Room95  

2019.10.28

世界的なクラシックギタリストが住む

居住空間と練習ルームを兼ねた部屋

美術監督 清水剛

『平野啓一郎によるベストセラー小説を映画化した『マチネの終わりに』。世界的なクラシック・ギタリストの蒔野聡史と、パリの通信社に勤務するジャーナリスト、小峰洋子が恋に落ちるラブストーリーだ。本作のモデルにもなったギタリストの実際の部屋を参考にしながら、蒔野の部屋をつくりあげたのは、美術監督の清水剛さん。

閑静な住宅街にあるクラシックギタリストの住む家

蒔野の住むマンションは、東京都渋谷区の代々木上原にあるという設定。清水さんは、実際に駅周辺を歩いたり、周囲を車で走ったりと、イメージにあう物件を探してみたが、見つからなかった。蒔野の部屋探しは、それほどの難易度だったと言う。
「これまで何十本、映画をやってきて、様々な場所を見てきましたが、蒔野の部屋にあうロケーションが頭に浮かびませんでした。最終的には制作部が、都内にある物件を見つけてきてくれました。高度成長期の頃に建てられたオフィスビルで、西谷(弘)監督のイメージにもあい、そこに決まりました」
 蒔野の部屋をつくるにあたり、清水さんは小説のモデルにもなったギタリストの家を取材で訪れ、参考にしている。ギターやレコードも印象的だが、ファンの方からのプレゼントも劇中に取り入れている。

ギターのカタチを下小物たち。それらはファンからプレゼントされたという設定。

「部屋には、フィギュアや絵画など、ファンの方からのプレゼントがありました。面白いと思って、フィギュアはチーフ、絵は美大出のアシスタントにつくってもらいました」
 物件は取り壊しが決まっていて、なにをしてもいいということだった。そのことを知った照明の中村裕樹氏からリクエストがあった。
「ロケハンに行ったとき、中村さんから『(照明を上に入れるために)天井を抜けないかな』と言い出したんです。上が屋上だったので、『じゃあ、抜いちゃおうか』と。でも、耐震強度の情報などがわからないので、万が一開けて建物が崩れたらと思い、やめたんです。それで中村さんに『天井は開けられないわ』と言ったら、『本気で考えていたの?』と言われました(笑)」

ギタリストらしく、壁や床、至るところにギターがある。

壁はすべてブルーグリーンに塗り直された。普通ではあり得
ない色に、西谷監督も驚いた。

実は仕切りのないワンルーム。ベッドの横にあるガラスブロックは、目隠しになっている。

一方、パリの通信社につとめる洋子のアパートのシーンは、東京につくられたセットで撮影された。
「最初は現地のアパートで撮影する案もあったのですが、デリケートな芝居のある場面で、光などのコントロールの問題もあってセットでやることになりました。フランスに住んでいる人がセットを見学に来て、『フランスのアパートは本当にこうですよ』とお褒めの言葉をくださって、嬉しかったです。
ロケハンをしていて面白かったのは、フランスのアパートには、ほぼキッチンに洗濯機があるんです。水まわりはいっぺんにやってしまえという発想なのかもしれないですね。それはセットをつくる際、取り入れました」

洋子の部屋のキッチン。グリーンとシルバーのキッチンタイルは、ロケハンで見たものから着想を得ている。

床は、ヘリンボーンというフローリングの一種。 「パリのアパートはほとんどヘリンボーンだったんです。日本と違って、本当にひどくなったところだけ交換する。日本だと、色を塗っていない矢羽根(やばね)があるのですが、それは高額で予算とあわない。それで大道具さんたちと相談して、ベニヤを矢羽根の形につくり、模様を描いてもらった。それはイメージ通りのものにできたので、うれしかったです」

洋子のデスク周りは、ジャーナリストらしさが反映されている。

窓外の風景はミニチュアでつくられている。 「ミニチュアと言っても、デカチュアと言えるぐらい3メートルはある巨大なものです。現地で、窓外の実景を何枚も写真に撮って、木でつくった枠にすべて貼っていきました。ライティングには特殊な技術が必要なのですが、中村さんは特撮のノウハウを持っていたので、可能になりました。僕のアシスタントについた人間も特撮の経験があったので、みんなでやる気を出し始めて、カーテンをつけたり、ミニチュアのイスを置いたり、セットよりもそっちに夢中になっちゃって(笑)。みんなのアイデアとかを集結して、かなりうまくいったと思います」

窓外のパリの風景は、すべてミニチュア。窓を全部切り抜き、フィルムを貼って、ライティングしている。

仕切りのない大きな一間のワンルーム。建物自体はコンクリートだが、床が木になっていて、柔らかさを生んでいる。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#121(2019年12月号 10月18日発売) 『マチネの終わりに』の美術について、美術監督の清水さんのインタビューを掲載。
プロフィール

清水剛

shimizu takeshi
60年神奈川県生まれ。『電影少女』(91)で美術監督デビュー。西谷弘監督作品への参加は、『アンダルシア 女神の報復』(11)、『真夏の方程式』(13)、『昼顔』(17)に続き、3本目となる。近作に『センセイ君主』『十二人の死にたい子どもたち』(ともに18)、『全裸監督』(19)がある。
ムービー

『マチネの終わりに』

監督/西谷弘 原作/平野啓一郎 脚本/井上由美子 出演/福山雅治 石田ゆり子 伊勢谷友介 桜井ユキ 木南晴夏 風吹ジュン 板谷由夏 古谷一行 ほか 配給/東宝 (19/日本/124min) 世界的なクラシックギタリストの蒔野聡史は、パリの通信社に勤務するジャーナリスト・小峰洋子に出会う。出会った瞬間から、二人は強く惹かれ合う。蒔野は、洋子には婚約者がいることを知りながらも、高まる想いを抑えきれずに愛を告げる……。11/1~全国公開 2019 フジテレビジョン アミューズ 東宝 コルク
『マチネの終わりに』公式HP
https://matinee-movie.jp/
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