建築条件付き土地とは?事前に知っておくべきデメリットとメリットについて解説

建築条件付きの土地を購入することは、通常の土地と異なり、その土地に建てる建物の間取りやデザイン、仕様などを決める自由度にも影響するため慎重な判断が必要です。
この記事では、建築条件付き土地とは何かを説明します。さらに、知っておくべきメリット・デメリットから起こりうるトラブル、契約上の注意点まで解説します。
記事の目次
建築条件付き土地とは?

建築条件付き土地とは、その土地に建築する建物に条件が付けられた土地のことです。建築条件付き土地には、以下のような条件が設けられています。
- 売主もしくは売主指定の会社で建物を建てること
- 土地売買契約から一定期間内に建築請負契約を締結すること
一般的に設定される期間は3カ月程度です。期間内に請負契約が締結されない場合、土地売買契約は白紙解除となり買主が支払った手付金は全額返金されます。
建物を完成させた状態で土地とセットで販売する住宅を「建売住宅」といい、建築条件付きの土地に建てられる住宅を「売建住宅」と呼びます。
建築条件付き土地の購入から入居までの流れ
- STEP 1建築条件付き土地の売買契約を締結
- STEP 2建物の間取りや仕様などの打合せ
- STEP 3指定の建築会社と工事請負契約締結
- STEP 4着工から竣工(引渡し)
- STEP 5引越し・入居
建築条件付きの土地を購入してから入居までの流れは次のとおりです。STEP 1 の土地の売買契約締結から STEP 3の工事請負契約までを、契約条件で決められた期間内に進める必要があります。
注文住宅で土地から購入して建てる場合、一般的には、土地の購入と並行してハウスメーカーや工務店を探します。その後、土地が見つかれば数社の間取りプランや見積もり金額を比較し、建築会社を決めます。
これに対し、建築条件付き土地の場合、ハウスメーカーや工務店などを別途探す必要はありません。
また、注文住宅は、土地を購入してから建物の請負契約を締結するまでの期間は人それぞれです。
しかし、売建住宅は、土地売買契約から工事請負契約までの期間が契約上決められています。
建築条件付き土地のメリット
建築条件付き土地を購入するメリットとして、どういった点が考えられるのでしょうか。5つのメリットを紹介します。
建築条件のない土地と比べて価格が比較的安い
建築条件のない土地と比べると、建築条件付き土地は価格が安くなるケースもあります。これは、土地の販売だけでなく、建物の建築を含めた利益を見込んだ価格設定が可能なためです。
場合によっては建築費用で利益を上げることで、価格を抑えて土地を販売しているケースもあります。
ただし、建築条件付きの土地は、指定の建築会社で見積もり、工事請負契約を締結することが前提です。
そのため、土地代金だけでなく建築費用も含めトータルで考える必要があります。
建物に仲介手数料がかからない

分譲住宅や建売住宅を購入すると、土地、建物を含めた売買価格に対して仲介手数料がかかることがあります。しかし、建築条件付き土地の場合、土地には仲介手数料がかかるものの、建物には必要ありません。
土地は売買契約で購入し、建物は工事請負契約で建築する別の手続きだからです。
建築会社を探す手間がかからない
建築条件付き土地は、建築会社が指定されるため探す手間がかかりません。
注文住宅は土地探しをしながら、カタログを取りよせたり、住宅展示場や内覧会へ足を運んだりなど、建築会社を探さなければなりません。各社のプランや見積もり、仕様などを比較しながら決められる自由はある一方、それだけの時間と手間が必要です。建築条件付き土地は、そういった時間や手間が軽減されるでしょう。
間取りや設備が自由に選べるケースが多い
建築会社の指定はあるものの設計プランや設備、仕様などを自由に選ぶことができる点は、条件付き土地のメリットです。
ただし、土地に合わせた建物プランや仕様が一定程度決まっていて、フルオーダーの注文住宅を建てる場合のような自由度がないケースもあります。
ライフスタイルや家族構成に合わせて建物にはこだわりたい場合は、どのくらい間取りや仕様、設備を選べるのかしっかりと確認することが重要です。
建築過程を確認できる
建築条件付き土地は、注文住宅と同様に建築過程を確認することが可能です。この点は、完成済みの分譲住宅や建売住宅にはないメリットといえます。
建築中の現場を訪問することで、完成後には見えにくい床下や小屋裏、断熱材の作業状況などを確認でき、施工不良を防ぎやすいでしょう。
状況によっては、現場監理の担当者に建物の施工の説明を受けられる場合もあります。
建築条件付き土地のデメリット

建築条件付き土地には、通常の土地と異なるデメリットもあります。4つのデメリットを取り上げます。
一定の期間内に間取りや仕様を決めなければならない
建築条件付き土地は、土地購入から一定期間内に建築請負契約を締結することが条件となっています。そのため、間取りや仕様をその期間内に打合せし、決めなければなりません。
一般的に注文住宅で間取りや仕様の打合せにかかる期間は、3~6カ月程度といわれています。また、決めきれない場合でも請負契約や着工時期をずらすことが可能です。
一方、3カ月程度の期間内が条件となっている建築条件付き土地は、少なくとも建築請負契約が締結できる程度までのプランや仕様、設備などを決めなければなりません。
3カ月では十分に検討する時間がとれない場合も。時間をかけて建物の打合せができない点はデメリットでしょう。
建築会社を自由に選べない
建築条件付き土地の場合、建築会社を自由に選ぶことができません。
建築をおこなう会社によって外観デザインや工法、仕様などの特徴は異なります。外観デザインの種類も和風やシンプルモダン、北欧風、アメリカンスタイルなどさまざまです。
また、工法によって間取りの自由度も異なり、省エネ性能や耐震性など住宅性能も違います。
建築条件付き土地で、好みやこだわりに合わせた家づくりをしたい場合、その建築会社がどういった特徴を持つのかを確認したうえで判断することが大切です。
相見積もりが取れない
建築条件付き土地は、建築会社が決められているため相見積もりをとれません。
家を建てる際、建物本体工事費から付帯工事費、諸費用などさまざまな費用が必要です。価格帯は建築会社によって異なります。
注文住宅は、建築費用は数社の見積もりを比較することが可能です。各社の見積もりをとることで、同じ条件で建築坪単価が比較でき、コストダウンにつなげられる場合もあるでしょう。
一方で建築条件付き土地は、このような比較はできず、建築費用の妥当性がわかりにくい点はデメリットでしょう。
注文住宅ほど自由度が高くないことがある
建築条件付き土地は、注文住宅ほど建物の自由度が高くないことがあります。
例えば、間取りは自由に決められる一方で、内外装の仕様や設備は基本プランからしか選べないようなケースも考えられるでしょう。
土地購入から一定期間内に間取りや仕様を決め、工事請負契約を締結しなければならないことから、間取りや仕様のすべてを自由に選ぶことが難しい場合もあります。
建築条件付き土地でよくあるトラブル

通常の土地と異なり、建物の制約がある建築条件付き土地では、トラブルになることもあります。
希望どおりの設計にできなかった
建築条件付き土地の広告で、参考プランとともに自由プランやフリー設計と表記されている場合があります。
ところが「希望するプランや要望がなかなかとおらない」「要望どおりに進めるためにはオプション料金が必要」などの現実が、期待していたものとは違う可能性は否めません。結果的にトラブルに発展することもありえます。
また、希望どおりのプランで建てられないことから建築請負契約を解除するとしても、締結後では土地の手付金を放棄しなければなりません。さらに、建築請負契約に基づく違約金が発生するケースがあるため注意しなければならないでしょう。
土地の売買契約と建物の工事請負契約は別ですが、土地購入時に建物プランの自由度をしっかりと確認することが重要です。
打ち合わせがあまりできなかった
3カ月間程度の期間では、十分な時間を確保できず、納得できる打合せができないこともあります。家を建てるためには、間取りから外観や内装デザイン、設備、仕様、配線など決めることは尽きません。
通常、注文住宅では、10~15回程度の打合せを3~6カ月程度、もしくはそれ以上の期間をかけておこないます。
そのため、期間内に十分な打合せや検討する時間を確保できず、納得できないまま工事請負契約を締結しトラブルとなる場合も考えられるでしょう。
建築条件付き土地で後悔しないための注意点
建築条件付き土地で後悔しないためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
建築会社の仕様や営業担当との相性と確認する
まずは建築会社の仕様や営業担当との相性と確認しましょう。
建築条件付き土地を購入することは、同時に依頼する建築会社が決まるということです。土地は気に入ったものの建築会社のデザインや仕様が気に入らないこともあります。
そのため、土地購入前に建築会社の建築事例や施工実績を確認し、デザインや仕様が自分と合うかを確かめることが重要です。
同時に、アフターサービスも建築会社によってさまざまです。地盤や設備などの保証期間を含めてアフターサービスの確認をしましょう。
土地購入まではよかったもののプランの打合せに入ってから営業担当者との相性が合わない、信頼できないとなると、家づくりが楽しくなくなり後悔することになります。
建築条件付き土地は、3カ月程度の短期間でプランや仕様を決めなければなりません。さまざまな要望を伝えるうえで、設計や現場とのパイプ役となる営業担当者の動きは重要です。事前に営業担当者がどういった人か確認するようにしましょう。
契約書をよく確認する

契約書の内容をしっかりと確認することが重要です。具体的には、土地売買契約書で次の3点は必ず確認しましょう。
- 一定の期間内に建物の建築工事請負契約を締結することを条件とすること
- 1.の請負契約を締結しなかったときは、又は建築をしないことが確定したときは本売買契約は解除になること
- 2.により本売買契約が解除となったときは、売主はすでに受領している手付金等の金員全額を買主に返還すること及び売主は本契約の解除を理由として買主に損害賠償又は違約金の請求はできないこと
引用:「不動産取引の手引き」7 契約を締結する│東京都住宅政策本部
売買契約を締結する前に契約書の雛形を送ってもらい、内容を確認し不明点を解消したうえで売買契約の締結日にのぞむことが大切です。
請負契約締結までの期間短縮は違法となる
建築条件付き土地の特徴は、土地売買契約から工事請負契約までの期間が定められている点です。一般的には3カ月程度の期間が定められますが、この期間を買主の同意なしに短縮することはできません。
また、この期間は、公益財団法人不動産流通推進センターによると以下のように説明されています。
引用:建築条件付土地売買の条件成就までの期間を短縮することの是非│公益財団法人不動産流通推進センター
そのため土地購入者や取引時の状況によってケースバイケースですが、必要と考えられる期間と比べて短い期間を設定されている場合も違法となる可能性があります。
土地の売買契約からどれくらいの期間に何を決めなければならないか、土地購入から建築請負契約までの流れ、打合せの進め方をしっかりと確認しましょう。
土地と建物の費用をまとめて住宅ローンで借り入れできない
建築条件付き土地の場合、先に土地の購入をしたあとに建築費用が確定するため、土地と建物の費用をまとめて住宅ローンで借入はできません。したがって、資金計画に注意しなければなりません。
そもそも住宅ローンは建築費用が決まらないと融資実行されないため、先に費用が必要となる土地の購入は、別で資金が必要です。
注文住宅と同様に、建物が完成し引渡しされてから住宅ローンの融資が実行されるため、土地の購入資金や建物完成までの着手金などは「つなぎ融資」を活用することが一般的です。
つなぎ融資は、土地建物資金を一時的に立て替えるためのローンで、住宅ローンの融資実行のタイミングに一括で返済します。
事務手数料やつなぎ融資の利息が発生し、手続きも複雑になります。資金計画も、しっかりと確認しながら進めることが必要です。
手付金が返還されない可能性がある
建築条件付き土地の売買契約は、契約で定めた期間内に工事請負契約をすることを前提に成立する契約です。
そのため、期間内に工事請負契約が締結されない場合、土地の売買契約は解除され、支払った手付金は返還されます。
ただし、間取りや仕様を決めて工事請負契約を締結したあとに、正当な理由なく契約を解除すると、手付金が返還されない可能性があります。
土地売買契約は、契約に定めた期間内に工事請負契約が締結されていることで、有効に成立していると考えられるからです。
建築条件付き土地についてよくある質問

建築条件付き土地でよくある質問を紹介します。
建築条件付き土地の「条件」とは?
「条件」とは、売主もしくは売主指定の建築会社と、売買契約締結から一定の期間内に工事請負契約を締結することです。一般的に3カ月程度の期間が設定されます。
なぜ条件を付けて土地を販売するの?
条件を付けて土地を販売している理由は、主に2点です。
1点目は、販売会社が土地と建物をセットで販売でき、利益を上げやすいためです。セットで利益を上げられる分、土地の価格は安くなっているケースもあります。
2点目は、建売住宅のように、建物を建てて販売した場合の売れないリスクを回避できるためです。建売住宅は、土地だけでなく建物を建築する分売れない時のリスクは大きくなります。
建築条件付き土地は、土地売買時に建物の請負契約が条件です。そのため、建物を建てて売れないというリスクはないでしょう。
建築条件付き土地の条件を外すことはできる?
建築会社が所有する建築条件付き土地の条件を外すことは、基本的に難しいです。
なかなか売れない土地であれば、建築条件が外れるケースはあります。ところが、そうでない場合、売主の収益にも大きく影響するため難しいと考えたほうがよいでしょう。
ただし、交渉によっては建築条件を外せる可能性もゼロではありません。例えば、土地代金を上乗せするような条件を提示する方法。土地は気に入ったが建築条件がどうしても合わないのであれば、交渉してみるのも一つです。
建築条件付き土地の価格を値引いてもらうことはできる?
売買契約は売主と買主の合意で成立します。建築条件付きの土地でも、購入申し込みの時点で値引き交渉することは可能です。
ただし、希望の価格で土地を購入できても、建築条件付きの土地は、建築会社を選べない以上、建物の建築費用がその分高くなる可能性もあります。
いずれにしても、土地と建築費用の総額で資金計画をしっかりと立てることが大切です。
まとめ
建築条件付き土地は、土地の売買契約時点で一定期間内に建物の請負契約を締結することを前提とする契約です。
手続きは別ですが、実質的には土地と建物を同時に購入できるため、土地代金を抑えられるケースや建物の仲介手数料が不要などのメリットもあります。
一方で、間取りやデザイン、仕様の自由度、自分の好みに合うかなど、土地の購入段階から建築会社としっかり確認しておかないと、のちのち後悔する可能性も。また、契約手続きも、工事請負契約の締結に至らなかった場合の取扱いを確認しておきましょう。
「土地は気に入っていたのに、完成した建物に満足できない」とならないように、自分に合う条件をしっかりと見極めて土地探しを進めるのがおすすめです。