Room105  

2020.9.14

膨大な資料から生まれた

様々なカルチャーがミックスした部屋

美術 澁谷千紗×内田真由

東京・中目黒を舞台にルームシェアする女性ふたりの、生活の変化を描いた映画『Daughters』。今作で美術をつとめたのは、普段はメゾンブランドのディスプレイやイベントの演出などの空間デザインを手がける澁谷千紗さん。ファッションイベントの制作、ディスプレイデザインなどを手がける内田真由さん。今作に登場するマンションの部屋を、どのようにつくりあげていったのか。

ふたりを象徴するかのように、太陽と月のモチーフが散りばめられた部屋

澁谷さん、内田さん、ともに映画美術を手がけるのは、今作が初めてだそう。 内田「映画美術の方が、普段どのようにセットをつくっているのか、そういう知識はありませんでした。今回、津田監督から『もうイメージが僕たちの中にあるから、自分たちで美術をやっちゃおう』と、半ば勢いもあって、やることが決まりました。ふたりの暮らしを想像しながら、ゼロから部屋をつくる工程は面白くて、わくわくする作業でした」

カーテンや、ソファのカバーなど、使用されたファブリックには、こだわりがこめられている。 内田「ファブリックは、すべてこだわってセレクトしました。たくさんの素材の中から、イメージを表現できる生地、壁紙などを集めてつくったので、独特な世界観に仕上がったのではないかと思います」

リビングに置いてある鳥の絵にも意味がある。澁谷「骨董品店で偶然見つけたものです。鳥2匹が止まり木に止まっている絵で、劇中に出てくる『おしどり』というキーワードとリンクしています」

ソファの上にあるボックスも、澁谷さんと内田さんの手づく
り。こちらは、爪切りなど、普段使う生活用品がごちゃごち
ゃ入っているという設定。

今作の主人公、堤小春と清川彩乃は、ルームシェアをしているという設定。 内田「監督が用意した膨大な写真を見ながら、イメージを共有していきました。日本ではあり得ないような海外の素敵なお部屋の写真が多かったです」
澁谷「アジアンだったり、洋風だったり、いろんなカルチャーの要素を取り入れていきました。小物も、アンティークだったり、新しいものだったり、いろんなものをミックスしています。混沌としているけど、美しくて、結果可愛いみたいな、そういう感じにしていきたいというイメージはみんなで共有していました」

キッチンの壁にある棚は、澁谷さんと内田さんの手づくり。 澁谷「ふたりで古木の板を買いに行って、それを壁にビスで打ち付けて、棚をつくったんです。そこには、普段使うコップやコーヒーのミルが並べられています。日常生活で、そういうことをやっている人はそうはいないと思うんですけど、画的に世界観に合うし、可愛いよね、というところでつくりました」

ふたりが住むのは、中目黒のマンションという設定だが、今作はリアリティよりも、ファンタジーともいえる非現実的な世界観が監督から求められた。
澁谷「(小春と彩乃の月給では)中目黒で、あんな家には住めないと思います(笑)。むしろ『中目黒でこんな生活できたら素敵だよね』というイメージが入っています」

「小春は、ディスプレイを飾るなど、空間デザインの仕事を。一方、彩乃は、アパレルの広報を仕事にしている。ふたりの職種、キャラクターが、それぞれの空間に反映されている。
内田「小春の性格は、大ざっぱで、お洋服もきちんとしまうというよりは、適当な場所にひっかけたりする」
澁谷「家具がほとんどなくて、家具風のボックスなどを棚にして使っているんです。ソファもなくて、トランクケースにクッションを置いて、そこに座ってマンガを読んでいる。二段ベッドも寝るためではなくて、趣味のマンガが多すぎて、その置き場として購入したという設定です。そういう子なので、『こういう部屋をつくろう』と、あらかじめ考えることはしないで、居心地のいい空間をつくっていたら、結果こうなってしまったという感じが出ればと思いました」

劇中では、ふたりの私物も使われている。澁谷「小春の職業は、私と内田さんの仕事に近いんです。脚立は、高いところの装飾をするためや、ライトを変えたりするための必需品。普段、家に置いておくことは、あまりないのですが、今回は現場で使っていたものを、そのまま流用しています(笑)」内田「小春の部屋の画材は澁谷さんのもので、彩乃の部屋の小説は監督が持ってきたものです」

旅行好きの小春の部屋の壁には地図が貼ってある。これから
行きたい場所には、印がつけられている。

一方、彩乃の部屋は小春とは、真逆の面が垣間見える。
内田「彩乃は、センシティブというか、うちになにかを秘めているようなところがあって、全部の感情を出さない。部屋のイメージも割ときちんとしています。読書家で、本がたくさんあって、ファッションも好きで、クローゼットにおさまりきらないぐらいラックにお洋服があります。靴箱におさまらない靴を、きれいにディスプレイとして飾っていたりとか、ファッションが好きな女の子らしい雰囲気がイメージで固まっていった感じです」
澁谷「最初から監督には、ものが多い方がいいというイメージがありました。ごちゃごちゃしているけど、意外ときちんとした女性らしいお部屋になっていると思います」

ファッションが好きな彩乃の部屋。しまいきれないメイクやコスメの道具が、テーブルの上に飾ってある。

津田肇監督は、撮影前から小春と彩乃、それぞれに黄色と青というイメージカラーを決めていた。そこから派生して、太陽と月というモチーフが生まれた。
内田「劇中では、妊娠という出来事が描かれます。そのことで彩乃の生活は月の満ち欠けのように変化していきます。その彩乃を、まっすぐ変わらず月をそっと照らす太陽のように小春が支えていきます。そのふたりの関係性、黄色と青というイメージカラーとのリンクも感じて、部屋の中には太陽と月をモチーフにしたものをちりばめました」 澁谷「一番目立つのは、小春の部屋の二段ベッドの傍に置いてある太陽のミラー。とあるアンティーク家具屋さんの裏側に置いてありました。月のモチーフは、いいものがなかなか見つからなくて、作家さんが制作した、ステンドグラスを張り合わせた手づくりの小物を見つけて、それを監督に見せたら、『いいですね』と言ってもらえました。それは彩乃の枕元の照明の下にそっと置いてあります」
内田「こっそりと入れたものもあるので、探しながら観てもらえると、より面白いかもしれないです」

中目黒に建つ2LDKのマンション。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#125(2020年8月号 7月21日発売) 『Daughters』の美術について、美術の澁谷さん×内田さんのインタビューを掲載。
プロフィール

澁谷千紗×内田真由

shibuya chisa(R) 85年生まれ。店舗デザイナーとしてアパレル店舗、飲食店の設計を手がける。12年より、VMDやアートディレクションと活動の場を広げ、メゾンブランドのディスプレイやイベントの演出など幅広い分野の空間デザインを行う。
uchida mayu(L) 88年生まれ。16年より、津田肇監督が設立したCHAMELEONS INC.にてプロダクションマネージャーを務め、ファッションイベントの制作、ディスプレイデザインなどを手がけている。
ムービー

『Daughters』

監督・脚本/津田肇 出演/三吉彩花 阿部純子 ほか 配給/イオンエンターテイメント Atemo (20/日本/105min) 中目黒のマンションでルームシェア生活を送る堤小春と清川彩乃。仕事も遊びも充実した生活を送っていたふたり。ある休日、小春は彩乃から突然の妊娠告白を受ける……。
9/18~ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開(C)「Daughters」製作委員会
『Daughters』公式HP
https://daughters.tokyo/
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