リバースモーゲージをマンションで利用するには?条件や利用時のリスクも徹底解説

本記事では、リバースモーゲージの概要や種類、マンションで利用できるかを解説します。また、マンションに焦点を当て、どのような条件を満たせばリバースモーゲージを利用できるのかを明らかにします。老後の安心な生活設計を考えている方や、住宅資産を有効活用したい方に役立つ情報です。
記事の目次
リバースモーゲージとは?

リバースモーゲージとは
リバースモーゲージとは、逆(リバース)のモーゲージ(抵当権)という意味の言葉です。仕組みとしては、自宅を担保に借り入れをおこない、借り手が死亡した時に自宅を売却して借入金を返済します。住宅ローンのように、最初に一括で資金を借り入れ、月々返済を重ね、借入金を完済する仕組みとは逆になっています。ローンの対象は主に、55歳から60歳など、シニアに向けられています。
リバースモーゲージの融資の受け取り方法は、毎月受け取るタイプや一括で受け取るタイプ、希望の金額を任意のタイミングで受け取るタイプなどがあり、利用する金融機関によって異なります。
リバースモーゲージの特徴
リバースモーゲージの特徴は、自宅に住み続けながら自宅を担保に融資を得られることです。また、毎月の返済は利息のみなので、負担を減らすことも可能です。ただし、年齢の制限や担保にできる不動産に制約もあります。
リースバックとの違い
リバースモーゲージと混同されがちなのが、「リースバック」です。リースバックとは、自宅を売却したあともそのまま住み続けられるサービスをいいます。住み続けるには家賃を支払うので、売却された自宅はリース(賃貸)の扱いになります。
リバースモーゲージの場合は、自宅の所有権は自分にあるまま物件を担保にして借り入れをする点が、リース(賃貸)バックとは異なります。加えて、リースバックの場合は売却後の代金が一括で支払われますが、リバースモーゲージの場合はさまざまな受け取り方があるのも異なる点です。
リバースモーゲージの種類は?

リバースモーゲージは、国が取り扱う公的なものと、民間の金融機関が取り扱うものの2種類に分類されます。
公的なリバースモーゲージ
公的なリバースモーゲージは、各自治体(社会福祉協議会)が提供しています。主に低所得者や生活困窮者向けの生活福祉資金貸付制度で、融資額上限や金利が比較的低く設定されています。一般的に、年利は3%程度であり、時期によって変動する場合もあります。
また、審査条件は厳しく、所属する自治体に居住用不動産を所有しており、自治体が定める土地評価額以上が条件です。例えば、社会福祉法人東京都社会福祉協議会の場合、土地の評価額が1,500万円以上で、マンションなどの集合住宅は対象外です。さらに、持ち家に実際に契約者やその夫婦が居住するのも条件とされます。これらの条件を満たす場合、公的なリバースモーゲージが利用できます。
民間系リバースモーゲージ
民間系のリバースモーゲージは、一般の金融機関が提供する独自のリバースモーゲージ型ローンです。その特徴は以下のとおりです。
融資金の利用使途は基本的に自由ですが、事業資金や投資商品の購入資金に充てるのはできません。金利は各金融機関によって異なりますが、年利4~5%前後が目安とされています。対象となるのはシニアであり、年齢制限があります。例えば、一部の金融機関が提供する「リ・バース60」は、60歳以上の方が対象で、融資金の利用使途は住宅の購入・建築・リフォームに限定されます。
リ・バース60にはノンリコース型もあり、利用者の死後に相続人が残債返済義務を負わないタイプも選択できます。対象エリアは金融機関によって異なり、土地評価額の下限も金融機関ごとに設定されます。審査を経て融資が可能か決定されます。
一部の金融機関はマンションなどの集合住宅を対象としており、特に条件がいい場合には好条件での取引が可能です。特に都心や都市近郊に位置し、「築浅」や「駅近」ニーズを満たすマンションが重視されます。これらの特徴を踏まえ、民間系のリバースモーゲージはシニアの生活をサポートする重要な金融商品として位置付けられています。
リバースモーゲージはどのようなマンションが対象になる?

前述したように、公的なリバースモーゲージではマンションは対象外です。その理由は、マンションは一戸建てに比べ土地が狭くなるので、金融機関が資産価値の低下を懸念するからです。というのも、リバースモーゲージで担保になるのは不動産および土地です。不動産は経年劣化で資産価値が落ちてしまうのは避けられません。年数がたっても価値が保てる土地ができるだけ多いほうがよいと考えるので、金融機関ではマンションのリバースモーゲージを敬遠しがちです。
ただ、マンションを対象とするリバースモーゲージは存在するので、どのようなマンションであれば対象になりやすいか、特徴を解説します。
資産価値が下がりにくいマンション
資産価値が落ちにくいマンションは、リバースモーゲージを利用できる可能性が高まります。資産価値があるマンションの特徴は以下のとおりです。
- 生活しやすい立地にある(大都市が近い、ターミナル駅がある、交通の便がよい、スーパーが近くにある、いわゆるベットタウンと呼ばれるような都市)
- 犯罪が少なく治安のよいところにある
- 周辺で競合になるようなマンションが少ないところにある
- 人気があるエリアにある(高級住宅街、便利、都市の評判がよいなど住みたい街のランキング上位になるような都市)
- 街が美しく、住環境のよいところにある
- 地震の影響や液状化の心配がないとされる、地盤の固い地域にある
一戸建ての場合、駅からの距離が近くなくても資産価値はさほど変わらないとされていますが、マンションの場合は駅から遠くなると資産価値が下がります。理想の立地は、駅から徒歩10分以内とされています。駅から近いほうが、売却する時も高値がつく傾向があります。ただし、駅から離れていても、バス停に近かったり運行本数が多い場合はよい評価を受ける可能性もあります。
評価額が高いマンション
金額の基準は利用する金融機関によって異なりますが、もとから評価額が高いマンションは、融資を受けられる可能性があがります。評価額がいくら以上であれば融資可能なのかは、利用する金融機関に確認しておきましょう。
リバースモーゲージが利用できないマンションは?

前章ではリバースモーゲージが利用できるマンションの特徴をご紹介しましたが、反対にリバースモーゲージが使えないマンションにはどのような特徴があるのでしょうか。
建物と土地が区分所有になっているマンション
建物の一部を所有するマンションでは、土地の共有部分も分割して所有しています。このようにしてマンションの建物と土地を所有することを「区分所有」といいます。リバースモーゲージでは通常、建物だけでなく土地も1つにして担保とします。区分所有だと、土地の所有権が複数の人に分散するため、価値が低くなってしまいます。そのため、区分所有になっているマンションはリバースモーゲージの対象となりにくくなります。
建築後20年以上経っているマンション
築年数が20年以上になるマンションは、築古とみなされます。一般的に、築年数が古いと、建物の資産価値は低く見られがちになります。もし資産価値が基準以上に古いとみなされると、リバースモーゲージの対象としてそぐわないと判断をされる可能性が高くなるため、融資先を見つけるのが困難になります。
評価額が低いマンション
そもそもの評価額が低いマンションで、金融機関で規定された評価額の基準に満たない場合は、リバースモーゲージの利用が難しくなります。自己評価では高いと思っていても実際の金額が低い場合もあります。マンションの評価額を調べるには、固定資産税通知書をみて確認しましょう。
リバースモーゲージ利用時のリスク

シニアでも融資を受けられるので、リバースモーゲージは大変便利な仕組みのように思いますが、リスクもあります。本章ではリバースモーゲージ利用時のリスクをあげます。
長生きすると借金が残る
本来、長生きするのはよろこばしいですが、リバースモーゲージを利用している場合は、リスクになってしまう可能性があります。予想よりも長生きをした場合、融資の限度額に達してしまうかもしれません。リバースモーゲージでは、死亡後に自宅を売却して元金を返済しますが、金融機関によっては最終返済期限が設けられている場合もあります。その場合、存命でも自宅を売却して一括返済しなければなりません。もし売却代金で借入金額を返済できなかった場合には、借金が残ってしまいます。
不動産の価値が下落する
不動産をとりまく社会の経済状況は、一定ではありません。例えばオリンピックや万博の開催、世界的な感染症の流行など、さまざまな要因で不動産の価値は変わる可能性があります。金融機関では定期的に不動産の担保評価を見直していますが、大きく社会情勢が変わる事態が起こり不動産の価値が下がれば、融資限度額も見直さざるをえません。
購入当初は立地がよく需要があって不動産の価値が下がりにくいと思っていても、いつ担保評価が下がるかはわかりません。不動産の価値が下がるリスクは忘れてはいけません。
金利が変動する
金利の変動もリスクです。これまでは低金利が続いてきましたが、最近は金利が少し上がる兆候を見せています。上がるにせよ下がるにせよ、金利の動向はわかりません。マンションで利用できるリバースモーゲージの金利は変動金利なので、金利が上昇すれば毎月の利息も増えます。そうなると将来、返済に困る可能性もでてきます。
法定相続人に負担がかかる
リバースモーゲージを利用すると、申込時に法定相続人の全員の同意が必要になり、残債の返済は契約者の死後に相続人がおこないます。まず、相続人を立てるのがハードルになり、利用を諦める方もいるようです。残債の返済時、金利の上昇や不動産の価値が下落したために、売却しても返済が残ってしまう場合もあります。そうなると、法定相続人が足りない分を返済しなくてはなりません。法定相続人は故人の自宅の売却や残債の整理をしなくてはならないので負担がかかります。
住宅ローン完済後に関するよくある質問
リバースモーゲージとは?
リバースモーゲージとは、自宅を担保に借り入れをしていき、最終的に借り手が死亡した時に自宅を売却して借入金を返済する仕組みです。一般的に、55歳から60歳のシニアに向けられたローンで、自宅に住み続けながら、自宅を担保に融資を得られ、利息のみの返済で利用できます。ただし、年齢の制限や担保にできる不動産や融資の使い道には制約があるので注意しましょう。
リバースモーゲージの種類は?
リバースモーゲージは、国が取り扱う公的なものと民間の金融機関が取り扱うものの2種類に分類されます。公的なリバースモーゲージは、各自治体(社会福祉協議会)が提供しており、融資額上限や金利の設定が比較的低くなっています。なお、マンションなどの集合住宅は対象外となるため、気をつけましょう。一方、民間系リバースモーゲージは、一般の金融機関が提供する独自のリバースモーゲージ型ローンです。融資金は、事業資金や投資商品の購入資金に充てるのはできませんが、利用使途は基本的に自由になっています。一部の金融機関はマンションなどの集合住宅が対象です。
リバースモーゲージはどのようなマンションが対象になる?
立地がよく、買い手がつく見込みのある資産価値が下がりにくいマンションは、リバースモーゲージを利用できる可能性が高まります。さらに理想の立地は、駅から徒歩10分以内とされていて、そもそもの評価額が高いマンションもまたよい評価を受ける傾向です。
リバースモーゲージが利用できないマンションは?
区分所有になっていたり、建築後20年以上経っているマンションは敬遠されがちです。そもそもの評価額が低いマンションも、リバースモーゲージの利用が難しくなります。
リバースモーゲージ利用時のリスクは?
本来、長生きするのはよろこばしいですが、リバースモーゲージを利用している場合は、リスクになってしまう可能性があります。また、不動産の価値が下落したり、金利が上昇する場合も不利です。法定相続人が故人の自宅の売却や残債の整理をしなくてはならないので負担がかかります。
まとめ
本記事では、リバースモーゲージの概要や種類、マンションで利用できるかを解説しました。また、どのような条件を満たせばリバースモーゲージを利用できるのかを明らかにしました。老後の生活費や資金調達に不安を持っていらっしゃる方も多いと思います。リバースモーゲージの仕組みを理解して、将来の資金準備や、住宅資産を有効活用するのに役立てましょう。
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執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ