Room97  

2019.12.23

寅さんのファミリーが暮らす

柴又のカフェ「くるまや」

美術 倉田智子

寅さんの起こす騒動と人情に、日本中が笑い、涙した国民的シリーズ『男はつらいよ』。第1作の公開から50周年となる2019年、最新作『男はつらいよ お帰り 寅さん』が公開される。今作ではこれまでのシリーズでもおなじみのくるまやも、時とともに変化。新たなる『男はつらいよ』の物語に、美術を手がけた倉田智子さんはどう向き合ったのか?

柴又の草団子屋、「くるまや」がカフェに!?

1969年から28年間で49作品が公開された国民的シリーズ『男はつらいよ』。50周年を迎えた2019年、最新作『男はつらいよ お帰り 寅さん』が公開される。 「まず『寅さんはどうするのだろう』と疑問が湧いて、『くるまやはどうなってるの?』『おいちゃん、おばちゃんは?』と不安になりました。ところが、台本を読ませてもらったら、なるほどこうなるのか、これだったら、新しい寅さんの物語がつくれるんだと納得しました」

今作でも、柴又でロケが行われた。「商店街は古い感じのものと、新しいものがいい具合にミックスされて、やはり懐かしさを感じる場所だと思いました」

おなじみの「くるまや」は、カフェへと改装され、時代とともに変化した。営業を続けるのが難しくなった時、さくらは店をたたむことも考えたが、店員の三平がカフェに改装して、継いだという設定になっている。
「今度は、三平ちゃんがお店を切り盛りするわけですから、さくら達が住んでる和室とお店は切り離さないといけない。建物の造作は同じでリフォームしたということにし、間仕切りをつくることになりました。間仕切りをただの壁にしてしまうと圧迫感もあり、つまらない。お客さんからは、さくらの生活の場所である和室の中は見えないけれど、さくら達はお客さんの気配を感じられるようにして、三平ちゃんが一人で手が回らなそうなときは、手伝いに行ける……という風に思って、ガラス窓の入った間仕切りにしました」

神田にある甘味処「竹むら」を参考につくられた店内。「一度ロケハンに行って、店内の写真を撮らせて頂き、「このガラス窓の雰囲気が良いな」とか、間取りも「こんな感じなんだ」とか参考にさせて頂きました」。

カフェの内装には、倉田さんのこだわりが見える。
「こだわった部分は、壁紙とステンドグラスです。今作では、和室でのシーンが大部分をしめ、カフェのシーンは少ない。なので、変化を一瞬で分かってもらうために、カフェの柱の色を明るくし、壁紙も派手なものを選びました。そして、色味を足すためにステンドグラスを採り入れました。だからと言って、洋風にしすぎると「くるまや」ではなくなるので、少し和テイストを残して、竹垣とか手水鉢とかいい具合にミックスさせて、「カフェくるまや」をつくりました」

「以前は普通の団子屋さんだったんだろうけど、少し洒落た和の喫茶店になっているお店があったんです。『あっ、「カフェくるまや」だ』と思いました。こちらのお店は、かなり洒落ていましたが……。もしも、「カフェくるまや」がいまの柴又にあっても違和感はないと思いますよ」

『男はつらいよ』シリーズのあとにつくられた『家族はつらいよ』などで、山田洋次監督作品の美術を手がけてきた倉田智子さん。『男はつらいよ』への参加は、初めてとなった。
「第1作からDVDを観直しました。「くるまや」での会話が、大変面白いんです。『茶の間の部分は、何十年経ってもあまり変わってないだろう。この場所は、そのまま残さないと世界観が変わってしまう』と思いました。間取りはそのままで、土間に降りるガラス障子、和室と仏間を仕切ってる襖も当時使われた物を利用しようと、寅さん記念館に展示されてある物を借りてきました。ただ、いざ借りた襖をセットにはめてみると、それだけがかなり古く、セットの雰囲気を壊してしまう。仕方ないので、フスマは新しいものに張り替えた事にしようと別の柄の物を使いました」

本棚に並べられた焼酎の本。「若い時の博はビールばかり飲んでましたが、年をとると焼酎好きになったという設定にして置いてみました」。フクロウの置物は、福を呼ぶ象徴。寅さんの代わりに置いてある。

おなじみの諏訪家も、さくら、博、ともに年齢を重ねている。
「監督から『さくらも博も年をとってきた、老人が生活しやすい部屋に変えてくれ』と言われました。和室でも座布団だけでは普段の生活はしんどいであろうと思ったので、足が楽なように座椅子を置いたらどうか、ソファも置いたら立ち上がりも楽になるのではないかと考えました。土間の部分も『思い切ってバリアフリーにしたら?』という意見も出ましたが、諸事情でそれはやめて手すりをつけることになりました」

さくらと博も高齢に。生活しやすいようにてすりが設置されている。

置いてある道具は、老夫婦になったさくら達が、いかに快
適にこの部屋で生活できるかを考え、選ばれた品々。

久しぶりにセットに入った倍賞千恵子さんは、さくら、そのものだったようだ。
「さくらが、台所でご飯の支度をしてるシーンがあるのですが、その時のリハーサルで倍賞さんが『この場所にお布巾置いてください』とか、『包丁はこの辺り』とかおっしゃったんです。もうさくらのキャラクターで動いていらっしゃる。その通りに道具を置いてお芝居を見ていると、そこには年を重ねたさくらがいるんです。台所付近は、さくらのキャラクターが反映されてると思います」

小説家となった満男の部屋。書籍がずらりと並んでいる。

2DKと店舗が一緒になった一軒家。シリーズで寅さんが上がっていった階段は、改装されても、そのまま残されている。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#122(2020年2月号 12月18日発売) 『男はつらいよ お帰り 寅さん』の美術について、美術の倉田さんのインタビューを掲載。
プロフィール

倉田智子

kurata tomoko
69年広島県生まれ。西岡善信氏に師事し、映像京都に入社し、数々の時代劇に携わる。主な作品に、超高速!参勤交代』シリーズ(14、16)、『家族はつらいよ』シリーズ(16、17、18)、。近作に『居眠り磐音』『引っ越し大名!』『決算!忠臣蔵』(すべて19)がある。
ムービー

『男はつらいよ お帰り 寅さん』

原作・監督・脚本/山田洋次 脚本/朝原雄三 出演/渥美清/倍賞千恵子 吉岡秀隆 後藤久美子 前田吟 池脇千鶴 夏木マリ 浅丘ルリ子 ほか 配給/松竹 (19/日本/115min) 車寅次郎の甥である諏訪満男は、妻を亡くし、娘とふたりで暮らしている。会社員を辞め、小説家に転進した満男は、サイン会を開くことに。その列の中に満男の初恋の相手イズミがいた……。12/27~全国公開 ©2019 松竹株式会社
『男はつらいよ お帰り 寅さん』公式HP
https://www.cinemaclassics.jp/tora-san/movie50/
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