服の虫食い対策は?被害に遭いやすい特徴や対処法も解説

記事の目次
虫食いとは

虫食いとは、おもに屋外から室内に侵入した虫が衣類をエサとして食べてしまい、服を傷付けてしまう食害を指します。基本的に虫食いをするのは、小さな甲虫や蛾の一種で、「衣類害虫」と呼ばれます。衣類の繊維をエサとして食害を起こすのは幼虫の期間で、成虫が室内に入ってきた際に、暗く人目に付かないクローゼットや押入れなどの収納の中で産卵し、孵化して幼虫になった時に衣類をエサにしてしまうことで虫食い被害が起こります。成虫が活動しやすい春から秋までの時期に産卵し、羽化していく間が、特に被害の出やすい時期です。
虫食いの被害に遭いやすい服の特徴

虫食いされやすいアイテムの特徴を見ていきましょう。
動物性繊維
動物性繊維の代表例としては、ウール(羊毛・アンゴラ・カシミヤ・モヘアなど)やシルク(繭)、羽毛といった種類が挙げられます。こうした動物性繊維は、ニット・スーツ・ブラウス・ダウン・着物などのアイテムで使用されているケースが多々見られます。なお動物性繊維が使われるアイテムは、比較的高級な貴重品となるものも多いため注意が必要です。
食べこぼしが付いている
衣類害虫は基本的に動物性繊維を好みますが、その他の植物性繊維や化学繊維も食べられてしまいます。具体例としては、綿・麻・ポリエステル・ナイロン・レーヨンなど。こうした植物性繊維や化学繊維は、特に食べこぼしなどの跡が残ったままだと、エサになりやすいため要注意です。
自宅での洗濯が難しい
食べこぼしに限らず、皮脂・汗・角質などの汚れが付いている場合も、虫食いにおけるエサになりやすいでしょう。衣類は一度でも着用すると見えない汚れが付着します。例えば特殊加工がされていたり、デリケートな素材や装飾品が使われているために自宅での洗濯が難しいアイテムは、クリーニングせずに収納していると虫食いが起きやすくなるケースも。特に冬のアウターなど、きちんと洗濯しないまま収納すると、虫食いのリスクにさらされやすくなるため注意が必要です。
虫食い被害の見分け方

衣類に穴が開いている場合、虫食い被害なのか、誤って破れてしまっただけなのか判断が難しいケースもあるでしょう。虫食いが見られる時には、衣類害虫が大量に繁殖している可能性も高く、害虫駆除の必要性が出てきます。誤って破れてしまったのか、虫食い被害なのかを見分けるためにも、まずは次のような点を確認してみましょう。
複数の穴が空いている
衣類害虫は、数十個から百個ほど産卵するので、一着につき何匹もの幼虫が付いてしまうのが通常です。そのため一般的な虫食いでは、一箇所だけでなく、何個も穴が開いてしまうケースが多く見られます。1つしか穴が開いていない時には、何かに引っかけて破れたなどの可能性が高いでしょう。
まだらに生地が薄い
部分的に生地が薄くなっている様子が見られる場合にも、虫食い被害の可能性が疑われます。虫食いでは、繊維が毛羽立っている場所を移動しながら食べた痕跡が見られることも多く、広い範囲にわたってまだらに生地が薄くなっているケースもあります。点々と生地が傷んでいる時には、虫食いが疑われるでしょう。
虫食いをする衣類害虫の種類

虫食いをするおもな衣類害虫には次のような4種類が挙げられます。
イガ
- 活動時期:春から秋(5月~9月ごろ)
- 特徴:幼虫/薄い灰褐色(6mm前後) 成虫/灰褐色の羽虫(5mm前後)
- 発生しやすい繊維:動物性繊維、または汚れた植物性繊維や化学繊維(特にカシミヤなどの高級素材)
コイガ
- 活動時期:春から秋(5月~10月ごろ)
- 特徴:幼虫/黄白色(7mm前後) 成虫/淡い黄褐色の羽虫(5mm前後)
- 発生しやすい繊維:動物性繊維、または汚れた植物性繊維や化学繊維
※繊維以外に玄米や小麦、鰹節などの乾燥食材にも発生
ヒメカツオブシムシ
- 活動時期:通年(活発期/4月~6月ごろ、産卵期/5月~7月ごろ)
- 特徴:幼虫/赤褐色(10mm弱) 成虫/黒い楕円の甲虫(3mm前後)
- 発生しやすい繊維:動物性繊維、または汚れた植物性繊維や化学繊維(特に白色など明るい淡色素材)
ヒメマルカツオブシムシ
- 活動時期:通年(活発期/4月~5月ごろ、産卵期/5月~6月ごろ)
- 特徴:幼虫/茶色の毛虫(4mm前後) 成虫/茶・白・黄色などがまだらに交じった甲虫(3mm弱)
- 発生しやすい繊維:動物性繊維、または汚れた植物性繊維や化学繊維(特に白色など明るい淡色素材)
※成虫はキク科の白い花(デイジーなど)を食べるため、育てている場合は注意が必要
虫食いの対策

虫食いを予防するためには、衣類の収納時には、次のような対策を心がけるのがおすすめです。
衣類害虫を侵入させない
虫食い対策で重要なのは、大前提として衣類害虫を室内に入り込ませないことです。簡単な予防策ではありますが、外出から帰宅した際に衣類などに虫が付いていると屋内に侵入させてしまうため、手ではたくかブラッシングしておくのがおすすめ。外に干した洗濯物も、同じように対策しましょう。また窓も侵入口になりやすいので、サッシのすき間を埋める、窓に吊り下げ型の虫除けやスプレーをするなどの対策も有効です。
高温多湿を避ける
虫食いをする衣類害虫は、温暖でジメジメとした湿気の高い場所を住処とする習性があります。なお衣類害虫にとって活動しやすいのは、気温15度~25度かつ湿度60%以上の環境といわれています。こうした衣類害虫の好む条件が揃うと、どんどん繁殖してしまうため、収納内が高温多湿になるのはできるだけ避けましょう。例えばクローゼットや押入れなどの収納は、閉めっぱなしにせず、乾燥した日に換気するなど。サーキュレーターや扇風機を使って、定期的に空気を循環させるのもおすすめです。
また湿気対策としては、収納内に除湿剤または乾燥剤を入れて、衣類と一緒に保管しておくのも有効でしょう。
定期的に掃除をおこなう
衣類害虫にとっては、収納内にあるホコリもエサになります。特にクローゼットや押入れなどの収納スペースは、繊維が散らばりやすく、ホコリに混ざって溜まりやすい場所でもあります。こうした繊維も混入したホコリは、衣類害虫が好んで食べて繁殖してしまうので、こまめに掃除をしておくことも重要。できるだけ衣類害虫のエサを取り除いておくことも大切です。
食べこぼしなどは洗ってからしまう
ここまでにも出てきたように、食べこぼしをはじめとした汚れが付いていると、衣類害虫のエサになりやすい特徴があります。例えば衣替えでシーズンオフのアイテムを片付ける場合など、きれいに洗浄してから収納場所にしまうのが効果的。自宅で洗濯できない衣類は、きちんとクリーニングをしたうえで保管するようにしておくと、虫食い予防にも役立ちます。衣類をお手入れして長持ちさせる意味でも、きれいに洗ってから収納するようにしましょう。
衣替えは晴れた日におこなう
からっとした晴れの日に衣替えをしたほうが、しっかりと乾燥した状態で収納しやすく、衣類害虫が好む湿気を避けて片付けられます。少しでも収納する場所がジメジメしていると、湿気がこもって衣類害虫の活動を促しやすい環境ができてしまいます。また衣替えと同時に、収納前に少しでも干しておくと、十分に湿気を取り除きやすいでしょう。
洗濯しづらい衣類は高温処理で殺虫する
収納する衣類に高温処理をすると、もし虫が付いていても殺虫できます。60度以上でアイロンがけをしてから片付けたり、コインランドリーなどの高温乾燥機にかけたりしておくと、十分な虫食い予防にもつながります。また、アイロンがけをする際には取り扱い表示を確認しましょう。
防虫剤を活用する
虫食い対策で効果的なのは、やはり防虫剤を使って虫を寄せ付けないことです。正しく防虫剤を活用することで、より徹底した虫食い対策が可能。防虫剤の有効な使用方法は、以下から詳しく解説していくので、ぜひチェックしてみてください。
防虫剤の種類と使い方

防虫剤には、大きく分けて次のような4種類があり、それぞれで適したアイテムなどには違いがあります。なるべく効果的な使い方で、徹底した虫食い予防ができるように、防虫剤の種類や使用上の注意点などそれぞれ見ていきましょう。
防虫剤の主な種類
種類 | 特徴 |
---|---|
エンペントリン (ピレスロイド系) |
安全性が高い無臭タイプ。他の防虫剤との併用ができ、幅広い衣類に使用可能。 |
パラジクロルベンゼン | 短期的かつ即効性の高い有臭タイプ。ウールやシルク向き。塩化ビニール製への使用や、他の防虫剤との併用NG。 |
ナフタリン | 長期で緩やかに効く有臭タイプ。長持ちしやすく、正装・和服向き。(人形も可)塩化ビニール製品・光沢製品への使用や、他の防虫剤との併用NG。 |
しょうのう | 木材からできている天然性の有臭タイプ。自然な香りがあり、着物・シルク・ウール・高級毛皮向き。金糸・銀糸・金箔への接触や、他の防虫剤との併用NG。 |
防虫剤の使い方
上記にもあるように、防虫剤の種類ごとに効き方に違いはありますが、それぞれに共通して注意したい使用上のポイントをご紹介します。より適切な使い方で、しっかりと効果を発揮させましょう。
記載されている使用方法どおりに使う
上記の表にもあるように、それぞれの防虫剤で使えるシーンは異なり、使用方法も変わってきます。まずは商品に付いている説明を十分に確認して、正しい使い方をするのが重要。例えば、現在では主流になっているエンペントリンの防虫剤も、商品としてはさまざまな種類が出ています。たとえ同じ薬剤が使われていても、商品ごとに使用するシーンやアイテムに応じた形状や分量になっているため、必ず用法用量を守って活用しましょう。
密閉された場所で使う
きちんと密閉されていないと、防虫剤の成分が収納スペース以外にも分散してしまい、効果が薄れてしまいます。きちんと所定のスペース内で拡散されないと、虫除けとして機能しづらいため、収納の扉や引き出しは開きっぱなしにしないように注意しましょう。できるだけ開け閉めのない収納で使用するのが効果的です。
定期的にチェックして必要に応じて交換する
防虫剤には、成分が効く有効期限が決まっており、その期間以上に使っていても効果はありません。しっかりと虫食い防止をするには、こまめに使用中の防虫剤の有効期限を確認して、適宜交換する必要があります。なお防虫剤の種類によっても大きく異なりますが、一般的には1年程度の有効期限となっていることが多く、衣替えのタイミングで見直していくのがおすすめです。
収納の底ではなく上部に設置する
防虫剤の成分は、上から下に向けて浮遊する性質があり、収納の上部に設置するのが有効です。特に置き型タイプは、例えば引き出しの収納なら、衣類をしまった一番上に設置するのが通常です。衣類の下に置いてしまうと、収納内でうまく成分が拡散されないため、できるだけ最上部に設置しましょう。
防虫剤を置く収納スペースには衣類を詰め過ぎない
あまりに収納内の衣類が多すぎると、アイテムごとの効き目が薄れてしまいやすい傾向にあります。防虫剤の成分が広がりづらくなってしまいますし、ぎゅうぎゅうに詰めてしまうとシワができるなど衣類本体も傷みやすくなるので、少し余裕を持たせながら収納するのもポイントです。
虫食いの被害に遭った時の対処法

もし多少でも虫食いの疑いが見られたら、大事な洋服のメンテナンスとあわせて、被害を広めないための対処もしていきましょう。
補修する
大切な一着が虫食い被害に遭ってしまった時には、次のような方法で補修していくのがおすすめです。
自分で補修する
ちょっとしたほつれや、虫食いの穴が小さめで少なかったりする場合には、自前でも比較的手軽に補修ができます。なかでも次のような衣類であれば、手作業でさっと補修が可能です。
Tシャツの補修方法
もし小さい虫食いであれば、生地の色と同じ糸を用いて、穴を埋めるように交差させながら縫っていきます。なるべく穴のすぐそばの糸をすくって、すき間を縮めるように少しずつ引っ張りながら縫うのがポイント。そして最後の仕上げにアイロンがけをしておくと、縫い目のデコボコが見えにくくなっておすすめです。もしくは穴が大きい時には、その上からワッペンなどを付けて、おしゃれにアレンジする方法もあります。
ニットの補修方法
ニットの場合も、小さめの穴開き程度の虫食いなら、元の生地と同じ色の毛糸でジグザグと穴を縫い合わせて埋めていきます。また穴が大きい時には、生地と同じ色の原毛と、ニードルパンチという手芸針を使って直す方法もあります。原毛を生地の穴の上にのせて、ニードルパンチでプスプスと刺していくとすき間が埋まり、虫食いをきれいに補修できます。
スーツの補修方法
購入時に付いていた修復布が残っている場合には、スーツも自前で補修ができます。市販のアイロン接着テープや布用接着剤を使えば、修復布を裏から貼り付けるだけで簡単に補修ができておすすめです。
プロに依頼する
デリケートな素材や高価なアイテムの他、取り扱いが難しい衣類は、洋服の補修専門店に任せるのがおすすめです。例えば修復布を失くしてしまったスーツや、コートをはじめとしたアウター類、シルクの衣類などは、自前で補修するのが難しいのでプロに相談してみましょう。
衣類害虫を駆除する
虫食い被害が出ている時には、収納内で害虫が繁殖している可能性が高く、きちんと駆除して根絶やししておく必要があります。基本的には、次のような方法で駆除していきます。
衣類害虫の駆除方法
自前で駆除する場合には、くん煙剤やスプレーなどの殺虫剤を使って、衣類害虫を死滅させて退治するのが効果的です。また殺虫剤を撒いても、まだ虫食いの様子が見られる際には、害虫駆除の専門会社に依頼して根本から退治してもらうようにしましょう。
同じ場所に保管していたものをクリーニングする
衣類害虫の被害に遭った衣類と、同じ収納に入っていたものには、たとえ虫食いがされていなくても卵や幼虫が付いている可能性があります。そのため収納内の衣類はクリーニングに出しておくと、もし虫や卵が付いていても、乾燥時の熱風で死滅させることが可能です。増殖を防ぐためにも、きちんとクリーニングに出して衣類害虫を駆除しましょう。
換気・掃除をする
虫食い被害を防ぐためには、やはりこまめに換気や掃除をして、衣類害虫をできるだけ遠ざける環境を心がけておきましょう。一度収納内の衣類をすべて外に出して掃除をしてみると、クローゼットの隅やすき間などに虫が湧いているのを見つけられるケースもあります。徹底した駆除・対策のためにも、虫食い被害が見られた時には、収納内の掃除をしておくのがベストです。
虫食いに関するまとめ
最後に、虫食い対策で注目しておきたいポイントを簡単に整理していきます。
虫食いとは?
虫食いとは、おもに衣類害虫(イガ・コイガ・ヒメカツオブシムシ・ヒメマルカツオブシムシ)が繊維を食べてしまう食害です。衣類をエサとして食べられてしまうことで、大切な洋服に穴ができたり、所々がほつれたりなどの被害が見られます。
虫食いの対策は?
虫食い対策で重要なのは、衣類害虫を侵入させないことです。洗濯物や、外出から戻った際の洋服は手で払うなどして、室内に虫を取り込まないようにしましょう。また収納内を高温多湿にしない換気をはじめ、衣類を片付ける時にはしっかりクリーニングをして衣類害虫が湧きにくいようにしましょう。さらに収納内に防虫剤を適切に設置して、衣類害虫を忌避して寄せ付けないのも効果的です。
虫食いの対処法は?
もし虫食いにあってしまったら、衣類を補修して、被害に遭った衣類を収納していた場所の害虫対策をしましょう。まずは殺虫剤などを撒いて衣類害虫を死滅させて追い払い、虫食いが出ていなさそうに見える衣類もクリーニングに出して、衣類害虫が湧く原因となる卵を死滅させて対処するようにしましょう。
衣類害虫は室内で発生すると虫食いを起こすだけでなく、食品類などにも入ってきて使用できなくなる恐れがあります。虫食い対策は、大事な洋服を守るのはもちろん、自宅内の快適な環境を整えるためにも欠かせないものです。ぜひ本記事も参考に、しっかりと虫食い対策をして、心地よく過ごせる住空間を維持していきましょう。
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