住宅ローンを滞納しそうな時の相談先は?対処法や救済措置を解説

本記事では、住宅ローンを滞納した時のリスクや対処法、相談先などを解説します。住宅ローンの滞納を放置すると、最悪の場合、せっかく購入した家を手放さなければならないかもしれません。具体的な対処法や相談先を知り、早めに対策をしましょう。
記事の目次
住宅ローンを滞納するとどうなる?

住宅ローンを滞納すると、最終的には金融機関が債権を回収するために住宅を差し押さえ、競売にかけます。本章では、どのような流れで競売まで進むのかを解説します。なお、滞納期間はあくまで目安であり、金融機関によって異なる点に注意しましょう。
【滞納1~2カ月】支払い請求が届く
【滞納3カ月】催告書が届く
【滞納3~6カ月】期限の利益喪失通知が届く
【滞納6~8カ月】競売開始決定通知書が届く
【滞納12~16カ月】期間入札通知書が届く
それぞれ詳しくみていきましょう。
【滞納1~2カ月】支払い請求が届く
口座から住宅ローンの引き落としができなかった場合、その時点で金融機関から返済を促す連絡があります。すぐに連絡をし、返済すれば大きな問題にはなりません。しかし、1〜2カ月滞納すると、金融機関から支払い請求が届きます。住宅ローンの返済額だけでなく、遅延損害金も請求されます。遅延損害金は、次章で詳しく解説します。
【滞納3カ月】催告書が届く
住宅ローンの返済を3カ月以上滞納すると、催告書が届きます。催告書は支払い請求よりも厳しい内容で、法的手続きに移行する前の最終警告です。指定された期日までに滞納分を支払わなければ、住宅ローンの残債の一括返済を求められる可能性も。
また、3カ月以上滞納すると、信用情報機関に事故情報として登録されます。信用情報機関とは、ローンやクレジットカードの契約状況などを記録・管理する機関。金融機関は返済能力を確認する際に、信用情報の照会をおこなうため、事故情報が登録されていると、新たなクレジットカードの発行やローンの借り入れが難しくなります。
【滞納3~6カ月】期限の利益喪失通知が届く
期限の利益喪失とは、期日までに返済をすればよいという権利を、失ってしまうことです。つまり、住宅ローンを分割で返済する権利を失い、一括返済しなければなりません。しかしすでに滞納しているため、一括返済は困難でしょう。この場合、保証会社が債務者に代わって、金融機関に残債を返済する「代位弁済」をおこないますが、保証会社が立て替えたからといって、住宅ローンの返済義務がなくなるわけではありません。今度は保証会社に対して返済義務を負います。
【滞納6~8カ月】競売開始決定通知書が届く
住宅ローンを滞納して6〜8カ月ほど経つと、裁判所から競売開始決定通知書が届きます。これは、住宅を強制的に売却し、売却代金で債権を回収しようとするものです。競売開始決定通知書が届いてから1〜2カ月後、裁判所の執行官と不動産鑑定士による現況調査がおこなわれます。
【滞納12~16カ月】期間入札通知書が届く
住宅ローンの返済を滞納して12〜16カ月経つと、裁判所から「期間入札通知書」が届きます。これには、入札期間や開札日、売却価格といった具体的な情報が記載されています。入札期間中に購入希望者が裁判所に対して入札金額を提示し、開札日に最高額の入札者が発表され、売却が確定します。
住宅ローンの滞納を放置した時のリスク

住宅ローンを滞納すると、最終的に家を競売にかけられるおそれがあります。しかし、それ以外にもさまざまなリスクがあります。本章では、どのようなリスクがあるのかをみていきましょう。
遅延損害金が発生する
住宅ローンの返済が遅れると、返済期日の翌日から遅延損害金が発生します。これは、金融機関が被った損害に対する補償金のようなものです。例えば、住信SBIネット銀行の「住宅ローン契約規定(元利均等型)」では、次のように記載されています。
引用:住信SBIネット銀行「住宅ローン契約規定(元利均等型)」(PDF)
滞納が長引くほど、遅延損害金も増えていきます。滞納した際には、金融機関に連絡し、できるだけ早く返済することが大切です。
優遇金利が解除される
住宅ローンを滞納すると、優遇金利が解除される可能性があります。優遇金利は、金融機関が「返済能力がある」と判断した契約者に対して適用される金利です。滞納すると金融機関からの信用を失うため、優遇金利が解除されるおそれも。実際に、イオン銀行の「住宅ローン規定」では、次のように記載されています。
引用:イオン銀行「住宅ローン規定」(PDF)
優遇金利が解除されると金利が上がるため、返済額が増えてしまいます。住宅ローンを滞納している状況では、金利の上昇も家計に大きな影響を与えるでしょう。滞納する前に金融機関に相談することが大切です。
信用情報に傷が付く
住宅ローンの滞納を放置すると、信用情報に傷が付くことも大きなリスクです。先述したように、返済を滞納して一定期間が経つと、信用情報機関に事故情報として登録されます。金融機関は、クレジットカードを発行する際やローンの審査をする際、信用情報機関に照会をおこない、返済能力があるかを判断します。事故情報が登録されていると、返済能力がないと判断されることに。スマートフォンや賃貸住宅の契約など、今後の日常生活にも大きな影響を与える可能性があります。事故情報は一定期間が経つと抹消されますが、時間がかかるため、傷が付く前に対処するようにしましょう。
一括返済を求められる可能性がある
住宅ローンの滞納を放置すると、期限の利益を失い、一括返済を求められる可能性があります。金融機関からすると、滞納が長引くほど、債権を回収できる見込みが低くなります。そこで一括返済を求め、債権の回収を迅速に進めようとします。「期限の利益喪失通知書」に記載された期日以降は、一括返済を求められるため、期日前に対処しなければなりません。
住宅ローンを払えない場合の対処法

住宅ローンを返済できない場合、具体的にどうすればよいのでしょうか。本章では、具体的な対処法を3つ解説します。
金融機関に相談する
住宅ローンの返済が難しい場合は、まず金融機関に相談しましょう。各金融機関には、住宅ローンに関する相談窓口が設けられています。これまで見てきたように、早めに相談することで、最悪の事態を避けられるでしょう。具体的にどのような救済措置があるのか、次章で詳しく解説します。
住宅ローンを借り換える
住宅ローンの返済が厳しい場合、借り換えることも一つの方法です。現在のローンより、低金利のローンに借り換えることで、返済負担を軽減できる可能性があります。また、返済期間を長く設定すると、その分毎月の返済額を減らせます。ただし、借り換える際には諸費用がかかる点に注意しましょう。また、返済期間を長くすると、元本の減りが遅くなるため、総返済額は増えてしまいます。さらに、再度ローンの審査を受けなければなりません。滞納期間が長ければ、審査に通らず、借り換えられない可能性もある点に注意しましょう。
家を売却する
これまでに解説した方法でも住宅ローンを返済できる見込みが立たない場合、家を売却するという選択肢があります。売却の方法として、大きく3つあります。それぞれ詳しくみていきましょう。
任意売却をする
任意売却とは、金融機関の許可を得て、住宅を売却することです。売却代金で住宅ローンを完済できれば、特に問題ありません。しかし、売却代金より住宅ローンの残債が多い場合、住宅に設定されている抵当権を抹消できないことに。そこで金融機関に許可を得て、残債が残っている状態でも抵当権を解除してもらい、売却する方法が任意売却です。任意売却は、市場価格に近い価格での売却が可能。競売と比較して金融機関が回収できる債権の金額が大きくなることから、任意売却を認めてくれます。
親族間売買をする
住宅ローンの返済が難しくなった場合、親族間売買をする方法もあります。親族間売買とは、親子間や兄弟間で不動産を売買すること。もともと信頼関係が築けているため、取引しやすいというメリットがあります。しかし、金融機関によっては住宅ローンが利用できなかったり、自己資金が多く必要だったりと難しい面も。親族間売買を検討する際は、専門家に相談しましょう。
リースバックを利用する
リースバックとは、住宅を不動産会社に売却し、売却後に毎月家賃を支払うことで自宅に住み続ける仕組みです。自宅を手放さずに済み、売却でまとまった資金を得られます。将来的に買い戻すことも可能。一方、売却価格が市場価格より低くなったり、毎月支払う家賃が高くなる可能性があります。しかし、子どもの転校を避けたい場合や住み慣れた自宅に住み続けたい場合は、有効な選択肢となるでしょう。
住宅ローン滞納時の相談先と救済措置

本章では、住宅ローンを滞納した時の相談先と具体的な救済措置を解説します。繰り返しになりますが、滞納した場合には放置するのではなく、すぐに相談することが大切です。一人で抱え込むのではなく、相談をして、できる対策を取りましょう。
金融機関
住宅ローンの返済が困難になりそうな場合や、滞納しそうな場合には、すぐに金融機関に相談しましょう。金融機関もできれば返済を続けてほしいと考えているため、前向きに対応してくれます。具体的な救済措置として、次のような方法があります。
- 返済期間を延長する
- 一定期間、返済額を減らす
- ボーナスの返済額を減らす
- ボーナス返済を取り止める
返済期間を延長すると、月々の返済額が減るため、家計の負担も楽になるでしょう。しかし、返済期間が長くなる分、総返済額が増える点に注意が必要です。また、一定期間の返済額を減らす方法もあります。例えば、住宅金融支援機構では、一定の条件を満たした場合、元金の返済を一時的に休止し、利息のみを返済することも可能。ボーナス返済をしている方は返済額を下げたり、ボーナス返済そのものを取り止めることもできます。しかし、ボーナス返済を取り止めた場合、その分毎月の返済額は増えるため、よく検討しましょう。
不動産会社
住宅ローンの返済が難しくなった場合、不動産会社も相談先の一つです。金融機関で返済方法を見直しても改善が見込めない場合や、滞納が長期化した場合に有効な選択肢となるでしょう。任意売却や買取など、競売を回避するための方法を提案してもらえるかもしれません。売却をする場合は、複数の不動産会社に査定を依頼し、比較検討したうえで決めましょう。
弁護士
住宅ローンだけでなく、他の借り入れもあって返済が難しい場合、弁護士も相談先となるでしょう。弁護士に相談すると、任意整理が可能です。任意整理とは、債権者と交渉し、月々の返済額を見直したり、将来の利息を削減するなどして、最終的に完済を目指す手続きのこと。しかし、住宅ローンは抵当権が設定されているため、任意整理の対象にできません。住宅ローン以外の借り入れを任意整理することで、自宅を手放すことなく、毎月の返済負担を軽減できます。
住宅ローンの滞納に関するよくある質問
住宅ローンの滞納に関するよくある質問をまとめました。
家のローンが払えない時はどうすればいい?
住宅ローンを返済できない時は、早めに金融機関に相談しましょう。金融機関もできれば返済してほしいと考えているため、返済期間の延長やボーナス返済の取り止めなどで柔軟に対応してくれます。各金融機関には、住宅ローン契約者専用の相談窓口を設けられていることも多いため、問い合わせてみましょう。
住宅ローンの支払いを何カ月待ってもらえる?
返済方法の変更は対応してもらえますが、返済そのものを待ってもらうことはできません。例えば、住宅金融支援機構では、一定の条件を満たした場合のみ、利息のみを返済することができます。利息のみとなるため、毎月の返済負担は大きく減らせるでしょう。しかし、返済そのものを取り止められるわけではありません。何かしらの形で返済を続けることを求められます。
無職になった場合の住宅ローンはどうなる?
無職になった場合でも、住宅ローンは返済しなければなりません。ただし、金融機関に相談することで、個人の状況に応じてさまざまな対応策を提案してもらえるでしょう。また、加入している保険で、適用を受けられるものがないか、確認してみましょう。次に挙げる保険は働けなくなった場合、保険金を住宅ローンの返済に充てられます。
- 債務返済支援保険
- 就業不能保険
さらに、住宅ローンには失業保障の特約が付いているものもあります。ご自身が契約している保険や特約の内容を、今一度確認してみましょう。
まとめ
本記事では、住宅ローンを滞納しそうな時の相談先や対処法などを解説しました。滞納を放置した状態でいると、最悪の場合、住宅を手放さなければならなくなります。金融機関も返済してほしいと考えているため、相談すると柔軟に対応してくれるでしょう。対応が後手になると、選択肢も狭まってしまいます。金融機関には相談窓口が設けられていることもあるため、住宅ローンの返済が困難になる可能性が出てきた時点で早めに相談しましょう。
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執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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