住宅ローンの担保提供者とは? 連帯保証人との違いや対象となる条件も解説

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担保提供者とは?

担保提供者とは、融資などの債務を担保するために、自らの資産を担保として提供する人のことを指します。主に金融機関からの融資を受ける際に、債務不履行のリスクを軽減するために設定されるものです。
担保提供者の役割
担保提供者の主な役割は以下のとおりです。
債務の担保提供
金銭の借り入れや保証などの債務を担保するために、自らの資産(不動産、有価証券、預金など)を担保として提供する。債務者が返済不能になった場合、担保資産が債権者に移転され、債務の回収に充てられる。
リスク軽減
担保の提供により、債権者側のリスクが低減される。債務者の返済能力が不確かな場合でも、担保があれば融資を受けやすくなる。
信用力の補完
担保提供者自身の信用力や資力が不足している場合、十分な担保を提供することで、債務者の信用力を補完できる。
連帯保証人との違い
融資などの債務を担保するために、第三者が関与する場合があります。その際、「担保提供者」と「連帯保証人」という2つのパターンがあるのですが、初めて聞く方は混同しがちです。ここからは、「担保提供者」と「連帯保証人」の違いについてわかりやすく説明します。
担保提供者とは
担保提供者は、自らの資産を担保として提供する人のことです。例えば、自分の土地や建物を担保として提供することになります。
債務者が返済できなくなった場合、提供した担保資産が債権者(融資をおこなった金融機関など)に移転されます。担保提供者は直接債務を負うわけではありませんが、自身の資産を債権者に差し出す覚悟が必要です。
連帯保証人とは
連帯保証人は、債務者と連帯して債務を負う人のことをいいます。
債務者が返済できない場合、連帯保証人に返済する義務が発生します。連帯保証人は担保提供者とは異なり、直接的に債務を負担する立場にあるのです。
住宅ローンでは基本的に連帯保証人を立てる必要はありませんが、必要なケースもあります。連帯保証人が必要なケースとして、収入を合算して借り入れをする場合や、ペアローンで借り入れする場合が挙げられます。
担保提供者と 連帯保証人の違い |
担保提供者 | 連帯保証人 |
---|---|---|
資産と債務の関係 | 自身の資産を債権者に提供するが、直接債務は負わない | 債務者と連帯して直接債務を負う |
責任の範囲 | 責任は提供した担保資産の範囲に限定される | 債務者の支払い能力を超えて負担する可能性がある |
手続き | 担保権の設定などの法的手続きが必要 | 保証契約の締結が必要 |
上記のように、「担保提供者」と「連帯保証人」はリスクの大きさや手続きが異なるため、融資を受ける際は十分に理解しておく必要があります。特に連帯保証人には大きな責任がともなうことを、頭に入れておきましょう。
担保提供者として認められる人物

担保提供者となるためには、一定の要件を満たす必要があります。担保提供者として認められる人物の条件は、以下のとおりです。
資産を所有していること
担保提供者になるための重要な条件は、担保として提供できる資産を所有していることです。一般的に、以下のような資産が担保として認められます。
- 不動産(土地、建物など)
- 有価証券(株式、債券など)
- 預金
- 動産(自動車、機械設備など)
担保資産の種類や価値によって、融資の可否や条件が変わってきます。資産が豊富で、質の高い担保を提供できる人物ほど、担保提供者として望ましいと判断されます。
年齢や支払い状況などの条件を満たしている
担保提供には法的な手続きがともなうため、担保提供者自身にも条件が設けられています。具体的には、以下のような条件を満たす必要があります。
- 成年に達していること
- 破産者でないこと
未成年者や精神的に能力が不十分な方、破産を経験したことがある方は、担保提供者になるのは難しいでしょう。
債務者との関係性
債務者との関係性も重要な点です。通常は以下のような関係にある方が担保提供者になることが多いです。
- 親族(配偶者、親、子など)
- 役員(法人の場合)
- 実質的な経営者
第三者が担保提供者になる場合もあります。ただし、第三者が担保提供者となる場合は債務者との関係が深く、債務の返済意思があると判断されなければ審査には受からないため、注意が必要です。
また、金融機関によって担保提供者の範囲が異なるため、注意が必要です。事前に範囲を確認してから候補の方に相談するようにしましょう。
支払能力と返済意思の有無
担保提供者の支払い能力と返済意思の有無も審査基準のひとつです。担保提供者が十分な支払能力を持ち、まじめに債務の返済をおこなう意思があるかが慎重に審査されます。
上記のように、担保提供者となるには多くの要件を満たす必要があり、単に資産を持っているだけでは担保提供者にはなれない可能性があります。
担保提供者を家族や親族に依頼する際の注意点

融資を受ける際、担保提供者を家族や親族に依頼しようと考える方も多いでしょう。しかし、家族や親族に依頼する際は、注意しなければならない点があります。
- 十分な説明をして理解を得る
- 資産の価値と権利関係の確認をする
- 書面による契約をおこなう
- 将来的なリスクに備える
- 代替案も検討しておく
それぞれの注意点を詳しく解説します。
十分な説明をして理解を得る
担保提供者は、債務者が返済できない場合に自身の資産を差し出すリスクを伝えなければなりません。一方的に押し付けるのではなく、十分に説明をしたうえで理解を得ることが大切です。
万が一トラブルが起きた際は、冷静に話し合いをおこない、適切な対策を実施することが大切です。
資産の価値と権利関係の確認をする
担保として提供する資産の正確な価値評価と権利関係を確認しましょう。不動産の場合は、登記簿や固定資産税などの税金の支払い状況、抵当権の有無などを慎重にチェックする必要があります。
書面による契約をおこなう
担保提供者の理解を得られた場合は、書面による契約をおこないましょう。書面による正式な契約を交わし、責任関係を明確にすることが重要です。口頭のみではあとあと“言った言わない”のトラブルに発展するかもしれません。トラブルを避けるためにも、書面での契約がおすすめです。
将来的なリスクへの備え
担保権が実行された場合、資産を失う可能性があります。そのため、将来的なリスクを十分に検討し、家族の生活に重大な影響がおよばないよう対策を立てる必要があります。
代替案も検討しておく
家族に依頼するのが適切でないと判断した場合は、代替策を検討しましょう。第三者に依頼するか、金融機関との交渉を重ね、担保提供者を立てずに融資を受けられないか検討する必要があります。
家族や親族に担保提供者を依頼する際は、単なる人情頼みにならないよう、慎重な対応が求められます。リスクを十分に認識し、将来の影響を考慮することが大切です。
担保にできる対象のもの

上記でも簡単に説明しましたが、担保にできる対象のものとしては、以下の4つが代表的なものに挙げられます。
- 不動産
- 証券
- 預金
- 動産
ここからは、担保にできる対象のものを詳しく具体的に解説していきます。
不動産
不動産は担保として一般的に利用されることが多いです。具体的には以下のようなものが該当します。
- 土地
- 建物(住宅、店舗、事務所ビルなど)
- 工場や倉庫
不動産を担保とする場合は、不動産登記をおこなって金融機関から抵当権・根抵当権が設定されます。立地条件がよいほど、担保として好まれやすいです。
有価証券
株式や債券などの有価証券も担保として活用できます。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 上場株式
- 公債や社債
- 受取手形
有価証券は流動性が高く、価値を比較的簡単に算出できるメリットがあります。ただし、価格の変動リスクがあるため、信用リスクに関しても注意しておかなければなりません。
預金
預金残高を担保として提供することもできます。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 普通預金
- 定期預金
- 納税準備預金
預金は、いつでも現金化できる利点があります。しかし、金額が大きくない場合は担保として不十分だと判断される場合があるため、注意が必要です。
動産
動産も担保対象になるものがあります。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 自動車
- 畜産物
- 船舶
- 貴金属
動産は価値が安定しているものが望ましいですが、権利関係の確認や評価が重要です。ただし、処分が困難な傾向にあり、融資での評価はそこまで高く期待できない可能性が高いです。
配偶者を担保提供者にするメリット・デメリット

融資を受ける際、配偶者に担保提供者になってもらうケースもあります。しかし、配偶者を担保提供者にしても大丈夫なのか、不安を感じている方もいるでしょう。ここからは、配偶者を担保提供者にする場合のメリットとデメリットを解説します。
配偶者を担保提供者にするメリット
配偶者を担保提供者にするメリットとして、承諾を得やすい点が挙げられます。すでに強い信頼関係を築いているため、担保提供に関する理解を得られやすい傾向にあります。
連帯保証人と比較すると、担保提供者の負担は軽いですが、それでも少なからず今後の生活に影響が出ることもあるでしょう。第三者の場合は万が一トラブルが起きた際、その信用を回復するのは難しいかもしれません。配偶者であれば、万が一トラブルが起きた際でも家族で協力して対処できます。
配偶者を担保提供者にするデメリット
配偶者を担保提供者にするのにはメリットだけではなく、デメリットもあります。大きなデメリットとして挙げられるのは、精神的なダメージが大きくのしかかる可能性があることです。万が一債務者が返済不能になり、担保権が実行されてしまうと、配偶者は自分自身の資産を失うことになります。夫婦関係にも大きく影響が出て、夫婦トラブルにつながってしまうかもしれません。
また、別居や離婚になった場合は担保提供をめぐるトラブルが発生する可能性があります。万が一別居や離婚が生じた場合の担保提供はどうするか、事前に細かく話し合っておくとよいでしょう。
夫婦関係が良好なのに別居や離婚の話をするのは心苦しいかもしれませんが、万が一に備えるためにも話し合っておきましょう。
担保提供者の審査基準

担保提供者は誰でもなれるわけではありません。担保提供者にも審査基準が設けられているため、審査に受からなければ担保提供はできません。ここからは、担保提供者の審査基準についてまとめていきます。
収入
担保提供者の審査において大きく重要視されるのが、収入です。具体的には以下のような項目で審査されます。
- 収入や資産状況
- 負債の有無と返済能力
- 信用情報(延滞歴、過去の債務不履行など)
収入が十分でないと、債務不履行時に担保権を適切に行使できない恐れがあるためです。
担保物件の審査
担保として提供する物件の状況についても、厳しく審査されます。具体的な審査項目は以下のようなものが挙げられます。
- 物件の権利関係(単独所有か、共有物件か)
- 物件の評価額
- 物件の現状(老朽化、瑕疵の有無など)
- 処分の可能性(流動性)
物件に問題があれば、担保権実行時に債権回収が困難になる可能性があるため、細かくチェックされます。
人的審査
担保提供者の人となりも、審査対象となります。
- 年齢(成年に達しているか)
- 債務者との関係性(利害関係があるか)
- 返済意欲
関係者であれば、真摯な返済意欲があると判断されやすくなります。
審査基準は金融機関によって異なります。また、希望する金額の融資が受けられるかは審査の結果次第となるため、担保の状態によっては希望金額に達さない可能性もあるでしょう。
まとめ
住宅ローンを組む際は、担保提供者または連帯保証人を立てる必要があります。担保提供者は自身の資産を債権者に差し出す立場であり、債務自体は負いません。一方で連帯保証人は債務を直接負担します。
担保提供者と連帯保証人の明確な違いを理解したうえで、どちらを依頼するか決めることが大切です。また、住宅ローンは長期に渡る大きな債務なので、十分に理解してから適切な対応を取ることが重要です。
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執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
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