション事例から、今回は神奈川県横浜市粟屋さんの家の事例をご紹介。和室兼夫妻の寝室をリビングの中央に配置して多目的に利用できる場所に。趣味のDIYを楽しめる作業スペースやワークスペースも備え、多機能空間に生まれ変わりました。
(text_ miki matsuura photograph_ susumu matsui)
- 工事費:1350万円(税込み、設計料別)
- 神奈川県横浜市 粟屋さんの家
- 夫63歳(自営業) 妻60歳(主婦)(取材時)
- 築年数:38 年(1986 年築)(取材時)
- 専有面積:75.81㎡
- 設計:粟屋大紀建築設計事務所


部屋の整理も兼ねて住み慣れた部屋をリノベーションすることに
次男が誕生した年に購入し、33年間暮らしてきた4LDKのマンションをリノベーションした粟屋さん夫妻。きっかけは、子どもたちが巣立ったことと、都内の団地で暮らしていたご主人の父が亡くなり、荷物を引き取ったことでした。もともと粟屋家はものが多かったのに加えて、多趣味だった父の荷物は大量で収拾がつかなくなり、「建物も全体的に古くなっていたし、荷物の整理を兼ねて空間を広く使えるようにしたかった」とご主人。引っ越しも検討しましたが、長年住み慣れた地域は便利で暮らしやすく、マンションの住民とも良好な関係だったので、夫妻は「全面的にリノベーションしよう」という結論に至ったそうです。

妻の気持ち

長いキッチンカウンターの左端は妻のデスクコーナー。読書やPC作業などに集中できる、こもり感のある空間。背面はパントリー
「キッチンカウンターは、大きな出窓のおかげで明るくて快適です。奥行きもあるので、料理以外にもアイロンをかけたり趣味のDIYをしたりと、様々な作業ができます。デスクコーナーも、リビングから見えないので落ち着いた雰囲気で気に入っています」

趣味のDIY も生きる明るく開放的な住まい
設計を引き受けたのは長男で建築家の粟屋大紀さん。内部を貫いていた長く暗い廊下をなくし、夫妻の寝室でもある和室を島状に配置。カーテンで仕切りつつLDKと一体化することで、広々とした空間を実現しました。同時に、玄関からLDKへと一直線につなげて、光と風の抜けも確保しています。「玄関から入ってリビングの扉を開けると、とても開放感があります。小上がりは腰掛けるのにちょうどいい高さだし、カーブになっているところもやわらかい雰囲気で気に入っています」と妻。キッチンは既存の出窓を生かしつつ、約5・5mの長いカウンターを設置。趣味のものづくりを楽しめる作業スペースやワークスペースも備えた、多機能空間に生まれ変わりました。夫妻のお気に入りは、自分たちで保護塗料「オスモ」を塗ったフローリングの床。「子どもたちにも来てもらい、家族みんなで塗ったので愛着があります。家づくりに参加できてよかった。職人さんの仕事を見るのも刺激になりましたし、いろいろ教えてもらえて面白かったです」と、もともと好きだったDIY熱も高まったそう。夫妻ともにフローリングの端材を使って作品をつくるなどDIYを楽しんでおり、家づくりによって趣味の世界も広がったようです。

洗面室は位置を変えず、洗面カウンターを一新。カウンター下はオープンにしてすっきり見せている。ユニットバスやトイレは数年前にリフォームしたので今回は変更せず、洗面室の鏡も既存のものを利用


右手に広い収納スペースを備えた玄関。正面の壁に飾られている絵は、夫がフローリングの端材で製作したもので、横浜みなとみらいの風景を描いたものだそう
夫の気持ち

「以前は小さい部屋が多かったのですが、広い空間ができて人も集まりやすくなりました。結露がひどかったので外部に面した壁に断熱材を入れてもらい、北側の窓にはDIYで内窓を設置してさらに快適に。自分の仕事場兼趣味部屋の大改造も、今後DIYで楽しむ予定です」


リビングの引き戸を開けると南側の窓まで一直線に視線が伸び、光や風が抜けて空間の広がりが感じられる。リビングの右手の壁一面には大きな棚が造り付けられている
建物データ
<建築規模>地上4階建て<設計期間>2022年1月~6月<工事期間>2022年7月~10月<設計>粟屋大紀建築設計事務所<施工>ルーヴィス

●Before
以前は家の中央に長い廊下があり、その周りに4つの個室が配されていて全体的に暗かった。そこで小上がりの和室を中央に配置し、玄関からLDK に一直線につながるように廊下を移動。個室は2 つ減らし、キッチンや玄関周りの収納を増やした
※この記事はrelife+(リライフプラス) Vol.50に掲載されたものを転載しています。
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