売れない脚本家の豪太。彼は倦怠期にある妻・チカとの関係を修復するために、シナリオ執筆のリサーチも兼ねて香川へと旅行に出かけることを提案する……。『百円の恋』『嘘八百』などで知られる脚本家・足立紳さんが、自伝的小説を自ら監督し、映画化した本作。美術の平井淳郎さんは、どのように豪太の家をつくっていったのか。
父、母、子の境がなく、幸せを感じられる部屋
主人公である売れない脚本家の豪太は、監督である足立さん自身がモデル。そして、豪太の家のロケ場所は、予算の都合もあり、実際の監督宅となった。
「何十年とこの仕事をやっていますが、監督のご自宅で撮影をしたことは初めてです」一部、無用に目立つものや、撮影の邪魔になるものは外されたが、基本的には実際の監督のお宅と大きく変わっているところはない。
「ソファはそのまんまです。足した家具などは、ブランド品ではなく、量販店で購入できるものが多いです。劇中で娘さんが登場しますが、監督にも娘さんと息子さんがいて、壁にはお子さんたちの落書きがありました。それはそのまま活かしつつ、寝室やカウンターに描いてある電車の落書きは僕が描き足しました」
「何十年とこの仕事をやっていますが、監督のご自宅で撮影をしたことは初めてです」一部、無用に目立つものや、撮影の邪魔になるものは外されたが、基本的には実際の監督のお宅と大きく変わっているところはない。
「ソファはそのまんまです。足した家具などは、ブランド品ではなく、量販店で購入できるものが多いです。劇中で娘さんが登場しますが、監督にも娘さんと息子さんがいて、壁にはお子さんたちの落書きがありました。それはそのまま活かしつつ、寝室やカウンターに描いてある電車の落書きは僕が描き足しました」
だらしない豪太のキャラクターは、部屋の雑然とした雰囲気にも現れている。 「豪太は香川へシナリオハンティングに行くにも、奥さんにパートを休んでもらって、車を運転してもらうような、ダメな男性。だけど、『ああ、自分にもこういうところがあるな』という憎めない人柄でもあります。美術でも、豪太の子どもっぽい部分を垣間見せることができればと思いました」ちなみに作品には足立監督本人の私物も多く写りこんでいる。 「映画祭のゲストパスだったり、どこで買ってきたんだろう?という変なものもありましたが(笑)、豪太と足立さんのリンクを感じられるものは、残そうと思いました」
豪太とチカ、娘・アキの3人はけっして裕福ではないが、仲良く暮らしている。 「実際には四角いテーブルが置かれていたのですが、映画では丸いちゃぶ台に変更しました。それは父、母、子の境がなく、幸せな感じを出したかったので、カーテンやカウンターに黄色を配しています」その家族の雰囲気同様、足立監督の現場も、またとても穏やかなものだったそう。
「監督はほがらかな方で、怒鳴るタイプではありません。キャストの方、スタッフの方たちと、わいわいやりながら楽しく撮影が進みました。現場ではあまりカットを割らずに、長回しで、その場の雰囲気を撮っていくという感じでした。映画の内容も、監督自身の体験を反映した要素が入っているので、半分ドキュメンタリーと言うと言い過ぎですが、とても面白い作品となりました」
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#125(2020年8月号 7月21日発売)『喜劇 愛妻物語』の美術について、美術の平井さんのインタビューを掲載。
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Profile
プロフィール

美術
平井淳郎
hirai atsuo
63年静岡県出身。東京造形大学卒業後、細石照美氏に師事。 桑田佳祐監督の『稲村ジェーン』(90)、 大友克洋監督の『ワールドアパートメントホラー』(91)等の作品に参加。 その後フリーとなり現在に至る。 主な作品に『ジ、エクストリーム、スキヤキ』(13/前田司郎監督)、『グラスホッパー』 (15/瀧本智行監督)、『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』(16/山口雅俊監督)、 『うちの執事が言うことには』(17/久万真路監督)、 『オズランド』(18/波多野貴文監督)、などがある。
Movie
映画情報

喜劇 愛妻物語
原作・脚本・監督/足立紳 出演/濱田岳 水川あさみ 新津ちせ ほか 配給/キュー・テック バンダイナムコアーツ (19/日本/117min) 売れない脚本家の豪太と、そんな情けない夫に絶望している酒好きの妻チカ。倦怠期夫婦の珍道中を通じて、滑稽だが愛すべき夫婦の真実を描くコメディ。9/11~全国公開 (C)2020『喜劇 愛妻物語』製作委員会
喜劇 愛妻物語公式HP