16年にはテレビアニメ化もされた人気ギャグ漫画『とんかつDJアゲ太郎』。とんかつ屋の跡取り、アゲ太郎が、ある日、とんかつもフロアも“アゲ”られる「とんかつDJ」を目指す。本作は、アゲ太郎の実家「しぶかつ」、アゲ太郎が友人たちとたむろする円山旅館、そして実際にあるクラブ・WOMBが実名で登場するなど、全編渋谷が主な舞台となっている。美術の宮川卓也さんは、どのようにつくりあげたのか?
アゲ太郎が友人たちとたむろする秘密基地のような地下室
渋谷にあるアゲ太郎の実家「しぶかつ」。アゲ太郎は、劇中で「とんかつを揚げることと、DJでフロアをあげることが同じだったんだ」と気づく。宮川さんは、その要素をセットに落とし込んでいる。
「一番重きを置いたのは、とんかつとDJをどうリンクさせるかでした。DJはかっこよく描きやすい存在ですが、とんかつ屋さんをかっこよく見せるためには、どうすればいいかを考えた結果、その道を究めた人が真剣に向き合っている姿を出せばいいと思いました。「しぶかつ」のカウンターは、DJブースのイメージです。ブースの中央でDJがプレイしていて、オーディエンスが囲っている。同じようにコの字のカウンターの中心にある揚げ場でアゲ太郎のお父さん立って調理をしていて、少し下がったところにお客さんがいて、黙々と食べている。揚げ場でとんかつを揚げている姿が、DJのスクラッチをしている姿とかぶるみたいな感じも狙いました」
「一番重きを置いたのは、とんかつとDJをどうリンクさせるかでした。DJはかっこよく描きやすい存在ですが、とんかつ屋さんをかっこよく見せるためには、どうすればいいかを考えた結果、その道を究めた人が真剣に向き合っている姿を出せばいいと思いました。「しぶかつ」のカウンターは、DJブースのイメージです。ブースの中央でDJがプレイしていて、オーディエンスが囲っている。同じようにコの字のカウンターの中心にある揚げ場でアゲ太郎のお父さん立って調理をしていて、少し下がったところにお客さんがいて、黙々と食べている。揚げ場でとんかつを揚げている姿が、DJのスクラッチをしている姿とかぶるみたいな感じも狙いました」

「2階のうち、劇中に登場するのはアゲ太郎の部屋だけ。ですから、2階全体の間取りは深く考えていないんです(笑)。アゲ太郎の部屋は絵面として奥行き感を出したくて、角度をつけるように廊下側のドア面を設けました」。結果として、廊下が建物の壁面に対して斜めに伸びるという一風変わった間取り図に。
アゲ太郎が、友人である渋谷の商店の3代目たち(円山旅館の室満男、東横ネオン電飾の夏目球児、道玄坂薬局の白井錠助、宇田川ブックセンターの平積タカシ)とたむろするのが円山旅館の地下にある秘密基地のような部屋。この場所は映画のオリジナルでつくられた。
「設定としては、円山旅館のもう使われなくなった部屋に、子どもの頃の3代目チームが入り込んで、自分たちの好きなように使っていて、結果こうなったというものです。小さいころからずっといて、大人になってもまだここにいるので、彼らのいままでの積み重ねが残っていると感じられるようにしました。子供、特に男の子は秘密基地に憧れがあります。そのワクワクした感じを出したいと思いました。二宮監督から「遊び心が欲しい」という話もあったので、それもふまえて形にしました」
地下室には、使われてた頃の名残が垣間見える。
「かつてこの部屋にはステージがあって、そこで歌謡曲の歌手の人が営業で来て歌っていたんです。そのステージの壁には、昔の渋谷が描かれています。特にひばり号(当時の東横百貨店と玉電ビルの屋上をつないだロープウェイ)の部分は気に入っています」
「かつてこの部屋にはステージがあって、そこで歌謡曲の歌手の人が営業で来て歌っていたんです。そのステージの壁には、昔の渋谷が描かれています。特にひばり号(当時の東横百貨店と玉電ビルの屋上をつないだロープウェイ)の部分は気に入っています」
今作は、ほぼ渋谷を舞台に展開していく。劇中、アゲ太郎がDJをする場所も、実在するクラブ「WOMB」。撮影は実際の店内で行われた。外観は別の場所で、実際よりも誇張して表現されている。
「WOMBの小さなネオンをつくろうかと思っていたのですが、二宮監督から「大きい方がいい」と言われ、どうせなら大きくするのならば壁全面だな。と思い、現在のカタチになりました。お金がかかるなと思いながら、つくりました(笑)。あそこはちょっと夢のような空間のイメージなので、電飾をワーッと並べて、キラキラにしました。今作でも、美術的な演出を強めに入れた場面です」結果、映画では現実の渋谷と、「アゲ太郎」の渋谷が同居している。
「押さえるべきリアリティは押さえつつ、遊び心も大切にした感じです。そうやって抑揚をつける感じにできたと思います。
「WOMBの小さなネオンをつくろうかと思っていたのですが、二宮監督から「大きい方がいい」と言われ、どうせなら大きくするのならば壁全面だな。と思い、現在のカタチになりました。お金がかかるなと思いながら、つくりました(笑)。あそこはちょっと夢のような空間のイメージなので、電飾をワーッと並べて、キラキラにしました。今作でも、美術的な演出を強めに入れた場面です」結果、映画では現実の渋谷と、「アゲ太郎」の渋谷が同居している。
「押さえるべきリアリティは押さえつつ、遊び心も大切にした感じです。そうやって抑揚をつける感じにできたと思います。
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#127(2020年11月号 10月18日発売)『とんかつDJアゲ太郎』の美術について、美術の宮川さんのインタビューを掲載。
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Profile
プロフィール

美術
宮川卓也
miyagawa takuya
05年にフジテレビに入社。美術制作局デザイナー。映画、ドラマ、バラエティなど、多岐にわたる番組でデザインを手がける。近作に映画『翔んで埼玉』、テレビドラマ『監察医 朝顔』『グッド・ドクター』『隣の家族は青く見える』などがある。
Movie
映画情報

とんかつDJアゲ太郎
監督・脚本/二宮健 原作/イーピャオ 小山ゆうじろう 出演/北村匠海 山本舞香 伊藤健太郎伊勢谷友介 ほか 配給/ワーナー・ブラザース映画(20/日本/101min)
老舗とんかつ屋3代目の・アゲ太郎。ある日、とんかつもフロアも“アゲ”られる男「とんかつDJ」を目指そうとする! すべては一目ぼれした苑子ちゃんの心を射止めるために……。
©2020イーピャオ・小山ゆうじろう/集英社・映画「とんかつDJアゲ太郎」製作委員会
とんかつDJアゲ太郎公式HP