住宅ローンを組む際に夫婦でも贈与税が課税されるケースとは?非課税となる特例について解説

本記事では夫婦間で贈与税が課税されるケースや、非課税となるケースを解説します。
記事の目次
住宅ローンを組む際に夫婦でも贈与税が課税される4つのケースを紹介

- 住宅ローンの契約者以外の人が頭金を負担した場合
- 住宅ローンの契約者以外の人と共有名義で登記をした場合
- 住宅ローンの契約者以外の人が返済をした場合
- 住宅のリフォーム代を名義人以外が支払う場合
順番に見ていきましょう。
住宅ローンの契約者以外の人が頭金を負担した場合
住宅ローンを組む際に夫婦でも贈与税が課税される1つ目のケースは、住宅ローンの契約者以外の人が頭金を負担した場合です。
住宅を購入する際に住宅ローンを組む人は約8割と言われていますが、購入代金の全額を借りることができるケースは少ないです。
金融機関や購入者の属性などによって異なりますが、購入時にかかる印紙税や仲介手数料などの諸費用は自己資金で支払う人がほとんどでしょう。
購入時の頭金を夫婦間で負担すると、本来であれば負担した金額の分は負担した人の所有権として登記する必要があります。
しかし、住宅ローンの契約者が100%の持分として登記をすることで、頭金を負担したパートナーから贈与を受けたことになります。
不動産の登記情報は税務署も確認をするため、不動産登記の名義人以外の人が購入資金の一部でも負担していると贈与税の課税対象となる点には注意が必要です。
夫婦間だけではなく、親子間や兄弟間でも購入資金を援助するケースが考えられますが、贈与税の対象となってしまうため覚えておきましょう。
住宅ローンの契約者以外の人と共有名義で登記をした場合
住宅ローンを組む際に夫婦でも贈与税が課税される2つ目のケースは、住宅ローンの契約者以外の人と共有名義で登記をした場合です。
住宅購入時の出資額の割合と、不動産登記の際の持分割合が異なると、差額に対して贈与税が課税されます。
持分割合とは、不動産を共有名義で登記する際の自分の所有権の割合のことです。
持分割合は、基本的には出資した額と同等にする必要があります。
たとえば、3,000万円の住宅を購入するケースに、夫が2,000万円、妻が1,000万円出資をすれば持分割合は夫が3分の2で、妻が3分の1とするのが一般的です。
しかし、夫と妻の持分割合を2分の1ずつにすることで、出資した金額と持分割合に差が生まれてしまうため、差額分の贈与を受けたとみなされます。
そのため、不動産を共有名義にすると贈与税の課税対象となる可能性がある点は覚えておきましょう。
住宅ローンの契約者以外の人が返済をした場合
住宅ローンを組む際に夫婦でも贈与税が課税される3つ目のケースは、住宅ローンの契約者以外の人が返済をした場合です。
住宅ローンの契約者以外の人が住宅ローンの返済をしていると、返済をしている人が契約者に対して贈与をしているとみなされます。
たとえば、月々の返済額が15万円の住宅ローンを夫名義で契約したにも関わらず、妻が返済をしていると年間180万円の贈与をしていると扱われます。
180万円に対して贈与税が課税されるわけではありませんが、住宅ローンの契約者以外が返済をすると贈与税の課税対象となることを覚えておきましょう。
住宅のリフォーム代を名義人以外が支払う場合
住宅ローンを組む際に夫婦でも贈与税が課税される4つ目のケースは、住宅のリフォーム代を名義人以外が支払う場合です。
住宅を購入してから築年数が経過すると、経年劣化などによりリフォームを検討する人も多いでしょう。
また、中古住宅を購入してリフォームしてから住み始めるケースも考えられますが、住宅の名義人以外がリフォーム代を支払うと贈与税の課税対象となります。
たとえば、夫の名義で住宅を購入して妻の名義でリフォームをすると、贈与とみなされます。
ただし、リフォーム代金の一部を妻に負担してもらうケースもあるでしょう。
詳細は後述しますが、110万円以下であれば贈与税が非課税となるため、費用の一部を負担してもらう際は110万円以下に収めましょう。
夫婦間の贈与税が非課税となるケースとは?

夫婦間の贈与税が非課税となるケースが2つあります。
- 生活費や教育費として充当する場合
- 年間の贈与額が110万円以下の場合
順番に見ていきましょう。
生活費や教育費に充当する場合
夫婦間の贈与税が非課税となる1つ目のケースは、生活費や教育費に充当する場合です。
民法752条では、夫婦間には同居義務、協力義務、扶助義務が生じるとされています。
特に扶助義務では、夫婦間で1人だけ収入があると収入のない人も同等の生活をできるように扶助する必要があります。
つまり、日常の生活を送るために必要な費用であれば、贈与税がかかりません。
また、国税庁のホームページにも以下のような記載があります。
- 夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
国税庁のホームページに明記されている生活費とは、通常の日常生活に必要な費用のことで、治療費や養育費、その他子育てに関する費用が含まれています。
ただし、上記の費用として受け取った費用を預金したり、資産運用したりすると課税対象となるため注意しましょう。
年間の贈与額が110万円以下の場合
夫婦間の贈与税が非課税となる2つ目のケースは、年間の贈与額が110万円以下の場合です。
国税庁のホームページには以下のような記載がされています。
- 贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。
つまり、年間に受け取る金額が110万円以下であれば、贈与税が非課税となります。
ただし、夫婦間だけではなく親子間や兄弟間で受け取った費用の合計値が110万円以下である必要があるため、注意が必要です。
贈与された金額が110万円を超えると、以下の贈与税率が課税されます。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
たとえば、住宅ローンの契約者が夫で、妻が頭金を250万円負担すると、基礎控除額である110万円を差し引いた140万円に対して課税されます。
つまり、贈与税は14万円です
贈与する金額に応じて税率が変動するため、贈与する金額には注意しましょう。
夫婦間で住宅を贈与する際の配偶者控除の特例とは

夫婦間で住宅を贈与すると、先述した非課税対象以外に配偶者控除の特例が適用されることがあります。
配偶者控除の特例が適用されると、贈与税の基礎控除110万円のほかに最大で2,000万円までの控除を受けられます。
夫婦間での贈与ならではの特例であるため、詳しく見ていきましょう。
配偶者控除の特例を利用するための要件
夫婦間の贈与で配偶者控除の特例を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- (1)夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。
- (2)配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること。
- (3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。
(注1)「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利または家屋で国内にあるものをいいます。
(注2)配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。
引用:国税庁ホームページ
居住用不動産に該当するためには夫婦が居住するための家屋である必要がありますが、店舗併用住宅などは居住部分のみが適用対象となります。
配偶者控除の特例を利用するための手続きの流れ
配偶者控除の特例を利用するためには、以下の書類とともに贈与税の申告書を提出する必要があります。
- (1)財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本または抄本
- (2)財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
- (3)居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの
金銭の贈与ではなく、居住用不動産を贈与する際は上記3種類の書類とあわせて、固定資産評価証明書などの居住用不動産を評価するための書類の提出が必要です。
また、登記事項証明書は、贈与税の申告書に不動産番号を記載すれば提出不要です。
贈与税の申告書に不動産番号を記載しない際は、各自治体の登記所の窓口やインターネットなどで登記事項証明書の発行を依頼できるため、覚えておきましょう。
配偶者控除の特例を利用するための住宅要件
配偶者控除の特例を利用するための住宅要件は以下のとおりです。
- (1)夫または妻が居住用家屋を所有していること。
- (2)贈与を受けた配偶者と同居する親族が居住用家屋を所有していること。
つまり、夫婦間のどちらかが所有している家屋に居住していれば対象となります。
居住用不動産の贈与は、持分を一括で贈与する必要はなく、土地や家屋の一部を贈与すると配偶者控除の特例は適用となります。
夫婦間の贈与では贈与税の申告漏れに注意

先述したとおり、夫婦間の贈与でも贈与税がかかることがあります。
夫婦間であっても、一定額以上の贈与をおこなうと、贈与税の申告が必要です。
夫婦間での贈与には特別控除があるため、一定額以下の贈与は贈与税がかかりませんが、贈与税の申告漏れがあると加算税や延滞税を請求される可能性もあります。
そのため、夫婦間で贈与をする際には、贈与税の申告をおこない、税務署からの督促に備えることが重要です。
贈与税の申告期限は、贈与をおこなった年度の翌年1月1日から3月15日までとなっています。
自分が贈与税の課税対象となるか判断ができない場合には、税理士や税務署に相談してみるとよいでしょう。
まとめ
住宅ローンを組む際に、夫婦間で金銭のやり取りが発生すれば贈与税の課税対象となります。
その他にも、住宅購入時の出資割合と共有名義の持分割合が同等ではないと、贈与税の課税対象となるケースが複数あります。
ただし、配偶者控除や基礎控除の制度を有効活用することで、贈与税が非課税になるケースもあるでしょう。
自分だけで判断が難しい場合には、税理士や税務署に相談することをおすすめします。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成を行うため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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