Room106  

2020.9.30

数々の絶品の料理が生みだされる

新築2階建ての町のおそば屋さん

美術 清水 剛

上方から江戸へとやってきた料理人、澪の成長する姿を描いたベストセラー「みをつくし料理帖」。この時代小説を、プロデューサーとして『犬神家の一族』『男たちの大和/YAMATO』などを、監督として『天と地と』などを手がけた角川春樹監督が映画化。美術の清水剛さんは主人公・澪が種市から代を譲り受けたそば屋「つる家」や、彼女が住む長屋をどのようにつくりあげたのか?

様々なドラマが展開する、素朴なおそば屋さん

髙田郁による「みをつくし料理帖」は、NHKとテレビ朝日で2度ドラマ化されている。清水さんは今回、どちらの作品とも違う、シンプルな「つる家」をつくりあげた。 「出来る限り素朴なお店にしたかったんです。」
お店の中に井戸があるという設定は、映画が初めて。 「澪が上方の思い出として、井戸にまつわる話をする場面があるのですが、そこで目の前に井戸があったら思い出話をするきっかけになるんじゃないかというのがもともとの発想です」
 当時は、江戸と上方で、台所の使い方が違っていたそう。その調理スタイルの違いは、劇中では描かれないが、美術に反映されている。

旧つる家の入り口には、つばめが巣をつくっている。「画面
に映る、映らないはいいんです。俳優さん、スタッフが、つ
る家に入ってくるときに、それが目に入るんです。そうする
と、気持ち的な部分で何かひとつ生まれてくれるんじゃない
かと思うんです」

「一般的に江戸時代は調理、洗い物はほぼ座って行っていたようですが、監督から上方は立ち調理なので澪は江戸のやり方の蕎麦処つる家にその辺が微妙に馴染めず、自分なりに工夫している感じを出してほしい。そして料理処つる家は自分のやりやすい調理場にしたというふうにプランニングしてほしいと希望されました。」

澪が不眠不休で理想のだしの研究をするのは、自宅の長屋。
「物の本によれば長屋の間口は、一般的に九尺程です。そこを広くしてしまうと、いい暮らしをしているように見えて、長屋感がなくなってしまうんです。だから、映画美術の人間で、時代劇をやっている人が長屋をつくるときは間口をいじらない。今回は、澪がつる家のだしを試行錯誤するシーンがあるので、縦方向を少しだけ広くしましたが、撮影の北信康さんのキャメラの腕もあって、狭く感じられるようになっていると思います」

劇中、つる家は焼失し再建される。新しくできたつる家で、清水さんがどうしてもつくりたかったもの。それは「かまど」だそう。
「新しいつる家では、澪は自分が料理しやすい、動きやすい台所をつくりました。澪が動きやすい台所を考えたときに、どうしてもかまどをつくりたかったんです。旧つる家、長屋は既存のかまどを置いていますが、新つる家はオリジナルのものを左官屋につくってもらいました」
 料理道具など、すべてが新しくなる中、唯一残された井戸。
「石でできているので、井戸だけは残ったんです。新しいお店なのですが、井戸だけは焦げているんです。そのアイデアを、角川監督は気に入ってくれました。現場に取材が入ったときは、ゲストに井戸を見せて、『こういう理由で焦げているんです』と説明していました。でも、劇中ではそこまで具体的なモンタージュをせず、さりげなく見せているんです」

つる家のために用意された特注のかまど。「撮影のためにガス管を仕込み、まきは偽物を使っています。しかし、実際に火をたくこともできるし、煮炊きできるようにつくってあります」

澪が立ったまま料理をしやすいようにカスタマイズした厨房。奥にある階段は、前店主・種市の部屋につながっている」

角川監督は、スタッフのアイデアをふんだんに取り入れて、本作をつくりあげた。
「朝、現場に監督が来たとき、ダメ元で『脚本には描かれていないですが、こういうのはどうですか?』と、アイデアを伝えるんです。角川監督は『いいね、それをやろう』と。作品にとっていいと思えば、どんなアイデアでも、吸収、理解して受け入れてくれるので、すごくやりやすかったです」  

劇中には、服部幸應氏が監修をつとめた料理の数々が登場する。撮影が終わった料理を食べた清水さんは、あまりの美味しさに驚いたそう。

清水さんは、時代劇、現代劇、関係なく映画美術として毎回考えてしまうところがあると言う。
「僕は本筋ではないところばかり考えているんです(笑)。いい格好で言えば、シナリオの行間みたいなところ。シナリオに書いてあることをつくるのは、当たり前なんです。そうではないところ、今回で言えば澪らしさを、視覚から少しでも感じてもらうにはどうすればいいかを考えていました」

神田元飯田町(現在の九段北一丁目)に建つ新築2階建てのそば屋。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#126(2020年10月号 8月18日発売) 『みをつくし料理帖』の美術について、美術の清水さんのインタビューを掲載。
プロフィール

清水 剛

shimizu takeshi
60年神奈川県生まれ。『電影少女』(91)で美術監督デビュー。『ゴジラ 2000 MILLENNIUM』(99)といった特撮から、『忍びの国』(17)など時代劇まで幅広いジャンルの作品を手がけている。近作に『マチネの終わりに』『最初の晩餐』(ともに19)、『初恋』(20)、Netflix『全裸監督』(19)などがある。
ムービー

『みをつくし料理帖』

製作・監督/角川春樹 原作/髙田 郁「みをつくし料理帖」(角川春樹事務所) 脚本/江良至 松井香奈 角川春樹 出演/松本穂香 奈緒/中村獅童 ほか 配給/東映 (20/日本/131min) 享和二年の大坂。姉妹のように仲の良い幼なじみの澪と野江は、大洪水に襲われ、生き別れてしまう。それから10年後……。澪は江戸の神田にある蕎麦処「つる家」で料理人に。野江は吉原にある遊郭に買い受けられ、幻の花魁・あさひ太夫と名乗っていた……。10/16~全国公開 2020映画「みをつくし料理帖」制作委員会
『みをつくし料理帖』公式HP
https://www.miotsukushi-movie.jp/
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