
マンションリノベーション事例「見せたくないものは隠しつつ、使いやすさと見せる楽しさを追求」
雑誌「relife+」に掲載された中古マンションリノベーション事例から、今回は神奈川県横浜市Nさんの事例をご紹介。ゆるやかに子ども部屋につながる回遊性のあるキッチンは、見せたくないものはしっかり隠しつつ、見える部分をおしゃれに演出しています。無駄と感じていた長い廊下もリノベーションによって、ウォークスルークローゼットになり、広がりのある空間になりました。
(text_ miki matsuura photograph_ wataru hosh(i FUSOSHA))
- 工事費:約1680万円(税・設計料・施主支給品込み)
- 神奈川県横浜市 Nさんの家
- 夫40歳(会社員) 妻42 歳(フリーランス) 長男6歳(取材時)
- 築年数:54 年(1970 年築)(取材時)
- 専有面積:75.35㎡
- プロデュース・設計:EcoDeco

クローズからオープンへ。回遊動線で子ども部屋とも緩やかにつながるキッチン
賃貸で住んでいた築50年以上のマンションの分譲物件を購入したNさん夫妻。「景色を買ったようなもの」との言葉どおり、高台のため窓からの眺めは格別。借景の緑が豊かで敷地内に裏庭もあり、ほかの物件も5件ほど内見した結果、住み慣れたこのマンションに戻ってきたそう。夫妻はもともと古いものが好きで、リノベ前提だったので古さは気になりませんでしたが、設備や管理状態のチェックも必要と考え、物件探しから設計までワンストップで対応してもらえるリノベ会社を探しE c o D e c o に依頼。賃貸で住んでいた部屋を反転させた間取りだったので、不便だったことを含めて具体的に要望を伝えました。
キッチンについては、以前はクローズで使いづらかったためオープンスタイルに変更。モールテックスで仕上げたカウンターを天板より15cm立ち上げて、手元を隠しました。本体もLDから見えないので、シンプルでリーズナブルなIKEAのキッチンを採用。背面には、ワゴンや木箱などを使って家電など見せなくないものを下部に収納できるカウンターを配しています。「食器が多いので収納はたくさん欲しかったのですが、背面を大きな収納にしてしまうと圧迫感が出るので、愛用の食器棚を置けるようにしてもらいました」と奥さま。上部には、旅先などで買い集めたカゴを飾れるオープン棚を設置。見せたくないものはしっかり隠しつつ、見える部分をおしゃれに演出しているのが印象的です。また、キッチンから隣の脱衣室を通って子ども部屋に行ける動線も確保。「もっと小さいときは、すごく助かりました。最近は逆に隠れたがるときもあるので、直接見えない適度な距離感にしたのもよかった」と奥さま。背面カウンターの横には自宅で仕事をする奥さまのデスクもあり、家事も仕事もはかどりそうです。




内引き出しのおかげでキッチン周りの細かいものもすっきり

「IKEAのキッチンの便利な点は、内引き出しを設置できること」と妻。引き出しの中にもうひとつ引き出しを設置することでスペースを有効活用し、さらにトレイなどを使って細かいものもすっきり収めている
キッチンカウンター下部にゴミ箱や家電を隠して生活感をオフ

生活感が出やすいゴミ箱や家電はできるだけ目立たせたくなかったので、背面カウンターに収納場所を確保。パン焼き機と電気ポットはワゴンを利用。蒸気が出るので使用する際は手前に引き出している
立ち上がりを15cmに。ほどよく手元が隠れて快適

「オープンにしたかったけど、掃除が得意なタイプではないので、フルオープンには抵抗があった」と奥さま。カウンターを15cm立ち上げることで、シンクの洗剤などもちょうど隠れるようになっている
モールテックス仕上げのカウンターにセンスが光る

インテリアに溶け込みつつ、さりげなく存在感を放っているのが、なめらかな質感とニュアンスのある色味がおしゃれなモールテックス仕上げのカウンター。「カカオ」というややベージュがかったグレーを採用
コンロ脇の壁はたくさんある鍋つかみの定位置に

取っ手も熱くなる鍋や薬缶を使うことが多いため、鍋つかみは必須。デニムなどを使って妻が手づくりしたものを、コンロ脇の壁に設置したバーに吊るしている。ちなみに、写真の銅鍋はご飯を炊くのに使っているそう
愛用の食器棚をキッチンのアクセントに

背面収納のポイントとなっているのが、古家具の食器棚。ネットオークションで手に入れて以前から愛用していたもので、アイアンの脚を外してカウンター上部に設置。この食器棚を置くことを前提に設計してもらった
個室も収納も水回りも廊下とつなげて広がりを感じられる家に
「細長い形状の住戸なので、廊下が長くて無駄だなと感じていました。面積的にもったいないだけでなく、狭くて暗いので気分的にもすっきりしなくて、リノベでうまく改善できるといいなと思っていました」と夫妻。
狭くてごちゃごちゃしがちだった玄関は隣の個室側に土間を広げ、置き場所に困っていた食材の宅配ボックスや電動自転車の充電器などを収納できる棚を設置。寝室につながり、廊下へと回遊できるウォークスルークロゼットとしました。(上階の住戸がメゾネットタイプのため)階段下を利用した納戸は、廊下側をオープンにして洗面台を配置。子ども部屋も廊下側を壁や建具で仕切らずオープンにしたことで、広がりが感じられます。「ふわっとつなげることで廊下も有効活用できますし、家族で出かけるときの混雑感も解消できました」と奥さま。広さは変わらなくても、ストレスなく暮らせる住まいが実現しました。




ウォークスルークローゼットの中央に設置された棚。左手が玄関で、この棚をぐるっと回ると右手の廊下につながる。右手奥には寝室が配されている。棚の下部は食材の宅配ボックスや電動自転車の充電器、子どものサッカーボールなど、玄関周りで置き場所に困っていたものの定位置になっている


玄関からLDK につながる廊下を見たところ。右手前は寝室、奥が子ども部屋の入り口。建具ではなくカーテンでふわっとつなげることで広々と感じられ、出入りもしやすい。靴収納もオープンなつくりにして圧迫感を軽減している


建物データ
<建築規模>地上7階建て<設計期間>2021年2月~7月<工事期間>2021年8月~11月<プロデュース・設計>:EcoDeco


●Before
独立していたキッチンをオープンにし、LDと隣接していた個室とつなげて広いLDKを実現。キッチンの奥に浴室・脱衣室を配し、回遊できるようにした。玄関側の個室は半分を寝室に、半分を玄関とつながるウォークスルークロゼットに。こちらも回遊性を持たせている
※この記事はrelife+(リライフプラス) Vol.50に掲載されたものを転載しています。
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