
一戸建てリノベーション事例「築50年戸建ての1階だけリノベーション」
雑誌「relife+」に掲載された一戸建てリノベーション事例から、今回は神奈川県川崎市の金沢さん・岡﨑さんの事例をご紹介。築51年の一戸建ての1階部分をリノベーション。事務所スペースや2間をつないだ広々とした空間になったリビングダイニングは、建築家のお二人がこだわった“見立て”の手法が組み込まれています。
(text_ hiromi matsubayashi photograph_ ayako mizutani)
- 神奈川県川崎市 金沢 将さん、岡﨑 絢さんの家
- 夫34歳(建築家) 妻33歳(建築家)(取材時)
- 工事費:250万円(税・設計料込み、DIY除く)
- 築年数:51年(1972年築)(取材時)
- 敷地面積:152.85㎡
- 延べ床面積:78.08㎡(施工面積:58.08㎡)
- 設計:Lenz Design
自分たちの暮らしに合う空間づくりのためにテーマとした“見立て”の手法
建築家の岡﨑絢さんと金沢将さん夫妻の住まいは、築51年を経た木造2階建て。250万円という限られた予算で、自分たちの暮らしに合わせた空間にしたいと望み、1階だけをリノベーションしました。
改修のメインは、和室3部屋。ひと部屋を事務所に、2部屋はひと続きのリビングダイニングに変更しました。ふたりがテーマとして用いたのが、日本美学に用いられてきた“見立て”の手法です。
「見立てとは、竹筒を花器に転用するなど、あるものを別のものに置き換える手法です。今回は、和室の要素を別の形や素材、色に置換する見立てを取り入れ、既存の畳をグリーンとピンクのフローリングにしたり、障子の和紙をはがして一部を板張りにアレンジしたりしています」と岡﨑さん。

リビングとダイニングは、円形の窓があるブルーの扉で緩く間仕切り。「窓は円形、筋交いと階段で三角形、障子で四角形と、幾何学デザインで構成しました」と岡﨑さん


押し入れは、リビングの一角をおこもり空間にして、キッチンとつなぐ窓を新設した。このスペースに合うよう、ジャーナルスタンダードファニチャーのソファや、岡﨑さんが祖母から譲り受けたスツールを添えている



古い家の面影を残しつつ自分たちの暮らしに合う住まいにアップデート
リビングダイニングはひと続きですが、ブルーの引き戸で仕切れるようにしています。この引き戸は、手持ちの楕円形のテーブル形状に呼応するよう円形の窓を用いて空間のアイコンに。また、天井のボードだけ抜いて既存下地を白く塗りました。既存の太い梁と組み合わせることで、もとの家の面影もとどめています。事務所は基本的に床材を替えただけですが、押し入れの壁を取り、オープンな収納棚に変更。またキッチンをはじめ、トイレや浴室などの設備は前オーナーがリフォームしていたため再利用し、コストバランスを考えた、必要十分なリノベを行いました。
「私たちが目指したのは、新旧が単純に融合するのではない、“緩んだ和室”です」という金沢さんの言葉を受けて、「見立てを用いることで、古家を継承しながら現代の暮らしに合うリノベができたと思います」と岡﨑さん。
ふたりの日々を大らかに包み込む住まいが完成しました。






外構や外装は購入時のまま生かした
建物データ
<建築規模>木造軸組工法2階建て<設計期間>2022年9月〜10月<工事期間>2022年11月〜2023年1月<設計>Lenz Design<施工>N.Style


●Before
和室3部屋で構成された既存の1階は、金沢さんいわく「融通の利かない頑固な印象」。大きな間取り変更はせず、手持ちの家具が馴染む空間を求めて、既存と現代のデザインが共存できる“見立て”(あるものを別のものに置き換える手法)のリノベを行った
※この記事はrelife+(リライフプラス) Vol.48に掲載されたものを転載しています。
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