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機械式駐車場の使い方やメリット・デメリットは?仕組みや種類の違いなども徹底解説

機械式駐車場の使い方やメリット・デメリットは?仕組みや種類の違いなども徹底解説
入居者数の多いマンションなどで、よく目にする機械式駐車場。あまり面積を作りにくい土地内でも、車の収容スペースが確保しやすい点から、特に都心部で見かけやすいタイプの駐車場です。利用したことがないと、いまいち機械式駐車場の仕組みがわからずに、日常的にどう使えるのかイメージが湧かない方もいるのではないでしょうか?

そこで本記事では、機械式駐車場の大まかな種類や操作をはじめ、契約時・使用上の注意点などを解説していきます。

機械式駐車場とは?

機械式駐車場とは、主に階層式に車を収容する、機械装置を使った駐車場です。元々国としての土地面積が小さいことから、日本では世界的に見ても、いち早く普及した仕組みといわれています。また機械式駐車場には複数の種類があり、それぞれ外観や構造なども異なります。それではさっそく、機械式駐車場の種類を見ていきましょう。

機械式駐車場の使い方とメリット・デメリット

機械式駐車場には、大きく分けて次の2パターンがあり、そのうち構造ごとに複数の種類があります。それぞれの簡単な仕組みや、使いやすいポイントなどを解説していきます。

二段・多段方式

公益社団法人立体駐車場工業会をはじめとした、駐車場関係4団体が刊行する「駐車場便覧」によると、もっとも多く使われているのが二段・多段方式とされています。2019年度には全国で4,000基以上が導入されており、マンションなどの住宅でも見られやすい機械式駐車場です。

二段・多段方式の種類

地上二段式

地上二段式は、名称どおり上下二段で構成される機械式駐車場です。下段の車を出す際には、基本的には一般的な駐車場と同様に、そのまま出庫することが可能。一方で上段の車を出す際には、一度下段を空けてから、上のパレット(車両を駐車するスペース)を下ろしてきて出庫します。

ピット二段式

ピット二段式は、上段が地上、下段が地下に入るタイプの機械式駐車場です。ピット二段式の場合、上段の車は地上にあるので、そのまま出庫することが可能。なお下段の車は、地下からエレベーター式にせり上がってくるような形で地上に出して出庫します。地上二段式のように、上下どちらかの車を出す手間はありません。

昇降横行式

昇降横行式は、各車両を収容しているパレットを動かして使用する機械式駐車場です。地上三段以上になる機械式駐車場でよく見られます。ここまでの種類と同様に、地上にある車はパレットを動かさず出庫可能。なお二段目以上は、空きスペースを利用してパレットを上下左右に動かし、出したい車を地上まで下ろしてきて出庫します。

二段・多段式の使い方

ピット二段式や昇降横行式なら、収容している位置に関係なく、機械操作によって車の出し入れができます。なお先ほども触れたように、地上二段式の場合に限って、上段の車の出し入れには下段の車を出す必要があるので覚えておきましょう。基本的な使い方としては、次のような流れです。

入庫方法
  • STEP 1機械式駐車場の前で、バックで駐車できるように一時停車する
  • STEP 2車から一度降りて機械式駐車場を操作する
  • STEP 3車に乗って駐車スペースに車の背側から入庫する
  • STEP 4駐車場から出て、再度機械を操作して完了

なお地上二段式の下段に入庫する場合は、機械操作をせずにそのまま駐車できるタイプもあります。

出庫方法
  • STEP 1機械式駐車場を操作して車を出す準備をする
  • STEP 2車を出庫したら一時停車し、再度機械式駐車場を操作
  • STEP 3操作が完了したら出発

なお地上二段式の下段から出庫する場合、入庫と同様に機械操作せずに出せるタイプもあります。

二段・多段式のメリット・デメリット

メリット
  • 集合住宅における隣接車両とのトラブルを避けやすい(ドア開閉時の衝突など)
  • 盗難防止効果が見込める
  • 特に集合住宅なら、一般的な平面駐車場よりも比較的安価に契約しやすい場合がある
デメリット
  • 車の出し入れに機械操作の手間がかかる
  • 限られたパレットに載せる必要があり、平面型よりも駐車の難易度が高くなりやすい
  • 機械の保守や点検時、故障した場合には車の出し入れができなくなる

垂直循環・エレベーター方式(タワーパーキング)

垂直循環・エレベーター方式は、機械と建物を使って車を収容するタイプの駐車場です。商業施設やビルといった大規模な駐車場としてよく見られるタイプで、利用できる駐車台数も比較的多い特徴があります。また高い建物内に駐車することから、タワーパーキングとも呼ばれます。

垂直循環・エレベーター方式(タワーパーキング)の種類

垂直循環方式

垂直循環方式は、建物内にあるパレットを垂直方向に動かし、入出庫するスペースに持ってきて車を出し入れする駐車場です。ぐるぐると回転式にパレットを循環させて動かすことから、メリーゴーランド方式や観覧車方式といわれる場合もあります。基本的には建物の1階までパレットを下ろしてきて、車を出し入れする使い方です。

エレベーター方式

エレベーター方式は、各車両の部屋を設けて、建物内で車を上下に搬送させて収容させる駐車場です。専用の搬送機を使い、エレベーター式に車を移動させていきます。なお垂直循環方式と同様に、建物の1階まで車を下ろして出し入れします。

垂直循環・エレベーター方式の使い方

基本的にはタワーパーキングも、二段・多段式と同じように、機械を操作して入出庫
する流れは変わりません。ほとんど似たような使い方ではありますが、簡単にまとめると以下のとおりです。

入庫方法
  • STEP 1駐車場の前で、バックまたは正面から駐車できるように一時停車する
  • STEP 2車を一度降りて機械を操作し、パレットまたは搬送機を呼び出す
  • STEP 3パレットまたは搬送機が1階まで下りてきたら、そのままバックまたは正面から入って駐車
  • STEP 4入庫したら建物の外に出て、再度機械を操作して完了
出庫方法
  • STEP 1機械を操作し、建物の1階まで自分の車を下ろす
  • STEP 2車が下りてきたら乗り込み、建物から出庫する
  • STEP 3出庫したら車を一時停車して降り、機械を操作
  • STEP 4機械を操作して駐車場を閉めたら完了

垂直循環・エレベーター方式のメリット・デメリット

メリット
  • 建物内に駐車できるため雨や外気による汚れを防げる
  • 地上に出しっぱなしにならないので盗難防止効果が見込める
  • 集合住宅における隣接車両とのトラブルを避けやすい(ドア開閉時の衝突など)
デメリット
  • 車の出し入れに機械操作の手間がかかる
  • 限られたパレットまたは搬送機に載せる必要があり、平面型よりも駐車の難易度が高くなりやすい
  • 機械の保守や点検時、故障した場合には車の出し入れができなくなる

基本的にメリットもデメリットも、二段・多段方式と同じようなイメージです。なおタワーパーキングのほうが建物内に入る分、雨風にさらされにくい部分が大きな違いです。

参考:国土交通省『「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き

ご自身で契約した、もしくは契約する機械式駐車場の種類について事前に確認し、使い方やそれぞれのメリット・デメリットについて把握しておきましょう。

機械式駐車場でおすすめの段はどこ?

機械式駐車場でおすすめの段はどこ?

種類によって駐車方法は異なるので、すべての機械式駐車場に当てはまるわけではありませんが、特に多段式などの場合は収容する場所によるメリット・デメリットがあります。また車の出し入れや車両維持のしやすさといった段数ごとの違いから、利用料金が変わってくるケースも。次のような利便性とのバランスも考えつつ契約するのがおすすめです。

利用頻度が高いなら地上1階

もし多段式で2階以上の場所になる場合、機械で地上まで車を下すのに時間がかかってしまうデメリットがあります。ですが地上の1階に駐車できれば、ゲートの開閉だけで出庫できるため、2階に比べると時間短縮しやすいのが利点。例えば通勤で車を使うなど、使用頻度が高い場合には地上1階がおすすめです。ただし2階以上よりも使いやすく、競争率も高くなりがちなので、契約料金が割高になるケースも多くあります。

車を汚したくない人は地下1階

地下に埋まるタイプの機械式駐車場であれば、地上階を避けておけば、車の維持がしやすいメリットがあります。地下に置いておけば、雨風や直射日光も防げるので、汚さずキレイに保つことが可能。ただし地下に埋まっている分、車の出し入れには時間がかかりやすいため、使用頻度があまり高くない場合におすすめです。

コスト重視なら最上階

最上階だと、基本的には屋根がない状態になるので、雨風や直射日光にさらされやすい一面もあります。また多段式で階数が多くなればなるほど、特に最上階は車を出すのに時間がかかりやすい難点も。ただその分、契約料金は割安になることが多く、コストを抑えやすいメリットがあります。また屋根がないと車高の制限もなくなるため、背の高い車に乗っている場合にもおすすめです。

それぞれの段数にメリットやデメリットがあるので、車の使用頻度やライフスタイルに合った段を選びましょう。

機械式駐車場付きのマンションを契約する際に考えておくべきこと

機械式駐車場付きのマンションを契約する際に考えておくべきこと

もし入居したい物件で機械式駐車場を使っている場合には、次のような部分も考慮したうえで契約することをおすすめします。いざ利用しはじめてから後悔しないためにも、特に以下の点は、きちんと事前に確認しておきましょう。

機械式駐車場は車両のサイズ制限がある

平面駐車場と異なり、機械式駐車場ではそれぞれのパレットや車室に収めて保管することになります。そのため車高や車幅のある種類だと、その物件の機械式駐車場には収容できない可能性も。そうなると物件内の平面駐車場や、別の月極駐車場などを契約する必要も出てくるので、あらかじめしっかりとチェックしておきましょう。

維持費がかかる

機械式駐車場の場合、常に正常に作動させるための保守・点検といった、定期的なメンテナンスが必要です。そのため契約料とは別に、修繕積立金や管理費など、維持費用を住民側の負担として増額されるケースも。特に年数が経ってくると、劣化や故障の確率も高くなり、将来的に維持費用の急な値上げがおこなわれる可能性もあります。

水害リスクに注意

地下に埋め込むタイプの機械式駐車場の場合、洪水によって車が水没してしまう可能性が考えられます。例えば台風や大雨などの災害時には、あらかじめ地下から出しておき、コインパーキングなどの別の駐車場に停め直しておかなければならないケースも。地下に保管する機械式駐車場では、こうした水害リスクの備えも考えておく必要があります。

車を持たない世帯が多いとしわ寄せがくる

基本的には各物件の住人で共有する設備なので、仮に駐車場を利用する世帯が少なくなってしまうと、その分契約している人の負担額は大きくなります。例えば新築マンションなど事前に契約件数が読めない場合には、想定数よりも実際の利用者数が少ないと、途中で料金が値上げされるケースも。思ったよりも駐車料がかかってしまう、といった可能性がある点も覚えておきましょう。

機械式駐車場利用時に注意すべきこと

実際に機械式駐車場を利用するとなった場合、通常の平面駐車場にはない仕組みが加わっている分、気を付けておくべき点もいくつか発生します。ケガや事故などの危険がともないやすい一面もあるので、以下の部分には十分に注意しましょう。

危険な場所であることに留意する

機械式駐車場のパレットやゲートを動かす際に、近くに誰かがいると、装置に巻き込まれたり挟まれたりする危険があるので要注意。実際に2007年度以降の駐車場事故は、5割以上がマンションの機械式駐車場で発生しているとのデータも出ています。特に人がいないかの確認不足による死亡・重傷事故の割合が多く、些細な不注意が大きな危険につながってしまう一面があります。運転する自分自身だけでなく、お子さんも含めて、家族全員で共通の認識を持っておくことが必要です。

運転者以外は装置に入らない

とにかく大きな事故を防ぐには、そもそも危険な装置である意識を持って、ゲートやパレットなどには近付かないことが大切です。ただ機械を操作しないと入出庫ができないため、基本的に運転者以外は装置に入らないなど、家族内のルールを作っておくことをおすすめします。

周囲に他の人がいないか確認する

機械式駐車場を操作する前には、周囲や装置内に誰かいないか、必ずあらかじめチェックすることを習慣化しましょう。先ほど紹介したように、機械式駐車場の事故は操作する人の不注意から発生しています。きちんと使用上の注意を守って、十分な確認を怠らないようにしましょう。

子どもを装置に近寄らせない

子どもは体も小さく装置に巻き込まれやすいため、絶対に近寄らないように伝えておきます。お子さんを車に乗せる場合には、大人が同乗するよりも厳重に注意して操作するようにしましょう。

まとめ

最近のマンションなどでは、当たり前に見かけるようになった機械式駐車場。広い土地が必要ないといった物件管理上の利点も大きいですが、防犯や近隣トラブルの防止など利用者側のメリットも多くあります。ただし機械操作によって入出庫する分、デメリットや使用上の危険などもあり、事前に注意しておきたい部分も少なくありません。ぜひ本記事を参考に、機械式駐車場の契約を検討してみてください。

執筆者

たけなつ

2019年よりフリーで活動しているWebライター。
広告会社でのコピーライターを経て、現在は幅広いジャンルのコラム記事などを執筆。 愛知・東京・北海道と各地を渡り歩き、19歳からの10年で7回引っ越しを繰り返す好奇心旺盛人。

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