
マンションリノベーション事例「猫好き建築家と一緒につくり上げた回遊動線のある快適空間」
雑誌「relife+」に掲載された中古マンションリノベーション事例から、今回は埼玉県越谷市Oさんの事例をご紹介。居住スペース中心にあるラワン合板で作られた斜めの「箱」が特徴的な部屋。夫妻の希望だった「猫との暮らし」をかなえる工夫が詰め込まれています。(text_ asako shiga photograph_ hiroshi kiyonaga)
- 埼玉県越谷市 Oさんの家
- 夫40代(会社員) 妻40代(会社員)(取材時)
- 工事費:1039万円(税・設計料別)
- 築年数:22年(2002年築)
- 専有面積:85.37㎡
- 設計:一級建築士事務所ikmo(アイケイエムオー)
cat’s Profile



天井近くの棚に上れるように、壁で覆われていた配管を露出。紙菅と麻縄を巻きつけて爪研ぎとしても使えるようにした(写真提供/Oさん)
まだ見ぬ愛猫との暮らしを想定してリノベ。入居直後に運命の出会いが!
Oさん夫妻と愛猫ハツの住まいには、部屋の中心に斜めの「箱」が据えられています。箱の内部には収納や水回りスペースを収めて、その箱を取り囲むように居住スペースを配置。設計を手掛けた建築家の比護結子さんから、このユニークなプランとオーソドックスなプランの2案を提案された夫妻は、「えっ、斜め!? と驚きましたが、迷わず個性的なほうを選びました」(奥さま)。
個性の感じられる住まいを求めていた夫妻は、最初に訪ねたリノベ会社の無難な提案には気乗りがしなかったそう。手掛けた住まいを見て、「この人に頼みたい!」と心を動かされたのが比護さんでした。
以前は県外の賃貸アパートに暮らし、「そろそろ持ち家を」という思いや通勤時間を短縮したいという希望から、リノベ前提で勤務先近くの物件を探し始めた夫妻。




ラワン合板の「箱」の中に設けた夫のワークスペース。コロナ禍の時期はテレワークに重宝した。小学生の頃から好きなガンダムのプラモデルなどを飾れる棚が実現し、数もどんどん増加中
暮らしの中心は愛猫に
もうひとつかなえたかったのが「猫との暮らし」でした。奥さまは実家で幼い頃から猫と過ごし、アパート暮らしの間はふたりで地域猫をかわいがっていたそう。早い段階で依頼を決めていた比護さんも愛猫家で、ペット可の理想的な物件を見つけ、リノベのプランには猫との暮らしを想定した仕掛けを盛り込んでもらいました。あとは一緒に暮らす猫を探すだけというタイミングで、偶然出会ったのが迷い猫だったハツ。初対面からふたりにすり寄ってきたそうで、「運命なのかなと思いました」(ご主人)。
東西に窓があり、抜けのよい住戸の特徴を生かし、比護さんは時間の流れとともに移ろう光も大切にしながらO邸を設計。光の変化で体内時計が整うせいか、ハツは決まった時間にご飯を催促したり、もう寝ようという素振りを見せるそう。
「おかげで自分たちの生活も規則正しくなりました。ハツが暮らしの中心で、この家の主です」(ご主人)。

アーチ形がかわいい猫トンネル。LDKと寝室をつなぐ通路の引き戸を閉め切っても、ハツがトイレのある脱衣室に行ける。普段は引き戸を開放したままのことが多いそう


保護したときには、やせていたというハツ。ふっくらとして元気になり、「名前の由来の背中のハート模様が分かりにくくなってしまいました(笑)」と奥さま

ハツを迎えてからはまだ行けていないものの、キャンプ道具が置ける土間玄関はぜひ実現したかったそう。小上がりの畳スペースは、来客の対応時などにベンチとして使える配置に。開口部は窓からの光をさえぎらないデザインになっている。引き戸で閉め切れるので、客室としても活躍


寝室はベッドのサイズを伝えて「コンパクトでいい」とリクエスト。天井高があるため、面積以上に広く感じられるそう


建物データ
<建築規模>地上8階建て<設計期間>2020年11月~2021年5月<工事期間>2021年6月~10月<設計>一級建築士事務所ikmo<施工>須賀工務店


●Before
東西に窓があることから、朝日も夕日も取り込めるよう大胆に間取りを再構成。壁をほぼ取り払い、センター部分の箱状のスペースに水回りなどを集約。居住スペースはゆるやかにつながる大きなワンルーム風に
※この記事はrelife+(リライフプラス) Vol.49に掲載されたものを転載しています。
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