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一戸建てリノベーション事例「中古で購入し19年住んだ一戸建てをリノベ 仕事や趣味を楽しみ、愛猫ともくつろげる家」

一戸建てリノベーション事例「中古で購入し19年住んだ一戸建てをリノベ 仕事や趣味を楽しみ、愛猫ともくつろげる家」

雑誌「relife+」に掲載された一戸建てリノベーション事例から、今回は東京都武蔵野市Nさんの事例をご紹介。もともと将来的に、リノベーションするつもりで購入した中古住宅。メンテナンスも兼ねたリノベーションに夫妻が求めたことは“既存のよさを生かしながら、小物を無造作に置いても絵になる住まい”でした。借景が楽しめる、お気に入りの出窓と本棚は特に生かしたかったもののひとつだそう。
(text_ hiromi sakamoto photograph_ koji yamada)

  • 東京都武蔵野市 Nさんの家
  • 夫57 歳(CGデザイナー) 妻57 歳(CGデザイナー)(取材時)
  • 工事費:約1700 万円(税込み、設計料別)
  • 施工面積:59.90㎡(1階44.03㎡、2 階15.87㎡)
  • 築年数:55 年(1969 年築)(取材時)
  • 設計:長久保健二設計事務所
天井は、2階の床組みを現しにして高さを出した。ソファコーナーは、既存の窓をあえてふさいだタイル貼りの壁と増設した耐力壁により、日の入りすぎを抑え、落ち着いた空間に。その脇に配された鉄骨の白い梁は、前の家主によるリフォームの痕跡。現しのまま取り込み、鉄、タイル、木のミックス感を楽しんでいる
天井は、2階の床組みを現しにして高さを出した。ソファコーナーは、既存の窓をあえてふさいだタイル貼りの壁と増設した耐力壁により、日の入りすぎを抑え、落ち着いた空間に。その脇に配された鉄骨の白い梁は、前の家主によるリフォームの痕跡。現しのまま取り込み、鉄、タイル、木のミックス感を楽しんでいる
「借景が楽しめる出窓と本棚は、リノベに生かしたかったもののひとつ」とNさん夫妻。出窓のソファ側は耐力壁に変更し、残りは新しい窓に交換。本棚は窓の幅に合わせてつくり直した。出窓の幅は約90cm短くなったものの、「壁が増えた分、家具が置きやすくなって便利です」(夫妻)。西側は掃き出し窓に刷新し、窓際を夫のワークスペースに
「借景が楽しめる出窓と本棚は、リノベに生かしたかったもののひとつ」とNさん夫妻。出窓のソファ側は耐力壁に変更し、残りは新しい窓に交換。本棚は窓の幅に合わせてつくり直した。出窓の幅は約90cm短くなったものの、「壁が増えた分、家具が置きやすくなって便利です」(夫妻)。西側は掃き出し窓に刷新し、窓際を夫のワークスペースに

家のメンテナンスのためにリノベーションを決断

Nさん夫妻は、19年前に「この家のデザインが気に入って」、中古の戸建住宅を購入。
当初、 10 年後をめどにメンテナンスを兼ねたリノベーションを予定していましたが、大きな不具合もなく、そのまま暮らしてきたそうです。ところがここ数年で、LDKの床のコルクがはがれるなど、老朽化が気になり始め、ついにリノベを決断。設計は、「事例を見て、モダンで普遍性のあるデザインに惹かれて」(奥さま)、建築家の長久保健二さんに相談。「デザインどおりの家をつくるには監理も重要」というご主人の考えから、設計と施工監理を依頼しました。

左/色ムラが印象的な壁のタイルをはじめ、ダークカラーの天井やカウンターなどと相まって、モダンで、どこか懐かしさも感じられるキッチン。以前と同じL字型に配し、カウンター下にゴミ箱置き場を設けるなど、機能性にこだわった。使い勝手のいい吊り棚や背面収納は既存のまま生かしている。ガスコンロも既存を再利用 右/大容量の食器棚も、妻の希望で位置を変えずにそのまま活用。レトロ感のあるディテールもお気に入り
左/色ムラが印象的な壁のタイルをはじめ、ダークカラーの天井やカウンターなどと相まって、モダンで、どこか懐かしさも感じられるキッチン。以前と同じL字型に配し、カウンター下にゴミ箱置き場を設けるなど、機能性にこだわった。使い勝手のいい吊り棚や背面収納は既存のまま生かしている。ガスコンロも既存を再利用 右/大容量の食器棚も、妻の希望で位置を変えずにそのまま活用。レトロ感のあるディテールもお気に入り
キッチンから見たLD の眺め。キッチンの開口部は、 LD 側のカウンターを撤去し、幅広の木製フレームで囲んだデザインに変更。絵画のように切り取られた眺めが、家事の時間を一層楽しいものにしている
キッチンから見たLD の眺め。キッチンの開口部は、 LD 側のカウンターを撤去し、幅広の木製フレームで囲んだデザインに変更。絵画のように切り取られた眺めが、家事の時間を一層楽しいものにしている

ご主人の気持ち

家を買ったときから、いずれはリノベするつもりだったので、住み替えは検討しませんでした。リノベで想定外だったのは、快適に暮らすためにものの量を見直すことになり、服を3分の1ほど処分したこと。おかげですっきりして、想像以上に暮らしやすくて満足しています。


リノベ後に迎えた保護猫のヤコ(推定8か月)。「人懐っこくてかわいいんです」

既存を生かしながらデザインと性能を向上

夫妻がリノベに求めたのは、既存のよさを生かしながら、小物を無造作に置いても絵になる住まい。例えばキッチンでは、使い勝手がよく愛着のある吊り棚や食器棚などは残し、汚れが目立っていたシンクはカウンターや下部の収納と一緒に造作。古いものと新しいものが馴染むよう、内装の素材選びやトーンを抑えた色使いに配慮しました。またリビングダイニングでは、お気に入りの出窓を生かしつつ内装を一新。借景が望めない東側の窓は、思い切ってタイル張りの壁でふさぎ、ソファコーナーのアクセントウォールに。独特な色ムラやツヤ感のあるタイルを用いて、ヴィンテージ感を創出しました。L字に囲った壁や梁を現しにした天井で光量を抑えることで、以前は光が均一に回って味気なかったLDが、陰影を味わえる、奥行きのある空間に変身。住宅の機能・性能面にも気を配り、必要に応じて耐力壁を配置し、断熱材を充填。出窓はフィックス(はめ殺し)窓から開閉式に交換し、通風を確保しました。

「素敵なデザインに仕上げてもらえて満足です。以前は寒くて湿気が気になっていた水回りも、快適になってうれしいです」と夫妻。

ふたりの横でのんびりくつろぐ愛猫の姿からも、居心地のよさが伝わります。

左/浴室は壁の内部に断熱材を入れ、さらに壁や床に防水性のあるFRPを用いて造作。「寒さや結露がなくなったうえ、少し広い浴槽になったので、バスタイムが快適に。窓もサイズが大きくなり、借景を楽しみやすくなりました」(夫妻) 右/リノベで位置を変更した洗面室は、グレーの洗面台に黒のモザイクタイルでアクセントをつけた。洗面台はシンプルなデザインにこだわり、収納一体型のスクエアなものを採用
左/浴室は壁の内部に断熱材を入れ、さらに壁や床に防水性のあるFRPを用いて造作。「寒さや結露がなくなったうえ、少し広い浴槽になったので、バスタイムが快適に。窓もサイズが大きくなり、借景を楽しみやすくなりました」(夫妻) 右/リノベで位置を変更した洗面室は、グレーの洗面台に黒のモザイクタイルでアクセントをつけた。洗面台はシンプルなデザインにこだわり、収納一体型のスクエアなものを採用
左/玄関は既存の靴入れを撤去し、洗面所側にスペースを広げ、大きな壁面収納を新設。「自転車を余裕で置けるようになり、便利です」(ご主人)。玄関ドアは木製の引き戸に取り換え、木質感あふれる空間を創出 右/便器や内装を一新したトイレは、猫用トイレの定位置でもある。建物形状の関係から便器背面に生まれた三角形のデッドスペースは、上蓋付きの収納を造作して活用
左/玄関は既存の靴入れを撤去し、洗面所側にスペースを広げ、大きな壁面収納を新設。「自転車を余裕で置けるようになり、便利です」(ご主人)。玄関ドアは木製の引き戸に取り換え、木質感あふれる空間を創出 右/便器や内装を一新したトイレは、猫用トイレの定位置でもある。建物形状の関係から便器背面に生まれた三角形のデッドスペースは、上蓋付きの収納を造作して活用

奥さまの気持ち

2 階のワークスペースは、仕事をしたり、趣味の棒編みを楽しんだりするほか、夜は猫の寝る場所になっています。棒編みで人形をつくりたいのですが、猫がまだ幼いので、編み始めると毛糸にじゃれてしまって…。なかなか趣味を楽しめないのが現状です(苦笑)


日当たりのいい窓辺で気持ちよさそうに寝転ぶヤコ。「見ているだけで癒やされます」

階段室は、この家を購入した当時のまま。壁いっぱいの本棚は、新築時の家主がDIYで造り付けたもので、「僕たちも気に入っているので残してもらいました」とご主人。本やCD、お気に入りの小物などを並べ、収納兼飾り棚に活用している

階段室は、この家を購入した当時のまま。壁いっぱいの本棚は、新築時の家主がDIYで造り付けたもので、「僕たちも気に入っているので残してもらいました」とご主人。本やCD、お気に入りの小物などを並べ、収納兼飾り棚に活用している

左/寝室の障子戸は、猫が障子を破いてしまったため、障子の枠を利用し、DIY でポリカーボネートに交換した 右/奥さまのワークスペース。LD 同様に、出窓の一部は耐力壁に変えて断熱材を施し、はめ殺しだった窓を開閉式に変更した。新たに造り付けたデスク周りには、趣味の棒編みの道具類をまとめて収納
左/寝室の障子戸は、猫が障子を破いてしまったため、障子の枠を利用し、DIY でポリカーボネートに交換した 右/奥さまのワークスペース。LD 同様に、出窓の一部は耐力壁に変えて断熱材を施し、はめ殺しだった窓を開閉式に変更した。新たに造り付けたデスク周りには、趣味の棒編みの道具類をまとめて収納
出窓の扉付き収納も刷新し、黒く塗装してアクセントに。観葉植物をハンギングできるよう、天井にはポールを取り付けた
出窓の扉付き収納も刷新し、黒く塗装してアクセントに。観葉植物をハンギングできるよう、天井にはポールを取り付けた

建物データ

<建築規模>木造軸組工法2階建て<設計期間>2022 年3月~11月<工事期間>2023 年3月~6月<設計>長久保健二設計事務所<施工>ヤック

間取りを大きく変更した唯一の場所が洗面室。トイレの前の廊下を洗面室につくり替えた。トイレと洗面室の扉を撤去し、オープンにすることで一体化させ、使い勝手のいい空間に。洗面室の一部は玄関収納とし、玄関に広がりを持たせた
間取りを大きく変更した唯一の場所が洗面室。トイレの前の廊下を洗面室につくり替えた。トイレと洗面室の扉を撤去し、オープンにすることで一体化させ、使い勝手のいい空間に。洗面室の一部は玄関収納とし、玄関に広がりを持たせた

※この記事はrelife+(リライフプラス) Vol.50に掲載されたものを転載しています。
※relife+は、オンライン書店にてご購入いただけます。amazonで【relife+】の購入を希望される方はコチラ

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