『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』に続く超平和バスターズ(監督/長井龍雪 脚本/岡田麿里 キャラクターデザイン・総作画監督/田中将賀)の最新作『空の青さを知る人よ』。
将来に迷う高校生・相生あおい。あおいのために自由を捨てた姉のあかね。東京へと出たまま音信不通となり、帰郷してきたあかねのかつての恋人・金室慎之介。突如お堂に現れた高校時代の慎之介「しんの」……。4人が織りなす“二度目の初恋”の物語。これまでの2作同様、舞台は秩父。美術監督をつとめた中村隆さんは、どのように表現したのか。
将来に迷う高校生・相生あおい。あおいのために自由を捨てた姉のあかね。東京へと出たまま音信不通となり、帰郷してきたあかねのかつての恋人・金室慎之介。突如お堂に現れた高校時代の慎之介「しんの」……。4人が織りなす“二度目の初恋”の物語。これまでの2作同様、舞台は秩父。美術監督をつとめた中村隆さんは、どのように表現したのか。
秩父の空気感を写真以上に伝えたい
中村隆さんが、超平和バスターズ作品に参加するのは、前作『心が叫びたがってるんだ。』に続き2本目。前作のロケハンの際、初めて秩父を訪れた。
「周りを山に囲まれていて、自然をとても近くに感じるんです。裏通りに入ると、古い町並みや古い商店が残っていて、あのへんの雰囲気は好きですね」
あおいとあかねが暮らす相生家は、秩父の市街地から離れた高台にある。姉妹の両親が新築で建て、あかねが生まれた頃に改築したという設定。美術の方向性としては、中村さんいわく「言ってみればどこにでもあるような家の中」を狙ったそう。
「周りを山に囲まれていて、自然をとても近くに感じるんです。裏通りに入ると、古い町並みや古い商店が残っていて、あのへんの雰囲気は好きですね」
あおいとあかねが暮らす相生家は、秩父の市街地から離れた高台にある。姉妹の両親が新築で建て、あかねが生まれた頃に改築したという設定。美術の方向性としては、中村さんいわく「言ってみればどこにでもあるような家の中」を狙ったそう。
「秩父へロケハンに行ったとき、とある家にお邪魔させていただいて、中を見せていただきました。そのお家のリビングやキッチン、玄関などが、そのまま相生家の美術となっています。小物も、新たに追加したものより、キャラクターにあわないものを省いていく方が多かったです」
中村さんはかつて美術監督をつとめた原恵一監督の『河童のクゥと夏休み』でも、自身の自宅の玄関を登場させている。
「これまでも割とそういうつくり方をしてきています(笑)。やはり実際にあるものの方が、ごちゃごちゃとした生活感が出るんです」
中村さんはかつて美術監督をつとめた原恵一監督の『河童のクゥと夏休み』でも、自身の自宅の玄関を登場させている。
「これまでも割とそういうつくり方をしてきています(笑)。やはり実際にあるものの方が、ごちゃごちゃとした生活感が出るんです」
今作について長井龍雪監督は、前作より映画らしくなったと語る。中村さんにとって、映画らしさとはなんだろうか。
「単純に絵の密度とかではない気がするんです。アニメの美術で言うと、テレビアニメでは朝なら朝、昼なら昼、夕方もはやめ、遅めぐらいで、微妙なところはつくらないことが多い。でも、今作では微妙な夕方具合だったり、映画ならではの空気感になっていると思います。たとえば「しんの」が登場するお堂の中の暗い部分の微妙な見え方には監督もこだわっていたので、その微調整に苦心しました」
「単純に絵の密度とかではない気がするんです。アニメの美術で言うと、テレビアニメでは朝なら朝、昼なら昼、夕方もはやめ、遅めぐらいで、微妙なところはつくらないことが多い。でも、今作では微妙な夕方具合だったり、映画ならではの空気感になっていると思います。たとえば「しんの」が登場するお堂の中の暗い部分の微妙な見え方には監督もこだわっていたので、その微調整に苦心しました」
今回で超平和バスターズ作品には二度目となる中村さん。その魅力について語ってもらった。
「一言では言えないですが、心情描写だったり、深いところがある気がします。観る人それぞれが共感できる部分があったり、物語に入っていけるところがある。長井さんが最終的にまとめているのでしょうけど、岡田さんの物語、田中さんのキャラクター、お三方がいてこそできるものになっていると思います」
「一言では言えないですが、心情描写だったり、深いところがある気がします。観る人それぞれが共感できる部分があったり、物語に入っていけるところがある。長井さんが最終的にまとめているのでしょうけど、岡田さんの物語、田中さんのキャラクター、お三方がいてこそできるものになっていると思います」
では、アニメーションの美術の仕事で一番面白いところは何だろう。
「この仕事の一番の醍醐味は、ライティングですね。どのような色の光を、どれぐらいあてるか。そのことによって写真以上に場所の空気が伝わるようにしたいと思っています。ちょっとした影の落とし具合や、彩度など、この作業は微妙に時間がかかるところなのですが、やっていて面白いですね。いまはデジタルになって、いくらでも調整できるので、どこまでいっても正解が見えない。これかなというところで区切らないと終わりがないんです(笑)。そこが一番やっていて面白いですね」
「この仕事の一番の醍醐味は、ライティングですね。どのような色の光を、どれぐらいあてるか。そのことによって写真以上に場所の空気が伝わるようにしたいと思っています。ちょっとした影の落とし具合や、彩度など、この作業は微妙に時間がかかるところなのですが、やっていて面白いですね。いまはデジタルになって、いくらでも調整できるので、どこまでいっても正解が見えない。これかなというところで区切らないと終わりがないんです(笑)。そこが一番やっていて面白いですね」
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#120(2019年10月号 8月18日発売)
『空の青さを知る人よ』の美術について、美術監督の中村さんのインタビューを掲載。
『空の青さを知る人よ』の美術について、美術監督の中村さんのインタビューを掲載。
Profile
プロフィール

美術監督
中村隆
nakamura takashi
62年神奈川県生まれ。86年にスタジオユニに入社。10年に同社の制作室、アート・チーム・コンボイとして独立、代表をつとめている。『河童のクゥと夏休み』をはじめ、多くの原恵一監督作品で美術監督をつとめる。近作に『HERO MASK』『ニクいよっ!カルビくん ~煙が目にしみる~』(18)、『バースデー・ワンダーランド』(19)などがある。
Movie
映画情報

空の青さを知る人よ
監督/長井龍雪 脚本/岡田麿里 キャラクターデザイン・総作画監督/田中将賀 原作/超平和バスターズ 声の出演/吉沢亮 ほか 配給/東宝 (19/日本/106min)
高校二年生、相生あおいは、両親を事故で亡くし、姉のあかねとふたりで暮らしている。あおいは、自分を育てるためにいろんなことをあきらめてきたあかねに負い目を感じていた。ある日、町で開催される音楽祭のゲストに大物歌手が決定。そのバックミュージシャンとして、かつてのあかねの恋人、金室慎之介が帰郷する。同時に、あおいの前に18歳の金室慎之介、しんのが現れる……。10/11~全国公開
空の青さを知る人よ公式HP